ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、世界はネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が支配していた。  
 各地で帝国に対するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。


第23話「新生!ライジングライガー」

 帝都メガロポリス、宮殿内にある指令部の映像には、次々と都市を破壊していくジェノスピノの姿が映っていた。タッカー元帥はそれを見て、

 

 「ふ、もはや、反乱軍の余命は後僅かになったな!いよいよ、我がネオデスメタル帝国が世界を統一するときが来たようだ。」

 

 

 指令部にベケット少佐とアーミテージ大尉が入り、二人を見たタッカー元帥は、

 

 「おお~、ベケット少佐にアーミテージ大尉、戻ってきたか!ご苦労だったな!」

 

 「思わぬ邪魔が入り、一時撤退を余儀なくされましたが。」

 

 「まあよい。後は皇帝陛下が何とかしてくださるだろう。」

 

 「ところで、元帥閣下はご存知なかったんですか?ワイルドライガーが反乱軍にいたことに!」

 

 「ワイルドライガー?まさか、我がネオデスメタル帝国の前身旧デスメタル帝国を壊滅させたあの…!」

 

 「ええ、反乱軍に加わっていました!」

 

 「ワイルドライガーが反乱軍にいたとは、私にもその情報は入らなかったが、予想外だな!だが、いくらワイルドライガーといえども、陛下のジェノスピノには敵うものはいない!」

 

 「それと、1つ問題が!」

 

 「何だ?」

 

 「カーター大佐がアッカーマン中将からあのわがまま皇子の救出を命ぜられてスナイプテラで出撃したとの情報が入りました!」

 

 「なに!!それは不味いな。あの若僧が救出されたら、皇太子殿下の王位継承権が危うい。皇太子殿下は帝王ギャラガー様そのものといってもいい程のお方だ!所詮、あの若僧は出来損ないの失敗作に過ぎん!」

 

 「アッカーマンとカーターはあの若僧の支持者ですから、あの若僧が皇帝になることを期待してますからね。」

 

 「とにかく、あの若僧は皇帝陛下と皇太子殿下、そして我がネオデスメタル帝国のために死んでもらわなければならない!何としても阻止しなければ、だが、新帝国の反乱軍に殺されたことにしなくては!」

 

 「いい方法があります!」

 

 「何だ?」

 

 「現在の新帝国は過去の真帝国同様、キルサイスを主力にしています。それを利用しましょう!」

 

 「というと?」

 

 「我がネオデスメタル帝国軍のキルサイスを使うんです!」

 

 「しかし、あれはオメガレックス完成後に使う予定だが!」

 

 「ですが、我がネオデスメタル帝国の最新技術により、オメガレックスの護衛以外にも他の仕様に強化改造しています。ルメイ大将に与えたステルス仕様のキルサイスSSがいましたよね!それを使いましょう!それで如何にも新帝国がやったかのように見せるんです!」

 

 「よし!では、ルメイ大将に命じよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ネオゼネバスシティ、グラッドたち同盟軍は出撃の準備をしていた。クリスはグラッドに、

 

 「コマンダー、デスロッキーを占拠して何をするつもりですか?」

 

 「デスロッキーは現ネオデスメタル帝国の前身の旧デスメタル帝国の本拠地が置かれた場所で、ギャラガー一世が葬られた場所!そこを占拠して大々的に世界中に知らせて三世をそこに引きずり込む!」

 

 「上手くいきますかね!」

 

 「なあに、俺に任せろ!」

 

 「それにコマンダーはレックスの修理が!」

 

 「ああ、それなら大丈夫!!」

 

 ピューピュイ!

 

 グラッドが口笛を吹いた瞬間、モザイクのように茶色とシルバーが合わさったカラーになり、更に背中に巨大なガトリングを取り付けたレックスが現れた。それを見たクリスは驚愕し、

 

 「これは、本当にレックスなのか!?」

 

 驚くクリスにグラッドは、

 

 「ああ、正真正銘、俺のレックスだ!」

 

 「しかし、いつの間にこんな改造を?」

 

 「ジョンが帝国の基地からかっさらってきたのと、俺が密輸業者時代で密かにかっさらった改造兵器を使って、アッシュに改造させてもらったのさ!」

 

 「まさか、こんな武器いつの間に!」

 

 「当たり前だ!いったい何年密輸業者やってると思ってんだ!!」

 

 「得意気に言ってますけど、コマンダー。それ、立派な犯罪ですよ(まあ、俺もだが)!←元密輸業者」

 

 「帝国のお尋ね者がまともな職に就けるわけねぇだろ!!それに俺だって好きでやってんじゃねえぞ!」

 

 「まあ、確かにそうですけど(困り顔)…。」

 

 「それに、先の戦いで、今のままじゃ、ジェノスピノに勝てるわけないと思ってな!相棒ももっと強くなりたいって言っているからな!」

 

 「コマンダー、ジェノスピノに勝てますかね?」

 

 「この作戦は一か八かの大勝負に近い!だが、相当の危険を犯してまでやる覚悟がないんじゃ、男とは呼べねぇぜ!」

 

 「言ってくれますね!コマンダー。」

 

 「よし、全員出撃だ!」

 

 「ところで、コマンダー。ウィルとリセルは?」

 

 「あの二人はストームとスミスが引き受けると言った。あいつらに任せようじゃないか!」

 

 そう言って、出撃するグラッドたち、そして、基地内でエマがシーザーにマイロのゾイド因子を移植する作業が終え、汗をかいたエマは、

 

 「ゾイド因子の移植無事に終わりました!」

 

 それを聞いたスミスは、

 

 「よくやった!流石、エマちゃんじゃ!!後はシーザーの身体が再生するのを待つだけじゃ!」

 

 その時、シーザーの身体が発光し、石化したシーザーの身体がみるみるうちに姿を変えていく。姿を変えたシーザーの身体は後ろ足の部分にアーマーが無く、アーマーの色はかつてのビーストライガーのような白いカラーリングではなく、少し地味な色合いになっていた。それを見たウィルは、

 

 「あれ?シーザー、お前そんな姿だったっけ?」

 

 驚くウィルにエマは、

 

 「これは、シーザーが初めて復元された最初の姿よ!」

 

 「え、そうなの!?」

 

 それを聞いたスミスは、

 

 「ほほ~!これがシーザーがビーストライガーに進化する前の姿か!まさか、こんな形で見れるなんて感激じゃわい!!」

 

 「でも、不思議。この姿のシーザーを見るのは初めてなのに、まるで大昔にもこの姿のシーザーに会った気がする!」

 

 エマはゆっくりとシーザーの身体に手を触れ、じっと目をつむった。

 

 「そうね、シーザー。」

 

 シーザーに手を触れ、何か応えるエマにウィルは、

 

 「エマ、シーザーの言葉が分かるの?」

 

 「自分でもわからないけど、こうして手を触れるとゾイドの言葉が分かるの!」

 

 「なんて言ってるの?」

 

 「もっと強くなりたい!ウィルのためにも、死んだウィルの父のためにも、そして、ネオデスメタルに苦しめられているゾイドや人々のためにももっと強くなりたいって!」

 

 「そうか、シーザーは俺のことを思って!確かに今の俺とシーザーじゃ、ジェノスピノに太刀打ち出来ない。もっと強くならないと!」

 

 それを聞いたスミスは、

 

 「どうやら、これでシーザーと気持ちは一つとなったようじゃ!」

 

 それに対しウィルは、

 

 「でも、どうやったら俺とシーザーは強くなれるんだ?いくら復活したからといって、もう一度戦ったらまたやられてしまう。」

 

 「そういうことなら、安心せい!わしが取って置きを持って来たんじゃ!」

 

 スミスの自信たっぷりな言葉と共にスミスの相棒の黒いグソックがキャリアカーを引いて現れ、その中から強力な武器が現れた。それを見て驚愕するウィルとエマ、

 

 「これはわしが帝国にいたとき、密かに開発した強力な改造兵器じゃ!ネオデスメタル帝国に対抗出来る者が現れるまでずっと保管していたが、どうやらついに使う時が来たようじゃ!さあ、ここからは本格的な改造じゃ!こいつをシーザーに付けてパワーアップさせるんじゃ!」

 

 エマはスミスに、

 

 「スミスさん、私にも手伝ってくれませんか?」

 

 「おいおい、いくらゾイド因子の移植が出来たからといって、こいつは危険な作業じゃ!可愛いエマちゃんに危険な作業をさせるわけにはいかん!」

 

 「でも、やらせてください!」

 

 同時にウィルも、

 

 「俺もやります!シーザーは俺の相棒なんだ!俺もやらないと!」

 

 「しかし…、」

 

 困惑するスミスの肩にストームはそっと触れ、

 

 「いいじゃねえか!ゾイドのために相棒がやるのは当然だろ!!」

 

 「よし、わかった。だが、危険な作業じゃから、心してかかれ!」

 

 ウィルとエマは口を揃えて、

 

 「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ネオゼネバスシティから3km離れた上空をカーター大佐のスナイプテラが飛行していた。カーター大佐はスナイプテラのコクピット内の映像を見、

 

 「旧ネオゼネバスシティまで後、1時間か…。」

 

 カーター大佐はアーネストと一緒にいた時のことを思い出していた。

 

 「力による平和?」

 

 「僕が力を求めているのは、エマとユリス姉さんの望んでいた人とゾイドの共生、そして争いのない世界を実現するためなんだ!でも、そのためには強い力が必要なんだ。誰も逆らえない圧倒的な力があれば、人々は争いを起こすことはない、最強の力で世界を一つにすれば、皆、手を取り合うことだって出来る。僕はそんな世界を築くためにネオデスメタル帝国の皇帝になるんだ!」

 

 アーネストの言葉を思い出したカーター大佐は、

 

 「殿下はゾイドはもちろん、困っている人をほうっておけない優しい性格を持ったお方だ!あの方を皇帝にすれば、世界は変えられる。」

 

 その時、スナイプテラに向かって地上から攻撃してきて、地上から複数のキルサイスが現れた。現れたキルサイスには新帝国のエンブレムが付いていた。それを見たカーター大佐は、

 

 「あのエンブレムは、新帝国のキルサイスか!」

 

 キルサイスはスナイプテラに襲いかかるが、スナイプテラはガトリングとミサイルランチャーで次々と撃墜していく。しかし、その後、次々と大量のキルサイスが現れ、一斉にスナイプテラに襲いかかってくる。

 

 「新帝国のキルサイスは過去の真帝国同様、遠隔操作が可能で大量生産が出来ると聞いてはいたが、まさか、これほどとは!といっても、ここで立ち止まるわけにもいかない。制御トリガー解除、スナイプテラ! 兵器 解放! マシンブラストー!! アブソルートショット!」

 

 スナイプテラのアブソルートショットで次々と撃墜していくキルサイス、しかし、キルサイスはそれでも湧いていく。

 

 「くそ、いったい何体いるんだ?」

 

 しかし、地上でもスナイプテラに向かって攻撃してきた。地上で攻撃しているのは、ステルス仕様として改造され、光学迷彩で姿を隠したネオデスメタル帝国のキルサイスSSだった。内の一体にはルメイ大将が乗っていた。

 

 「大したものだ!ハナカマキリの周囲の環境に擬態する性質を利用し、ガトリングフォックスと同じ光学迷彩を搭載したキルサイスSSは凄い性能だ!

 それに加え、新帝国のエンブレムを付けた囮の無人機のキルサイスは効果抜群だな。あのカーターもすっかり騙されてやがる。それにしても、ドクターマイルスの奴、あのスパイゾイドに他のゾイドの幻影を見せる機能も付けているとは、驚いた!そのおかげで、囮の無人機をあそこまでの大部隊に見せることが出来て、もはや、同じネオデスメタルの者が邪魔しているとは、奴も考えていないだろう!」

 

 新帝国のエンブレムを付けた囮のキルサイスとスパイゾイドの幻影で、無数に出てくるように見え、更に光学迷彩で姿を隠したキルサイスSSの攻撃で、流石のカーター大佐のスナイプテラも苦戦していく。

 

 「これじゃ、キリがない!このままでは、殿下を救出する前に倒されてしまう。」

 

 スナイプテラの様子を見たルメイ大将は、

 

 「ふ、流石に限界のようだな。では、そろそろフィニッシュといくか。」

 

 ルメイ大将の操るキルサイスSSが光学迷彩で姿を隠しながら、スナイプテラに襲いかかり、スナイプテラの片翼を切断した。

 

 キルサイスSSに片翼を切断され、悲鳴を上げるスナイプテラ、スナイプテラの様子を見たカーター大佐は、

 

 「不味い、このままでは、こちらが先に倒れてしまう!やむを得ん、一旦、態勢を立て直そう!」

 

 と言って、そのまま、撤退していくスナイプテラ、それを見たルメイ大将は、

 

 「ハハハ、これでしばらく奴は新帝国の基地に行けない。これであのわがまま皇子の救出は不可能になった!それにキルサイスSSの性能を試すいい実験台になってくれた。

 さて、私には元帥から瀕死のライガーに止めを刺せ、との命令も受けている。ここからは、ドライパンサーで行こう。あのライガーは厄介だと、ドクターが言っていたからな!我が帝国の支配を邪魔する悪い芽は摘み取っておかなくてはな!」

 

 そう言って、ルメイ大将はキルサイスSSからドライパンサーに乗り換え、旧ネオゼネバスシティに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ネオゼネバスシティの基地では、シーザーの改造が終わり、タテガミクローを失ったシーザーの背中には、改造されたレックス同様の巨大なガトリングとリボルバーが装備された。それを見たスミスは、

 

 「完成じゃ!兵器の力と生物の力を併せ持つ新たなライガーの誕生じゃ!」

 

 シーザーを見たウィルは、

 

 「シーザー、重くないかな?」

 

 少し不安そうなウィルにエマは、

 

 「でも、とっても強そう!」

 

 ストームは、

 

 「中々、上出来じゃないか!」

 

 「さあ、改造の後は、戦場じゃ!ウィル、抜かるなよ!」

 

 「わかった!」

 

 その時、基地が爆発する音がし、映像にはドライパンサーが基地を攻撃していた。映像を見たシーガルは、

 

 「ドライパンサー一機だけか?」

 

 シーガルの問いに兵士は、

 

 「いえ、他にも敵の攻撃がありますが、姿が全く見えません!」

 

 「ええい、なら、キルサイス部隊を出せ!」

 

 「それが、既にキルサイス部隊を送っていますが、次々と撃墜されています!」

 

 映像では、新帝国のキルサイス部隊がドライパンサーに攻撃しているが、ドライパンサー以外の何者かに攻撃され、次々と倒されていく。姿の見えない相手は光学迷彩で姿を隠したキルサイスSSだった。映像を見たウィルは、

 

 「放っておけない!いくぞ、シーザー!!」

 

 ウィルはシーザーに乗り、基地から出る。それを見たエマとスミスは、

 

 「あ、ウィル!待って!」

 

 「待たんか、シーザーはまだ改造したばかりじゃ!いきなり実戦は…、」

 

 しかし、ストームが2人に待ったをかけ、

 

 「行かせてやれ!こうしている間にもジェノスピノは刻一刻と近づいていっている。悠長には待っていられない。それに、これはあいつの試練だ!あれぐらいの相手に勝てなければ、到底ジェノスピノに勝つことは出来ない!」

 

 基地から出たシーザーはドライパンサーと対峙する。シーザーを見たルメイ大将は、

 

 「おや、陛下のジェノスピノ相手に無様な姿となって、瀕死の状態になっていたと聞いていたが、まさか、復活していたとはね!それにしても何だ?その不格好な装備は!」

 

 「うるさい!いくぞ、シーザー!」

 

 グオォー!!

 

 ウィルの言葉に応えて咆哮を上げるシーザー、シーザーはガトリングを撃ちながらドライパンサーに突進するが、ドライパンサーは軽々とその攻撃を避け、シーザーに攻撃する。ドライパンサーの突進を受けて倒れるシーザー、それを見たスミスは、

 

 「やっぱりじゃ!改造した別のパーツを移植したから、シーザーはまだ身体に馴染んでいない。」

 

 ドライパンサーの強さを見たウィルは、

 

 「こうなったら、ワイルドブラストだ!いくぞ、シーザー!エヴォ…、」

 

 その時、ウィルはシーザーが一度石化してゾイドキーが割れたことを思い出した。

 

 「そうだ!ゾイドキーがない。ワイルドブラストは出来ない。」

 

 気を反らしたウィルにドライパンサーが襲いかかってくる。ドライパンサーの攻撃を受けて押されるシーザー、それを見たルメイ大将は、

 

 「どうした?まさか、ワイルドブラストが出来ないのか!そりゃそうだよな!あれだけ陛下のジェノスピノに倒されたんじゃ、仕方ないよな!」

 

 続けてシーザーに攻撃するドライパンサー、シーザーの身体に傷が付く。それを見たエマは青ざめ、スミスは痺れを切らし、

 

 「これ以上はまずい!わしのグソックで助けに行く。」

 

 しかし、ストームはそれでも待ったをかけ、

 

 「止せ、助けに行ったら、ウィルのためにならん!」

 

 「何を言っとるんじゃ!ウィルを見殺しにするつもりか!」

 

 「黙って見ていろ!ウィルはまだ気付いていないだけだ!ゾイドの力を引き出すために何が必要なのかを!」

 

 ボロボロになるシーザーに追い討ちをかけるかのようにルメイ大将は、

 

 「もう少し楽しもうと思ったが、あんまり時間をかけると陛下の楽しみを無くしてしまうからな!悪いが、これで決めさせてもらうぞ! 制御トリガー解除、ドライパンサー! 兵器 解放! マシンブラストー!! ドライスラッシュ!」

 

 シーザーに突っ込むドライパンサー、シーザーはスレスレで攻撃を避けるが、ドライパンサーは尻尾で凪ぎ払い、向きを変え、シーザーにドライスラッシュの一撃を喰らわす。壁に激突するシーザー。それを見たストームは、

 

 「何をしている、ウィル!シーザーの強くなりたいという気持ちを理解して心を一つにしろ!そうでなければ、シーザーを強くすることは出来ない!」

 

 「ウィル…。」

 

 エマは両手を重ね、目をつぶった。身動きのとれないシーザーを見たルメイ大将は、

 

 「改造した割には、その程度か!ま、無理もない、そもそもそのライガーで我らネオデスメタルに立ち向かおうとする自体無理だったのさ!

 

 最もそのライガーにシーザー等と大層な名を付けた時点で運命は決まっていたがな!」

 

 「何!どういうことだ?」

 

 「なんだ。小僧、そんなことも知らずにシーザーなんて名付けたのか!

 ふん、まあいい。冥土の土産にいいことを教えてやろう!ゾイドクライシス後に移住したゾイド人の知らない地球の歴史をな!シーザーとは、かつてゾイドクライシスが起こる2000年以上前の地球に君臨した大国の王の名だ!

 別名はカエサルとも言っていたがな。その男は圧倒的なカリスマ性を持ち、数々の戦争に勝利して領土を拡大し、国の版図を広げ、大国の指導者となった。

 しかし、王になる寸前、自分の信頼する部下の1人であるブルータスに暗殺され、王になれず、この世を去った。そして暗殺者のブルータスはシーザーの養子だったアウグストゥスに殺され、アウグストゥスは反対者を全て粛清し、大国の全てを牛耳り、自ら皇帝になって大国を世界最強の帝国にした!

 この意味がどういう意味か分かるか?フフフ、シーザーは王にはなれない。シーザーにはブルータスが常にいる!そしてそのブルータスがこの私、そして、世界最強の帝国の皇帝アウグストゥスは我らがネオデスメタル帝国皇帝ギャラガー三世陛下なのだ!アウグストゥスが築き上げたローマ帝国はかつて、ゾイドクライシス前の地球に君臨していた大国がその後継者として領土を広げたが、どれも叶わなかった!

 だが、我がネオデスメタル帝国こそが現代に甦ったローマ帝国!いや、それすらも超え、惑星Ziに存在した全ての帝国をも超越した史上最強の帝国なのだ!!どの大国も叶わなかった世界の統一、我が帝国はそれを実現するのだ!!

さあ、ブルータスに暗殺される時が来た!これでまたシーザーの王になる野望が再び砕かれる歴史の1ページが開かれる。ドライスラッシュ!!」

 

 そのまま猛スピードでシーザーに突っ込むドライパンサー。ウィルは泣きながら、

 

 「シーザー、ごめん!またお前を死なせてしまって!」

 

 「死ねぇー!!」

 

 その時、シーザーのゾイドコアが発光し、同時にシーザーの全身も発光する。一旦止めるドライパンサー、

 

 「何だ?あの光は!」

 

 シーザーのコクピット内で、ウィルにエマの声がし、

 

 「ウィル、諦めないで!まだ立ち上がれる!シーザーがそう言っているわ!」

 

 「エマ?シーザーがまだ戦えるって言っているのか!?」

 

 同時にある男の声も聞こえ、

 

 「すまなかったな。ウィル!お前と母さんを巻き込ませないつもりが結局巻き込んでしまって!」

 

 「父さん!?」

 

 声の主はウィルの父、デイビッドだった。

 

 「だがな、ウィル!シーザーとお前は俺とマイロと同じ運命に逢ってはいかん!死ぬのは俺とマイロの特権だ!お前は死んではならない!強くなれ、ウィル!シーザーと共に大切なものを守る男になれ!!」

 

 デイビッドの声が聞こえなくなったシーザーがウィルに何か言うようにうなずき、

 

 「ああ、そうだよな!シーザー!俺とお前でゾイドを、人々を、皆を守るんだ!!」

 

 ウィルの言葉と共に、シーザーの身体が眩しいくらいに発光し、失っていたシーザーのアーマーが復活し、シーザーの身体が金色の新しい姿に変わった。それを見た全員は驚愕の表情をし、シーザーの新しい姿を見たエマは、

 

 「ライジング…、ライガー…!」

 

 シーザーの姿を見たウィルは、

 

 「これが、シーザーの新たな姿なのか!?」

 

 シーザーの姿を見たルメイ大将は、

 

 「何だ?あの姿は!だが、姿が変わっても同じこと。これで終わりだ!ドライスラッシュ!!」

 

 しかし、シーザーのアーマーがドライパンサーのドライスラッシュを弾く。弾かれドライパンサーにシーザーが突進し、吹っ飛ばされるドライパンサー。

 

 「何が、どうなっている?装甲が上がった上に、動きも速くなっただと!」

 

 それを見たスミスは、

 

 「これは驚いた!?まさか、シーザーが進化するなんて!」

 

 ストームは、

 

 「ようやく、シーザーと心を1つにしたようだな!」

 

 「ウィル…、シーザー…!」

 

 エマは期待するような表情をした。ドライパンサーを圧倒するシーザー、

 

 「スゲェ、スゲェぞ!シーザー!」

 

 シーザーは再びうなずき、

 

 「ようし、わかった!ワイルドブラストだな!」

 

 その時、コクピット内が発光し、金色のゾイドキーが現れた。シーザーの新たなゾイドキーを持ったウィルは、

 

 「これが、シーザーの新しいゾイドキー!」

 

 「認めん、認めんぞ!そんなもので私のドライパンサーが負けるなど!! 今度こそ、フィニッシュだ!」

 突進するドライパンサー、しかし、ウィルは、

 「いくぞ、シーザー!」

 

 グオォー!!

 

 ウィルの言葉に応えて咆哮を上げるシーザー、

 

 「切り拓け、シーザー! 俺の魂と共に、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 「ドライスラッシュ!!」

 

 「ライジングバーストブレイク!!」

 

 それぞれぶつかり合うシーザーとドライパンサー、しかし、シーザーの攻撃がドライパンサーの身体を一刀両断する。

 

 「バ、バカなー!!」

 

 爆発炎上するドライパンサー、それを見て喜ぶエマたち、

 

 「ウィルが勝った!!」

 

 「遂にやったぞー!!」

 

 ドライパンサーの残骸に向かうシーザー、

 

 「ライダーは?」

 

 しかし、ドライパンサーの姿にライダーの姿はなく、

 

 見上げた頭上には既に脱出してキルサイスSSのコクピットに乗り換えたルメイ大将がいた。

 

 「意外だったな!だが、覚えておけ!誰も歴史の運命を変えることは出来ない!我がネオデスメタル帝国が世界を支配することも、そして、そのライガーはゾイドの王にはなれない!ゾイドの王になるのはギャラガー三世陛下なのだからな!フフフ、ハハハハ、ハーハッハッハ!!」

 キルサイスSSに乗って撤退するルメイ大将、ウィルはシーザーから降り、エマたちのところに向かう。エマは笑顔で、

 

 「ウィル、良かった!」

 

 「見事なもんじゃ!まさか、シーザーを進化させるとは!ライジングライガー、あれがシーザーの新しい姿じゃな!」

 

 「いや、俺はただシーザーを、死なせたくなかったから、それにしてもエマ、シーザーの新しい姿の名前知っていたなんて!驚いたな!もしかして、ホントに大昔にシーザーと会っていたのか?」

 

 「そうじゃないけど、ただ…、何となくね…。」

 

 ストームはウィルに、

 

 「ようやく、シーザーと心を一つにしたようだな!」

 

 「ストームさん!」

 

 「ゾイドは俺たちと同じ心を持った生命体、ライダーと心を一つにした時、ゾイドの本来の力、ワイルドブラストが発揮される。それにようやく気付いたようだな!」

 

 「はい!」

 

 「今のお前とシーザーなら、あのジェノスピノに勝てる。」

 

 「ああ、これからもよろしくな!シーザー!!」

 

 ウィルの言葉にうなずくシーザー、

 

 「ところで、グラッドたちは?」

 

 「ワイルド大陸にある大火山デスロッキーを占拠すると言って既に出発した。何でもそこでジェノスピノを迎え撃つと言ってたが!」

 

 「デスロッキーに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワイルド大陸、大火山デスロッキーにあるネオデスメタル総督府(旧デスメタル帝国本拠地)、総督府は20分足らずでグラッドたち同盟軍に制圧された。

 

 「ふう、何とか、制圧出来たようだな!パワーアップしたレックスの準備運動にもなったようだな!」

 

 総督府を見たアレックスは、

 

 「それにしても、まさか、あの帝王ギャラガー一世の宮殿をそっくりそのまま再建して総督府にしていたとは驚きだぜ!」

 

 「それだけ、旧デスメタル帝国の影響が強かったんだろう!」

 

 クリスはグラッドに、

 

 「しかし、それだけ旧デスメタル帝国を尊敬しているなら、何故ここに帝都を置かなかったのだ?」

 

 「ここは火山のすぐ近くだから、帝都を置こうにも軍事的に不向きだし、そもそも旧デスメタルがここに本拠地を置いたのはここがデスレックスの封印場所で、デスレックスの秘密を反対派のレジスタンスに悟られないようにするためだったが、今じゃ、それを隠す必要がないからな!

 

 それにデスレックスはジェノスピノ同様、既に発掘されているし、ここはギャラガー一世が葬られた場所だから、帝都を置きづらかったんだろう!」

 

 「で、これからどうするんです?」

 

 「まあ、見ていろ!ここの通信機は全てハッキングしたな?」

 

 グラッドの問いにジョンは、

 

 「大丈夫です!いつでもOKです!」

 

 「よし、では全世界中継で流す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ネオゼネバスシティに進行するジェノスピノ率いる親衛隊、

 

 ジェノスピノのコクピットから兵士の通信が入り、

 

 「陛下!世界中に反乱軍の中継が入っています!!」

 

 それを聞いたギャラガー三世は中継を入れ、

 

 「我々反ネオデスメタル同盟軍はネオデスメタル帝国の前身、旧デスメタル帝国の本拠地を占拠した!我々はここに本拠地を置き、かつての旧デスメタル帝国同様にネオデスメタル帝国の壊滅を宣言する!!」

 

 この中継は旧ネオゼネバスシティ、ネオデスメタル帝国帝都メガロポリスにも流れていた。中継を見たタッカー元帥は、

 

 「何だ?この中継は!」

 

 中継を見たギャラガー三世は、

 

 「ふ、面白い。あの時のリベンジのつもりか。少しは楽しめそうじゃないか! 私はデスロッキーに向かう!1番隊は私に付いていき、残りは旧ネオゼネバスシティに行け!」

 

 「しかし、陛下!!」

 

 「命令だ!」

 

 「は!」

 

 ジェノスピノは方向を変え、一部の親衛隊を率いてデスロッキーのあるワイルド大陸の方に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ネオゼネバスシティの基地にあるアーネストが入れられている牢屋では、見張りの兵士が話をし、

 「なあ、聞いたか!何でもあのジェノスピノにコテンパンにやられたライガーが新しい姿になってドライパンサーを倒したらしいぜ!」

 

 「マジかよ!じゃあ、ジェノスピノも倒せるのか!?」

 

 「いや、それはさすがにないぜ!あのジェノスピノだぜ!」

 

 それを聞いたアーネストは、

 

 「ライガーが復活した!?」

 

 アーネストは拳を握りしめる。

 

 To be continued




 次回予告

 シーザーがライジングライガーに進化してルメイ大将のドライパンサーを倒し、デスロッキーに向かおうとするウィル、しかし、そんな時、牢屋から脱走したアーネストとギルラプターエンペラーがウィルに襲いかかってきた。
 エマの説得に耳を貸さず、父のギャラガー三世に認められるためにウィルとシーザーを倒すことに固執するアーネスト、アーネストいやレイルを助けたいというエマの気持ちに応えるべく、ウィルとシーザーはレイル(アーネスト)とギルラプターとの戦いに身を投じる。

 次回「立ちはだかる竜爪」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!

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