ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のゾイドチームのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていたのであった。


第31話「それぞれの道」

 ドクターマイルスがオメガレックスと共に去った後、ストームとグラッドたちは持ってきた修理道具で、キングたちの傷の修理をしていた。グラッドはジョンから修理道具を受け取り、

 

 「幸い、修理道具を持っていたキールとグソックがノーダメージで、こちらもそこまでのダメージじゃなかったのは助かったな! お陰で、相棒たちの修理も容易に終わりそうだ。」

 

 「でも、コマンダー。見たでしょ! あの威力。」

 

 「ああ、確かにあれをまともに喰らったら、俺たちじゃあ、全く歯が立たない。 

 だが、そう悲観することじゃない! 俺たちはあのジェノスピノすら倒せたんだ!あのオメガレックスがどれ程の化け物だろうと倒してみせる!だろ! ストーム。」

 

 「ああ、俺も同じことを考えていた!」

 

 「でも、リーダー! コマンダー! そんなこと言ってもウィルたちは悲観モードのままですよ!」

 

 「あ!」

 

 振り向いたら、ウィルはシーザーの足元でぐったりしていて、リセルはデルのコクピットの中で考え事をし、エマとユリスはオメガレックスに破壊された森を見て悲しそうな表情をしていた。

 

 「やれやれ、また厄介な問題を背負ってしまったか。 そういや、エマが聞いた話によると、あのレイルっていう帝国の御曹司と現皇帝はギャラガー一世のクローンらしいな!」

 

 「ええ!」

 

 「ま、記録によると、ギャラガー一世は元々奴隷として生まれ、天涯孤独の身であったため、旧デスメタル帝国の帝王になっても妻をめとらなかったそうだから、当然、奴に子孫なんているわけないからな。」

 

 「でも、コマンダー! そうなると以前俺たちが倒したギャラガー三世は何者なんでしょう?」

 

 「多分、ギャラガー一世の子孫を名乗る赤の他人だろう! 奴のカリスマ性に惹かれ、崇拝するものも多数いるからな。」

 

 横にいたストームは、

 

 「いや、そうとも言い切れない。あの時、俺は確かにギャラガー一世と似た雰囲気は感じたが、その一方、何か強大な雰囲気も感じた!

 何かとははっきり言えないが、この世を揺るがすような強大な何かが! それにあの時、キングが警戒していたのはジェノスピノではなく、あのギャラガー三世の方に警戒していたようにも見えたし……」

 

 「本来、この時代にいるはずのないジャミンガやあの謎の巨大ゾイドといい、調べる必要がありそうだな! エマがやたら恐れているZGって奴も。」

 

 「ZG? コードネームのようですが、そいつもゾイドなんですかね?」

 

 「わからねぇ。あのエマがあそこまで恐れるってことはただものじゃないことは確かだ。」

 

 その時、飛行ゾイドの音がした。

 

 「お、どうやら、クルーガーたちのお迎えかな!」

 

 「いえ、コマンダー。この音は…。」

 

 来たのは巨大スナイプテラのビッグウィングと青いスナイプテラとキルサイスだった。

 

 「やれやれ、嬉しくないお迎えが来たか。」

 

 ビッグウィングが離陸し、青いスナイプテラ、キルサイスも離陸してビッグウィングから、シーガル中将、アルドリッジ大佐が現れ、シーガル中将はユリスとエマの元に行き、

 

 「メルビル二世陛下! よくご無事で。さ、もう安心です! 我々新帝国がお守りしますのでどうぞこちらへ!」

 

 しかし、ユリスは困った表情をし、

 

 「え…、でも、ウィルたちはどうするのですか?」

 

 「彼らは我々の方針に逆らった! 奴等は受け入れられません!! さあ、こちらへ!」

 

 「ち、ちょっと、待ってください!」

 

 嫌がるユリスを見て、ウィルは身を乗り出そうとしたその時、リセルが拳銃を取り出し、ウィルに向けた。

 リセルの険しい表情を見て、ウィルはしばらく動けなかった。ユリスとエマをビッグウィングに乗せようとするシーガル中将はリセルに、

 

 「どうした? ディアス准将。行くぞ!」

 

 リセルは拳銃をしまい、デルに乗ってそのままビッグウィングに乗った。ビッグウィングに乗せられたエマはウィルの方を向き、悲しそうながらも笑顔を見せ、そのままビッグウィングに乗せられた。

 それを見たウィルは複雑そうな表情をした。グラッドは呆れ果て、

 

 「たく、ホントに自分勝手な野郎だ! 散々俺たちに頼ってきた癖に手を切るなんてな!!」

 

 その時、通信が入り、通信を聞いたグラッドは、

 

 「今、クルーガーから連絡が入った! 旧共和国派に属する派閥が次々とネオデスメタル帝国軍に制圧され、迎え撃つために旧共和国派のクライヴ・デルタが俺たちに全面協力してくれるそうで、至急本拠地に戻って来て欲しいとのことだ!

 とにかく、俺たちは俺たちのことをするぞ! 今すぐ本拠地に戻る。」

 

 「ま、待ってください! コマンダー! リセルはどうするんですか? グレたとはいえ、リセルはコマンダーが育てた弟子なんでしょう?」

 

 「ほっとけ! 今のあいつは何言っても聞かん! 元々反抗期だったし、ちょっとでも痛い目に遭わないと直らん。連れ戻すのはその後だ!!」

 

 「そうは言っても…、」

 

 そこにストームが口を開き、

 

 「いや、グラッドの言う通りだ! 今のあいつには何言っても通用しない。これ以上あいつを引き戻すことをしたら火に油を注ぐだけだ。

 

 ここは少し様子を見た方がいいだろう!」

 

 「仕方ないですね! じゃ、行きましょう!」

 

 ウィルは少し黙り込んで、

 

 「どうした、ウィル? さっさと行くぞ!」

 

 「あ、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たな本拠地に向かうビッグウィングのコクピットではシーガル中将とアルドリッジ大佐が、

 

 「そういえば、シュバルツ中佐の姿が見えないな。どこに行った?」

 

 「何度も通信を開いてますが、あの野郎、何の連絡もよこしませんし、どこに行ったのかもわからん!」

 

 「まあ、良い! とにかく我々はあのネオデスメタル帝国を叩き潰し、我が新帝国をかつてゾイドクライシス後に真なる帝国として成立した真帝国の復活のために戦うのだ!!」

 

 「は!」

 

 一室にいるエマは、ドクターマイルスの言葉を思い出していた。

 

 「(奴は死んだお前の弟の遺伝子を受け継いだ者! だから、ライガーを扱うことができる!

 奴は現皇帝陛下であるガネスト・ギャラガー殿下を先帝ギャラガー三世陛下の望む継承者にするためのいわばプロトタイプなんだよ!

 お前の両親もそう言って我が帝国に歯向かい、処刑してしまったがね!)」

 

 エマは両手で顔を抱え込み、静かに泣き崩れた。

 

 「私はどうしたらいいの?」

 また別の部屋ではリセルが子供の時、両親と一緒に撮った写真を見つめ、ギャラガー親衛隊に強制収容所に入れられ、脱走した時のことを思い出していた。

 8年前、旧共和国派のレジスタンスに加わっていた12歳のリセルはジェノスピノを操るギャラガー三世率いる親衛隊と交戦していたが、ジェノスピノの圧倒的な力の前に旧共和国軍が壊滅し、旧ネオヘリックシティは制圧され、リセルとその両親は親衛隊の捕虜になり、強制収容所に入れられた。

 そこでリセルと両親は半年間強制収容所で奴隷として酷使され、ゾイドの発掘とパーツのかき集め、兵器ゾイドとして改造するための野生ゾイドの乱獲、軍事基地と工場の建設等、ありとあらゆることをやらされた。

 工場建設で数キロの丸太を運ぶ中、リセルはその重さに耐えられなくなり、倒れてしまう。それを見た帝国軍兵士は、

 

 「おい、そこのガキ! 誰も休めとは許可してないぞ! さっさと働け!!」

 

 そう言って、兵士はリモコンのスイッチを押し、リセルの首に取り付けられている枷から電流が走る。

 

 「グワアァー!!」

 

 電流を受けて苦しむリセル、リセルは力を振り絞るが、身体がついていけず、また倒れてしまう。それを見た兵士は、

 

 「まだ直らんのか! なら、もう一度…、」

 

 その時、リセルの母が現れ、

 

 「止めてください! この子はもう限界なんです!だから許してください。」

 

 しかし、兵士は鞭を持って母に投げつける。鞭を受けて倒れる母、

 

 「お前たちは我が帝国に逆らった反逆者だ! その罰としてお前たちはここにいる! 生き残りたかったら、ここで一生働くんだな!!」

 

 それを聞いたリセルと母を最後の力を振り絞ってしぶしぶ労働に入った。

 それから数カ月後、リセルの父は収容所からの脱走を企て、

 

 「もう、これ以上こんなところにいたら皆死んでしまう! この際、皆で脱出しよう!!」

 

 「でも、そんなことしたら帝国が許さないわ!」

 

 「こんなところで死ぬよりマシだ! 皆準備はいいな!?」

 

 やがて、牢屋に近付いた兵士に父が抑え込み、その鍵を手に入れ、牢屋から出た。収容所に警報が鳴り、親衛隊兵士が出動し、次々と脱走者に向けて銃を発砲した。

 次々と人が倒れる中、リセルは両親と共に入口まで逃げていった。

 しかし、そこに待ち受けていたのは、親衛隊隊長のキル・タッカーとクルエラ・ベケット、ジョセフ・アーミテージだった。タッカーは拳銃を向け、

 

 「直ぐに牢屋に戻れ! 戻れば命は保障してやる。」

 

 リセルの両親はリセルの前に立ち、

 

 「私はどうなっても構いません! だから、息子だけは! 逃がしてください! お願いします!!」

 

 それを聞いたタッカーは、

 

 「ほぉ~! 親子愛という奴か! だが、残念だな!!」

 

 ダン、ダン!!

 

 銃声が鳴り、リセルの両親は倒れてしまった。倒れた両親を見て青ざめるリセル、

 

 「父さん! 母さん!!」

 

 「やれやれ、大人しく帝国に従えば、命は助けてやるのに!」

 

 「う、ウワアァー!!」

 

 怒り狂ったリセルはタッカーの元に走る。しかし、タッカーはリセルを軽く押し倒してしまう。

 

 「全く、しょうがないガキだ! だが、安心しろ! お前も直ぐに親の元に送ってやる。」

 

 そう言って拳銃を向けるタッカー、その時、突然爆発が起き、

 

 「何事だ?」

 

 「大変です! 旧共和国の反乱軍が襲撃してきました!」

 

 「直ぐに軍を出撃して鎮圧しろ!」

 

 その隙にリセルは破壊された扉の方へ走り、収容所を脱出した。それを見たベケットは、

 

 「タッカー大将!ガキが逃げてしまいましたが、どう致しましょう?」

 

 「そうだな。 生かしておくと後々面倒になる! 奴も追え!」

 

 森の茂みに隠れながら、逃げるリセル、しかし、リセルが転んだ隙に親衛隊兵士とディロフォスに取り囲まれた。

 もはやこれまでかという程に死を覚悟したリセルだったが、その時、森の中から、黒い影が現れ、親衛隊兵士とディロフォスを一瞬で蹴散らした。影のゾイドはリセルの前に立った。

 影のゾイドの正体は野生のハンターウルフだった。野生のウルフはリセルをじっと見つめていた。一連のことを思い出したリセルは、

 

 「こうして俺はデルと出会い、賞金稼ぎとして世界各地のゾイドハンターと戦い、帝国軍を強襲して、ネオデスメタル帝国への復讐を果たすために力をつけてきた。

 だが、帝国の勢力は益々増大していた。今では、俺一人では勝てないレベルまで達していた。

 だから、俺は仲間を得てより強力な力を手に入れるために同盟軍に入った。だが、捕虜にした帝国軍に仕打ちを与えず、武装解除させただけにした同盟軍のやり方に納得出来なかった!

 そして、進化したシーザーの姿を見て、あの強大な力を得るために俺は敢えてアルドリッジの誘いに乗り、ユリスには手を出さず、守ることを条件に新帝国に入った!

 だが、あのオメガレックスが現れた以上、もっと力が必要だ! 俺の人生を全て奪った帝国への復讐を果たすために!」

 写真をじっと見詰めて復讐を誓うリセルをユリスは少しドアを開けて悲しそうに見ていた。ユリスはゆっくりとドアを閉め、壁に寄り添い、

 

 「私は何もすることができないの? この戦争を止めることも、リセルを慰めることも、何も…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同盟軍本拠地、司令室にはストームたち同盟軍の重鎮とクライヴたち旧共和国派の重鎮たちが集まり、軍事会議を開いていた。グラッドは旧共和国派たちに、

 

 「さて、いきなりだが、我々は帝国を迎え撃つために早急に手を打たねばならない。」

 

 クライヴはわかったように、

 

 「オメガレックスが復活したことですね!かつて、ゾイドクライシスでジェノスピノと共に猛威を振るった伝説のゾイド!」

 

 「例の荷電粒子砲を放った後、奴は直ぐに撤退していた。あの様子を見ると、オメガレックスは復元直後で万全の状態ではなかったため、一発しか撃てなかったようだが、奴は敢えてその一発でその力を見せつける狙いもあったようだ。」

 

 「とすると、帝国はオメガレックスを万全の状態にするため、最終調整を行っているはず! 直ぐに手を打たなければ!!」

 

 「だが、あの帝国なら既にオメガレックスの最終調整は行っている! おそらく、今、俺たちが会議している間に終わっているだろう。

 だから、我々はオメガレックスに対抗するための戦力を整えなければならない!!」

 

 「ところで、新帝国の件は一体どうなっているのだ?」

 

 「残念ながら、新帝国は俺たちと決別した! だから、ネオデスメタル帝国は俺たち同盟軍と旧共和国派で迎え撃つしかない!!」

 

 「とはいえ、今の我々にあの荷電粒子砲を持つオメガレックスを迎え撃つ手段はあるのか? それに本来この時代に存在しないジャミンガや謎のゾイドも現れたと聞いたし。」

 

 「それについては以前、工作員であるジョンが一体のジャミンガを捕獲して調べてみた。

 調査したところ、あのジャミンガはかつて過去のゾイドクライシス後に発生したジャミンガみたいに自然発生したものではなく、人工的に作られたものだと判明した。」

 

 それを聞いたクライヴや旧共和国派たちは驚愕した。

 

 「俺たちを襲ったジャミンガに付いていた錆びは自然のものではあったものの、所々の箇所にアーマーを剥がされた跡や乱獲の際につけられた傷、更にゾイドコアが抜き取られていて、その跡も確認された。

 つまりあのジャミンガは捕獲した野生のラプトールからアーマーとゾイドコアを剥がし、あたかもジャミンガが現代に復活したかのように見せ掛けたものだということだ!

 更にスミスの調査によると、無数に現れたジャミンガの内、何体かは本物だが、残りは幻影か映像で見せたもので、あたかも無数に現れたかのように演出していたことも明らかになった。」

 

 「まさか、そんなことが…。しかし、そんなことして一体何になるというのだ?」

 

 「かつて、初めてゾイドが地球に来たのと同時に地球を壊滅させたゾイドクライシスが再来したかのように思わせて俺たちに恐怖心を植え付ける狙いがあったのだろう。ネオデスメタルは旧デスメタル同様、過去の遺物はかなり知り尽くしているからな!」

 それを聞いたケンは拳を握りしめ、

 

 「それにしても、人々はおろか、なんの罪もない野生のゾイドたちまで自分勝手に乱獲し、兵器改造するだけでなく、そんなことまで利用するとは…!」

 

 「それがネオデスメタル帝国のやり方だ! ゾイドだろうが、人間だろうが、利用出来るものは徹底的に利用する、それが奴らのやり方だ!」

 

 「それに、ジャミンガの他に君たち同盟軍が戦った謎のゾイドも警戒が必要だな!」

 

 「あれの正体は未だ不明だが、ただ1つ言えることはあれもオメガレックス同様、まだ復元直後で本調子ではなかったため、ストームの機転で倒すことが出来たが、次はそうはいかないだろう。

 だが、今はオメガレックスに対抗する処置を取らなくてはいかない!」

 

 「しかし、一体どうやって?」

 

 「オメガレックスの一番危険なのはあの荷電粒子砲だ! あれを抑えれば俺たちにある程度の勝機は訪れる。」

 

 「つまりどうやって?」

 

 「奴を不利な場所に引きずり込む!」

 

 クライヴたち旧共和国派がその言葉に疑問を持つ中、ネオデスメタル帝国の帝都メガロポリスの宮殿のある一室では新たなスーツを着用するために待たされ、上半身裸の状態で待っていた。

 その時の彼の左腕は肩まで機械化されていた。そこにドクターマイルスが現れ、

 

 「よいか、お前は皇帝ギャラガー四世陛下の影の皇子として生まれ、ガネスト殿下を皇帝にするために今までそうやって育ててきた! 

 だが、悲しむことはない。私はお前に千載一遇のチャンスを与え、使い物にならなくなった左腕を切り落として新たに強力な左腕も与え、お前は今や、帝国皇子アーネスト・ギャラガーではなく、偉大なる皇帝陛下をお守りする影の存在ダークマスターに生まれ変わったのだ!

 お前があのライガーを倒せば、お前の存在は帝国で認めてもらえ、お前の父上も喜んでくれるだろう。」

 

 レイルは無表情で、

 

 「わかりました…。」

 

 「それでいい!」

 

 ドクターマイルスは部屋を出て、宮殿の地下室に入った。そこには特殊なスーツを着た研究員と機械兵が使えなくなって投棄したゾイドや乱獲した野生ゾイドから抜き取ったゾイドコアをZGが入れられている巨大カプセルに供給していた。巨大カプセルとコードで接続している後ろ向きの玉座に座っている人物はドクターマイルスに、

 

 「リジェネレーションキューブを起動させて更にオメガレックスを完成させたようだな!」

 

 「はい、これで我が帝国の計画に一歩近づきました! 後は端末から得た情報でZG完成のためのオーパーツをかき集めるだけです!」

 

 「フフフ、これで私と一体化しているZGも喜ぶだろう。そして、かつて帝王ギャラガー一世がオリジナルキーでデスレックスの真の力を引き出したが、憎きフリーダム団の邪魔で叶わなかったデスレックスの真の形態も覚醒する!

 フフフフ、ハハハハハ、ハーハッハッハッハ!!」

 

 謎の人物の高笑いと共に、玉座の前で目を赤く発光させ、ジャミンガと投棄され、ゾイドコアを抜き取られた帝国の兵器ゾイドと野生ゾイドをむさぼり食うデスレックスの姿があった。

 

 バリッバリ、バリボリ、バリボリ!

 

 ギュオオォー!!

 

 デスレックスの咆哮が地下室内に響きわたる。 帝都のある牢獄ではカティアが牢屋に入れられ、牢屋、中でカティアは自分のところに来る兵士を待ち構えていた。兵士が近くに来たその瞬間、カティアは兵士を鷲掴みにし、兵士の首を絞めて気絶させ、兵士の持っていた鍵を手に入れ、牢屋から出た。

 カティアは兵士から装甲服を剥がして代わりにその兵士を牢屋に入れ、少し装甲服に細工をして着用し、そのまま出た。

 

 「待ってて、エマ、ユリスさん! 必ず私が助けるわ!」

 

 帝都メガロポリスの宮殿内ではオメガレックスの最終調整が行われ、それをタッカー元帥が見ていた。

 

 「オメガレックスの力を世界中に見せ付けることが出来れば、おろかな反乱軍は我がネオデスメタル帝国にひれ伏す。」

 

 そこにドクターマイルスが現れ、

 

 「オメガレックスの最終調整はまもなく終わります。後は荷電粒子砲の最終テストのみです!」

 

 「実験台となる場所は決まっているのか?」

 

 「はい、南方方面の新帝国派の都市バラッツです。あそこは大都市ではありますが、辺境の地にあり、あまり目立ちませんから、実験対象にはうってつけです!」

 

 「そうか、ところで、ジェノスピノはまだ見つからんのか?」

 

 「捜索隊も草の芽分けて捜していますが、中々…。」

 

 「オメガレックスが完成したとしても、あのジェノスピノが反乱軍の手に渡ったら、後々面倒になる。引き続き、捜索をするよう、命じろ!」

 

 「はい、ところで、陛下は?」

 

 「陛下は只今御入浴中だ! 陛下はオメガレックスに乗ることを何よりの楽しみとしているのだからな。」

 

 「御入浴後が最高のショーの始まりとなられますね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南方の都市グスタフ、南方総督にして四天王の1人であるアッカーマン中将の乗るナックルコングMk-Ⅱとコナー少佐の乗るステゴゼーゲMk-Ⅱの率いる帝国軍が新帝国の派閥と交戦していた。 僅か数分で新帝国の派閥は一気に制圧された。

 

 「思ったより圧勝でしたね!中将。 マシンブラストを使うまでもありませんでした。」

 

 「新帝国は過去の真帝国時代の旧式を使用しているからな。最新技術で改良された我がネオデスメタル帝国の新型の敵ではない!」

 

 「ここにカーター大佐もいてくれたらよかったんですが…」

 

 「大佐は1人でスナイプテラに乗って偵察に向かったそうだが、おそらく、1人娘のカティアを亡くしたショックが大きく、戦線に出れなかったんだろう。」

 

 「それにしても、大佐のキャノンブルも出撃させたそうですが、一体あれには誰が乗っているんですか?」

 

 「あれは無人だ!そもそもあのキャノンブルは大佐が初めて帝国軍に入隊して将校になった時に私が与えたもので、彼以外にあのキャノンブルを扱えるものはいないからな。

 それに大佐はほとんどスナイプテラで出撃していることが多いから、あのキャノンブルにも仕事を与えないとな! もちろん、万が一暴走した場合のことを考えて遠隔操作機能と制御装置も取り付けているからな。」

 

 その時、煙が晴れた目の前にガトリングを付けたナックルコングが現れた。

 

 「中将! まだ生き残りがいるそうです。私が奴を倒します!」

 

 「いや、待て!」

 

 目の前のナックルコングから通信が出た。それを見たアッカーマン中将は、

 

 「攻撃の意思はないだと…! 全軍、砲撃止め!! あのナックルコングとライダーは捕虜にする。」

 

 グスタフの帝国軍基地の一室で、捕虜になったシュバルツ中佐はアッカーマン中将、コナー少佐と対面した。アッカーマン中将はシュバルツ中佐に、

 

 「私はネオデスメタル帝国軍南方部隊所属アッカーマン中将、そして彼は私の部下のコナー少佐だ。 さて、君の名前と目的を聞かせてもらおうか!」

 

 シュバルツ中佐は口を開き、

 

 「新帝国軍第二部隊所属シュバルツ中佐です。帝国の四天王の異名を持つ貴方にお願いがあって来ました!」

 

 「ほぅ…、で、その願いは?」

 

 「あなた方ネオデスメタル帝国と我々新帝国との停戦協定を結ぶことは出来ないでしょうか?」

 

 「これは驚いた!君は新帝国の一員ではないのか!?」

 

 「確かにそうですが…、我々新帝国があなた方ネオデスメタル帝国に勝てる勝算は一つもない!それにこのままでは新帝国は壊滅してしまう。もちろんこれ以上の戦いは望まない!」

 

 「つまり、私のコネで帝国を動かして欲しいと?」

 

 「回りくどいかもしれませんが、あなたの力を見込んでのことです。あなたはネオデスメタルの中でも人情に厚いお方と聞いています。」

 

 「それは無理だ!!」

 

 「な、何故です!?」

 

 「確かに私もこれ以上、血を流す戦いはしたくない。だが、そもそもこの鎮圧命令は本国の皇帝陛下と元帥閣下のご命令なのだ。

 我々ネオデスメタルにとって、皇帝陛下のご命令は絶対なのだ。もし、その意向に背けば、反逆者とみなされ、処刑、よくて更迭されるだろう。いくら帝国の4分の1を支配する総督の私でもどうにもならん。」

 

 「で、ですが…、」

 

 「しかし、わからんのは君だ! 私にとっては新帝国は過去の真帝国同様、何の政治的影響力を持たん小娘を皇帝にして世界を混乱させた反乱軍なのだぞ!

 何故、君程の男があの反乱軍にいるのだ? 我がネオデスメタルに入れば優秀な軍人になれるのに!」

 

 「母が違いますが、新帝国のアルドリッジ大佐は私の兄なんです! 私は兄の意向に従って新帝国に入りましたので、新帝国を裏切ることは出来ません!」

 

 「なるほど、兄弟の関係か! よし、わかった!私も出来る限りの努力はしよう!」

 

 「ほ、本当ですか!」

 

 「ただし、その代わり君は私の元で働いてくれないかね?」

 

 「そ、それはどういう意味ですか?」

 

 「言葉通りだよ! 君がどれ程の実力を持っているのかを! コナー少佐、帝都の元帥閣下に制圧は完了したと言って、彼の存在は隠蔽してくれないか。」

 

 「しかし、大丈夫なのですか? もしこのことが知られたら、反逆罪になりかねません!」

 

 「君の実力を見込んでのことだ! やってくれるね?」

 

 「了解しました!」

 

 コナー少佐は部屋を出て、

 

 「ありがたいことですが、何故そこまでのことを?」

 

 「人目で見た時、私は君はただ者じゃないってことはわかったよ。 まるで第二のカーター大佐のようだと!

 それに、この帝国ではコネで人を動かそう等と考えないことだ! それに私は元々ただの農民だった。」

 

 それを聞いたシュバルツ中佐は驚いた。

 

 「私はへんぴな地の村の貧しい農家に生まれた。ボロボロの家で、食べるもの等、雑草ぐらいで、ただひたすら農業に専念するだけだった。

 しかし、ある時、悪どい地主に土地を全て奪われ、両親はまだ小さかった私を売る程にまで考えた。そんなとき、ネオデスメタル帝国軍が現れ、へんぴな地の村でも総督が演説した。

 その内容は私のような貧しい者でも帝国軍に入隊すればその実力で出世は保障されるものだった。両親は全く信じなかったが、私はこの生活から抜け出すために両親の反対を押しきって、帝国軍に入隊した。

 入隊して見たら、周りの者は皆、私と同じみすぼらしい服着た者たばかりで、上品なものは1人もいなかった。聞いてみたら、入隊者は皆、農民や奴隷、労働者出身だった。帝国の言っていたことは嘘じゃなかった。ただ、最初の寮生活では、喧嘩が絶えないこともあったが、同身分であったため、嫉妬や妬みなんてなかったし、皆、低身分のため競争心も強く、いつも競い合える仲になった。

 そして、私は帝国のために銃撃、剣術、格闘、ゾイドの搭乗、ありとあらゆる訓練を受けてそれに耐えてきた。 

 最初はコクピットの付いたゾイドに乗らず、コクピットがない小さなサイズの野生のラプトールに騎乗し、そのラプトールを完全にものに出来るようになるまで操り、デスブラストして戦闘を行ったりする等、ワイルドブラストの衝撃に耐えられるようになるための訓練を受け、遂にはキャノンブルやナックルコングの搭乗も可能になり、やがてその実力を元帥閣下や先帝陛下に認められ、今の地位を得た。皇帝陛下は私のようなみすぼらしい身分の者でも手を差し伸べてくれた偉大なお方だ! あの方を裏切ることは出来ない!

 今や、ネオデスメタル帝国は私にとって人生全てであり、新たな故郷だった! この帝国にはコネで出世した者なんて1人もいないのさ!」

 

 それを聞いたシュバルツ中佐はどこか近しい雰囲気を感じた。そして、都市グスタフから数キロ離れた場所にカーター大佐の乗るスナイプテラが航行していた。

 

 「どうやら、ここら辺には反乱軍はいなさそうだな! ん?」

 

 カーター大佐が見つけたその先にはネオデスメタルのエンブレムの付いた巨大な航空母艦があった。

 

 「あれは、ネオデスメタルの航空母艦、しかし何故こんなところに?」

 

 スナイプテラは航空母艦のところに行き、航空母艦は山の頂上に離陸し、スナイプテラも近くの山に降りた。航空母艦は砲身のようなものを伸ばし、向こうの都市のバラッツに真っ直ぐ向け、先端のハッチが開いた。中にはオメガレックスがいた。

 

 「あれはオメガレックス! 一体何をするというのだ? まさか!!」

 

 ハッチが開いた瞬間、オメガレックスは都市バラッツに向けてマシンブラストの態勢を取った。

 母艦の司令室でその様子を見ているドクターマイルスとタッカー元帥は、

 

 「いよいよ、オメガレックスの最終テストが始まる。だが、もしオメガレックスの力が予想以上だったら、ドクターが復元しようとしているZGがお蔵入りになるということになるということになるが!」

 

 「いえ、ZGはそれよりもっと衝撃的な力を披露することになります! いずれ完成した暁には驚かれるでしょう!」

 

 司令室の兵士は通信で、

 

 「皇帝陛下! 準備は整いました。いつでも大丈夫です。」

 

 オメガレックスのコクピットにいるガネストは、

 

 「いよいよだね! さあ、行くよ、オメガレックス! 

 制御トリガー解除、オメガレックス! 兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストしたオメガレックスはバラッツの方に狙いを定め、横の収束シールドが前に出て、オメガレックスの口内が緑色に発光した。

 

 「オメガレックス、マシンブラスト発動! 荷電粒子砲発射までカウントダウン入ります。

 荷電粒子砲発射まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0! 荷電粒子砲発射!!」

 

 オメガレックスの荷電粒子ビームがバラッツに向けて発射された。

 

 バラッツで買い物をしている子供と母親は、

 

 「あ!ねえ、お母さん! あれ、何?」

 

 「え…、あれって…!」

 

 荷電粒子ビームが都市に直撃し、ビル街は次々と破壊され、人々はその爆風に吹き飛ばされ、大国の首都に相当する広大な都市は一瞬にして爆風に飲み込まれた。司令室の兵士は、

 

 「ドクター、元帥閣下! 荷電粒子砲の最終テスト成功しました!」

 それを聞いて、笑みを浮かべるドクターマイルスとタッカー元帥、そして、周りの研究員は拍手喝采した。近くの山でその様子を見たカーター大佐は青ざめた表情をし、

 

 「…そんな…、我がネオデスメタル帝国が…一般市民関係なく大規模な無差別攻撃を…!」

 

 荷電粒子砲の威力を見たガネストは、

 

 「これが、オメガレックスの荷電粒子砲! 素晴らしいね…、今でも殺意がぐんぐん伝わって来るよ!!

 これからもボクを楽しませてね…。オメガレックス! フフフ、ハー、ハッハッハッハ!!」

 

 ガネストの笑い声が荷電粒子砲で一面焼け野原になった都市バラッツにまで響いた。

 

 To be continued




 次回予告

 オメガレックスの荷電粒子砲の最終調整のために新帝国に属する都市バラッツを荷電粒子砲で壊滅し、その力を世界中に知らしめたネオデスメタル帝国は全土に大攻勢をかけ、皇帝ギャラガー四世ことガネストが自らオメガレックスに乗って軍の指揮を取り、反乱軍の制圧に向かった。
 しかし、オメガレックスには飛行ユニットが装備された爆撃機型に改造され、空中から荷電粒子砲を放つ作戦に入ってしまう。
 ウィルはエマのためにレイルを帝国から取り戻すためにダークライガーの元に向かい、ストームとグラッドたちは飛行ユニットを装備した爆撃機型オメガレックスを迎え撃つための作戦に出るが、オメガレックスには親衛隊専用として強化改造されたキルサイスG4とスナイプテラG4がオメガレックスの防衛に入り、同盟軍の飛行ゾイドの戦力では到底歯が立たない。
 しかし、その時、オメガレックスを迎え撃つ重要な役にグラッドはクリスに任命した。果たして、その作戦とは!?

 次回「暗黒の破壊要塞」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!!

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