ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のゾイドチームのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていたのであった。


第35話「決着、ダークライガー」

 西方方面の辺境の地に親衛隊のクワーガG3、スナイプテラG3、キルサイスG3が到着し、ファイナルマッドオクテットで機能停止したジェノスピノとデルの回収に向かった。

 

 その様子を見たデーニッツ中将とドクターマイルスは、

 

 「これで、ジェノスピノは再び我が帝国の元に渡ったことになったが、もし、あの遺体が先帝陛下のものだったら…」

 

 「デーニッツ中将、その心配はありません! 仮にあの遺体が先帝陛下だとしても、陛下は不滅なのですからね!」

 

 「ん?」

 

 それを聞いたデーニッツ中将は少し引っ掛かるような表情をした。

 

 「よし、そのままジェノスピノを護送しろ!」

 

 スナイプテラG3、キルサイスG、クワーガG3隊がジェノスピノを引き上げようとしたその時、突然爆発があり、上空から同盟軍のクワーガ、クワガノス、カブター隊が攻撃してきた。

 

 「くそ、反乱軍がもう来たか! ディメパルサー、ディロフォス、キルサイス、キャノンブル、バズートル隊、ジェノスピノを援護せよ!」

 

 キャノンブル、バズートル、キルサイス隊が砲撃する中、突然、キルサイスが次々と撃ち抜かれていく。そこに現れたのはレックスだった。

 

 「悪いが、帝国軍よ。 ジェノスピノは回収させねぇぜ!!」

 

 「ち! タイミングがちょっと悪かったようだが、デーニッツ中将! 我々の目的はあくまでジェノスピノの回収だ。連中は足止めする程度でいい!」

 

 その時、森からアレックスのウィーリー、アッシュのバンプ、そして、スレイマーズのグリードのラプトリア、ガンマのクワーガ、スティルのラプトール、ボルグのスコーピアも現れた。

 ウィーリーとバンプはワイルドブラスト技でキルサイス、ディロフォスを蹴散らしながら進み、スレイマーズたちのゾイドはキャノンブル、バズートル隊と交戦した。

 スレイマーズのゾイドはどれも小型ゾイドだが、グリードのラプトリアは3体のキャノンブル相手でもその身軽さでキャノンブルの攻撃を避けながら、キャノンブルを翻弄し、スティルのラプトール、ボルグのスコーピア、ガンマのクワーガも装備した武器とワイルドブラスト技を駆使せながらキャノンブル、バズートル隊と互角に渡り合っていた。

 ウィーリーとバンプはデーニッツ中将のディメパルサーMk-Ⅱにまで来たが、ディメパルサーは咄嗟にマッドオクテットによる電磁波のバリアを張り、ウィーリーとバンプの攻撃を凌いだ。

 しかし、その間にもジェノスピノ回収準備は着々と進み、遂に引き揚げる程にまでいった。グラッドは引き揚げようとするスナイプテラG4とキルサイスG4を狙い撃とうとするが、背後から光学迷彩で姿を隠したキルサイスが襲いかかり、ジェノスピノ回収を許してしまう。

 

 「しまった!」

 

 「任務は完了した。デーニッツ中将! 撤退するぞ!」

 

 ジェノスピノの引き揚げが完了し、ドクターマイルスとデーニッツ中将の部隊が撤退していった。グラッドは悔しそうに、

 

 「くそ、後少しだったのに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェノスピノとファイナルマッドオクテットで洗脳されたリセルとデルを回収したドクターマイルスとデーニッツ中将は帝都メガロポリスに帰還していた。宮殿内では、

 

 「よくやったぞ。デーニッツ中将!ジェノスピノを回収しただけでなく、新帝国の反乱軍で特に厄介なハンターウルフまで洗脳して手土産に持って来るとはな! 流石だ!」

 

 「恐れ入ります。元帥閣下! ところで、オメガレックス捜索に当たっているグレッゲル准将からの報告は?」

 

 「未だ、捜索に手こずっているとのことだ!何せ、南極のブリザードが更に増しているそうでな!

 後、ドクターマイルスが回収したジェノスピノの修理と南極で回収した例のZFのゾイド因子分析を基にZG復元に着手していてな。代わりにZG完成のためのオーパーツ捜索に行ってくれないかと頼まれてな!

 もちろん、そのオーパーツを捜すための高性能な発信器を渡し、親衛隊仕様のディメパルサーG3、ディロフォスG3やあのダークライガーも護衛としてつかせると言っているので頼めるかな?」

 

 「ええ、もちろん構いません。」

 

 「では、デーニッツ中将! お前はZGのオーパーツ捜索を命じる!」

 

 「は!」

 

 宮殿の地下室では、ドクターマイルスがジェノスピノ修理と南極で回収したZFの分析を行っていた。

 

 「素晴らしい! 既に数千万年前のものにも関わらず、石化せず、ここまで保存状態がいいとは! これで完全なZFが完成し、ZGの完成も直ぐそこだ!

 ところで、ジェノスピノがデスロッキーに沈んだ後、あの肉体を腐食させたのは良い選択だったのでしょうか?」

 

 ドクターマイルスはZGが入っている巨大カプセルとゾイドを貪り食うデスレックスの横にある後ろ向きの玉座に座っている人に問いた。

 

 「それも計画通りだ。いずれにせよ、あの肉体はガネストを新たなネオデスメタル帝国皇帝に添え、デスレックスを真の姿に覚醒させるために不要になる予定だったからな。」

 

 「公式にはどう報告させましょうか? 仮に先帝陛下じゃないと言ってもそう簡単に信じる国民もいないでしょうし…。」

 

 「死んだことにしとけ! 帝国はガネストに任せればいい! そしてデスレックスが真の姿に覚醒し、ZGが完全体になったその時にこの私は人間、ゾイド、全宇宙に存在する全ての生命体の頂点に君臨する完全生命体即ち神となる!

 かつて惑星Ziで果たせなかった私の野望が遂に叶うのだ!」

 

 ネオデスメタル帝国兵士の装甲服を着用して遂にカティアはベティ、レナのいる倉庫に来たが、ベティ、レナはバイザーを取り付けられ、周囲は多数の兵士が警戒していた。

 

 「警備はかなり厳重ね。 兵士を蹴散らしてベティとレナと一緒に抜け出すことは出来なくはないけど、ここは帝都のど真ん中、あんまり派手なことはできないわ。」

 その時、見回りをしている兵士に1人の将校が現れ、

 「デーニッツ中将が出撃する! 引き続き、警戒体勢を取れ!」

 その様子を見たカティアは真っ先にその将校の前に現れ、

 

 「すみません!大尉! デーニッツ中将からそのラプトールとディメパルサーも出撃するとの命令が出ましたので…」

 

 「何? それは聞いていなかったが、貴様、コード名は?」

 

 「コード301です!」

 

 「確かにデーニッツ中将の部隊所属のものだ。よし、出撃を許可する!」

 

 「ありがとうございます! (まさか、奪った装甲服のコード名がちょうどデーニッツ中将のものだとはおもわなかったわ! これで、帝都から出られるわね)」

 

 カティアはベティのコクピットに乗り、

 

 「ベティ、レナ、暫くの間、バイザーは付けたままになるけど、我慢してね。 終わったら、必ず外してあげるから。」

 

 デーニッツ中将が出撃の準備をする中、ドクターマイルスは小型のキューブを手渡し、

 

 「これは?」

 

 「オリジナルのリジェネレーションキューブを元に作った小型リジェネレーションキューブだ! そいつを使えば、僅かで微弱なゾイド因子にも反応し、瞬時にその場所を特定できる。

 それと、こいつをディメパルサートランスに取り付けておけ!」

 

 「これは?」

 

 「ダークマスターが万が一の場合、反乱軍の軍門に下った時、強制的にマシンブラストさせ、ダークマスターを完全なダークライガーの支配下に置くための装置だ!

 特にディメパルサートランスに取り付ければ、本領を発揮する。今までは必要なかったが、あのライジングライガーがもしパワーアップした場合のことを想定して開発したものだ。 デーニッツ中将! 御隠れになった先帝陛下のご意志を継ぐために頼む!!」

 

 「元よりそのつもりだ! 先帝陛下とこの帝国のために私はここまで尽くしてきたのだからな!」

 

 「それを聞いて安心したよ!」

 

 「では、全軍出撃する!!」

 

 デーニッツ中将はディメパルサートランスに乗り、ダークライガーと自身の西方部隊、親衛隊を連れて宮殿を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラッドたちは同盟軍本拠地に戻り、事の状況をストームたちに報告した。

 

 「そうか、ジェノスピノは再び帝国の手中に入ったか。オマケにリセルまで…。」

 

 「すまない。もっと早く着いていれば、こんなことにならなかった。」

 

 「グラッドたちは悪くない。とはいえ、オメガレックスを封じたこの状況にジェノスピノが復活するのは不味い! ましてやあのダークライガーまでいたら、手に負えなくなる。」

 

 「だが、ジェノスピノは無傷ではなかったから、早々に出撃することはないだろう。」

 

 「ああ、そうだな。となると、まずはあのダークライガーを倒すことが先だ!」

 

 「そうじゃ! そこでこの天才科学者ドクタースミスが改造した新世シーザーの出番じゃ!!」

 

 「だが、ダークライガーの所在がわからない以上、動きようがないが…」

 

 そこにジョンが現れ、

 

 「リーダー! ダークライガーの所在がわかりました!」

 

 「どこだ?」

 

 「西方と東方の境にある密林地帯にデーニッツ中将の率いる西方部隊と親衛隊と共にいることが確認されました!」

 

 「何! 俺たちの制圧じゃないのか?」

 

 「詳しいことはわかりませんが…」

 

 「まあ、とにかく奴の所在がわかればこっちのもんだ! よし、今度は俺が指揮を取る! グラッド、基地のことは任せる。 ウィル! アレックス、アッシュ、スレイマーズは俺に付いてこい!」

 

 「はい!」

 

 「ジョン! お前はユリスとエマの護衛を! 大切な皇帝陛下と侍女を守るんだぞ!!」

 

 「了解しました! リーダー!」

 

 「よし、全軍出撃する!」

 

 ストームのキングと共に出撃するウィルとシーザーを見て、エマは心配そうな表情をしていた。

 

 「ウィル……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西方、東方の境にある密林地帯に西方部隊と親衛隊が集結し、レイルはダークライガーのコクピットで大人しくし、キャタルガG3に乗っていた研究者が小型リジェネレーションキューブを持っているデーニッツ中将の後ろについていき、その反応を元に歩いて行った。

 歩き続ける中、古代の遺跡に辿り着いた。研究者が驚く中、デーニッツ中将は、

 

 「なるほど、ここはゾイドクライシス以前の遺跡に運良く残っていた遺跡か! おそらく、ZGが地球に来た際に拡散したゾイド因子がここに来て守ったということか。

 だが、かつての地球の技術がZGから来たということも満更嘘ではなかったみたいだな! 直ぐにここを掘り出せ!」

 

 デーニッツ中将の命令を受け、兵士たちは遺跡の中を掘り進んで行った。

 密林地帯に着いたストーム率いる同盟軍はデーニッツ中将率いる帝国軍の様子を探るべく、アッシュとスレイマーズのガンマが選ばれ、アッシュは相棒のバンプと共に地上で様子を見、ガンマは親衛隊のキルサイスG4に見えないように相棒のクワーガと共に空中でその様子を偵察し、ダークライガーとそのコクピット内でマスクを取ったレイルの様子も見た。

 アッシュとガンマは直ぐ様その場を離れ、ストームたち同盟軍が陣取っている場所に戻った。

 

 「どうだった?」

 

 「あれは間違いなく、反乱組織の制圧じゃなく、何かの調査かあるゾイドの発掘ですね! 周囲にキャタルガや研究者、作業員も多く見られました。

 ただ、ただのゾイドの調査と発掘にしては軍の規模が大きすぎる気もします!」

 

 「そうか、となると、帝国にとっては何かの機密事項ってことだな。一体何を? まさか、例のZGか!

 とにかく、阻止する必要がある! 後、ガンマ! ダークライガーの様子はどうだった?」

 

 「ええ、ただ、周囲のゾイド同様に大人しくしていましたよ! 後、ライダーがマスクを取っていたところも見ましたよ! 

 

 ピンク色の髪していて、エマちゃんに次ぐぐらい可愛かったすよ!!」

 

 ガンマの言葉にアレックスが反応し、

 

 「何? 女の子か!? 俺にも紹介してくれよ!!」

 

 アッシュが二人に突っ込みを入れ、

 

 「可愛いって! お前ら、あいつ男だぞ! しかも帝国の皇子!!」

 

 「ええ! マジか!?」

 

 「元帝国皇子アーネスト・ギャラガー、いや、レイルのことだな。だが、今はダークマスターと名乗っているがな。」

 

 「そういえば、リーダー! 他にも緑のラプトールと青色のディメパルサーも見かけました!」

 

 「エマの友人の相棒のラプトールとユリスの相棒のディメパルサーも?しかし、何でそいつらまで? まあ、とにかく奴らを仕留めなければ! ウィル! お前は…」

 

 ストームが振り向いた時、ウィルの姿はなく、既にシーザーが森の中を走って行った。

 

 「おい、ウィル! たく、しょうがねぇ、ガキだ! 仕方ない。俺たちも行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同盟軍基地では、エマがゾイドのいる倉庫に入り、落ち込んだようにしているギルラプターエンペラーを見た。

 

 「ギルラプター…」

 

 ギルラプターはエマを見つめた。エマはギルラプターにそっと寄り添い、

 

 「そうね、私もレイルを助けたい! 一緒に行きましょう!!」

 

 その時、基地内に警報が鳴り、ジョンとユリスが来た時にはエマがギルラプターエンペラーに乗って基地から出てしまっていた。

 

 「エマはきっと自分の手でレイルを助けに行こうとしたんだわ! お願い! パーカーさん、私も連れて行ってください!」

 

 「え、う~ん…(こりゃ、帰ったら、コマンダーにこっぴどく叱られるな!)」

 

 ウィルとシーザーは密林地帯を走り、遂にデーニッツ中将率いる帝国軍の前に現れてしまった。

 レイルはマスクを着用し、直ぐ様、ダークライガーのコクピットに乗った。

 キルサイスG4、ディロフォスG4が一斉にシーザーに襲いかかったが、シーザーは以前よりも速いスピードを出し、一瞬で蹴散らした。

 それを見たダークライガーはマシンブラストし、

 

 「ダークバーストブレイク!!」

 

 ダークライガーのマシンブラスト技がシーザーに炸裂したが、しかし、シーザーはものともしないどころか、何とシーザーの正面にシールドが現れ、ダークライガーの攻撃を防いだ。騒ぎを聞き付けて現れたデーニッツ中将はその姿を見て、

 

 「あれは、まさか、Eシールドか!?」

 

 「ぐぐぐ…」

 

 「そ、これがシーザーの新たな力! レイル、お前を正気に戻すための力だー!!」

 

 シーザーはEシールドを張りながらダークライガーをぶっ飛ばした。

 

 「あのライジングライガー、Eシールドを搭載してパワーアップしているとは! これは予想外だな! お前たちは引き続き発掘作業に専念しろ! 

 私はディメパルサートランスに乗って奴を迎え撃つ。キャノンブル、バズートル隊、撃てぇ!!」

 

 ディメパルサートランスに乗ったデーニッツ中将の命令でキャノンブル、バズートル隊が一斉に砲撃したが、シーザーはEシールドでその全ての攻撃を防いだ。

 

 「なるほど、流石は荷電粒子砲に耐えられる最強の盾Eシールドだ。なら、尚更直ぐに排除しなくてはな!」

 

 密林でその様子を見たストームたちは、

 

 「リーダー! もしかして我々出なくても大丈夫なんじゃないですか?」

 

 「そうだな。下手に出たら、デーニッツの思い壺になるし、それにウィルのためにならないだろうから、とにかく俺たちはしばらく様子を見よう。」

 

 「ウォー!」

 

 怒り狂ったレイルはそのままダークライガーで突っ込んで行き、シーザーはすかさずEシールドで防ぐ。

 

 「レイル、俺だ! ウィルだ! お前は帝国にいるべきじゃない! 目を覚ますんだ!!」

 

 しかし、レイルは聞く耳を持たず、そのままダークバーストブレイクでシーザーのEシールドを無理やりこじあけようとする。

 

 「無駄だ! そいつはドクターマイルスによって最早我が帝国に忠実な殺戮マシーンとなっている。貴様の言葉等、届くわけがない。」

 

 ダークライガーのチタンブレードがEシールドで徐々に溶解しながらもEシールドを破ろうとするダークライガー、

 

 「レイル、お前、ホントに帝国の操り人形になっちまったのか!?」

 

 「ヒャハハハハ! 今度こそ、死ねぇ~!!」

 

 その時、密林から謎の影が現れ、ダークライガーに突進した。現れたのはなんとギルラプターエンペラーだった、そして、そのコクピットにはエマが乗っていた。

 

 「な、何! ギルラプターだと!?」

 

 「エマ、どうしてここに?」

 

 「ギルラプターがレイルを救いたいからギルラプターの気持ちに応えて来たの。それに私もあなたの力になってレイルを救いたい!

 レイル! 私よ! エマよ!! お願い、目を覚まして!!」

 

 ギルラプターエンペラーを見たレイルは頭を抱え、

 

 「うう、うぅ…ウォー!!」

 

 「危ない!」

 

 ギルラプターに攻撃しようとするダークライガーに突進するシーザー、そして、同時に帝国軍から緑のラプトールが現れ、ダークライガーを押さえつけた。

 

 「殿下、目を覚ましてください!」

 

 「カティア!」

 

 「あれは、ベティか!?」

 

 と同時にキールが現れ、バイザー付きのレナの背中に張り付き、キールのコクピットから降りたユリスがすかさずレナのコクピットに乗り、

 

 「ありがとう! パーカーさん。 行くよ、レナ! ワイルドブラストー! マッドオクテット!!」

 ワイルドブラストしたレナのマッドオクテットが帝国軍全てのゾイドに降りかかるが、デーニッツ中将はため息をつき、

 

 「はぁ~あ。」

 

 と同時にベティとレナがキルサイスG4に取り押さえられた。そして、ベティを押さえているキルサイスG4には、

 

 「久しいな。ギレル少尉!」

 

 「その声はもしかして、ナッシュ!?」

 

 「その通り、私は皇帝ギャラガー四世陛下に認められ、遂にギャラガー親衛隊に入隊し、今や親衛隊大尉になった!

 そして、皇帝陛下からこのキルサイスを与えられ、ここまで来たのだ! それにしても帝国の反逆者になるとは、随分堕ちたものだな! だが、せめてもの情けだ。栄光なる親衛隊にしてお前の友人である俺が貴様を排除する!」

 

 デーニッツ中将はウィルやカティアたちに向かって、

 

 「ギレル少尉! 貴様が我が軍に紛れ込むことは最初から見抜いていたよ、というか、貴様らをまとめて始末するために敢えてそうしたのだがな!

 ドクターマイルスはメルビルのディメパルサーを帝国軍のゾイドとして何かに利用できるのではと調査していたが、あの時、我が軍を無力化させたマッドオクテットはメルビルがいないと発動できないため、役に立たない消耗品として処分するつもりだった。

 だが、万が一またあのマッドオクテットを喰らわれたら厄介なので、そのディメパルサーのマッドオクテットが通用しないように電磁波対策をしておいた。もうそのマッドオクテットは通用しない。

 さて、これでネズミは捕らえた。 後はあの厄介なライジングライガーを始末して貴様らをまとめて掃除してやる! ダークライガー! ライジングライガーを始末しろ!!」

 

 しかし、ダークライガーは動きを見せない。

 

 「どうした? 何をしている!」

 

 ダークライガーに乗っているレイルはギルラプターエンペラーとエマを見て、頭を抱えながら苦しんでいた。

 

 「何だ? 何故、僕の記憶にあの女とギルラプターが出てくるんだ!」

 

 苦しむレイルを見てエマは、

 

 「レイル! 思い出して、私よ! エマよ!!」

 

 「何でだ? 知らないはずなのに、何であの女の声が僕の頭の中に聞こえてくるんだ!? やめろー!!」

 

 「くそ、記憶消去が甘いのか、それともあのマッドオクテットの影響を少なからず出ているとでも言うのか!?

 だが、どちらにしてもダークライガーを失うわけにはいかん!」

 

 デーニッツ中将はドクターマイルスから渡された装置をコクピットに取り付け、

 

 「新たなマッドオクテットの力見せてやる! ディメパルサートランス! ハザードマッドオクテットー!!」

 

 ディメパルサートランスのバイザーの目が紫色に発光し、同時に紫色の電磁波が放出された。紫色の電磁波を食らったレイルとダークライガーの目が紫色になり、ダークライガーから紫の衝撃波が放たれた。

 

 「どうしたんだ? 一体何が起きたんだ?」

 

 「レイル…」

 

 「さあ、ダークライガーよ! リミッターを解除したその力を見せてみろ!

 ダークライガー! 洗脳 解放! マインドブラストー!! ダークバーストブレイク!」

 

 目が紫色になったダークライガーはギルラプターエンペラーに攻撃してきた。

 

 「ウォー!! 死ねぇー!!」

 

 ギルラプターエンペラーはその攻撃を両手で受け止めるが、ダークライガーの力に及ばずぶっ飛ばされてしまう。しかし、その時、ガンマのクワーガが現れ、ギルラプターエンペラーを掴んだ。

 

 「大丈夫ですか? お嬢ちゃん!」

 

 更にグリードのラプトリアがベティを抑えているキルサイスG4を、スティルのラプトールとボルグのスコーピアがレナを抑えているキルサイスG4を蹴散らし、シーザーの前にキングが現れた。それを見たデーニッツ中将は、

 

 「ほう、遂に隠れていた反乱軍も登場したか。いいだろう! 貴様らはここで始末する! ダークライガー!」

 デーニッツ中将に命令されたダークライガーはキングに攻撃するが、シーザーはダークライガーをEシールドで止め、

 

 「ウィル!」

 

 「ストームさん、こいつは俺に任せてください! お願いします!」

 

 「わかった! だが、無茶はするな! そいつ、さっきより強いぞ!」

 

 「わかっています!」

 

 しかし、ダークライガーはEシールドを張ったシーザーすらも後退させる程の馬鹿力を見せた。シーザーは直ぐ様Eシールドを解除してダークライガーの攻撃を避けた。

 

 「レイル、エマのためにも、そして、お前を帝国から解放するためにそのシーザーの偽物を倒す!」

 

 「う、ウォー!!」

 

 レイルの叫び声と共に、ダークライガーの全身から紫色の衝撃波が放たれた。シーザーは攻撃の体勢を取り、

 

 「この一撃に全てを込める。 やれるな? シーザー!」

 

 グオォ~!!

 

 キングはディメパルサートランスの前に現れ、

 

 「お前の相手はこの俺だ!」

 

 「我がネオデスメタル帝国の前身を壊滅した例の伝説のライガーにして反乱軍の首謀者か! 面白い。やってやるぞ!」

 

 「キングオブクローブレイク!」

 

 「ふん!」

 

 キングのワイルドブラスト技がディメパルサートランスに直撃するが、ディメパルサートランスは紫色の電磁波をバリアにしてその攻撃を防いだ。

 

 「この力は!」

 

 ダークライガーの身体のラインが紫色に染まり、攻撃の体勢を取る中、ウィルはゾイドキーを取り出し、神経を集中し、

 

 「行くぞ、シーザー! 切り拓け! シーザー! 俺の魂と共に、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 エヴォブラストしたシーザーのタテガミクローが現れ、同時にEシールドも展開した。シーザーとダークライガーは互いに真正面に向け、そのまま突進していった。

 

 「ウォー!! 今度こそ、くたばれー!! ダークバーストブレイク!!」

 

 「スピリットバーストブレイク!!」

 

 シーザーとダークライガーの攻撃がぶつかり合い、その衝撃波が周囲の密林を一気に切り裂いた。と同時にシーザーの身体がダークライガーを突き抜け、ダークライガーの身体が一刀両断し、ダークライガーが爆発炎上した。

 

 ドガアァァァン!!

 

 それを見たデーニッツ中将は、

 

 「そ、そんな馬鹿な…」

 

 その時、コクピットから研究者からの通信が開き、

 

 「デーニッツ中将! ゾイド因子の発掘と回収完了しました!」

 

 「ふん、まあ、いい。とにかく目的は達成した。 全軍、撤退だ!」

 

 ダークライガーの破壊と遺跡のゾイド因子回収が完了したことを知ったデーニッツ中将とその部隊は戦いを放棄し、そのまま撤退していった。

 ダークライガーの攻撃を受け、ギルラプターエンペラーのコクピットで気絶していたエマが目を覚まし、

 

 「う、レイル! レイルは!?」

 

 エマが見た先には炎の中で立つシーザーがおり、シーザーはダークライガーから抜き取ったコクピットをくわえていて、レイルはコクピットの中で気絶していた。

 

 「レイル、良かった…」

 

 シーザーはくわえたコクピットをそっと置き、炎の中で目一杯の咆哮を上げた。

 

 グオォ~!!

 

 To be continued




 次回予告

 遂にダークライガーを倒し、カティア、ベティ、レナも戻り、レイルを正気に戻したウィルたちだったが、帝国の皇子としてのプライドを捨てきれないレイルがエマやウィルたちを拒絶し、皆との距離をとってしまう。
 レイルの冷たい態度に悲しむエマだが、突然、レイルが病室から脱け出し、基地から脱走してしまう。
 ウィルとシーザーはレイルを探すが、ラプトリアに乗ったレイルはベケット少佐のいる駐屯地に向かい、親衛隊やアーミテージ大尉のスティレイザーG3と交戦した。
 レイルが死ぬつもりだということを知ったエマとユリスはギルラプターエンペラーとレナに乗り、駐屯地に向かう。
 ウィルたちは再びレイルを救うことができるのか!?

 次回「ワイルドブラスト、ギルラプター」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!!

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