ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・アベラス
新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のゾイドチームのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていたのであった。
ある都市でオメガレックスはシーザーに荷電粒子砲を何発か撃った。シーザーは全てEシールドで防ぐが、シーザーのコクピットから警告が出る。
「警告!? そうか、Eシールドを張れる時間が限界に来たのか! このまま荷電粒子砲を受け続けたら、こっちのEシールドが破れるのは時間の問題。何としても反撃しないと。」
その時、オメガレックスが次の荷電粒子砲を撃つためのチャージに入る。
「今だ!」
しかし、オメガレックスはチャージ中にA-Z三連誘導ミサイルと対地空両用速射砲もシーザーに撃ち込む。
「くそ、これでは反撃出来ない!」
「これで、何発撃ったかな? ん~と、あ!5発だ!つまりこれでキミは5回死んだことになるね! さて、後何回で死ぬかな~?」
ピピ!
「ん? オメガレックスが若干オーバーヒート気味か… となると、荷電粒子砲とEシールドの根比べになりそうだね! ま、でも、Eシールドが使えなくなれば、あいつは無防備だし、それにエネルギーも無くなるだろうから、後はミサイルや速射砲や格闘でゆっくり料理すればいいしね。 オメガレックス、ファイヤー!!」
「くそ、これじゃ、やられる!」
別の都市では、暴走したジェノスピノの刃がギルラプターエンペラーに向かった。ギルラプターエンペラーは避けきれないが、咄嗟にレックスがギルラプターエンペラーを掴み、ジェノスピノから離れた。
「レイル、大丈夫か!?」
「大丈夫です!」
「どうした? お前らしくないな。 あん時、俺と戦った時のお前ならこんなことは避けられたはずだぞ!」
「すみません! ダークライガーの洗脳から解放されて以来、今までの感覚がどうも鈍くなってしまって!」
「にしても、お前ホントに可愛くなったな! ウィルと初めて会った基地での戦いでは帝国の御曹司らしい生意気なガキだったが、エマと一緒になってから、エマみたいに可愛くなったじゃねぇか! そりゃ、ロリコンのあのじいさんでも惚れるわけだ!」
「う、うるさい! 俺は男だ! それも帝王ギャラガー一世の…」
「そうだ! その意気だ! あの時、俺と戦った時のことを思い出してみろ! 今のお前はあの時より強くなっているはずだ!」
「あの時の…感覚…」
その時、デルが襲いかかり、レックスはギルラプターエンペラーは咄嗟に避けた。
「そうだ! その感覚だ! 俺はあのジェノスピノをやる! そいつはお前に任せる!」
「ふん、いくら、パワーアップしたところでジェノスピノを止めることは不可能だ!(それにしても、ドクターは何をやっているのだ? 万が一、暴走することを想定してハンターウルフを私に譲った代わりに私のディメパルサートランスをジェノスピノ制御のための遠隔操作に使うと言っていたのに、今のジェノスピノは我が軍まで襲って完全に暴走しているではないか! だが、今は裏切り者を始末することが先だ!) フルハウリングショット!!」
デルのマシンブラスト技にレイルは感覚を思いだし、ギルラプターエンペラーはその全ての攻撃をかわした。
「そうだ、これだ! 行くぞ、ギルラプター! 真・音速殺!」
ギルラプターエンペラーはデルの攻撃を避けながらデルに近付き、目の前に来た瞬間、デルはさっと避けようとするが、ギルラプターエンペラーは態勢を変え、足でデルを蹴り、デルは態勢を崩して倒れた。
「う、ぐ…」
「そうだ! 僕は帝王ギャラガー一世の血を引く者だけど、世界を支配するためじゃない! 世界を平和にする、そのために戦ってきたんだ!」
「ふ、どうやら、少しはマシになったようですが、あなたは私には勝てませんよ!」
「僕は帝国から離脱したけど、僕は帝国を倒すんじゃない!帝国を正すために来たんだ!」
「ふ、まさか、そこまで墜ちましたとはね。必ず殺してやり
ますよ!」
レックスはジェノスピノにガトリングを撃ち込むが、ジェノスピノは見向きもせず、敵味方見境なく暴走していった。
「ウォォー!!」
ギュオォー!!
都市から離れた場所で、ディメパルサートランスが高周波パルスを放ち、無人のコクピットには遠隔操作機能が付いていて、宮殿の司令室にいるドクターマイルスがディメパルサートランスを操作していた。ジェノスピノの様子を見たタッカー元帥は、
「ドクター、これはどういうことだ? ジェノスピノが暴走しているではないか!」
「ライダーの様子はどうなっている?」
「ジェノスピノのライダーの脳波に異常な数値をきたしています! このまま戦闘を続けたら、理性を失い、完全に暴走します!!」
「(ふむ、どうやら、明確に怒りをぶつける相手がいないとただ暴れまわるだけになるのか、となると、もう少し調整が必要だな。)
ディメパルサートランスのファイナルマッドオクテットを発動し、ジェノスピノを停止しろ! それとデーニッツ中将に撤退命令を!」
「了解しました! ディメパルサートランス、マシンブラスト発動。 ファイナルマッドオクテット、最大出力!」
マシンブラストしたディメパルサートランスは暴れまわるジェノスピノに向かってファイナルマッドオクテットを放った。
ファイナルマッドオクテットを喰らったジェノスピノは咆哮を止め、目の色が消え、そのまま倒れ、同時にコクピットのリセルも倒れた。ギルラプターエンペラーと交戦しているデルのコクピットにタッカー元帥からの通信が入り、
「デーニッツ中将、ジェノスピノの暴走で我が軍に損害が出た。一時撤退しろ!」
「やっぱり、そうなりましたか。 ま、あの裏切り者の始末はいくらでも出来るでしょう。 全軍撤退だ!」
デルはその場を離れ、ジェノスピノもスナイプテラとキルサイスに護送された。レックスはギルラプターエンペラーの元に寄り、
「レイル、大丈夫か!?」
「僕は大丈夫! それより、一体どうなったの?」
「わからん! だが、先ほど、ウィルがオメガレックスに苦戦しているとの報告があった。早く助けに行くぞ!」
グラッドとレイルがウィルたちの元に向かう中、シーザーはEシールドで全ての荷電粒子砲を受け止めるが、Eシールドに火花が散り、シーザーも苦しんでいた。
「シーザー、大丈夫か!? くそ、Eシールドも限界に来てシーザーも満身創痍になっている。どうすれば…」
シーザーに荷電粒子砲を撃ち込む中、ガネストはオメガレックスのコクピットのゲージを見、
「そろそろ、荷電粒子砲も限界に来たか…。 まあ、向こうのEシールドも限界に来てるし、それにEシールドを維持するのにかなりのエネルギーを浪費している。
それに比べ、こっちは荷電粒子砲が使えなくてもまだ使える武器はある。Eシールドを破った後はゆっくり料理すればいい。
さて、荷電粒子砲も残り一発になった。これで決めてやる。 オメガレックス、ファイヤー!!」
オメガレックスの最後の荷電粒子砲がシーザーに直撃し、遂にシーザーのEシールドが破れた。Eシールドが破れたのを見たオメガレックスは猛スピードで突進し、シーザーの身体を掴み、身動きを封じた。
「これで、キミは無防備同然だね! ま、ボクのオメガレックスの荷電粒子砲も今の一発で使えなくなったけど、パワーならオメガレックスが上だから、後はじっくり料理させてもらうよ!」
オメガレックスはシーザーに対地空両用速射砲を撃ち込み、シーザーの身体を押し潰すように体重をかけた。
「ウィル!」
「人の心配してる暇あるの!? ドライスラッシュ!!」
キングはドライパンサーG3の攻撃をさっとかわし、ドライパンサーG3はそのまま同盟軍の複数のラプトリアの頭と手足を一瞬で切り刻んだ。
「帝国で最も残忍な方法でゾイドと人間を殺す女がいるって聞いたが、どうやら、貴様だったようだな。」
「その通り、このドライパンサーG3の赤は我が親衛隊を表していると同時に私が今まで処刑した愚かな反乱者の血とゾイドのオイルの血も表している。
あたしが鎮圧した後の戦場には反乱者とゾイドのオイルの血だけが残ったため、帝国ではあたしのことをこう呼んだ!
ブラッディ(血まみれ)ベケット、とね。あたしが今まで処刑した反乱者のゾイドの血で染まっているこのドライパンサーG3はあたしの誇りにして皇帝陛下への忠誠心を現している! だから、あたしは全ての反乱者を潰し、皇帝陛下の直属として出世する!」
「なるほど、旧デスメタル帝国の四天王にも異名を持った奴がいたが、お前もそれにならって自分の異名をつけたってわけか…。
そのドライパンサーにもそれなりの思い入れがあるようだが、罪のない人々とゾイドを殺す道具にするのはちょっといただけないな!」
「ふん、我が帝国と皇帝陛下に逆らった罰よ!次はあんたのライガーの血であたしのドライパンサーに染めるのよ! ドライスラッシュ!!」
「真・音速殺!!」
キングに攻撃しようとするドライパンサーG3にギルラプターエンペラーが攻撃した。
「何!?」
「大丈夫ですか? ストームさん。」
「ああ、ところで、ジェノスピノは!?」
「説明は後でします。」
同時にレックスが現れ、
「行くぞ、レックス! ファイナルガトリング!!」
エヴォブラストしたレックスのファイナルガトリングがオメガレックスに直撃し、オメガレックスはよろめき、その隙にシーザーは脱出した。
「ありがとう。グラッド! 戻ってきたということはもしかしてジェノスピノを!?」
「いや、それが…」
態勢を建て直したオメガレックスは、
「これは驚いたね! ガトリングフォックスに加え、まさか、出来損ないの兄のギルラプターエンペラーまで来るとはね。いいよ!全員でかかって来て、その方が楽しいからさ!」
その時、コクピットからドクターマイルスの通信が入り、
「陛下! どうか一時撤退を。」
「え、なんで? せっかく盛り上がって来たのにもう止めちゃうの!?」
「お言葉ですが、多勢に無勢、オマケにオメガレックスもさっきの荷電粒子砲の連射でオーバーヒートしています! これ以上戦闘を続けるのは危険かと!」
「でも、ボロボロなのは向こうも同じだよ! ここで始末した方がいいんじゃないの?」
「ですが、その代わり、 お戻りになった際には荷電粒子砲の連射を可能にしますので。」
「仕方ないね。じゃあ、楽しみは取っとくよ! 全軍撤退~。」
オメガレックスが引き上げ、ドライパンサーG3ら親衛隊ゾイドもそれについていって撤退していった。シーザーは倒れ込み、
「大丈夫か!?」
「大丈夫です…けど…」
「基地に戻ってシーザーの手当てを!」
ウィルたちは基地に戻り、それぞれの疲れを癒し、次の作戦のために司令室で待機していた。司令室にドクタースミスが入り、
「どうなんだ。 シーザーの様子は?」
「身体自体は問題ないのじゃが、Eシールドを維持するためにかなりのエネルギーを消費したため、しばらくは安静にした方がよさそうじゃな。
まあ、それに殿下が怪我をしてなくて良かったが、もし、殿下に万が一のことがあったら、このわしが踏み潰してやる! そして、エマちゃんとの結婚式もこのわしが…」
ポカン!
「ええ加減にせい!」
ウィルは落ち込んで、
「ごめんなさい。俺が軽率な行動をしたばかりに…」
「いや、お前はよく頑張ったよ!俺がドライパンサーとやりあっている間にあの荷電粒子砲をあれだけ耐えたのは大したものだ。」
「しかし、スピリットライガーになったシーザーですら苦戦させるとは、やはりオメガレックス、早々簡単には倒せないか…。」
「オメガレックスだけじゃない!おそらくあのライダーの力も影響しているだろう。ゾイドは絆を結んだ者と才能を持つ人間によって初めてその本来の性能を引き出せるのだからな!
それはそうと、グラッド! さっきジェノスピノが暴走してたって言ってたが、どういうことだ?リセルにはレイル同様に洗脳されていたんじゃなかったのか?」
「俺も詳しいことはわからないが、おそらく何らかの理由でジェノスピノを制御出来なくなって帝国軍のゾイドにも攻撃し、その状況を見て撤退したんだろうな!」
「とりあえず、難は逃れたが、また調整して出撃するだろう。早急に対策を打たないと!」
「とはいえ、シーザーですら、あの苦戦でオマケにあの2体がまた攻めて来たら、手に負えない! それにあの2体を迎え撃つ戦力が今の俺たちには…」
「フフフ、そこでこの天才科学者のわしが先程、クルーガー将軍と話し…」
その時、クルーガーとデルタたち旧共和国派の幹部が現れ、
「その件は私から話す。」
「あり? わしの説明が……」
「実はデルタたちが旧共和国の首都である旧ネオヘリックシティがネオデスメタル帝国軍に占領される前、かつて旧共和国が残した伝説の兵器、グラビティキャノンを脱出の際に持ち帰り、ジェノスピノに対抗するために保管していたので、それを使用することに決定した。」
「グラビティキャノン…というと、あの荷電粒子砲と同等かそれ以上の威力を持つあの最強兵器か!」
「実はかつて惑星Ziの共和国もそれを使ってオメガレックスのような強大なゾイドに対抗したことがあるそうだ。だから、我々も同様にそれで対抗しようということです!」
「しかし、聞いた話じゃ、それって威力がとてつもなく高い代わりに僅か数発しか撃てないんじゃなかったっけ?」
「その通りだ! 今回はジェノスピノに加え、オメガレックスもいるため、A-Z連装キャノン砲を二門備えてあるが、それぞれ2発しか撃てない。」
「おいおい、それじゃ、テスト撃ちも出来ず、ぶっつけ本番で撃たなきゃならないってことになるし、
オマケに計4発あってもジェノスピノとオメガレックスがいるから、実質2発しかないことになることになるぜ!
それにオメガレックスには荷電粒子砲があるから、迎撃される可能性もあるし、明確な作戦はあるのか?」
「もちろん、グラビティキャノンを装備してジェノスピノとオメガレックスを狙い撃ちにするゾイド、そして、グラビティキャノンを奴らに当てるために注意を引くゾイドに分けるのだ。」
「で、グラビティキャノンを装備するゾイドは?」
「グラビティキャノンはかなり重量があり、ゾイドにもかなり負担がかかり、更に狙っている間は無防備になるため、相当頑丈なゾイドに装備させなければならないため、最初はEシールドが使えるシーザーにしようかと検討していたが、Eシールドを張りながらグラビティキャノンで狙うとなると、シーザーにかなりの負担がかかるため、私のゴルドに装備させることにした。
ゴルドはマグマにも耐える装甲を持っているから、そう簡単には倒れん。そして、シーザーはキング、レックス、ギルラプターエンペラーと共にジェノスピノとオメガレックスの注意を引く役割をすることに決定した。」
「そして、残りはグラビティキャノンを撃ちやすいよう、ゴルドをサポートし、ジェノスピノ、オメガレックス以外の帝国軍を始末するってとこだな!」
「待て待て~い! エマちゃんの花婿たる殿下をそんな危険な目に遭わせるわけにはいかん!
わしは殿下をお守りするために殿下のお側にいる!」
「じゃ、決まりだ! スミスは2体を誘き寄せる囮役だ!」
「へ? 何~!!それ、どういうこっちゃ!?」
「レイルを守りたいなら、その盾となる奴が必要だからな!」
「何を言うとるんじゃ! あんな奴に立ち向かったら、わし、確実に死ぬぞ!!」
「大丈夫! スレイマーズもつけてやるからさ。」
「それでは安心出来んわいん!」
「この作戦成功したら、レイルとエマの結婚式の牧師やらせる上に2人の執事にしてやるからさ!」
「え、ちょっと待ってよ!ストームさん、そんな勝手に…」
スミスは結婚式を挙げるレイルとエマの姿と自分が屋敷でレイルとエマと一緒にいる様子を想像し、
「よっしゃ~!やってやる! わしの力を見せつける時じゃあ~!!」
「よし、取り敢えず、振り分けは決まったが、ところで、クルーガー、場所はどうするんだ?」
「場所は、旧ネオヘリックシティだ。今回の戦いはあの2体を倒すと同時にリセルを取り戻すための戦いだ!」
「確か、あそこはあんたとリセルがジェノスピノ率いる帝国軍と戦ってリセルが捕虜にされ、リセルが帝国を憎んだきっかけの場所だな。」
「そうだ! あいつを正気にさせるなら、そこが適任だと思って。」
「でもさ、そこで迎え撃っても余計あいつの復讐心を煽るだけじゃねぇか?」
「そこで、ユリスをレナを私とゴルドのサポートとしてつかせるのだ。」
「おいおい、ちょっと待てよ!いくらなんでも彼女を戦場に送るのは不味いんじゃねぇか!
そうなると、新帝国のシーガル共も黙っていないし、それにレナのマッドオクテットは帝国軍には通用しないんだぜ。」
「もちろん、私がシーガル中将と話をつける。それにレナのマッドオクテットは帝国軍に対策されているとはいえ、先のダークライガーの時にレイルの洗脳が徐々に溶け初めていたこともあったから、少なからず影響は受けているはずだ!
それに彼女はあいつにとって大切な存在だ。賭けてみる価値はあるだろう。」
「少々危険な賭けだが、やってみるしかないな。」
「それにもし、リセルを正気に戻すことが出来れば、あるいは…」
「なるほど、つまり、リセルが正気に戻った時、ジェノスピノがこちらの味方になり、敵の戦力を落とせる上にオメガレックスだけにグラビティキャノンを撃つことに集中でき、僅かな弾数にも少しは余裕が生まれるってわけだな!」
「そういうことだ。」
「よし、そうと決まれば早速出撃準備をする!全員用意はいいか!?」
「はい!」
「ウィル、お前とシーザーの力、もう一度あのオメガレックスに見せつけるときだ!」
「はい!」
南方総督府、そこにルメイ大将率いるスナイプテラ3SとキルサイスSS部隊が離陸した。総督府のアッカーマン中将のいる一室にコナー少佐が入り、
「中将!」
「コナー少佐か。何だ?」
「ルメイ大将が面会したいとのことですが…」
「ルメイ大将が? もしや…」
部屋を移動し、アッカーマン中将はルメイ大将と面会した。
「これは、ルメイ大将。私に一体何の用でしょうか?」
「私は本国にいる元帥閣下の代理として来たんですが、実はあなたの部隊に我が帝国の反逆者、いや、反乱軍と通じている者がいるとの疑いがありまして!」
「その根拠は?」
「以前、陛下のオメガレックスが反乱軍のソニックバードと交戦し、荷電粒子吸入ファンを撃ち抜かれ、南極に落ち、そこで凍り付けにされたのは御存知ですね?」
「ええ。」
「しかし、オメガレックスの荷電粒子吸入ファンを調査したところ、実はソニックバード以外にも他のゾイドに撃ち抜かれた跡がありまして、調査の結果、スナイプテラによるものだと判明しました!」
それを聞いたアッカーマン中将は歯をくいしばり、
「(やはり…)」
「最初は新帝国の反乱軍のスナイプテラのものではないかと思われましたが、そもそも反乱軍の旧式ごときに陛下のオメガレックスの荷電粒子吸入ファンを撃ち抜けるわけがない。
だとするなら、我が軍のスナイプテラしかいないことになる。更にあなたの部下のカーター大佐がスナイプテラで出撃して偵察していた時はちょうど陛下がオメガレックスで反乱軍制圧に向かっていたのと同じ時間なんですよ!」
「つまり、カーター大佐を容疑者として軍事裁判にかけると?」
「私もこんなことは思いたくありませんよ! 帝国に忠義を尽くすあなたの育てた優秀な軍人が反逆者なんて!
でも、万が一の場合もあります。何故なら、戦死したと思われた大佐の娘のギレル少尉が反乱軍に寝返ったとの報告もありました!」
それを聞いたアッカーマン中将は少し驚いた。
「では、もし、カーター大佐がやったとしたら、当然私にも処分は下されますね。」
「君の教え子だから、当然そうなるが、しかし、君は我がネオデスメタル帝国に忠誠を誓った男、出来るだけ寛大な処分にするよう、元帥閣下にお願いする。」
「いえ、もし、カーター大佐がそのようなものになってしまったのは元はと言えば、私の責任ですから、大佐が本当に反逆者なのなら、遠慮なく私を処分してください。」
「やったのが大佐じゃないことを祈るよ。ところで、大佐がもう一つ所有しているキャノンブルも見当たらないようだが…」
「処分しました!」
「何故だ?」
「大佐はこの頃、スナイプテラばかり乗っていて、大佐以外にあのキャノンブルに相応しいライダーがいませんし、それに我が帝国にはもっといい最新式もありますので…」
「ふ、そうか、だが、それでいい。使えないゾイドと部下は不良品として捨てるのが我が帝国の流儀なのだからな! では、私はここで失礼する。」
ルメイ大将が退出した後、アッカーマン中将はコナー少佐に
「少佐! シュバルツ中佐を呼んで、ことの次第をカーター大佐に知らせろ! それと我々と親しくしている例の企業にも連絡を!」
「中将、まさか…!」
帝都メガロポリス、宮殿ではジェノスピノとオメガレックスの調整が行われていた。宮殿の一室で、ドクターマイルスはリセルに、
「リセルよ! お前が憎むべき者は我々ネオデスメタル帝国ではない。あの小僧とライガーだろ?
自分より年下のくせに反乱軍の中ではお前より上の扱いになり、オマケにハンターウルフをより強力な姿に改造したにも関わらず、更に強力な姿になったライガーに手柄を奪われ、えこひいきされ、益々お前は遅れを取り、あいつとの差をつけられるようになった。違うか?」
「そうだ!あいつは俺より年下で、初めて出会った時はただの素人だったのに、いつもいつもあいつだけ俺の先を行ってオマケに更にパワーアップして最強であるはずの俺のデルを上回りやがって、挙げ句にあいつだけ大きい目で見られやがって! 許さん、絶対に許さん!!
あいつは俺が潰し、俺が最強だっていうことを証明してやる。そもそも父さんと母さんが死んだのは俺が弱かったからだ。俺が強いことを証明すれば、もうあんな悲しみは味わうことはない。だから、俺は強くなる!甘さは捨てる!」
「そうだ!では今度はその怒りと憎しみをあのライガーにぶつけ、始末するのだ!」
そう言ったドクターマイルスは部屋を退出し、
「これでいい。これでジェノスピノの本来の性能は引き出され、ディメパルサートランスのマッドオクテットによる制御はやりやすくなるだろう。」
「ドクター!」
そこにガネストが現れ、
「これはこれは、皇帝陛下!」
「さっき、せっかく楽しんでたのに途中で撤退させたけど、それなりのことはしてるんだよね?」
「もちろんです。今度はオーバーヒートしないように例のリジェネレーションキューブの端末を元に開発した装置を取り付けました。
これで、荷電粒子砲のチャージ時間は大幅短縮され、オーバーヒートの心配をせず、連射は可能となるでしょう。」
「ふ~ん、それなら楽しみだ。じゃあ、あいつの身体が溶けるまでバンバン撃てるってことだね。 そう考えると、ゾクゾクしてきたよ!」
そこに兵士が現れ、
「ドクター、陛下! 元帥閣下がお呼びです!」
宮殿の司令室にはベケット少佐、デーニッツ中将も集結し、
「反乱軍が旧ネオヘリックシティを占領した?」
「我がネオデスメタル総督府が反乱軍に破壊され、その後、旧共和国の旗を掲げたそうだ。」
「今さら、あの古くさい旧共和国を復活を宣言して意気揚々としているわけ?おめでたいわね。」
「だが、国の復活を宣言するなら、本来、敵対国を倒してからやるのが普通だ。
我々にはジェノスピノやオメガレックスがいて戦力はむしろ増大している状態だ。この状況で国の復活を宣言するなんて自殺行為もいいところだ!」
「てことは、国の復活を宣言した陽動作戦ってとこかしら?」
「雪辱戦ゲームをしようとしているんだよね! だってあのライガー、更にパワーアップしてダークライガー倒したけど、それでもボクのオメガレックスに敵わなかったから、仕返しするために全力で潰そうとしているんだよ。
ま、ボクにとっては面白いゲームが出来るからむしろ好都合だけどね!」
「元帥閣下、反乱軍の軍勢はどれ程で?」
「旧共和国と新帝国を加えておよそ5万とのこと。」
「では私の正規軍とベケット少佐の親衛隊による合同軍で迎え撃ちましょう! いくら、ジェノスピノ、オメガレックスがいるとはいえ、反乱軍に厄介な策があったら、手がつけられませんから、軍は出来るだけ多い方がいいでしょう。」
「で、どれぐらい欲しい?」
ウィルたちはジェノスピノとオメガレックスを迎え撃つため、かつての共和国の首都、旧ネオヘリックシティ、旧共和国派の兵士は遺物となった移民船の上に旧共和国の旗を掲げ、歓声を挙げていた。グラッド、ストーム、クルーガーはその様子を見て、
「よし、後はジェノスピノとオメガレックスが来るのを待つだけだな。それにしても、まさか、全員で行くことになるとはな。しかもエマまでついてきて…」
「まあ、あの2体を迎え撃つというデカイことするからな。それにエマはゾイドのメンテナンスや整備には詳しいから、グラビティキャノンのことにも詳しいし、それにレイルやギルラプターもエマと一緒にいて仲良くなっているじゃねぇか。後、あっちの囮役も!」
ストームが指差した先にはスミスがスレイマーズたちに言い聞かせ、
「いいか、お前たち! この戦いに勝てば我々は殿下とエマちゃんの結婚式に出られ、その親衛隊になることが出来る!
そうなれば、わしらはあの可愛い殿下とエマちゃんの姿を一生眺められる。それにこの作戦には新帝国皇帝メルビル二世のユリスちゃんまでいる!
上手くいけば、新帝国の幹部にもなれ、殿下とエマちゃん、そして、ユリスちゃんの元でウハウハ状態じゃ!!
さあ、皆の者、全力で戦うぞ!」
「オォー!!」
その様子を見たグラッドとストームはポカーン状態になり、
「おい、ストーム。お前、仲間にするメンバーミスったんじゃないか?」
「ま、まあ、いいじゃないか。士気は高いわけだし。」
「士気って、ありゃ、欲望の塊だろ!緊張感が全くないぜ!」
「まあ、でも兵士の士気を上げるのは戦いにおいては重要なことだし!」
「リーダー、コマンダー!」
「ジョンか、どうだった?」
「作戦通り、帝国軍は誘いに乗って出撃し、こちらに向かっています。」
「よし、後は作戦通り行けばいいな。」
「ただ…」
「ただ、なんだ?」
「敵の数がこちらの予想を遥かに越えるものでして…」
「こっちは総力戦を想定して旧共和国、新帝国の戦力合わせて5万もいるが、い、一体どれ程の規模だ?」
「正規軍、親衛隊を合わせて60万です!」
それを聞いたストームたちは青ざめた。侵攻するジェノスピノとオメガレックスの周りには正規軍と親衛隊によるキャノンブル、バズートル、スティレイザー、そして、大量のキルサイス、ディロフォス、ディメパルサー部隊がついていた。
旧ネオヘリックシティに向かって歩くオメガレックスのコクピットにいるガネストは不気味な笑みを浮かべ、
「さあ、ゲームを始めようか!」
To be continued
次回予告
ジェノスピノとオメガレックスを迎え撃ち、洗脳されたリセルを取り戻すために以前ネオデスメタル帝国に支配された旧ネオヘリックシティを占領し、そこで迎え撃とうとする。
しかし、デーニッツ中将はウィルたち同盟軍に何か策があることを予想し、正規軍と親衛隊による大規模な軍勢を率いて旧ネオヘリックシティに侵攻してきた。
多勢に無勢、僅かな弾数しかないグラビティキャノンでジェノスピノ、オメガレックスに当てるという成功確率の低い作戦、果たしてウィルたちはジェノスピノ、オメガレックスを倒すことができるのか!?
次回「迎え撃て、二代破壊龍」
本能を呼び覚ませ、ライガー!!