ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
各地で、帝国の支配に抵抗するレジスタンスが立ち上がり、帝国とレジスタンスが激しい戦争を繰り広げている戦乱の時代となっている中、帝国に捕らえられていたビーストライガーにシーザーと名付け、相棒となった少年ウィルは謎の少女エマと共に冒険の旅に出掛けた。
「いけいけ!シーザー!もっと早くだ!」
初めてシーザーと旅に出たウィルは嬉しそうで、ウィルの言葉に答えるようにシーザーは勢いよく走り出した。コクピットの中でウィルの後ろでしがみついているエマは、
「きゃあああ!ちょっとウィル!もうちょっとゆっくり走りなさい!」
「なんだよ!せっかく旅に出たんだから、いいじゃないか!」
「もう、子供ね!それにあんまり無茶したら、シーザーが可哀想じゃない!それにメンテナンスと修理する道具を探さなきゃ!」
「じゃあ、あの街ならあるんじゃない!」
ウィルが指さしたのは見るからに都会だった。そのまま前進しようとしたとき、エマが、
「待って!」
エマの言葉を聞いて止まるウィルとシーザー、シーザーから降りたウィルとエマはゆっくり近づいて街を見る。よく見ると街のあちこちに帝国の国旗が置かれていた。ここは帝国の都市だった。
「シーザーと一緒に行くのは危険ね!シーザーは見つからないよう安全な場所で待っててあげなきゃ!」
「そうだな!ただでさえ、帝国軍に狙われているからな!シーザー!お前はここで待っててくれないか!」
シーザーはウィルの言うことを聞いて待ち、見つからないように茂みの中で寝そべった。ウィルとエマはそのまま街に向かった。
ウィルとエマが入った街は帝国の都市コルク、ビルが建ち並び、多くの人々が行き来し、中には富裕層の者も多くいた。街にはラプトールやキャノンブル等の帝国の主要ゾイドや銀色、黒色の装甲服を纏った帝国の一般兵があちこち警備し、街を巡回していた。
しかし、人々は全く気にすることなく、平凡としていた。都市の店は商売繁盛しているのが多く、歩いている中、
「帝国がここを統治してから随分変わったわね!それまではあまり目立たない田舎だったんだから!」
「ホントよね!総督のブリューゲル大尉が私達のような市民にもいろいろと提供して下さったり、公共事業を行って失業者もいなくなり、ホンとに感謝だわ!」
あちこちで、帝国の支配を歓迎する声が出て、
「帝国って意外といいことをしてる奴もいるんだな!」
少し感心するウィル、ウィルの言葉と周囲の声を聞いて少し複雑そうな顔をするエマ、そこに目的の店が見つかり、
「ウィル、私は道具を探すから、あなたは遠くへ行っちゃ駄目よ!」
「わかってるよ!もう、子供じゃないんだから!」
エマが店に入ったとき、ウィルは、
「せっかく、初めて街に来たんだし、ちょっと回ってみるか!」
と言い、周囲を散策するウィル、散策している中、ウィルは目立たないところに立ち入り禁止と書かれた施設を見つける。
「なんだここ?見るからに入っちゃいけないとこだけど、ここって前にシーザーが閉じ込められていた場所に似ている!」
道具を買って店を出るエマ、しかし、周りにウィルの姿は見えなかった。
「ウィル、ウィルー!もう、どこ行ったのよ!」
ウィルを探していったエマは施設で立ち往生していたウィルを見つける。
「ウィル、もうどこ行ってたの?遠くに行っちゃ駄目って言ったでしょ!」
ウィルを叱るエマに
「なあ、エマ、この施設どう思う?」
「どうって?一体何が気になるの?」
「だって、こんな街の外れで目立たないようにして、誰も近づけさせないようにしてるなんて変じゃない?」
「確かにそうね。ここには誰かに知られたくないっていう雰囲気が出てるわ!」
「ここ、シーザーが閉じ込められていた場所に似ているんだ!一体どうなっているのか調べる必要がある!」
「そうね。確かに無視出来ないわ!」
ウィルとエマは施設が何なのか入ろうとするが、周囲には兵士と機械兵と呼ばれるアンドロイド型のロボット兵が見張っていた。二人はすぐ目についたマンホールの蓋を開け、下水道の中を通って施設に入ることにした。
下水道を通り、通気孔を抜けてついに施設に入ったウィルとエマは、作業をしているゾイドと人々を見つけた。
だが、その光景はまるで都市とは正反対の残酷な光景だった。 手足を鎖で繋がれた囚人と全身が錆び付いて老朽化したガノンタス、スコーピア、ラプトール、クワーガ等のゾイドが奴隷として働かされていたのだ。
重いものを運ばされている人々とゾイド達の周りには銃を持った一般兵と機械兵がいつでも撃てる状態で監視していた。
そして、その中にはコルクを支配する総督ブリューゲル大尉がいた。そのとき、運搬に耐えられず、ガノンタスが足を崩して動きを停めた。一人の兵士が、
「おい、そこののろ亀、休むな!」
兵士がボタンを押し、ガノンタスの身体中に取り付けられた高圧電流を流す。悲鳴を上げて苦しむガノンタス、ガノンタスが最後の力を振り絞って立ち上がろうとするが、ガノンタスは倒れ、目の光が消え、機能停止してしまった。それを見たブリューゲル大尉は、
「やれやれ、役に立たない奴だ!そいつは熔鉱炉に落として処分しろ!」
そのとき、ガノンタスと同じく、運搬に耐えられず、倒れた囚人がいた。その囚人は病気がちだった。兵士はガノンタスと同じようにスイッチを押して、高圧電流を浴びせようとしたとき、一人の囚人が反抗した。
「こいつは病気がちなんだ!あのガノンタスだってもう動ける状態じゃなかった!少しは休ませたらどうだ!それに俺たちはお前らのために働いているんじゃない!」
そのとき、ブリューゲル大尉が腰から拳銃を取り出し、無言でその囚人を射殺する。その様子を見た囚人たちは静まりかえった。ブリューゲル大尉は、
「お前たちは帝国に逆らった罰としてここで働かされている!もし、逆らえば、こいつのように殺す!生き残りたかったら、ここで一生働くんだな!そいつもあののろ亀と一緒に熔鉱炉に落として処分しとけ!」
それを聞いて囚人たちはそのまま作業を続けた。
「ひどい‥‥!」
それを見たエマはもう見ていられないような悲しい顔をしていた。ブリューゲル大尉の非情な行為に我慢できなくなったウィルは、ついに身を乗り出してしまう。突然、現れたウィルにブリューゲル大尉は、
「何だ?貴様は!」
「ふざけんなよ!お前ら!ゾイドと人間の命を何だと思っているんだ!もう許さないぞ!」
ブリューゲル大尉に殴り込もうとするウィル、しかし、兵士にすぐさま取り押さえられてしまう。ブリューゲル大尉は、拳銃をウィルの頭に突き付け、
「本来なら、奴隷にするところだが、お前がいると、ここの連中が反乱を起こしてしまうからな!残念ながら、ここで死んでもらう。」
「ウィルー!!」
エマの叫び声と共にウィルのポケットのゾイドキーが光りだし、同時に壁を突き破ったゾイドが現れ、兵士を蹴散らす。それはシーザーだった。
「何だ?あのゾイドは!」
驚愕するブリューゲル大尉、
「シーザー、助けに来てくれたのか!」
ウィルの言葉にうなずくシーザー、そのとき、帝国のラプトールが現れ、シーザーに襲いかかってくる。ウィルはすかさず、シーザーに乗り、ラプトールを全て蹴散らす。しかし、蹴散らしたラプトールを凪ぎ払ってブリューゲル大尉の操るガブリゲーターMk-Ⅱが現れた。
ガブリゲーターMk-Ⅱは灰色でバイザーが付けられ、背中に対空射砲と二つのミサイルポッドが装備されていた。
「まさか、手配中のライオン種が出るとはな!こいつを捕まえて本国に持って帰れば、俺は四天王クラスに昇格する!」
ジャンプしてシーザーに噛みつこうとするガブリゲーター、
「シーザー、よけろ!」
何とかかわすシーザー、しかし、ガブリゲーターはすかさず態勢を変え、再びシーザーを攻撃する。何とかそれをギリギリでかわす。
「こいつ、速い!」
驚くウィル、それを見たエマは、
「あのガブリゲーター、スピードに特化した改造型なのね!」
「ほお~、意外といい神経してるじゃないか!それじゃ、本気を出そうか!」
そう言い、ブリューゲル大尉はコクピットからデスメタルキーを取り出し、
「ガブリゲーター、強制 解放!デスブラスト!!」
デスブラストしたガブリゲーターは再びシーザーに噛みつこうと襲いかかってきた。ガブリゲーターのスピードに翻弄されながらもギリギリかわすシーザー、それを見たブリューゲル大尉は、
「逃げてばかりだな!デスブラストして私のガブリゲーターのアゴのリーチが長くなって、スピードが遅くなって安心したと思っているのか?」
そう言い、すかさずよけたシーザーを尻尾で凪ぎ払い、シーザーは吹っ飛ばされる。
「これじゃ、つまらないな!なら、もっと面白くしよう!」
ガブリゲーターの体からデスモークが現れ、ガブリゲーターの姿が見えなくなった。姿が見えなくなり、戸惑うウィルとシーザー、突然、煙からミサイルが降ってシーザーに直撃する。ブリューゲル大尉は少し離れたところからガブリゲーターのミサイルを撃ってきたのだ。
姿が見えないため、ガブリゲーターの位置がわからないウィル、そのとき、シーザーが地面の匂いを嗅ぐような行動をとった。
「シーザー、もしかしてわかるのか?」
ウィルの問いにシーザーがうなずく。
「ようし、そこだな!」
ウィルの掛け声と共に動くシーザー、 ウィルの掛け声と共に動くシーザー、
「切り拓け、シーザー!俺の魂と共に!進化 解放!エヴォブラストー!!」
エヴォブラストして、煙を割き、そこにガブリゲーターが現れた。
「ビーストオブ‥‥」
しかし、そのとき、ガブリゲーターが口を開いて襲いかかってくる。
「シーザー、よけろ!」
ガブリゲーターの噛みつきに何とか逃れる。再びガブリゲーターは煙の中に隠れた。
「何故だ?さっきのミサイルといい、何故、俺たちの位置がわかるんだ?」
そのとき、ウィルの脳裏にコクピットの中で そのとき、ウィルの脳裏にコクピットの中で赤外線スコープを着けたブリューゲル大尉の姿が映った。
「そうか。あれだ!あれで俺たちの位置を知ってたんだ!でも、こちらからいくと、さっきの噛みつき攻撃を喰らってしまう。どうすれば?」
そのとき、シーザーが何か考えがあるかのようにうなずく。
「シーザー!ようし、わかった!その手でいくぞ!」
ミサイルを撃ち込むブリューゲル大尉、
「フフフ、さすがにこれだけ撃てば、そろそろ限界かな?ようし、では、こちらからいくぞ!ガブリゲーター、噛みつけ!」
シーザーに再び噛みつこうとするガブリゲーター、
「今だ!」
ウィルの掛け声と共にシーザーはよけ、
「ビーストオブクローブレイク!!」
ガブリゲーターに攻撃するシーザー、攻撃を喰らったガブリゲーターは吹っ飛ばされる。
「バカな!何故、わかった?」
驚愕するブリューゲル大尉にウィルは、
「そっちからでるのを待ってたのさ!それにシーザーは匂いで位置を知っていたからね!」
「フ、やるじゃないか!だが、これはどうかな?」
ブリューゲル大尉はボタンを出し、スイッチを押す。そのとき、地面が爆発した。下は水だった。
「しまった!」 水の中で溺れるシーザー、すかさず、シーザーをがぶりつくガブリゲーター、
「ハハハ、これでもう、身動きとれまい!こいつを本国に持って帰れば、出世の道も夢ではない!」
「ふざけんな!ゾイドは出世の道具じゃねぇ!」
「何とでも言え、どうせ貴様は身動きとれないからよ!そのまま噛み砕け!」
苦しむシーザー、
「ウィル、シーザー!」
そのとき、エマは近くにあったミサイル砲を見つける。ミサイル砲に近づいたエマは装置を作動し、
「ウィル、シーザー、今助けるわ!」
照準をガブリゲーターに向ける。
「ハハハ、そのまま砕けてしまいな!」
そのとき、ミサイルがガブリゲーターの口に直撃し、ガブリゲーターはシーザーを離す。
「くそ、あの小娘が!」
「ようし、反撃だ!シーザー!ビーストオブクローブレイク!!」
「グワァァァ」
吹っ飛ばされるガブリゲーター、エマはウィルとシーザーの元に来て、
「みんなは脱出したわ!早く、私たちも!」
「ようし、俺たちも脱出だ!」
エマもシーザーに乗って脱出する。コクピットから出るブリューゲル大尉、そこへ一人の兵士が来て、
「大尉、大丈夫ですか?」
「心配ない!それより、軍を出せ!早くあのライガーを!それと、このことを知られないよう、市民に避難勧告を出し、反逆者が逃げたと伝えろ!」
施設から脱出した囚人やゾイドたちと共に逃げるウィルとエマ、シーザー、突然の騒動に市民は大パニックになっていた。ウィルとシーザーは逃げる市民を避けながら走るが、中には
「帝国の反逆者め!さっさとこの街から出ていけ!疫病神が!」
と石を投げつける市民までいた。そのときの と石を投げつける市民までいた。そのときのウィルとエマは複雑で悲しい気持ちだった。帝国に苦しめられている人々とゾイドを助けたのに帝国の市民からまるで悪人扱いされることを。ウィルとエマ、シーザーは帝国軍に追われながら、都市を出た。
To be continued
次回予告
ブリューゲル大尉のガブリゲーターを撃破し、人々とゾイドを解放したウィルとエマはそのまま、帝国軍に追われ、部隊にある基地まで連行された。そこは帝国の空軍基地で、カーター大佐の操るスナイプテラがいた。ウィルとシーザーは、カーター大佐のスナイプテラと戦うことになるが、カーター大佐のスナイプテラは予想以上の強さを持っていた。
次回
「赤い翼」
本能を呼び覚ませ、ライガー!