ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のすのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていった。
だが、ネオデスメタル帝国では着々と地球を壊滅させる程の力を持つ史上最強のゾイドが復活しようとしていた。
反ネオデスメタル同盟軍の本拠地、ジェノスピノ、オメガレックスとの戦いを経たウィルたちは基地に戻り、倉庫ではシーザーたちの修復が行われていた。
そして、ウィルやストームたちは司令室で会議を開いていた。
「せっかく、ジェノスピノ、オメガレックスを倒したというのに、まさか、また帝国軍に回収されて、オマケにリセルまで取り返せないままになってしまったとは!」
「とはいえ、あのグラビティキャノンをまともに喰らったんだ。 暫くあの2体は出撃出来ないだろう。」
「幸い、今回の戦いで使用した弾数は2発で、まだ後、2発は残っているから、仮にあの2体が復活してもまた使用することは出来ないことはないが、あれ以上、グラビティキャノンの弾を作る技術は今の俺たちにはないから、かなり過酷になるかもしれん。」
「なら、その前にネオデスメタル帝国の戦力を弱まらなければならない!」
「しかし、厄介なのが、あのゾウ型ゾイドだ! おそらく、あれはエマとユリスを救出するために研究所に向かった時に出た霧のゾイドと間違いなく同一個体だ。
だが、性能は明らかに研究所の時より遥かに上がっていた! つまり、あれも完成したということだろう。」
「でも、リーダー、コマンダー! そもそもゾウ型のゾイドなんているんですか?」
「スミス、あんたはどう思う?」
「わしの研究資料じゃ、それらしきものが残っておらん! じゃが、ゾウはそもそも地球に存在する現世動物であり、惑星Ziにもゾウ型のゾイドは存在した。
いてもおかしくはないが、これだけの資料でもその情報が見当たらないということは、おそらく隠蔽された危険なゾイドの可能性が高い!」
「となると、今はそのゾウ型ゾイドには警戒すべき…ってことか。」
「それだけじゃない! あいつはジェノスピノやオメガレックスでさえ、前座と言った。
ということは、奴らが復活させようとしているZGはあの2体を遥かに上回るゾイドということだ! 何としても復活を阻止しなければ…」
「といっても、そのZGとやらの正確な情報がないから、今の俺たちに止める手段がないのだが…」
その時、エマが司令室に入り、
「どうした? エマ、」
「ウィル、大変なの! シーザーが世界を揺るがす脅威が迫っていると言って外に出たがっているの!」
「シーザーが!?」
「世界を揺るがす脅威だと!?」
帝都メガロポリスの宮殿、ベケット少佐、デーニッツ中将率いる帝国の連合軍は撤退し、ドクターマイルスの操る謎のゾウ型ゾイドによってジェノスピノ、オメガレックスは宮殿内で修復されていた。2体を見るタッカー元帥は、
「全く、敗北の原因がジェノスピノのライダーの裏切りとは! あのまま順当に行っていたら、陛下が勝っていたはずなのに! ところで、状況は?」
「2体とも内部は全くの無傷ですが、バイザーが破壊され、装甲にもダメージがあり、ジェノソーザーと荷電粒子吸入ファンが重力で押し潰されているため、完全修復には1ヶ月以上はかかるかと!」
「何としても早急に修理せよ!」
「は!」
「ところで、ドクターマイルスは?」
「ZG完成のための情報収集と反乱軍鎮圧のために例のZFでルメイ大将と共に出撃しました!
暫く使い物にならないジェノスピノとオメガレックスの代わりに私が反乱軍を始末すると元帥閣下に伝えてくれとおっしゃってました。」
「相変わらず、抜け目ない奴だ。後はあのZFがどこまで働けるか…だが! 後、皇帝陛下は?」
「陛下はジェノスピノのライダーの裏切りの影響でかなりイライラしてまして、そのライダーを処刑しろと何度も命じてます。 今は落ち着いていますが…」
「早急に処分すべきだな。 あの役立たずは! 完全に修復したら、代わりのライダーを探さなくては!」
「しかし、ドクターはまだ処分するなと仰っていますが…」
「何故だ!?」
「ジェノスピノのライダーには外すが、代わりに別のところで利用価値があるのだとか申しております!」
「(全く、あいつは何を考えているのだ? 使えない奴はさっさと処分すればいいのに!)」
「ですが、ジェノスピノのライダーの処分はドクター自らが責任を取り、陛下には既に処刑したと伝えたと仰っています!」
「そうか、まあ、いい! とにかく、ジェノスピノ、オメガレックスの修理を急がせろ!」
「は!」
宮殿の玉座の間にあるシャワー室で、ガネストはシャワーを浴びていた。シャワーを止めた後、ガネストは右拳を力強く壁に叩きつけ、
「せっかく、盛り上がってきたゲームをよくも邪魔しやがって! こんな屈辱、初めてだよ!!
でも、今度会った時はあのライガー君と一緒に八つ裂きにして息の根を止めてやるよ! フフフフフ、ハーハッハッハッハッハ!!」
エマからシーザーが世界を揺るがす脅威を察したことを知ったウィルたちはシーザーの直感を頼りに旧共和国の戦艦に乗って海に出た。ウィル、レイル、エマ、ユリスがシーザーの横にいるのを見たグラッドとストームは、
「それにしても、よくあの新帝国の連中がユリスを連れていくことを許可したな。」
「ユリスがあのシーガルとかいう連中に何度も説得して、その気迫に負けたのか、しぶしぶ許可したそうだ。」
「堂々と新帝国を宣言した指導者の割には随分肝っ玉が小さいんだな!」
「過去にユリスの先祖を皇帝に立てた真帝国の先導者の1人だった先祖もその程度の器だったって聞いている。」
「仮にネオデスメタルを倒してあの帝国が台頭したところで、ホントにまとまるのかね?」
「むしろ、余計混乱しそうな気がするが… それに俺たちにはそこまで協力的ではないし……」
「先が思いやられるな。」
「まあ、こちらもしぶしぶ参加を許可してしまったこともあるが…」
「殿下! エマちゃん! この天才科学者ドクタースミスがお二人をお守りしますから、ご安心ください!」
レイルとエマの隣に強引に割って入ったスミスを見たグラッドとストームは、
「もしかして、あいつら起用したのミスだったりして!」
「まあ、いないよりはマシだろう。」
シーザーが何か感じ取ったかのように頷いた。
「どうした? シーザー!」
シーザーが見詰めたその先にはすっかり廃れた貨物船のような巨大な船があった。ジャックに乗ったクリスがクワガノス隊を率いて中を調べた。
「どうだった?」
「特に変わりのない船です! ただ…」
「ただ、何だ?」
「物資や生活必需品、武器庫等があった辺り、ただの貨物船ではないようです。」
グルル…
その時、シーザーが何か感じ取ったかのように船に跳び移った。
「し、シーザー! どうしたんだよ!?」
ウィルやストームたちはシーザーの後を追いかけていき、シーザーは船の床を掘り起こし、そこには浸水した巨大な倉庫があった。
「この船にこんな倉庫まであるとは!」
「こりゃ、ただの倉庫ではなさそうだな!」
「グラッド、何か分かるのか?」
「そうだな、俺の予想が正しければ、この倉庫は潜水艇の倉庫だ! 見ろ、浸水した床に扉のようなものまである!」
「潜水艇? この船にはそんなものまであるのか!」
「それに、ただの貨物船にしちゃ、やたら、武器庫等、軍事的な物やもしもの時の生活必需品ばかりだ。
つまり、この船は貨物船に見せかけた亡命船ってわけだ!」
「亡命…ということはこの船は一体どこの国から、一体どこに亡命しようとしていたんだ?」
「さあな、だが、かつてのゾイドクライシスが起こったことを物語る遺物程古くはないから、旧帝国、旧共和国のものではないのは確かだ。
俺の推測が正しければ、おそらくこの船は数十年…いや、120年以上前のものだな!」
「だが、一体どこの国から?」
「クリス、この船に乗組員の遺体はあったか?」
「いや、骨一つも見当たらなかった。」
「つまり、この船の乗組員は全員、潜水艇に乗って船を捨てたらしいな。ということは、この船の下の海底に何かあるってことだ!」
「てことは、こっからは海中専用のゾイドでいかんというわけか!」
「ま、そういうことも想定して、こちらも潜水艇はあるし、しかも旧共和国が護衛にガブリゲーターたちもつけてくれたから問題はないが…」
「といっても、万が一、ガブリゲーターたちでも敵わない強力なゾイドが現れんとも限らない! シーザーたちを連れていけない代わりに一体でも多くの強力なゾイドがいないと…」
「リーダー、コマンダー!でしたら、私のキールもついていきます。」
「キールを?」
「私のキールは他のスパイデスと違い、唯一ミズグモの特性を持つ亜種です。水中での行動は可能です!」
「キールを連れていけるのは助かるが、キールだけでも安心は出来ないな!」
「待て待てーい! わしのグソックだって水陸両用の上に十分戦力になるわ!」
「そうだな。前みたいに囮としてう使えそうだし!」
「こらー! もういい加減にその役止めろ! それのせいでわしら、散々な目に逢って殿下やエマちゃん、ユリスちゃんにカッコいいとこ見せられなかったんじゃぞ!!」
「わかった、わかった! 連れていくよ! では、ジョンとスミスはキールとグソックで海底に入り、潜水艇に乗るメンバーは俺とストーム、ウィル、エマ、ユリス、それと…」
スレイマーズとアレックスが連れていきたそうに目をキラキラしてグラッドの方を向き、
「ええい、わかった! スレイマーズ、アレックス、アッシュも連れていってやる! ただし、余計なことはするな!
そして、クリスたち、残りのメンバーは引き続きこの船の調査と監視態勢を頼む。」
「了解しました!」
「よし、では、出撃する。」
キールとグソック、ガブリゲーター4体とウィルとストームたちを乗せた潜水艇は海底深くを潜った。深海にまで来たその時、エマが何か感じ取り、
「あそこから、ゾイド因子を感じます。」
キールが岩山の方を調べたら、そこに洞穴があった。
「どうやら、あそこに何かあるな!」
潜水艇とキール、グソック、ガブリゲーターたちは洞穴に入った。しばらく進んだ後、キールとグソック、ガブリゲーターはは陸に上がり、ウィルやストームたちも潜水艇から降りた。
「洞穴がこんなところに繋がっていたとはな!」
「どうやら、あの船の乗組員はここに来たようだな。 見ろ! あそこに潜水艇の残骸がある!」
グラッドが指差したその先には破壊された潜水艇の残骸があった。ガブリゲーターのライダーの兵士たちが潜水艇の残骸を調査し、グラッドに報告し、
「そうか、ここにも乗組員の遺体はなかったか… ということは、乗組員は潜水艇を捨て、この先に行ったということか!」
「この先に何があるか、わからないが、今の俺たちには進むしか選択肢はない。」
ウィルやストームたちがその場を離れた時、潜水艇のパーツが落ち、そのパーツには旧デスメタル帝国のエンブレムがあった。
海上では、クリスたちが船の内部を調査していた。
「物資はあらかた乗組員が全員持って行ったから、この船がどこの国かわからないが、ん?」
クリスが拾ったものはキーの一部のものだった。
「このキー、どこかで…」
その時、バタバタと同盟軍の兵士が現れ、
「隊長! 部屋のゴミからデスメタル帝国のエンブレムを付けたパーツが発見されました!」
「何!? まさか、この船はネオデスメタルの…」
その時、突然船に爆発が起こり、
「なんだ!?」
「帝国軍です! 帝国軍のスナイプテラ3SとキルサイスSS隊が攻撃してきました!」
「何!? くそ、まさか、この船はネオデスメタルが俺たちを引き付けるための罠だったのか!
にしては、偉い年代を経ているが…、まあ、考えたってしょうがない! 出るぞ!!」
クリスはジャックに乗って船から出た。船の上空では、マシンブラストしたキルサイスSSがカブター、クワーガ、クワガノスを一刀両断していた。
「くそ、やはりステルス仕様は強い! 行くぞ、ジャック、 進化 解放! エヴォブラストー!!」
スナイプテラ3Sに乗るルメイ大将はジャックを見て、通信を開き、
「キルサイスSS隊とスナイプテラ3S隊は反乱軍を、私はあのソニックバードの相手をする。」
「了解しました!」
「スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラストー!! アブソルートショット!!」
ジャックはルメイ大将のスナイプテラ3Sの攻撃を間一髪で避ける。
「ふ、間一髪で避けたが、私のスナイプテラ3Sはカーターのスナイプテラより強力だぞ!」
「その声は、ルメイ大将か! あの船は貴様らが俺たちを罠に嵌めるための差し金か!?」
「違うね、あれは我がネオデスメタル帝国の前身の遺産。だが、我々が欲しているものはもっと下にある!」
「まさか、ウィルたちに!」
「だが、貴様らがそれを知る必要はない! 貴様らはここでくたばるのだからな!」
クリスたちがルメイ大将率いる帝国軍と戦っていることを知らないウィルとストームたちは洞穴をずっと突き進んでいた。アレックスは呆れた顔で、
「かあ~、一体どこまで続くんだよ! この洞穴は! もうかれこれ1時間以上も歩いているんだぞ!」
怠そうなアレックスにアッシュとドクタースミス、スレイマーズは、
「だから、お前はアホなんだよ!」
「な、なんだと!」
「そうじゃ、エマちゃんと殿下にユリスちゃんを見るんじゃ! 全然疲れていないぞ!」
「俺たちもだ!」
「お前らはお呼びじゃねぇんだよ!」
それを見たストームとウィルは、
「あいつらは元気でいいな。」
「そうですね…」
「ん? どうした? 元気がないぞ。」
「いや、あのゾウ型ゾイドとあの船を見てから、何かイヤな予感がするんです。」
「イヤな予感?」
「確かなことは言えませんが、あの船とゾウ型ゾイドと何か関係があって、この世界を揺るがすんじゃないかと感じるんです。」
「お前の予感は外れてないかもしれないな。」
その時、洞穴から出口が現れ、そこには神殿やコロッセウムのような建築物や様々な人々の像等、古代の遺物に溢れた空間になっていた。
「この洞穴にこんなものまであるとは!」
「こりゃ、明らかにゾイドクライシスよりもっと古いものじゃな。」
「スミス、わかるのか?」
「わしの予想が正しければ、この建築物は今から3000年以上前に世界に君臨していた古代ギリシャやローマ帝国のものじゃな!」
「ローマ帝国?」
「うむ、その当時、世界最大の領土を誇った最強の帝国で、全ての道はローマに通ず、と言われる程の国家じゃった!」
「ねぇ、あれって…」
エマが指差した先にはある人物の像が立っていた。それを見たレイルは、
「この像って、僕の先祖の帝王ギャラガー一世の像だ!」
「周りにはそれを崇拝する民衆や演説を行う人物の像まである。てことは…」
「そうか、あの船は旧デスメタル帝国のものだったのか! つまり、お前の先祖が率いるフリーダム団に壊滅させられた後、ワイルド大陸から脱出し、ここに亡命して旧デスメタル帝国を復活させようとしたんだろうな。ここのローマ帝国のように!」
「それが今のネオデスメタル帝国ってわけか…」
「まさか、ネオデスメタル帝国の起源の場所に来てしまうなんてな。」
「ちょっと待って!」
「どうした? レイル、」
「確か、ネオデスメタル帝国が建国されたのは80年前だったはず! けど、あの船は少なくとも120年以上は経っていた。ここがネオデスメタルの起源なんて聞いたこともないし、こんなところに来るのも初めてだ!」
それを聞いたグラッドは驚愕し、
「おいおいちょっと待て、あの帝国にいた俺でもそれは聞いていないぞ! それにネオデスメタルを建国した初代皇帝はお前の親父だって聞いた。もしそれが本当なら、以前俺たちがデスロッキーで倒したギャラガー三世はかなりの高齢のはず。だが、ジェノスピノに乗っていた奴は少なくとも40代くらいだった!」
「だとすると、俺たちが戦ったギャラガー三世は…」
その時、エマが突然足をすくみ、ガタガタ震えた。ユリスはエマのところにそっと寄り添い、
「エマちゃん、どうしたの?」
「どうして、どうして、あれが!」
震えるエマの様子を見たウィルは目に入ったギャラガー一世像の後ろにある紫色に発光したコアの欠けた一部を見つけた。
「もしかして、エマが怖がっているのはあれか!」
ウィルが像を避けながら、近づこうとしたその時、コアの一部から紫色の霧が現れ、それにちょっと触れたウィルは苦しみ出した。
「どうした? ウィル!」
「く、苦しい!」
ウィルの元に駆け寄ったストームはギャラガー一世とその民衆像の周りに大量の白骨化した遺体と石化したゾウ型ゾイドのパーツを見つけた。
「まさか、ここの連中は皆あれにやられたのか! とにかく、皆、あれに近付くな!」
ストームがウィルを抱き抱えて離れた時、コアの一部から出た紫色の霧はそのまま広がっていた。
海上の船でルメイ大将率いる帝国軍のキルサイスSSと戦っているシーザーは苦しんだウィルを感じ取り、そのまま海に飛び込み、続けてキングやギルラプターエンペラー、ベティ、レックスも飛び込んだ。それを見たクリスは、
「おい、シーザー!どこ行くつもりだ!?」
「どこを見ている!」
「くそ、こいつだけでも忙しいのに!」
ジャックはスナイプテラ3Sの攻撃を避けながら、戦い、海に飛び込んだシーザーたちは犬かきをしながら、深海に入っていった。
コアの一部から放たれた紫色の霧はギャラガー一世像の周囲に広がり、そこに生えていた花や草木を刈らしていた。
「あのコアは俺たちを絶対にあの像周辺に近付けさせないつもりのようだな! しかし、あれはゾイドコアなのか?」
「俺の予想が正しければ、おそらくあれが帝国軍が復活させようとしているZGのゾイドコアの一部だ!」
「その通り!」
その時、周囲から男の声がした。
「それにしても、ZGの欠けた決定的なピースが我がネオデスメタル帝国の前身である旧デスメタル帝国が帝国復活を宣言した記念すべき場所にあったとは、灯台もと暗しとは正にこのこと。」
ストームたちの前に現れたのは特殊なスーツを見に纏ったドクターマイルスだった。そしてその横には銃を持った機械兵たちもいた。
「まさか、都合よく貴様らがここに来るとはな、だが、貴様らはここで排除してやる!」
「ドクターマイルス、確か、貴様もネオデスメタル帝国の建国者の1人だったな! そして、初代皇帝ギャラガー三世が皇帝になる前からの付き合いとも聞いている。
だが、ネオデスメタルが建国されたのは80年前なんだろ! なのに、何故、俺たちが倒したギャラガー三世は全く歳を取っていないのだ? そして、貴様が復活させようとしているZGとはなんだ?」
「貴様らがそれを知る必要はない! 何故なら、貴様らはここで死ぬのだからな!」
パチン!
ドクターマイルスが指を鳴らしたその時、ズシンズシンと巨大な足音がし、その後ろから紫のラインが入った見たこともないような巨大な白いゾウ型ゾイドが何体か現れ、先頭のゾウ型ゾイドには他のゾウ型ゾイドと違い、紫のライン以外は黒色になっていて、鋭利な牙を持ち、背中にはレーザー砲のようなものが搭載され、その横にはオメガレックスと同じA-Z三連誘導ミサイルが装備されていた。
先頭のゾウ型ゾイドを見たウィルは脳内で南極で凍り付けにされたゾウ型ゾイドが浮かび上がった。
「そうだ、あれだ! あの時のゾウ型ゾイドだ!!」
「遂に謎のゾイドのお出ましってわけか!」
「冥土の土産だ、特別に教えてやろう。 これはZGに仕える卷族ゾイド、コードネームZF、またの名をゼロファントス!
そして、先頭は南極で凍り付けにされ、6500万年以上前に封印されたゼロファントスを私専用に改造したもの、後ろの取り巻きはそのデータと発掘したパーツを元に複製、復元した私の護衛だ!
グラビティキャノンを喰らったおかげで、ジェノスピノ、オメガレックスはしばらく使い物にならなくなったが、私のゼロファントスはその空きを十分に補える程の戦力を持つ!
といっても、貴様らの戦力はそのスパイデスとグソックに旧式のガブリゲーターのみ、更に例のライガーは不在、しかもそのライダーはバイオアシッドの毒に犯され、戦闘不能、これでは話にならんな!」
「バイオアシッド? 貴様、ウィルが何故苦しんでいるのか、知っているのか!?」
「バイオアシッドはZGとゼロファントスのみ持っている特殊な毒、並みの人間とゾイドが喰らったら、ものの数分で絶命する。
おそらく、ここの同士たちはフリーダム団によって壊滅された後、亡命したここにあるZGのゾイドコアのパーツを護衛するゼロファントスを旧デスメタルの戦力にしようとしたが、バイオアシッドの毒にやられて全員絶命してしまったんだろうな!
実際、復元途中で死んだ研究員も何人かいたよ。だが、それが私の代でようやく完成されたわけだ!」
「くそ、早く、クリスやクルーガーに応援を呼ばないと!」
通信機を出すグラッドにドクターマイルスは、
「おっと、貴様らの通信機はここでは使い物にならん!ZGのゾイドコアのパーツの影響で、ここでは外とも連絡はつかない。それに、万が一のことを考えて、遠隔操作しているディメパルサートランスの電磁波で電波妨害を行っている! 絶対に助けは来ない。」
「何!?」
「後、貴様らがここに来ることを想定して、外の反乱軍の討伐にはルメイ大将に任せている。今頃、連中は船と共に御陀仏だな!」
それを聞いたウィルは、腕をブルブル震え、
「貴様ー!! う…!」
ウィルはドクターマイルスに殴りかかろうとしたが、再び苦しみだす。エマはウィルのところに駆け寄り、そっとウィルの肩に触る。
「無駄だ! 貴様のゾイド因子ではバイオアシッドの毒を治すことは出来やしない。」
「キール!」
キールがゼロファントスに飛び掛かろうとするが、ドクターマイルスが指を鳴らし、ゼロファントスはA-Z三連誘導ミサイルをキールの横の壁に撃ち込み、キールは崩れた岩で前の視界を遮られ、そして、全ての岩が落ちたその瞬間、ゼロファントスの長い鼻が現れ、それでキールは投げ飛ばされてしまう。
「キール! くそ、」
「ならば、いけ、グソック!」
グソックは回転しながらゼロファントスに突っ込むが、ゼロファントスは易々と鼻で投げ飛ばしてしまう。
「わ、わしのグソックが…」
「愚か者め! そんな虫けらごときで、私のゼロファントスと互角に渡り合えると思ったか!!」
ドクターマイルスと機械兵がウィルたちに銃を向けたその時、壁をぶち破ってシーザーやキングたちが現れた。シーザーはブルブルと身体を揺らした後、ウィルたちの前に立った。
「ライガー!? まさか、あの海中を自力で泳いで行ったというのか!?」
「シーザー、来てくれたんだな!」
シーザーはウィルの方を向いてゆっくりとうなずいた。
「よし、やってやる!」
「駄目よ! ウィル、そんな身体じゃ…」
「大丈夫だ! これくらいの傷、どうってことはない。」
ウィルは苦しみながらもそのままシーザーに乗り、攻撃の態勢を取った。
「エマと姉さんは安全なところに避難して!」
ギルラプターエンペラーに乗ったレイルはエマとユリスを安全な場所に誘導し、ストームたちもキングたちに乗った。
「やれやれ、せっかく楽に始末出来ると思ったのに、結局こうなってしまったか!」
パチン!
ドクターマイルスが指を鳴らした後、マイルスの来ている特殊スーツが身体全体を覆い、顔も帝国軍兵士が装着しているマスクで覆われ、すかさず、機械兵たちと共にゼロファントスに乗った。
「大事なお宝があるから、ここじゃ、ゼロファントスのワイルドブラストは存分に使えないが、私のゼロファントスだけで相手をしてやる!」
「お前がどれだけの相手でも、俺とシーザーが阻止する! 行くぞ、シーザー!?」
グオォー!!
「待て、ウィル! そんな状態じゃ、戦えない。ここは俺たちに任せろ!」
「で、でも!」
「俺たちを信じろ! 皆、ワイルドブラストだ!!」
「進化 解放! エヴォブラストー!!」
一斉にワイルドブラストしたキングたちを見たドクターマイルスは、
「全員でかかるつもりか、まあ、いいだろう。」
「皆、行くぞ!」
「真・音速殺!!」
ギルラプターエンペラーは超スピードでドクターマイルスのゼロファントスの背後に回り、攻撃しようとする。
「ギルラプターエンペラー、帝王ギャラガー一世陛下が初めて帝王になられて手にしたギルラプターの亜種、ギルラプターの中でもパワー、スピード共に優れた正に帝王が持つにふさわしいギルラプター、だが…」
ゼロファントスは瞬時に後ろ足でギルラプターエンペラーを蹴り、それを後ろにいたゼロファントスが長い鼻で捕らえた。
「レイル!」
「パワーに偏った戦いかたでは、必ず、隙が生じる。」
「今、助けてやるぞ! ファイナルガトリング!!」
「ガトリングフォックス、かつて我がネオデスメタル帝国が復元し、所有していたゾイド。
光学迷彩を活かした隠密性に優れ、遠距離戦ではどのゾイドよりも強力、だが、近距離戦はそこまで強くはない!」
そう言ったドクターマイルスはゼロファントスのイヤーシールドを広げ、レックスの攻撃を全て防いだ。
「何!?」
「スパイダーポイズン!」
「撃転棘!!」
「スパイデスは他の昆虫より汎用性が高いクモ種、クモはその汎用性の高さを活かしてあらゆる獲物を瞬時に捕らえ、強力な昆虫でも苦戦に追いやることができる。だが、攻撃力は極めて低い!」
ゼロファントスは鼻でキールを捕らえた。そのままグソックも攻撃しようとするが、
「そして、グソック、頑丈な装甲による高い防御力を持ち、他のゾイドより小型であるため、小回りがよく利き、活動範囲も広い。だが、攻撃のリーチは短い!」
ゼロファントスは鋭利な牙をでグソックをブッ刺した。貫通まではいかなかったが、ゼロファントスの牙がグソックの装甲にかなり食い込んだ。
「今、行くぞ! キングオブクローブラスト!!」
「ファングタイガーのパーツを受け継いだワイルドライガー、この面子では最強で、かつて帝王ギャラガー一世陛下のデスレックスさえも倒したライダー共に隙のない完璧なゾイド! だが…」
ゼロファントスは鼻で捕らえたキールと牙で食い込んだグソックを瞬時にキングの攻撃の盾にし、キングは慌てて、攻撃の手を緩めた。
「仲間の命を手にかける非情さがないのが、貴様の弱点だ!」
「く!」
ゼロファントスはそのままキールとグソックをレックスに向かって投げ飛ばし、更にキングに三連誘導ミサイルを放ち、そのまま突進してキングをぶっ飛ばした。
「フフフ、私がしばらく前線に出ない間、貴様らのゾイドのスペックは全て知り尽くしてあるのだから、弱点も把握している。
だから、貴様らは私には勝てない!」
「やっぱり、俺が出なきゃ! 行くぞ、シーザー!」
グルル…
シーザーは心配そうな表情でウィルを見た。
「シーザー! 進化かい…、う!」
ウィルはゾイドキーを差し込もうとするが、右手が痺れてキーを落としてしまう。それを見たドクターマイルスは、
「ふ、そんな状態で私と戦うつもりか? ま、どうせ、貴様の命は後僅かだろうな!」
「それでも、俺は最後まで戦う!」
護衛のゼロファントスはギルラプターエンペラーを鼻で締め付ける。
「ぐ、ぐわ~!!」
「レイル!!」
「レイルを放せ!」
「それは出来ん! こいつはもう必要のない人形、いたら、目障りなだけだからな!」
「許さねぇ!」
シーザーはA-Zグレネードランチャーを撃ち込むが、ゼロファントスはそれを全てイヤーシールドで防いだため、びくともしない。
「バイオアシッドの影響で手が使い物にならなくなって上手くキーを差し込めず、ワイルドブラストが出来ないから、他の武装で対抗しようとしたつもりだろうが、そんなものは私には通用しない!
ま、仮にワイルドブラストしても勝つことは不可能だがな!」
「う…」
ウィルは更に苦しみだし、シーザーもウィルのこと心配になって戸惑ってしまう。
「さて、遊びは終わりだ! この私のオリジナルのゼロファントスのワイルドブラストを喰らって死ぬがいい!
ゼロファントス! 原始 解放! ゼロブラストー!!」
コクピットにいるドクターマイルスの特殊スーツが紫色に発光したと同時に、ゼロファントスの背中のレーザー砲も紫色に発光し、照準をシーザーに向けた。
「喰らうがいい ディゾルレーザーキャノン!!」
シーザーはすかさず、Eシールドを展開し、ゼロファントスのレーザーキャノンを防ぐが、レーザーキャノンはじわじわとEシールドを溶解し、遂にEシールドに穴をこじ開けてシーザーの装甲を貫いた。
「ウワァー!!」
グオォー!!
ウィルとシーザーは悲鳴を上げ、そのまま倒れてしまう。
「終わりだな。さて、2度と復活しないよう、バラバラに解体してやろう!」
ゼロファントスがシーザーの元に歩いたその時、
グオォー!!
突然、ギルラプターの咆哮がし、何処からか、ギルラプターが影から現れ、回転しながら、ギルラプターエンペラーを捕らえているゼロファントスに強烈な一撃を加え、ゼロファントスはギルラプターエンペラーを放し、すかさず、ギルラプターエンペラーはその場を離れ、ドクターマイルスのゼロファントスの前に立ちふさがり、同時にもう一体のギルラプターも現れた。
「何だ? 貴様は!」
現れたギルラプターは赤い色をし、ソニックバードのジャックと同じ足になっているギルラプターだった。赤いギルラプターを見たストームは何処かで見たような目をし、
「あのギルラプター…まさか!」
赤いギルラプターはドクターマイルスのゼロファントスに向けて声高に咆哮を上げた。
グオォー!!
To be continued
次回予告
海底神殿で、ドクターマイルスの操るゼロファントスの襲撃に合い、苦戦するウィルとシーザー、そんな時、レイルのギルラプターエンペラーとは違う赤いギルラプターに助けられる。
ウィルたちを助けた赤いギルラプターのライダーはストームの旧友で、かつてフリーダム団のメンバーで、元旧デスメタル四天王、瞬撃のドレイクの子孫で、大企業の社長のカールトン・ドレイクだった。
ウィルたちは彼に保護されるが、彼はネオデスメタル帝国と同盟軍との戦争には非協力的で、デスレックスの謎を知る中で、あるゾイドの謎を知ってしまい、ドクターマイルスに追われ、密かに基地に改造した別荘に隠れ暮らしていた。
そして、彼から語られるZGの正体とは!?
次回「ギルラプターの男」
本能を呼び覚ませ、ライガー!!