ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のすのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていった。
 だが、ネオデスメタル帝国では着々と地球を壊滅させる程の力を持つ史上最強のゾイドが復活しようとしていた。


第43話「ダブルギルラプター」

 ルメイ大将率いるスナイプテラ3SとキルサイスSS隊の爆撃で破壊されたドレイクの別荘、ドクターマイルスと機械兵はゼロファントスから降り、ウィルやシーザーたちの亡骸を探していた。

 しかし、どこを探してもウィルとシーザーらしき姿は見当たらなかった。

 

 「どういうことだ? あれだけの爆撃を喰らって助かるはずは…」

 

 その時、機械兵が何か見付けたことに気付き、そこにいった先には非常口の扉があった。そして、扉の先に岩山が崩れ、道が塞がっていた。

 

 「なるほど、シェルターが使い物にならなくなった代わりに非常口から脱出したということか! だが、入口は塞がれている。別の出口を探してそこを封鎖すれば、奴らは袋の鼠だ!

 聞こえるか? ルメイ大将、別の出口を探して奴らを挟み撃ちにしろ!」

 

 「了解!」

 

 「ふ、ま、どちらにせよ、奴らに逃げ場はない!」 

 

 その時、いきなり後ろからギルラプタージョーカーが現れ、前足の爪をドクターマイルスの首に近付け、いつでも首を切れる態勢を取った。そして、複数現れたギルラプタージョーカーの内の一体からガネストが降り、ドクターマイルスの元に駆け寄った。

 

 「これは、皇帝陛下! 一体何の真似でしょうか? いけませんね~。皇帝たるお方が勝手に帝都から出ていかれては…」

 

 「随分、熱心に反乱軍の鎮圧に力を注いでいるらしいけど、駄目だよ!ボクを仲間はずれにしちゃ!」

 

 「ですが、陛下のオメガレックスはグラビティキャノンを喰らってしばらく使い物にならない。そのギルラプターでは反乱軍を制圧するのは危険すぎます!」

 

 「だから、ボクはイライラしているんだよ! あのリセルとか言うやっぱりにせっかくのボクのゲームを邪魔されたんだよ!

 おかげで、オメガレックスは使い物にならなくなって、タッカーから宮殿にいるよう言われてあの宮殿に留まるはめになっちゃったんだよ!

 つまんないんだよ! ボクはね。じっとしているのが嫌いなんだよ。 毎日戦うという感触が欲しいんだよ!!」

 

 「それで、私とどういったゲームを?」

 

 「ちょうどあいつらこん中に隠れているんでしょ? だったら、ボクとふたてに別れてそこで会った奴らを先に倒した方がゼログライジスを手に入れることが出来る! 面白そうでしょ!」

 

 「何故、ゼログライジスを?」

 

 「あれ完成したら、誰に与えるつもりなの? どうせ、ボクにくれるつもりはないんでしょ?」

 

 「何故、そう言い切れるんです?」

 

 「だって、前に父上はボクに皇位を譲る前にジェノスピノで出撃したけど、ジェノスピノってゾイドクライシス後に復元した後でも一度あのライジングライガーに負けているんだよ! 

 父上がそんなことも知らず、同じライガーに負けるわけないじゃない! てことは、もしかして父上はまだ生きてるんでしょ?」

 

 「それは後に分かります! それよりまずはこのゲームわ楽しみましょう。」

 

 「そうだね! じゃあ、このゲームでボクが勝ったら詳しく聞かせてもらうよ。でも、皇帝はボクなんだから、ゼログライジスもボクが貰うからね!」

 

 ガネストはギルラプタージョーカーに乗り、他のジョーカーも率いてその場を去った。去っていくジョーカーを見るドクターマイルスは、

 

 「ギャラガー四世陛下、あなたは確かにこのネオデスメタル帝国の現皇帝ではありますが、それでもあなたは表向きの支配者に過ぎません。 いずれ、わかるときが来ます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を失っていたウィルが目覚め、目を開けたその場所は洞窟の中で、目の前にシーザーがいて、その横にはストームとキングもいた。

 

 「気が付いたか。」

 

 「ストームさん、ここは?」

 

 「ドレイクが用意していた非常口から逃げた時、帝国軍による爆撃の爆発の影響でどうやらここまで落っこちたようだ。

 だが、シーザーがお前を必死で守ったおかげで、大した怪我ではなかった。」

 

 「そうか、俺を守ってくれたんだな。ありがとう、シーザー。」

 

 ウィルのお礼の言葉にうなずくシーザー、

 

 「あ、レイルにエマに皆は!?」

 

 「どうやら、あの爆発の影響で皆離れ離れになっちまって、今、ここにいるのは俺とお前だけってとこだ。」

 

 「皆…」

 

 「そう、へこたれるな! 修理した通信機には発信機能も付いているから、他の皆の場所は大体把握できる。直ぐに見つかるだろう。

 ただ、ここがどの道に繋がっているか不明だから、ちょいと面倒な航路になるが、今の俺たちには立ち止まる余裕はない! わかるな。」

 

 「はい! ゼログライジスの復活を阻止し、皆の笑顔を守るために俺たちは戦うんです。」

 

 「よし、まずはここから脱出することだな。行くぞ!」

 

 「あ、あの…」

 

 「どうした? ああ、ドレイクのことか! 心配するな。ああ見えてあいつは結構いい奴だ。ただ、不器用なだけだからな。ちゃんとレイルやエマたちのことも考えている。心配するな。」

 ストームの言葉にウィルはうなずき、シーザーと共にストームとキングの後についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストームとウィルのいるところから少し離れた場所にユリスが気を失っているエマを起こした。

 

 「エマ、エマ!」

 

 「う…ユリスさん。 は! レイル! ウィルたちはどこにいるの?」

 

 「わからない…でも、皆を探さなきゃ!」

 エマとユリスが皆を探そうとしている近くに小型昆虫型のスパイゾイドがその様子を見ていて、映像を通してドクターマイルスが見ていた。

 

 「ふ、あの小娘2人がライガーのガキ共と離れているのは好都合。

 そうだ! あの小娘を捕らえて少しゲームを面白くしてやろう。 ルメイ大将にキルサイスSSをこちらに寄越すよう伝えろ!」

 

 「は!」

 

 「後、それと、帝都のタッカー元帥殿に奴をこちら連れていくよう伝えろ! そろそろ奴にも名誉挽回のチャンスを与えてやらなきゃな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィルやストームたちと別れてしまったジョンはカティアや相棒のキール、ベティと共に洞窟を歩いて行った。カティアは心配そうに、

 

 「ウィルや殿下、エマたちは大丈夫かしら?」

 

 「大丈夫だって、あいつらはもう昔のあいつらじゃない。」

 

 「それはそうだけど…」

 

 「とにかく、今は俺たちはあいつらを信じて探すしかない。それにリーダーやコマンダーのおかげで発信器機能がついた通信機が使えるようになったから、それを便りにすればすぐ見つかる。元気を出せ!」

 

 「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジョンとカティアがウィルたちを探している中、グラッドはスミス、スレイマーズと一緒になって洞窟を突き進んでいた。グラッドは少し不満そうな顔で、

 

 「たく、よりによってなんで俺がこいつらと一緒になってしまったんだ?」

 

 「そう言うな、ワシらなんか、殿下やエマちゃんにユリスちゃんともはぐれてしまったんじゃぞ!

 おお~、殿下~、エマちゃ~ん、ユリスちゃ~ん! どこにおるんじゃ!!」

 

 スレイマーズたちは、

 

 「もしかして、殿下たち、リーダーと一緒になるのが嫌で、わざと離れたんじゃないかね?」

 

 「言えてる!」

 

 「だまらっしゃい! ワシの殿下に対する忠誠心は絶対じゃ! 殿下やエマちゃんがワシを見捨てるわけがなかろう!」

 

 「それは、忠誠心ではなく、ロリショタコンでは…」

 

 「やかましいわ!!」

 

 「ええ加減にしろ!お前ら! たく、先が思いやられるぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストームとウィルのいるところから少し離れたところで、レイルが気を失っていて、目を覚ましたら目の前にギルラプターエンペラーが心配そうに見つめ、その横にはドレイクとジャンがいた。

 

 「気が付いたか!」

 

 「こ、ここは? ! エマ、姉さんは!?」

 

 「俺の別荘の非常口に続いている洞窟だ。爆撃の衝撃で他の連中と別れたみてぇだが、ところでエマと姉さんってもしかしてあの女2人か?」

 

 「そ、そうだけど…」

 

 「ふ~ん、お前、惚れてんだな!」

 

 「そ、そんなんじゃない!」

 

 「あの帝王ギャラガー一世の血を引く皇帝ギャラガー三世のせがれのお前にもそういう一面もあるなんて意外だな!」

 

 「ば、馬鹿にしているのか!?」

 

 「んなわけねぇだろ。 ただ、あれだけ最強ゾイドに固執し、世界を手中にしようとしたギャラガー一世、三世のせがれが人一倍に恋愛するなんて思わなかったからな。」

 

 「エマと姉さんが帝国にいたから、一緒になっただけだ。」

 

 「ふ~ん、随分可愛いじゃねぇか。」

 

 「う、うるさい!」

 

 「まあ、いいや! 俺はこの辺で失礼させてもらうぞ。」

 

 「ちょっと待ってよ!僕たちと一緒に行くんじゃないのか?」

 

 「お前があのギャラガー一世と同じ奴じゃないとしても、所詮、お前はギャラガー一世の血を引く皇子、しかも、そのギルラプターは俺のジョンの兄弟の仇でもある。

 そんな奴と行動する気もないし、同盟軍に入る気もない。それにお前たちを助けたせいで、俺の別荘の場所を特定された上に、破壊されちまったからな。 これ以上、お前らと関わるのは後免だからな。」

 

 レイルは自分を見つめるエンペラーを見て、

 

 「確かに僕のギルラプターはお前のジョンの兄弟を殺した。でも、それは、帝王ギャラガー一世に仕方なく従ってやっただけのこと。

 それに僕はギルラプターと一緒になってから、僕は世界を平和に導くために力を付けてきて、一世のやり方を正すためにここまで来たんだ!」

 

 「でも、貴様もそのギルラプターみたいに父親のギャラガー三世に従って、他の反乱軍を潰してきたんじゃないか? お前に潰された反乱軍は山ほどいるって聞いたぞ。」

 

 「そ、それは…」

 

 「皇子やエンペラーの名を持っても所詮、エンペラーの地位にいる者の操り人形ってわけか…」

 

 その時、突然、壁の上に張り付いている謎の影がレイルを襲った。ギルラプターエンペラーは咄嗟にレイルの後ろに周り、影を叩き落とした。影の正体はギルラプタージョーカーだった。

 

 「へぇ~、よく気付いたね。ま、これぐらい当然か!」

 

 目の前に無数のギルラプタージョーカーが現れ、先頭のジョーカーのコクピットにはガネストが乗っていた。

 

 「お前は、ガネスト!」

 

 「ガネスト? そうか、こいつが現皇帝ギャラガー四世か!」

 

 「探したら、まさか、ボクの劣化コピーのお前と出会うなんてね! ちょうどよかった。ボクよりオリジナルに近い存在なんて許さないから、正直キミは目障りだからね。 ここで死んでもらうよ!」

 

 「僕はお前の劣化コピーなんかじゃない! 僕は世界を平和にするためにネオデスメタル帝国の皇子としてここまで来たんだ! そう、皆とゾイドが共に手を取り合う世界を!」

 

 「なにそれ? 正義面した平和主義のつもり。おめでたいね~。それもあのエマとかユリスとかいう小娘のせい?」

 

 「彼女と姉さんには関係ないだろ!」

 

 「恋する皇子か…だから、お前は帝王風格がないんだよ!」

 

 「う、うるさい! 僕は平和のために力を使うんだ!」

 

 「平和、平和なんか言ったって、結局皆また戦争するやるに決まっている! だってそうだろ? ゾイドクライシスの地球と惑星Ziじゃあ、帝国、共和国がずうっと戦争やってるし、その前の地球だって結局戦争してる。

 人間なんて結局戦わなければ済まないもんだよ!戦うために生まれたゾイドだってそうさ。戦いのない世界なんてないんだよ。 戦いを無くすなら、絶対的な力を持つ者が世界を支配するしかない。そう、このボクのようにね!」

 

 「違う! そんなのは平和じゃない。ただの圧政だ!」

 

 「キミもそんな甘い考えを捨てて、ボクのように支配するための力を持てばいいんだよ!

 もしかして、キミは自分が間違っていると思ってボクと帝国と戦うことに躊躇しているんじゃない?」

 

 「違う!」

 

 レイルはすかさず、ギルラプターエンペラーに乗り、

 

 「行くぞ、ギルラプター!」

 

 ギルラプターエンペラーはギルラプタージョーカーに飛び掛かるが、ジョーカーは難なくその下に回って、後ろに周り、、身体を1回転して後ろ足でエンペラーを蹴った。

 

 「無理無理、キミじゃあ、ボクを倒すことは出来ない。」

 

 「くそ、 ギルラプター、もう一度行くぞ!!」

 

 ギルラプターエンペラーはジョーカーに猛スピードで突進し、瞬時に後ろに回って攻撃しようとするが、ガネストは不敵な笑みを浮かべ、ジョーカーはその場から動かず、後ろ足でギルラプターエンペラーを再び蹴った。吹っ飛ばされるギルラプターエンペラー、

 

 「何でだ? 何でギルラプターの攻撃が通用しないんだ?」

 

 「確かにパワー、スピード全てにおいてボクのギルラプターよりキミのギルラプターの方が勝っている。でもそれでもボクには勝てない。」

 

 「ならば、斬り刻め、ギルラプター! 僕の魂と共に、本能 解放! ワイルドブラストー!! 真・音速殺!」

 

 ギルラプターエンペラーは目にも止まらぬスピードでジョーカーの周りを走り、ジョーカーに横から攻撃するが、ジョーカーはクルっと身体を一回転し、尻尾でギルラプターエンペラーを凪ぎ払う。

 

 「1回目は真正面から、2回目は後方から、そして、今ので横から来ることぐらい、ボクとギルラプターは既に読んでいたんだよ!

 キミがボクに勝てない理由その一、経験の差。 キミもそのギルラプターで何度も反乱軍と戦ってきたけど、ボクとこのギルラプターは実戦に加え、ありとあらゆる全てのゾイドと戦い、全てのゾイドの能力と攻撃パターンも全て記憶した。その経験の差があって、キミとそのギルラプターの攻撃パターンなんて直ぐわかるんだよ!」

 

 「くそ!」

 

 ギルラプターエンペラーは尚もジョーカーに攻撃するが、ジョーカーは難なく避け、

 

 「勝てない理由その二、 非情さがない。 キミのギルラプターはボクの前世の一世に従って同種のギルラプターを殺してから、それがトラウマになって他のゾイドを殺すことをかなり躊躇していて、キミもあの小娘に感化されてゾイドはおろか、反乱軍の兵士すらも殺さなかった。

 けど、ボクにはそんな迷いはない。一世だってそうやってきた。だから、ボクも一世や父上のように強い! いや、それ以上だね。」

 

 「そんなの違う!」

 

 「勝てない理由その三、キミは力を求める理由が弱すぎる。実現もしない平和主義を掲げて力を求めたってどうせ人間はそれ以上の力を求めてまた戦争するさ!

 力はね、何かを支配するために与えられるものだよ! 人間なんてのはね、支配されないと何も出来ないし、上に立たないと自分のやりたいことができない。支配するものがいなくなったら、従うものが無くなって混乱する。それが戦争の火種になる。

 だったら、支配するために力を求めればいい! そうすれば、世界を自分の思いのままに出来て、自分が最強だっていうことが証明でき、逆らう者は皆滅ぼせばいいんだ。」

 

 「そんなの平和じゃない!」

 

 「どうかな? 父上だってそうキミに言ってたんじゃないかな?」

 

 ガネストの言葉を聞いて、レイルはギャラガー三世が幼いレイルに言った言葉を思い出した。

 

 「(息子よ。正義の名と皇帝の地位は絶対的な力を持った者のみ許される称号。 その絶対的な力を持つ者が世界を支配した時、真の正義と平和が生まれる。

 私は更なるな力を手に入れ、混沌に満ちたこの世界に平和をもたらす。だが、それにはもっと力が必要だ。 息子よ。私に力を貸してくれ。)」

 

 「(はい、父上!)」

 

 父であるギャラガー三世の言葉を思い出したレイルは何も言い返せなくなった。

 

 「そ、それは…」

 

 「キミも自分が間違っていることに気付いてて、だから弱いんだよ!」

 

 ジョーカーは猛スピードで近付き、ギルラプターエンペラーを叩き落とした。

 

 「うわぁ!」

 

 「キミごときにデスブラストを使うまでもないね。」

 

 更に追い討ちをかけるようにジョーカーはギルラプターエンペラーを踏みつけ、そのまま蹴飛ばした。

 

 「ん?」

 

 その時、ガネストは壁際にいたジャンとドレイクを見つけた。

 

 「キミ誰? その赤いギルラプター…ああ、思い出した! 確かキミ、ボクの前世の部下だった…確か…春菊の…」

 

 「瞬擊だ!!」

 

 「ああ、そうそう、そうだった! 瞬擊のドレイクね。 まさか、その子孫のキミがここにいるなんて思わなかったよ。

 どう、せっかくだから、ボクの帝国に来ない? 面白いよ。 ボクの前世が率いていた帝国よりもっと強大になってもっと面白くなったし…

 それとも…そこの出来損ないの兄と一緒にボクに逆らって戦う?」

 

 「ふざけるな! 俺の先祖は貴様の前世に散々な目に遭わされ、ジャンの兄弟分のギルラプターだって殺された。

 貴様らとそしてギャラガー一世の血を引くそのガキと手を組むつもりはねぇ! もちろん、同盟軍もな!」

 

 「あ、そ、残念。 じゃあ、そいつに手を貸すつもりがないなら、ボクの邪魔はしないでね!

 せっかくのゲームを楽しめなくなってしまうからね。でも、そいつを殺したら、次はキミだよ。そのギルラプター、随分強そうだし。」

 

 ジョーカーはギルラプターエンペラーに近付き、左前足でエンペラーの首を掴み、そのまま両前足で首を絞めようとする。

 

 グオォ~!!

 

 悲鳴を上げるエンペラー、

 

 「ギルラプター! くそ、くそ!」

 

 「どうしたの? もっと本気出してよ! じゃないと楽しめないじゃん!」

 

 エンペラーは後ろ足でジョーカーの顔を思いっきり蹴り、ジョーカーは怯んで、前足を外し、エンペラーはそこから脱出した。

 

 「大丈夫か! ギルラプター?」

 

 グルル…

 

 レイルの言葉に応えるようにうなずくエンペラー、

 

 「う~ん、今のはちょっと効いたよ。でも、ボクにはそれほど刺激的じゃなかったな! せっかくワイルドブラスト出来て、アーミテージのスティレイザーを倒したっていうのにその程度なの?」

 

 「うるさい!」

 

 「やっぱりキミは甘すぎる。だから弱いんだよ!」

 

 「違う!! ウワアァー!!」

 

 猛スピードでジョーカーに突っ込むエンペラー、しかし、ジョーカーはくるっと身体を1回転し、そのままエンペラーの背中に乗って叩き落とした。

 

 「ほら、直ぐそうやって感情的になる。何かを守るために戦うより、ただ、自分の思い通りにすることだけを考えれば、ずっと楽になれるよ!」

 

 ジョーカーに苦戦するエンペラーを見たドレイクはため息をつき、

 

 「行くぞ、ジャン! これ以上奴らと付き合うのは後免だ。」

 

 しかし、ジャンはドレイクをじっと見つめ、一歩も動こうとしない。

 

 「どうした? 行くぞ。」

 

 グルル…

 

 ジャンは強い眼差しでドレイクを見た。

 

 「お前…まさか、あいつを? け、仕方なくやったとはいえ、所詮奴はギャラガー一世に従ってお前の兄弟を殺した奴だぞ。助ける必要なんか…」

 

 グルル…

 

 ジャンは尚もドレイクの方を目を剃らさず、訴えかけるように見詰めた。ドレイクはジョーカーの猛攻を受けるエンペラーの方を見て、

 

 「く…」

 

 「ぐわぁ!」

 

 倒れるエンペラーを見たガネストは残念そうに見て、

 

 「はあ~、そのギルラプターもボクの前世に従っていた時と比べると随分腑抜けになっちゃったね。

 ボクのゾイドになれば、ジョーカーみたいにもっと強くなれただろうに、残念だよ。 もうキミとのゲームはもう飽きちゃった。 終わりにするよ。」

 

 ガネストはデスメタルキーを取り出し、

 

 「ギルラプター、強制 解放! デスブラストー!!」

 

 デスブラストし、赤い稲妻が走るジョーカー、

 

 「これで、終わりにするよ。バイバイ。音速殺!!」

 

 猛スピードでエンペラーに襲いかかるジョーカー、レイルはもはやこれまでかと言わんばかりに諦めかけたその時、

 

 「瞬擊殺!!」

 

 突然、ジャンが横から突進し、その衝撃で、ジョーカーは壁に吹っ飛ばされた。

 

 「あなたは…」

 

 「勘違いするな! ジャンに頼まれただけだ。 ま、どうせ逃げても追われるだろうし、もはや戦うしかないだろうよ。」

 

 「何? さっき邪魔するなって言ったじゃん。やっぱりボクに歯向かうつもり?」

 

 「確かにこのギルラプターはジャンの兄弟を殺したが、実質殺したのはお前の前世、即ちお前! 先祖が果たせなかった復讐、俺の代で晴らさせてもらう。」

 

 「へぇ~、やるんだ。面白い。試してやるよ。お前の力を!」

 

 「そうほざいていられるのも今の内だ! 行くぞ、ジャン!」

 

 グオォ~!!

 

 「猛れ、ジャン! 俺の魂と共に、進化 解放! エヴブラストー!! 音速殺!!」

 

 ジャンは超高速でジョーカーに突進し、ジョーカーはそれを両前足で受け止める。攻撃を止められるものの、そのままジョーカーを押して、ジョーカーは徐々に後退していった。

 

 「どうした? プリンスギャラガー! お前とギルラプターの力はそんなもんじゃないだろ!

 お前の相棒の力を信じろ! そいつは強い! だが、ギャラガー一世に従っていたから強いんじゃない!

 そいつも本当は俺のジャンの兄弟と同じく心優しいゾイドだ。お前だって本当はそうだろ?

 自分の理想を信じ、誰かを守るために戦っているんじゃないのか?」

 

 レイルは差し込んだゾイドキーを握りしめ、

 

 「そうだ。僕は迷っていた。あいつと父上の言葉で迷っていた。だから力を出せなかった。

 でも、僕は迷わない。誰がなんと言おうと、僕は僕の信じた道を歩み、戦う!」

 

 グオォ~!!

 ギルラプターエンペラーが咆哮を上げ、同時に差し込んだゾイドキーが少し浮き、キーが金色に発光した。

 

 「これは…」

 

 「ゾイドとの絆で更に進化を遂げた。もう一度キーを差し込んでみろ。」

 

 エンペラーはレイルの方を向き、レイルはキーを差し込んだ。

 

 「ギルラプター、進化 解放! エヴォブラストー!! 新・音速殺!!」

 

 エンペラーはさっきより更に増したスピードでジョーカーに攻撃した。ジョーカーはその衝撃で吹っ飛ばされ、壁に激突する。

 

 「いって、ふ~ん、確かにさっきより強くなったみたいだね。でも、それでも結果は一緒だよ!」

 

 「それはどうかな?」

 

 「ようやく、迷いから覚めたようだな。プリンスギャラガー。」

 

 「いえ、僕はギャラガー皇子じゃ、ありません。 僕はレイル、レイル・ボーマンだ!」

 

 「へ、なら、行くぞ、レイル! 瞬擊殺!!」

 

 エンペラーとジャンは音速を遥かに越えるスピードでジョーカーの周りを走った。

 

 「ふん、スピードを更に上げてボクを撹乱させるつもりだろうけど、所詮、無駄なことだよ!

 ボクとジョーカーはあらゆる戦闘を経験している。いくら、パワーアップしても動きがわかれば、意味がない。」

 ガネストとジョーカーは直感で後ろ足で後ろ方向に蹴るが、ジャンは瞬時に避けた。

 

 「何!?」

 

 エンペラーがジョーカーの横から攻撃しようとし、ジョーカーはそれに対し、迎撃するが、エンペラーはそれを避け、ジョーカーの死角に攻撃した。ジョーカーはジャンとエンペラーがどこから攻撃するかわかるものの、ジャンとエンペラーは逆にそれを利用してジョーカーの死角に攻撃し、その連続でジョーカーは動きが見破れなくなり、攻撃を受け続けるようになった。

 

 「よし、行くぞ! ダブル、新・瞬擊殺!!」

 

 ジャンとエンペラーの同時攻撃を受けて吹っ飛ばされるジョーカー、

 

 「何故だ!? 動きはわかるはずなのに…」

 

 ガネストの問いにドレイクは、

 

 「当たり前だ! 俺とジャンとこいつらには究極の絆を結んでいて常に一心同体なのさ!

 いくら、経験があるからといっても、所詮、ゾイドをただの道具としか考えない貴様に俺たちの動きがわかるものか!」

 

 「随分デカい口を叩くね! なら、これはどうかな?」

 

 ガネストはコクピットにある赤いボタンを押し、ジョーカーの身体から赤い衝撃波を放った。

 

 「ギルラプター、強制 極限 解放!!」

 

 「強制極限解放だと!?」

 

 「これで、ボクのジョーカーもパワーが上がったよ。」

 

 それを見たレイルは、

 

 「止めろ! そんなことしたら、お前のギルラプターが死ぬぞ!」

 

 「関係ないよ。こいつがどうなろうとボクの知ったことじゃない! 音速殺!!」

 

 超スピードでジャンとエンペラーに向かうジョーカー、

 

 「行けるか? レイル。」

 

 「僕は大丈夫です。」

 

 「よし、行くぞ! 音速殺!!」

 

 「新・音速殺!!」

 

 ジョーカーとジャン、エンペラーの攻撃がぶつかり合う時、ジャンとエンペラーは呼吸を合わせ、同時攻撃し、

 

 「ダブル、新・音速殺!!」

 

 ジャンとエンペラーの同時攻撃を喰らい、ジョーカーは両方のウィングショーテルを切り刻まれ、目の色が消え、電撃をほとばしりながら、倒れていった。

 倒れたジョーカーのコクピットには既にガネストの姿はなく、側に近付いた他のジョーカーに既に乗り換えていた。

 

 「あ~あ、せっかく久しぶりにジョーカーに乗ったのに倒されちゃった! ま、別にいいんだけどね。」

 

 そう言うと、ジョーカーは倒れたジョーカーをジャンやエンペラーに向けて蹴った。ジャンとエンペラーは避けるが、ジョーカーは壁に激突した瞬間爆発し、その衝撃で頭上の岩も落ち、ジャンとエンペラーに直撃してしまう。

 

 「ちょっとは役に立ったかな。」

 

 笑みを浮かべるガネストを見てレイルは、

 

 「お前、ジョーカーはお前のゾイドだろ! そんなことして何とも思わないのかよ!」

 

 「それがどうしたの? 使えなくなったけど、最後まで使えるように扱ってやったんだよ。 おかげで多少でもキミたちの動きを封じることも出来たわけだしさ!」

 

 「お前にはゾイドを大切に思う気持ちはないのか? 父上も、一世も…」

 

 「ない、ない! そもそもゾイドなんて、帝国とボクの支配と楽しみを奏でる道具に過ぎないんだよ! 道具として当然の扱いをしただけさ!」

 それを聞いたレイルは拳を握りしめ、それを見たドレイクは、

 

 「ふ、どうやらこいつには何言っても無駄なようだな。一気にけりをつけてやる。」

 

 「それはどうかな? ボクを傷つけたせいで、ボクの取り巻きのジョーカーたちも殺意丸出しだよ!」

 

 ガネストの護衛のジョーカーたちはジャンやエンペラーに敵意を剥き出しにしていた。

 

 「そうだ。これで新しいゲームをしよう。ボクの取り巻きのジョーカーとキミたちが戦って、その後にボクのジョーカーと戦う。 どう、面白そうでしょ?

 こいつらをパワーアップしたキミたちの力を試すいい実験台になれそうだ。そうすれば、キミたちの強さをもっと味わえる。」

 

 「ふざけるなー!!」

 

 エンペラーが前に出たその時、護衛のジョーカーたちが全てエンペラーに襲いかかってきた。

 とその時、突然、護衛のジョーカーが何かに攻撃され、同時に煙幕が張られた。辺りが見えなくなり、エンペラーの前にバイザー無しのラプトールが現れた。

 

 「お前は?」

 

 バイザー無しのラプトールのライダーはレイルに、

 

 「殿下、あなたの大切なエマ様とユリス様に危険が及んでいます。我々と共に。」

 

 「エマと姉さんが? 一体何が起こったんだ!」

 

 ラプトールは言葉を返さず、そのまま立ち去り、エンペラーはその後を追った。

 

 「あ、待て!」

 

 煙幕の中、周囲を見渡すドレイク、

 

 「くそ、いきなり何なんだ? これじゃ、敵がどこから攻撃してくるのかわからなくないじゃねぇか。」

 

 その時、煙幕の中をバイザー無しのラプトールが横切り、同時にその後ろにエンペラーが付いていった。それを見たドレイクは、

 

 「あのラプトールは…あいつらか! 一体何故ここに? とにかく、今はここを離れた方が得策だ。 奴らが何を企んでいるのかも突き止めねぇと。」

 

 煙幕が晴れた後、ガネストは周囲を見渡すが、周囲にはジャンとエンペラーの姿はなかった。

 

 「あ~あ、せっかくいいところだったのに! でも、あの煙幕、明らかに反乱軍の物じゃなさそうだし、面白くなって来そうだな。 ボクたちも行くよ。」

 

 ガネストのジョーカーが洞窟を突き進み、護衛のジョーカーたちも後に続いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストームとウィルがしばらく歩いた時、前からズシンズシンと巨大な足音がし、目の前からドクターマイルスの乗るゼロファントスと通常種。ゼロファントスが複数現れた。それを見たストームは、

 

 「来やがったな! 粗方、ドレイクの別荘を襲撃して俺たちを離ればなれにし、順番に潰すという算段だろう。 貴様らしいえげつないやり方だな!」

 

 「これも全ては我がネオデスメタルのため、ひいては世界のためです!」

 

 それを聞いたウィルは拳を握りしめ、

 

 「何が世界のためだ! そのために一体何人の人々とゾイドを殺したんだ!」

 

 「犠牲なくして勝利なしと同じ理論ですよ。所詮弱者は強者のために犠牲になるしかないですからね。」

 

 「ふん、そういっていられるのは今の内だ。ゼログライジスを復活させて世界を平伏そうだのという貴様らの野望を阻止してやるぜ!」

 

 「ゼログライジス…そうか、あの男がZGのことを吹き込んだのか。まあ、いい。例え知ったとしても、貴様らに更に絶望を与えるだけだ。

 そうなると、ゼログライジスの力を存分に味わい、貴様らは破滅の道を辿ることになる。 どうだ、今の内に降伏しないか?」

 

 「へ、それを聞いたら、尚更降伏する気はしねぇぜ! ゼログライジスを復活させる前に貴様らの野望を阻止してやるぜ!」

 

 「無理だな! 神殿にあった最後の欠けたゾイドコアのピースは既に帝都に送った。 後は元帥殿によって完成するのを待つだけだ。」

 

 「なら、貴様をさっさと倒して帝都に行くしかねぇな。覚悟しろ!」

 

 「ふん、蛮勇とは正にこのこと、だが、貴様らでは私には勝てない。」

 

 「へ、この前は状況があれだったが、今度は思いっきり戦えるぞ! そうだろ?ウィル。」

 

 「はい! 皆とゾイドのためにお前を倒す!」

 

 「それはどうかな? 実は特別ゲストを連れているんだがな。」

 

 「特別ゲスト?」

 

 ゼロファントス部隊の後ろから2体のキルサイスSSが現れ、そのコクピットには縛り付けられたエマとユリスがいた。

 

 「エマ、ユリスさん!」

 

 「おっと、このキルサイスのタイムボムには自爆装置が付いている。一歩でも近付けば、そいつらの命はもうお仕舞いだ。」

 

 「貴様!」

 

 「ホントは元殿下にも見せてやりたいとこだったが、元殿下には皇帝陛下が相手をしている。わざわざこんなことしなくても陛下が勝つのは目に見えているし、陛下はこんな作戦乗り気ではないからな。」

 

 「け、どこまで卑怯な奴だ!」

 

 「だが、貴様らの相手をするのは私ではない。」

 

 「何だと!?」

 

 ドクターマイルスのゼロファントスの後ろからリセルが乗ったデルが現れた。それを見たウィルは青ざめ、

 

 「り、リセル…」

 

 ウィルとシーザーを見たリセルは闘争心溢れた表情をし、

 

 「ウィル、シーザー。今度こそ貴様らを潰す!」

 

 To be continued




 次回予告

 ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊と対峙したウィルとストーム、しかし、その中にはリセルもいた。
 ウィルは必死にリセルを説得しようとするが、リセルはウィルとシーザーを倒すことに執着し、聞く耳を持たない。
 更にキルサイスSSに捕らえられたエマとユリスも人質にとられ、苦戦するウィルだが、その時、バイザー無しのラプトールやキャノンブル、バズートルらがデルやゼロファントス部隊を攻撃し、ウィルたちを助けた。
 助けたのドレイクの財閥のライバル企業に当たり、ネオデスメタル帝国に多大な資金援助を行っている軍事企業レッドケルベロス社だった。
 ウィルたちはネオデスメタル帝国に加担する彼らを警戒したが、彼らはウィルたちにかつての旧デスメタル帝国の本当の正義を知ることになる。

 次回「旧デスメタルの遺産」

 本能を呼び覚ませ、ライガー!!

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