ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO 作:オーガスト・ギャラガー
新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のすのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていった。
だが、ネオデスメタル帝国では着々と地球を壊滅させる程の力を持つ史上最強のゾイドが復活しようとしていた。
ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊の中から現れたデルを見て、ウィルは青ざめた表情をした。
「リセル…何故お前はまだ帝国にいるんだ?」
デルは突然シーザーに襲いかかる。
「止めろ! 俺はお前と戦うつもりはないんだ。」
コクピットのリセルは怒り狂った表情をし、
「黙れ! 俺はお前とシーザーが目障りなんだ! お前たちがいるから、俺は強くなれない。」
リセルはウィルの言葉を全く聞く耳を持たず、シーザーに攻撃した。それを見たストームは、
「どうやら、少し黙らせる必要があるな。」
キングはシーザーに攻撃しようとするデルに攻撃しようとするが、ドクターマイルスのゼロファントスの3連誘導ミサイルが襲いかかり、キングは何とかそれを避ける。
「貴様の遊び相手はこの私だ!」
「ち、結局そうなるか!」
デルの猛攻に次々と避けるシーザー、
「どうした? 避けるだけか! やはり、貴様は仲間の力が無ければ何も出来ないヒヨッコだな!」
「う、うるさい! いくぞ、シーザー! 進化 解放! エヴォブラストー!! スピリットガンスラッシュ!」
デルはシーザーの攻撃をもろに受けるが、デルは無傷だった。
「その程度では、パワーアップしたデルを倒すことは出来ない。 パワーアップしたデルの力を見せてやる。 兵器 解放! マシンブラストー!! フルハウリングバースト!」
デルの赤い衝撃波とガトリングによる連続攻撃がシーザーを襲うが、シーザーはすかさず、Eシールドを張って防ぐ。しかし、前方を見ると、デルの姿がない。
「ど、どこに行った?」
その時、後ろにデルが現れ、
「後ろががら空きだ!」
デルはシーザーを前足で攻撃し、シーザーは吹っ飛ばされるが、シーザーはすかさず態勢を立て直し、デルの前に出る。
「やはり、この程度ではくたばらないか…なら、もう一度喰らえ、フルハウリングバースト!」
「行くぞ、シーザー! スピリットバーストブレイク!」
シーザーがEシールドを張りながら、デルに突っ込み、互いの攻撃がぶつかりあい、シーザーがEシールドを解除し、互いが立ち止まる中、デルだけ装甲に傷が付き、デルはその傷で少し足を崩した。
「やはり、Eシールドを張りながら攻撃できる奴相手に真正面で戦うのは無謀だったか! だが、お前がEシールドを張れないようにするため、こっちは何度も攻撃するだけだ! 喰らえ、フルハウリングバー…」
その時、突然デルが苦しみだし、マシンブラストが撃てなくなった。
「どうした? まさか、さっきの傷の影響か!」
それを見たウィルは、
「違う…あいつは苦しんでるんじゃない! あいつはバイザーの支配に抗い、リセルを帝国の洗脳から解こうとしているんだ!」
「お前はその程度でくたばるゾイドのわけがない! お前の本当の力を見せてやれ!!」
リセルはコクピットにある非常ボタンを押し、それを押した途端、デルが暴走した。
グオォ~!!
赤い衝撃波を走りながらデルはガトリングをシーザーに撃ち込む。シーザーはそれを避け、ウィルはリセルに向かって、
「止めろー!! そんなことしたら、デルが死んでしまう!」
「そんな心配はない! デルは俺の相棒、だから、そう簡単に死ぬゾイドでない!」
それを見たストームは、
「くそ、あいつ完全に殺戮マシンになってやがる。」
「そうだ! あいつはもはや私に忠実な殺戮マシンになった。だから、あいつは何の躊躇もなく、全てを殺せる。
どうだ? 降伏して我が帝国に入れば、お前ももっと強くなれるぞ!」
「へ、お断りだ! 貴様の下になんか死んでも後免だぜ!」
「さあ、食らうがいい! フルハウリング…」
その時、突然、デルが何者かに攻撃され、ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊も攻撃された。
「なんだ?」
そこに現れたのは、バイザーの無いラプトールとキャノンブル、そして、バズートルだった。バイザー無しのゾイドたちはシーザーとキングの前に出て、煙幕を出した。
「何だ? 敵の増援か!」
その時、シーザーとキングの目の前にバイザー無しのラプトールが現れ、
「アーネスト殿下のお知り合いの方ですね? どうか、我々と一緒に。」
「アーネスト…レイルのことか! あなたたちは一体?」
そして、煙が晴れた時にはシーザーたちの姿はなく、エマとユリスを捕らえた2体のキルサイスSSもいつの間にかコクピットを剥き出しにされ、タイムボムが作動しないまま破壊されていた。
「ち、逃がしたか。だが、今のゾイド、バイザーが付いていないってことは、もしや…」
反ネオデスメタル同盟軍の本拠地、クリスは事の状況をクルーガーとデルタに報告するが、シーガル中将は納得たいかないことを言い、
「何だと!? では、メルビル二世陛下は消息不明だと言うのか!」
「だが、俺たちも体勢を整え、全力で捜索に当たっている。しばらく待った方が…」
「だから、私は反対したんだ! 陛下も一緒に連れていって巻き込まれでもしたら、我が新帝国は終わってしまうと!」
「当然俺たちも最善の策は尽くしている。しかし、シーガル中将殿、そちらは一体何をしているのだ? それほどユリスを大事に思っているなら、そちらも俺たちと協力して捜索に当たるのが普通だろうが、まさか、全て俺たちに任せてネオデスメタルを倒した後に俺たちと手を切るということはないだろうな?」
「そ、そんなこと…あるはずがございません!」
「その意思がないのでしたら、俺たちも貴様らと協力する気はないぞ!」
「わ…わかりました。わ、我々も捜索にご協力します。」
シーガル中将はしぶしぶ退室し、クリスはため息をつき、
「ふぅ~、全く新帝国共と来たら、頭の固い連中ばかりだ! 結局誰かの力を借りなければ何も出来ないということか。 それでよく、真帝国再建などと言えたものだ。」
「ところで、ストームたちからの連絡は?」
「まだだが、リーダーとコマンダーたちなら何とかやっているはずだ。」
その時、クリスの通信機から連絡が入り、出ると通信の相手はグラッドだった。
「コマンダー、無事だったんですか!」
「ああ、洞窟に謎の煙幕が出てな、それを頼りに行ったら、洞窟から抜け出して、ジョンたちと合流したが、キングとシーザーがラプトール、キャノンブル、バズートルに連れていかれるところを目撃して、付いて行ったら、デッカイ都市のビルにまで辿り着いた。」
「まさか、ネオデスメタルですか?」
「それはわからんが、その可能性はある。俺たちは奴らの動向を探りつつ…」
その時、崖から都市の様子を見ていたグラッドやジョンたちに謎の兵士たちに銃を突き付けられた。
「こ、コマンダー…」
「わ、悪い、クリス、また後で連絡するわ…」
そこから少し離れた場所でグラッドやジョン、カティア、アレックス、アッシュ、スミス、スレイマーズたちがレッドケルベロス社の兵士に捕らえられているのを見たドレイクは、
「レッドケルベロス、ネオデスメタルの腰巾着め。大方、反乱軍を捕らえて帝国に引き渡すつもりだろうが、そうはいかんぞ! この俺が貴様らの野望を阻止してやる。」
その時、ドレイクの背中に何か突き詰められ、後ろを振り替えったら、レッドケルベロス社の兵士だった。
「何でこうなるの?」
ルメイ大将はドクターマイルスと通信を行っていて、
「何!? それは本当か!」
「ああ、間違いはない。先ほど、私のゼロファントス部隊を妨害したバイザー無しのラプトール、キャノンブル、バズートルに一瞬だが、レッドケルベロス社のエンブレムを確認した。」
「くそ、我が帝国に多大な資金援助を行っていながら、反乱軍に寝返るとは反逆行為だぞ!」
「だが、一度捕らえた小娘とライガーにスパイゾイドを取り付けてある。
既に場所は特定してあるが、奴らが反乱軍に寝返った目的とその企みを調べる必要がある。それが判明した後、一気に総攻撃を仕掛ける。」
「そうか…だが、その間はどうするつもりだ?」
「今、反乱軍は例のライガーに加え、リーダーと総司令が不在のため、焦っている。 その隙に残りの反乱軍を鎮圧する。」
「なるほど、あの連中には新帝国の皇帝にされた小娘もいて、今は消息不明だから、かなり混乱しているはずだ。攻めるなら、今というわけだな。 よし、では、私は新帝国を鎮圧する。」
「いや待て! 実はスパイゾイドで敵の通信機をハッキングして反乱軍の本拠地の場所を特定した。その間に奴らの本拠地を叩くというのはどうだ?」
「なるほど、それはいい考えだ。それなら、反乱軍の戦力を大幅落とすことができる。」
「では、後で合流しましょう。」
ドクターマイルスが通信を切った後、ギルラプタージョーカーが現れ、ガネストが降りた。
「これはこれは、皇帝陛下! いかがなされました? 元殿下は処刑出来たのですか?」
「それがね~、せっかく盛り上がったところで、ドレイピーと変な連中に邪魔されて、仕留め損ねちゃった。」
「ドレイピー? と申しますと……ああ、あの例の財閥の御曹司ですか。遂に奴も反乱軍に入ったか。」
「でも、まだゲームは終わっていないよ!」
「もちろん、承知のつもりです。 ですが、陛下の護衛にジョーカーだけでは戦力不足でしょう。
私が元帥殿に頼んで親衛隊も付けるよう手配させます。」
「ま、どっちでもいいけど。」
ガネストはそういってジョーカーに乗り、そのままその場を離れた。 ドクターマイルスは横で落ち込むリセルを見て、
「心配するな! 貴様がライガーを倒すチャンスは私が与えてやる。お前はそれまで大人しくしていろ。」
ネオデスメタル帝国の帝都メガロポリスから数キロ離れた都市の中央に巨大なビルが建ち並び、そのビルの入口にはケルベロスのような姿のエンブレムがあり、レッドケルベロスのロゴがあった。
シーザーとキングはバイザー無しのラプトール、キャノンブル、バズートルらにビルの裏口まで案内され、中に入った。ウィルとストームはシーザーとキングから降り、2人の前にレッドケルベロスにの社員が現れた。
「こちらへ、」
ウィルとストームは社員の案内に付いていった。社員が向かった先はエレベーターで、ウィルとストームは社員と共にそのエレベーターに乗った。ウィルが少し不安そうな表情をしているのを見たストームは、
「心配か?」
「あ、いえ…」
「ま、無理もない。実際、本当に俺たちの味方なのかもわからないからな。」
エレベーターはぐんぐん進み、やがて最上階にまで辿り着いた。社員たちはウィルとストームを応接室に入れた。そこにはレイルとエマ、ユリスが座っていた。
「レイル、エマ、ユリスさん。」
「ウィル、あなた無事だったのね。」
「俺は大丈夫さ! レイルも無事だったんだな。」
「ああ、ガネストに襲撃されたけど、彼らに助けてもらって、何とか助かったよ。」
「彼らって…」
社員はウィルたちに、
「社長がもうすぐお見えになりますので、しばらくお待ちください。」
そう言うと、社員は退出し、数分後、社長らしき人物と女性秘書が入った。レイルとエマ、ユリスを見た社長らしき人物は、
「アーネスト殿下にエマ様にユリス様、よくぞ御無事で!」
「殿下は止せ! それに僕はもうネオデスメタルの皇子じゃなくなったから。アーネストじゃなく、レイルって名前に変えたんだ。」
「レイル?」
その名に疑問を持つ社長にエマは、
「レイル・ボーマン。私の大事な家族として私がつけたんです。」
「そうですか! 遂に殿下もエマ様と御結婚なされるんですね。おめでたいです!」
「エマ、余計なことを言うなよ!」
恥ずかしがるレイルを見た女性秘書は、
「あら、すっかり殿下も可愛らしくなって、ご立派になられましたね!」
「ハナ、からかうなよ!」
「ユリス様も新帝国の者たちに利用されたと聞きましたが、随分御元気そうで何よりです。」
「いえ、それはこちらのストームさんとウィルに助けて頂いたので…」
「そうですか。反ネオデスメタル同盟軍の指導者のストームさんに、伝説のライガーを操るウィルさん、殿下たちをよく御守りしてくれました。お礼を言わせて頂きます。」
「あ、はい…どういたしまして。 エマ、この人たち誰なの?」
「私たちがネオデスメタル帝国に入る前に御世話になった人たちよ。」
「紹介が遅れました! 私はこのレッドケルベロス社の社長 ジェームズ・ブラックです。 そして、彼女は私の秘書の大空ハナです。」
「大空ハナです。殿下がいつも御世話になっています。」
「あ、いえ、こちらこそ。」
ストームはブラック社長に、
「なるほど、つまりあんたたちはここにいる元皇子のレイルを支持しているネオデスメタルの派閥ってことか……では1つ質問させてもらう。」
「何でしょう?」
「レイルにエマ、ユリスを助けるのはわかるが、何故わざわざ反乱軍の俺たちまで助けた? こんなことすれば、ネオデスメタルが黙っていないはずがないだろ!」
「そ、それは…」
「おい、こら! 離せ、離せよ!」
その時、部屋の向こう側から声がし、部屋に警備員たちに取り押さえていたドレイク、グラッド、ジョン、カティア、スミスにスレイマーズたちだった。
「お前ら!」
「ストーム! やっぱりここにいたな!」
ストームを見たドレイクは、
「ストーム、てめぇ、まさか、レッドケルベロス共と手を組むようになったのか! それともお前らをネオデスメタルに引き出そうとする罠にでもかかったのか!?」
それを聞いたグラッドは、
「何!? それはどういうことだ!?」
「なんだ、知らねぇのか。こいつらはネオデスメタルに多大な資金援助を行い、数々の兵器ゾイドを開発してきた軍事企業なんだぜ!」
「何!? てことはこいつら、ネオデスメタル帝国か!」
グラッドは警備員を気絶させ、拳銃を取り出そうとするが、ストームが待ったをかけ、
「待て、やり合うのはこいつの話を聞いてからだ。」
それを聞いたグラッドは拳銃をしまい、ジョンやカティアたちも大人しくなって椅子に座った。
「さて、さっきの続きだ。質問の答えを聞いて貰おう。」
「はい、確かに私たちレッドケルベロス社はネオデスメタルのために多くの兵器ゾイドを開発し、ネオデスメタルの軍事力拡大に大きく貢献してきました。
しかし、ネオデスメタルを支持している我々でも、今の過激的な政策と武力介入には賛成出来ません。先帝のギャラガー三世陛下に続いて、現皇帝ギャラガー四世陛下の代になって、更にその武力弾圧は日に日に激しくなっております。
アーネスト殿下が皇帝になれば、こんなことになるはずがありませんでした。 最早、かつての旧デスメタル以上の恐怖政治になりつつあります。 もう今のネオデスメタルに旧デスメタルの栄光はありません。」
「ん? ちょっと待て! かつての旧デスメタルの栄光がないとはどういうことだ? 今のネオデスメタル帝国は旧デスメタル帝国の栄光を持って世界を支配しようとしているだろう? それに旧デスメタルだってかなりの恐怖政治だったはずでは?」
「確かにそれはそうなんですが、そもそも旧デスメタル帝国はワイルド大陸で人々が野生ゾイドに脅かされないためにゾイドと世界を支配するために建設された帝国なんです。」
「つまり、デスメタルはただ自分たちの欲で世界を支配するためではなく、人間がゾイドに怯えない世界を創るために世界を支配する、ということか。」
「はい、帝王になる前のギャラガー一世陛下は元々奴隷生活をしておられ、その生活のせいで、他の者から気味悪がれ、上の者に怯えながら盗みをして生きていました。
そのためか、ゾイドは力で従わせるという考えを持つようになり、かつての師のムシ仙人の人とゾイドが絆を結ぶ思想に納得がいかなく、その場から離れた後、かつて自分を奴隷扱いした者たちに復讐し、強いゾイドとゾイドハンターを倒しながら各地を転々とし、 そして、殿下が飼い慣らしているギルラプターエンペラーを手にし、かつて街を脅かしていた狂暴なゾイド集団を倒してから、人々はギャラガー一世陛下を英雄として称えるようになったんです。
当時の人々は自らゾイドに乗って強大なゾイドを倒す力を持つギャラガー一世陛下に付いていけば、もう二度とゾイドに怯えながら生活をしていくことから逃れられる! そう考え、後に四天王となる三銃士を従え、デスメタル帝国が誕生したのです。
帝王となった一世陛下はその後、人々を脅かしているゾイドを倒して、その街を吸収して支配を広げ、人々はZボーイズと呼ばれる兵士となって志願し、かつて自分たちを襲ったゾイドを従えることができ、デスメタル支配下の街では、ゾイドの恐怖から解放され、人々はギャラガー一世陛下に感謝し、称えました。
思えば、帝王になったばかりで、殿下のギルラプターエンペラーを従えた陛下の姿こそが我々の望んでいた本当の帝王ギャラガー様だったんです。 ところがあの時がきっかけで、ギャラガー様は突然恐怖政治を行い、デスメタルが悪の帝国として呼ばれるようになってしまいました…」
「まさか、その時とは…」
「そうです。 デスレックスが復元された時からです。 あれ以来、ギャラガー様はまるで邪悪な本性を剥き出しにし、今まで人々を脅かしていたゾイドだけでなく、無差別にゾイドを襲い、それらのゾイドを殺戮兵器として酷使し、やがては次々と街を破壊、従わない者も容赦なく処刑していき、元いた部下たちもギャラガー様に怯えながら従い、そして、反対派のレジスタンスが立ち上がり、遂にはストームさん、あなたの先祖が率いるフリーダム団によって滅ぼされるようになりました。
思えば、ギャラガー様がデスレックスを知らなければ、あれほど恐ろしいお方にならなかったでしょう。」
「なるほど、親父が言ってたが、デスレックスは人間に発掘されなければ幸せだったろう、と言ってたのと同様にギャラガー一世もデスレックスと会わなければ、レイル、お前のようになれたかもしれないな。」
それを聞いたレイルは複雑そうな表情をした。
「そして、我々はレッドケルベロスを建ち上げ、かつての旧デスメタル帝国の栄光を取り戻そうと努力しました。
そんな中、ギャラガー三世陛下が現れ、ネオデスメタル帝国を建国し、世界の統一を掲げ、我々はそれに加わりましたが、陛下の側近のドクターマイルスの主導によって次々と兵器ゾイドを開発し、従わない街を新型ゾイドの性能を試す実験台にし、終いには見るに耐えない奴隷都市まで現れる始末…」
それを聞いたウィルはエマとシーザーと一緒に初めて旅立った時に行った奴隷都市のコルクを思い出した。
「そうしていく内に次々と軍事企業が四天王のルメイ大将によって吸収され、我々だけが生き残り、多大な資金援助を行って何とか存続していますが、今のネオデスメタルは我々の望んだ真のデスメタルではありません。」
「それで、お前たちをレイルを支援して次期皇帝として期待していたのか?」
「はい、殿下は少々わがままですが、とてもお優しいお方で、オマケに第一皇子でしたので、皇帝即位を期待していたんですが…まさか、第二皇子がいて、それを跡継ぎにするとは…」
「1つ聞きたいが、ギャラガー三世は一体何者なんだ? 確か、ネオデスメタル帝国が建国されたのは80年以上前だと聞いた。
なのに、俺たちが戦ったギャラガー三世はどう見ても40代だった。それにあいつは本当にギャラガー一世の子孫なのか? 一世は俺の先祖との戦いで死んだはずだが…」
「それはわかりません。そもそも建国当初の陛下がデスロッキーで亡くなられた陛下と血が繋がっているのかすらも帝国の上層部でも知っているのは極わずかと聞いていますし、一番詳しいのは陛下がネオデスメタル帝国を建国する前から仕えていたドクターマイルスぐらいかと…」
「なるほど、やはりあの男か…そもそもデスレックスとゼログライジスの関係とゼログライジスの存在を知っているのも奴だったしな。となると、あの男の正体を炙り出す必要があるな。」
「だが、どうやって?」
その時、グラッドから通信が入り、
「クリスか! どうした?」
「コマンダー、大変です! 例の謎のゾウ型ゾイドが霧に隠れてキルサイスやスナイプテラと共に同盟軍の本拠地を襲撃しています!」
同盟軍の本拠地では、ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊が霧に隠れながら、ディゾルボムを基地に撃ち込み、応戦している同盟軍と旧共和国のガノンタス、トリケラドゴスを次々と粉砕していき、その上空では、ルメイ大将率いるキルサイスSSとスナイプテラ3S隊が空中爆撃を行っていた。専用のゼロファントスに乗っているドクターマイルスは、
「反乱軍のリーダーと例のライガーの小僧と元殿下がレッドケルベロス社にかくまっている間に本拠地を一気に叩けばもう奴らに味方はなくなる。そして万が一、レッドケルベロス社が奴らに加わらないよう、ルメイ大将に対応を頼んである。これで、我々の勝利は近くなった。」
レッドケルベロス社にいるブラック社長から電話が入り、ブラック社長が出ると、電話の相手はルメイ大将だった。
「こ、これは…ルメイ大将。何の御用ですか?」
「ジェームズ・ブラック、 貴様ら今、反乱軍のリーダーと例のライガーの小僧に元殿下をかくまっているようだな!」
「い、一体何のことですか!?」
「残念だが、誤魔化しても無駄だ! 我々には全てお見通しだ! だが、貴様らにチャンスをやろう。
今、貴様らがかくまっている反乱軍のリーダーと例のライガー共をこちらに引き渡せ! さもないと、帝都からギャラガー親衛隊が貴様らの本社を叩く。
だが、考えている時間は余りないぞ。もうすぐ反乱軍の本拠地は私の東方部隊とドクター率いるゼロファントス部隊が攻略する。 つまり、反乱軍に味方する勢力は事実上いなくなる。
もし、引き渡さなければ、完全に我が帝国を敵に回すことになる。それでもいいのかな?」
ブラック社長はチラッとレイルを見て、
「殿下はどうなさるおつもりですか?」
「聞くまでもないだろう。帝国に刃向かった裏切り者として当然処刑する! 我が帝国の現皇帝はギャラガー四世陛下なのだからな!」
ブラック社長ガクガクと手を震え、
「それは出来ません。今の帝国は間違っています。殿下を処刑するなんてそんなことに従うことは出来ません!」
「そうか…では、貴様らは反乱軍に寝返ったネオデスメタル帝国の反逆者として粛清する。 だが、その前に反乱軍の主力軍を鎮圧する。粛清はその後だ。」
同盟軍本拠地では、ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊のディゾルボムとスナイプテラ3SとキルサイスSS隊の爆撃による連続攻撃で基地は壊滅寸前に陥っていた。
「隊長、副官、ここは危険です! 急いで脱出しましょう!」
「しかし、ここを叩かれたら、他に立て籠れる場所がない…」
「だが、今は生き延びることに専念するのだ! それを考えるのはその後だ!」
「よし、全員ビッグウィングに乗って脱出するぞ!」
「それが…ビッグウィングを動かせる新帝国のシーガル中将とアルドリッジ大佐の姿が見当たりません!」
「何!? あいつら逃げやがったのか!どこまで卑怯な奴らなんだ!!」
「とにかく、非常口を通って脱出しよう。」
クリスは通信を開き、
「コマンダー、この基地はもう持ちこたえられません! 我々は一旦脱出しますので、コマンダーたちはそこで待っててください。」
「敵の最後の攻撃が来ます! 早く脱出してください!」
基地に向かってディゾルボムを投げつけるゼロファントス部隊の先頭にドクターマイルスのゼロファントスが現れ、
「これでフィニッシュとしよう。 ゼロファントス、原始 解放! ゼロブラストー!! ディゾルレーザーキャノン!」
ドクターマイルス専用のゼロファントスのディゾルレーザーキャノンが基地に炸裂し、同盟軍本拠地はあっという間に壊滅した。
「フフフ、これで反乱軍の戦力はかなり落ちた。後はレッドケルベロス本社にかくまわれている反乱軍の指導者と例のライガーの小僧、元殿下を始末するだけだ!」
レッドケルベロス本社にいるグラッドの通信機からクリスからの応答が全く無く、
「どうなんだ? クリスとクルーガーからは何と?」
「俺たちの基地が壊滅した!」
それを聞いたウィルたちは驚愕し、
「で、クリスとクルーガーたちは…?」
「わからない…だが、あの状況での脱出は不可能かと…」
それを聞いたエマは泣き崩れ、
「そんな…一体どうしたらいいの?」
泣き崩れるエマをそっと撫でるユリス、エマとユリスを見たウィルとレイルは不安がり、
「俺たちはこれからどうしたらいいんだ?」
2人の問いにストームは、
「これからは、俺たちだけで帝国と戦うしかない。」
南方総督府の司令室内でコナー少佐は心配そうにアッカーマン中将に、
「大佐は大丈夫なんでしょうか?」
「彼らを信じよう。彼らならきっと大佐たちを上手く保護してくれる。」
その時、司令室に兵士が入り、
「中将、帝都にいるタッカー元帥閣下から通信が入り、直ぐに来て欲しいとのことです。」
「どうやら、私の処罰が決まったようだな。」
「中将…」
「心配ない! ちょっと行ってくるよ。」
司令室を退出したアッカーマン中将を見たコナー少佐は不安そうな表情をした。
帝都メガロポリスの宮殿の地下研究所で、機械兵と特殊スーツを着用した作業員がドクターマイルスが海底神殿で回収したゼログライジスの欠けたゾイドコアのパーツをゼログライジスが眠っているカプセルに投入した。
カプセルの中が紫色に発光し、カプセルの中のゼログライジスの身体の形状が段々と出来上がり、ゼログライジスの目が光った。
同時にコードで接続しているデスレックスの身体の色が赤から徐々に紫色に変わり、反対方向にコードで接続している後ろ向きの玉座に座っている人物の手が金属から人間の手に変わり、玉座から立ち上がった。
タッカー元帥とデーニッツ中将は玉座から立ち上がった人物に膝まずき、
「ようやく、その身体で表舞台に立つことが出来るようになられましたね。」
「我々はずっと待ち望んでいました! ドクターマイルスが造った影武者のクローンではなく、本来の姿で、我がネオデスメタル帝国の皇帝として君臨するときを!」
タッカー元帥とデーニッツ中将の言葉にゼログライジスとコードで接続していた玉座に座っていた人物は、
「ふ、もうこれで今まではドクターが造ったクローンを遠隔操作して表舞台に立ち、ジェノスピノを操っていたが、その必要ももはや無くなった。
かつてゾイドクライシスの時、地球に来てゼログライジスと一体化したが、あのシーザーとか言うライガーに一度邪魔されて地球の支配を阻止され、そして、ジェノスピノを操った時に再び私の元に現れたが、もう奴では今の私を止めることは出来ない。
我が分身であるゼログライジスはまもなく完成し、デスレックスも真の姿を取り戻す。 再び手に入れたオーガノイドの力でゼログライジスと完全融合を遂げ、私は地球はおろか、全宇宙に君臨する真理の神をも超越した究極たる完全生命体となる。
フフフフフ、ハハハハハ ウワーハッハッハッハッハッハ!!」
地下研究所に高笑いを上げたのはデスロッキーでウィルとシーザーたちに敗れ、ジェノスピノと共に火山に沈んだはずのギャラガー三世だった。
To be continued
次回予告
ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊とルメイ大将率いるスナイプテラ3SとキルサイスSS隊の攻撃で、同盟軍本拠地を壊滅させられ、ウィルとストームたちはレッドケルベロス社と共にネオデスメタル帝国軍を迎え撃つ準備をするが、帝都ではギャラガー三世が復活したという噂が飛び交い、帝国国民が騒ぐ中、帝国は次々と新たな部隊が編成され、ゼロファントスも次々と大量生産され、遂にタッカー元帥自らジェノスピノ、オメガレックスに次ぐ帝国最強ゾイドナックルコングG3に乗り込み、ゼロファントス部隊とギャラガー親衛隊を率いてレッドケルベロス本社に向けて進撃を開始した。
シーザーとレッドケルベロス社のゾイドたちではとても太刀打ち出来ないため、ウィルたちは半ば諦めかけるが、その時、ウィルたちの前にカーター大佐とシュバルツ中佐が現れ、帝国軍を迎え撃つための提案を出す。果たしてその策とは!?
次回「先帝復活」
本能を呼び覚ませ、ライガー!!