ゾイドワイルドエヴォリューション アフターZERO   作:オーガスト・ギャラガー

49 / 55
 ゾイド_それは優れた戦闘能力と自らの意思を持つ金属生命体である。  
 新地球暦1245年、人とゾイドの共存が進む中、ネオデスメタル帝国という強大な軍事国家が地球の8割を支配している時代、辺境の村に住むゾイド好きの少年ウィルはライジングライガーに進化した相棒のシーザーとかつてのシーザーの相棒の血を引く少女エマ、伝説のすのリーダーの子孫であるストーム率いる同盟軍と共に、ゾイドと人々を帝国の支配からの解放と人とゾイドの共存のための戦いに身を投じていった。
 だが、ネオデスメタル帝国では着々と地球を壊滅させる程の力を持つ史上最強のゾイドが復活しようとしていた。


第49話「二大破壊龍を奪還せよ」

 レッドケルベロス本社、デスレックス率いる親衛隊をリセルのデルとかつてのロボットたちの救援で何とか退けたウィルたち同盟軍、リセルはデルから降り、ウィルたちの前に立った。

 

 「皆、後免… 俺、皆に凄く迷惑をかけて… 。」

 

 ウィルたちに頭を下げ、謝罪するリセルの前にユリスリセルの前に立ち、

 

 「もういいの… あなたが無事に戻って来てくれただけでも私は嬉しいの。」

 

 「ユリス… 」

 

 ユリスはそっとリセルを優しく抱きしめ、それを見てニヤニヤしたグラッドは、

 

 「そうだ! 一度、敵に寝返ってもお前は俺たち同盟軍の仲間だ! それに、お前がいなくなったら、ユリスが悲しくなるからな!」

 

 リセルは赤面し、

 

 「コマンダー、からかわないでください!!」

 

 「それと、俺からも謝っとく。お前の世話役でありながら、お前のことを見てやれなくて… すまなかったな。」

 

 「いえ、元はといえば、俺のせいですから。」

 

 その時、かつて、ウィルたちと戦い、救ってくれたロボットの将軍とミクロラプトル種のゾイドに乗っていた元老院議員や兵士たちがウィルたちの元に向かった。将軍たちを見たストームはグラッドに、

 

 「ところで、グラッド。このロボットたちは誰だ?」

 

 「あ、ストームは会っていなかったのか! 実は彼らはユリスと会う前にネオデスメタルの襲撃の時に会って共闘してくれたロボットたちだ。 俺たちと同じ人とゾイドの共存を目指す者たちだ。」

 

 「そうだったのか! 」

 

 「君が噂の同盟軍の指導者か。私はロボトピア共和国軍の最高指令ガルド将軍だ。」

 

 「ん? 俺のことを知っているのか?」

 

 「ドレイクが世話になっていると聞いていて…。」

 

 それを聞いたストームはドレイクの方を向いて、

 

 「ドレイク、彼らを知っているのか?」

 

 「ああ、実は俺がドクターマイルスに追われているところを助けてもらって、あの別荘を設計してくれたんでね。実はあいつらに報告したのも俺なんだ。」

 

 「それならそうと、何故、そのことを俺たちに教えなかったんだ?」

 

 「ネタバレしたら、面白くないだろ。」

 

 「たく、ホント、そういうところは相変わらずだな。」

 

 ガルド将軍はウィルの元に行き、

 

 「ウィル、随分とたくましくなりましたね。」

 

 「いや、そんなことないよ。俺はただ、皆やゾイドのために戦っているだけだから。」

 

 「あの時、君と出会えたおかげで、我々の進むべき道を見つけることが出来た。改めてお礼を言う。」

 

 「いや、そんな… 」

 

 「さて、我々はこの星とゾイドたちを守るためにゼログライジスを復活させた帝国を倒すために君たち、同盟軍と全面的に協力することになった。グラビティキャノンは我々の技術力で補給する。他の装備も我々に任せてくれ!」

 

 「とはいえ、帝国にはゼログライジスの他にあのデスレックスまでいる! ゼログライジスを倒す前にあのデスレックスを倒さなければ俺たちに勝ち目はない。」

 

 「なら、方法がある。」

 

 「一体なんだ?」

 

 「ジェノスピノとオメガレックスをこちらの戦力に加えるのだ。」

 

 「しかし、あの2体は… 」

 

 「ギャラガー三世と四世がゼログライジスとデスレックスに乗り換えてから、あの2体は乗るライダーが未だ不在でお蔵入り状態だ。その隙に2体を我々の手奪還する。」

 

 「しかし、ジェノスピノとオメガレックスは帝都のど真ん中にある宮殿にいる。奪還するには帝都を襲撃する必要がある。」

 

 「まともに帝都メガロポリスを襲撃することは不可能でしょう。なら、その2体を帝都から離れささせなければ、」

 

 「とはいえ、一体どうやって帝都から離れさす?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝都メガロポリスの宮殿の倉庫に保管されているジェノスピノ、オメガレックスの修理は完全に終了していた。調整を行っている2人の兵士は、

 

 「なあ、聞いたか? 皇帝陛下のデスレックスが反乱軍を滅多うちにしたらしい。その後、機械人形の加勢で一時撤退したが、反乱軍にはかなりの大打撃だったそうだ。」

 

 「そうか… となると、この2体ももう使い物にならなくなったな。」

 

 「ところで、この2体は誰が乗るんだろうな?」

 

 「さあな、ゼロファントスに乗るための耐Zスーツがあるから、それを着用すれば、誰でも乗れんこともないが、元々陛下たちのゾイドに乗るのは畏れ多いしな。」

 

 「となると、破棄されるのか?」

 

 「ま、そうなるな。」

 

 「もったいないな。帝国であれだけ名声を表したのに…」

 

 「ま、使い物にならなくなったら、仕方ない。」

 

 「てことは、デスレックスの餌にされるのか?」

 

 「そうなるな。反乱軍の手に渡ったら、厄介だからな。」

 

 時同じくして宮殿の玉座の間では、捕獲した野生ゾイドと破棄された帝国の兵器ゾイドから次々とゾイド因子を吸収し、石化されたゾイドを踏み潰したり、押し潰したり等の破壊をしているゼログライジスを窓越しで見ているギャラガー三世の話を聞いたドクターマイルスは、

 

 「何ですと! ジェノスピノ、オメガレックスを帝都から南方総督府に移送させて、そこで、反乱軍を迎え撃つということですか… 」

 

 「そうだ。」

 

 「何ゆえ、そのようなことを… 」

 

 「デスレックス、ゼログライジスが復活した今となっては、もうあの2体に用はない。 それにデスレックスの闘争本能を完全に解放するためにはあの2体と戦わせるしかない。」

 

 「まさか、わざと反乱軍に渡すのですか?」

 

 「生半可なゾイドでは、デスレックスはそう簡単には目覚めん。」

 

 「わざわざ、そんなことをせずとも、あの2体をデスレックスの餌にすればよろしいのでは?」

 

 「反乱軍に敢えて希望を与え、それが真の絶望だということを奴等に知らしめるのだ。

 そして、デスレックスの本能が解放された時、ゼログライジスは更なる進化を遂げ、反乱軍は確実に勝てない絶望を味わうのだ。」

 

 「なるほど、そういうことですか。」

 

 「早速準備をしろ。指揮はお前に任せる。」

 

 「了解しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドケルベロス本社、ウィルたち同盟軍とガルド将軍率いるロボット国家メカトピア共和国軍の幹部たちはジェノスピノとオメガレックスを帝都メガロポリスから離れさす作戦会議を行う中、兵士が現れ、

 

 「リーダー、コマンダー、たった今、情報が出ました。ジェノスピノとオメガレックスが帝都メガロポリスから南方総督府に移送されるとの情報です。」

 

 「ジェノスピノとオメガレックスを南方総督府に? 何で、わざわざあの2体を帝都から移送させる意味がある?」

 

 「それはわかりません。」

 

 「罠の可能性もありそうだが、これを利用しない手はなさそうだな。ストーム。」

 

 「そうだな。どちらにせよ、あの難攻不落の帝都から離れてくれたのは好都合だ! よし、全員、南方総督府に奇襲をかけるぞ!」

 出撃しようとするストームたちにカーター大佐が現れ、

 

 「ストーム、今回の作戦、私に任せてくれないか?」

 

 カーター大佐の言葉に疑問を持つストーム、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオデスメタル帝国の南方総督府、通常種の三倍以上のサイズを持つキャタルガG4がジェノスピノ、オメガレックスの入った巨大コンテナを総督府の倉庫に輸送した。その様子を見ていたアッカーマン大佐とドクターマイルスは、

 

 「ドクター、何ゆえ、ジェノスピノ、オメガレックスをここに移送させたのです?」

 

 「ゼログライジスとデスレックス紫龍が完成してから、ギャラガー三世陛下と四世陛下がすっかりあの2体を気に入り、ジェノスピノ、オメガレックスが完全に御蔵入りになったが、それでもジェノスピノ、オメガレックスは我が帝国のために働いた最凶ゾイド。

 その2体を処分するのは勿体ないので、新たな部隊の編成に合わせてここに移送させたのです。」

 

 「なら、何故、ここに?」

 

 「アッカーマン殿、帝国に忠誠を誓った君でも、反乱軍に寝返ったカーター大佐を育てた責任として四天王の地位たる総督の位を失い、左遷されたそうですね?

 でしたら、そのリベンジとして、あの2体に乗って汚名返上したら、いかがですか?

 新たに開発され、危険性の高いゼロファントスに乗るために過去の耐Bスーツを元に開発した耐Zスーツがあります! あれを着用すれば、陛下以外の人間でも搭乗は可能ですよ。」

 

 「ドクター、勘違いしてもらっては困る。私はあくまでネオデスメタル帝国に忠誠を誓い、帝国のために働くと決めた者、カーター大佐の罪は私の罪でもある。

 だから、その罪は私自身の手で償う。例え、その命を奪ってでも!」

 

 「いい心掛けだ。」

 

 「だが、失敗は許されないぞ!」

 

 そこに現れたのはタッカー元帥だった。

 

 「お前が帝国に忠誠を誓う者だったから、左遷ということにしたが、本来なら、死刑確定のものだった。 今度、失敗したら、地位どころか、命は無いと思え!」

 

 「心得ております。」

 

 その時、総督府に警報が鳴り、1人の親衛隊兵士が3人の前に現れた。

 

 「申し上げます! 総督府の周辺に多数のゾイド反応、おそらく反乱軍の襲撃かと!」

 

 「遂に来たようだな! よし、元帥殿、我々も出撃の準備だ。」

 

 「あの… 」

 

 「何だね? 大佐。」

 

 「ジェノスピノ、オメガレックスを移送させたのはあなたの作戦なのですか?」

 

 「さあな… 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南方総督府に真っ先に現れたのは、カーター大佐の操るスナイプテラで、次々と総督府を爆撃し、基地が炎に包まれる。親衛隊のスナイプテラG4が出撃するが、カーター大佐のスナイプテラはまだマシンブラストを発動していないにも関わらず、次々とフォースバレルガトリングとキャノン砲で正確に撃墜していった。

 それと同時に、シュバルツ中佐が乗るカーター仕様キャノンブル率いる新帝国のキャノンブル部隊が総督府に突っ込んで行った。総督府から出撃した親衛隊のキャノンブルG4が出撃し、性能の違いを見せつけるかのように、次々とマシンブラストで新帝国のキャノンブルを撃破していった。

 しかし、シュバルツ中佐のカーター仕様のキャノンブルだけは帝国によって強化された装甲とマシンブラスト、そして、A-Z3連チャージミサイルを駆使して、複数のキャノンブルG4と互角に戦い、次々と撃破していった。

 その様子を映像で見ていたタッカー元帥とドクターマイルスは、

 

 「ふん、流石は元ネオデスメタル帝国の優秀な軍人、我がギャラガー親衛隊相手でも、引けを取らんとは!

 しかし、いくら、カーター元大佐がいるとはいえ、あのバカな新帝国の反乱軍だけか? 

 今さら、真帝国時代の旧式で我が最新型の親衛隊ゾイドに勝てると思っているのか?」

 

 「元帥殿、カーターと新帝国は今や、我がネオデスメタル帝国最大の敵である反乱同盟軍と結託しています。

 おそらく、奴らだけではないかと…」

 

 「だが、どちらにせよ、潰す必要がある。アッカーマン大佐、コナー少佐と共に、カーターのスナイプテラとあのキャノンブルを片付けろ! 我が帝国への忠誠心を示すために必ず始末しろ、いいな!」

 

 「承知しました。」

 

  カーター大佐のスナイプテラとシュバルツ中佐のキャノンブルが親衛隊相手に善戦する中、スナイプテラとキャノンブルの目の前にアッカーマン大佐のナックルコングMk-Ⅱとコナー少佐のステゴゼーゲMk-Ⅱが現れた。

 

 「カーター元大佐、直ちに我がネオデスメタル帝国ぐんに投降せよ!投降しなければ、今すぐ君をスナイプテラもろとも破壊する!」

 

 「アッカーマン中将…、」

 

 「私は帝国のために生涯を捧げた男だ! だから、私は帝国のために戦う。例え、君の命を奪うことになっても…

 ナックルコング、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストしたナックルコングは胸熱拳でスナイプテラを当てようとし、スナイプテラはそれを避けるが、装備しているガトリングを喰らってスナイプテラはよろめいてしまう。

 

 「カーター大佐!」

 

 シュバルツ中佐がキャノンブルで助けに行こうとするが、コナー少佐のステゴゼーゲMk-Ⅱが立ち塞がる。

 

 「あなたは確か、帝国軍のコナー少佐!」

 

 「私の名前を知っているとは、カーター大佐から聞いたのかな?」

 

 「そうだ! なら、だからこそ、あなたはそっちにいてはならない。今のネオデスメタル帝国は邪悪な存在に支配されている。これ以上、帝国についていったら、あなたも無事にはすまない。」

 

 「例え、そうだとしても、私はアッカーマン大佐と共に帝国のために働く。それが私の決めた道だ! 

 ステゴゼーゲ、兵器 解放! マシンブラストー!! ナイフオブバルカン!!」

 

 「ち、仕方ない。キャノンブル、兵器 解放! マシンブラストー!! ナインバーストキャノン!!」

 

 シュバルツ中佐のキャノンブルとコナー少佐のステゴゼーゲMk-Ⅱの攻撃がぶつかり合う。映像でその様子を見たドクターマイルスとタッカー元帥は、

 

 「上手く行ったようだな。」 

 

 「ドクター、元帥閣下! 双方から反乱軍がこちらに向かっています。おそらく例のライガーかと… 」

 

 「よし、では、我々も出よう。アーミテージにも出撃の要請をしろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南方総督府でカーター大佐のスナイプテラとアッカーマン大佐のナックルコングMk-Ⅱが戦っているのを見たウィルとレイルはカーター大佐を助けに行こうとしたところ、突然目の前にアーミテージの操るゼロスティレイザーが現れた。

 

 「久しぶりだな! ライガーの小僧に、帝国の元皇子。」

 

 「お前はアーミテージ! 死んだはずじゃ… 」

 

 「バカめ! この俺が死ぬわけがないだろ!! 皇帝陛下のお力により、あたらしい身体とこのおニューのスティレイザーのゼロスティレイザーを手に入れ、俺は再びこの世に甦ったのさ! 陛下に再び仕え、貴様らに復讐するためにな!」

 

 「そんな… てことはあいつも機械化されたってことなのか!?」

 

 「気を付けろ、ウィル! あいつはゼルとウィーリィーをバイオアシッドの毒に汚染させた奴だ。僕の勘が正しければ、あれはゼロファントスのゾイド因子を組み込んで改造したスティレイザーだ!」

 

 「この前は貴様らに敗北したが、今度はそうはいかないぞ。このゼロスティレイザーで貴様らをあの世に送ってやる!

 ゼロスティレイザー、原始 解放! ゼロブラストー!! ゼロプラズマウォール!」

 Eシールドを張ったゼロスティレイザーがギルラプターエンペラーに襲いかかろうとしたその時、

 

 「レイル、ギルラプター、危ない!!」

 

 シーザーがギルラプターエンペラーを庇い、ゼロスティレイザーに突っ込んだ。

 

 「行くぞ、シーザー! 進化 解放! エヴォブラストー!! スピリットガンスラッシュ!」

 

 シーザーはEシールドを張りながら、ゼロスティレイザーとぶつかり合った。Eシールド同士のぶつかり合いで、衝撃波がほとばしる。

 

 「なるほど、シールド同士をぶつけてショートさせるつもりか…。だが、このゼロスティレイザーを嘗めるなー!!」

 

 ゼロスティレイザーはその巨体とゼロファントス、元のスティレイザーを遥かに凌ぐ力でシーザーを押し返した。その力に圧倒され、Eシールドが解除され、飛ばされるシーザー、

 

 「ウィル、シーザー! くそ、ギルラプター! 進化 解放! エヴォブラストー!! 新・音速殺!!」

 ギルラプターエンペラーは渾身の一撃をゼロスティレイザーに当てるが、ゼロスティレイザーはびくともしなかった。

 

 「効かないね。」

 

 エンペラーを吹っ飛ばすゼロスティレイザー、そしてゼロスティレイザーはそのままエンペラーに足を入れる。

 後に続いてきたストーム、ドレイク、グラッド、リセルはシーザーとエンペラーの救援に向かおうとする。

 

 「ウィル、レイル! 今、行くぞ!」

 

 「大丈夫です。ストームさん、ここは俺たちに任せて、ストームさんたちはジェノスピノとオメガレックスを!」

 

 「し、しかし… 」

 

 その時、レーザーキャノンが放たれ、目の前にゼロファントス部隊を率いるドクターマイルスのゼロファントスとタッカー元帥の操るナックルコングG3が現れた。

 

 「また、会ったな。旧デスメタル帝国の破壊者の子孫にして、ゾイドの王を従える反乱軍のリーダー。」

 

 「貴様はドクターマイルス!」

 

 「貴様がかつてのフリーダム団リーダーのように我がネオデスメタル帝国を滅ぼされるわけにはいかんのでな。悪いが、ここで、くたばってもらうぞ。」

 

 「だが、悲しむことはない。皇帝陛下の代理人たる帝国NO2のこのキル・タッカーの手に落ちるのだからな。光栄に思うがいい!」

 

 「あれは…!」

 

 タッカー元帥のナックルコングG3を見たリセルは10年前、ギャラガー三世が操るジェノスピノ率いる帝国軍が旧ネオヘリックシティを襲撃した時、ジェノスピノと共にネオヘリックシティの街を破壊し、父親の操る相棒ゾイドがナックルコングG3に破壊され、収容所からの脱出した時に自身の両親を殺したタッカー元帥の姿を思い出した。

 

 「そうだ。あいつだ! 俺の故郷の街を破壊し、父さんや母さんを殺したあいつだ!! ウオー!!」

 

 両親の仇であるタッカー元帥のことを思い出したリセルは我を忘れてそのままナックルコングG3に突っ込んだ。

 

 「止せ、リセル! 相手が悪すぎるぞ!!」

 

 グラッドの忠告を無視し、リセルはナックルコングG3に攻撃した。

 

 「行くぞ、デル! 進化 解放! エヴォブラストー!! フルハウリングショット!!」

 

 しかし、ナックルコングG3は攻撃を一切通さず、デルを片手で鷲掴みにしてしまう。

 

 「おやおや、我が帝国に恨みを持ち、反乱軍に入り、陛下の代理としてドクターに洗脳され、ジェノスピノに乗ったが、全く役に立たず、裏切った小僧ではないか。

 それで再び我が帝国軍に歯向かう等、愚かにも程があるわ!!」

 

 ナックルコングG3はそのままデルを叩きつけ、デルの装甲に傷の付いた。デルは傷つきながらも起き、

 

 「俺はお前への復讐のために生きてきた。お前さえ倒せば、父さんと母さんを供養できる。」

 

 しかし、ナックルコングG3はその言葉を踏みにじるように足でデルを踏みつけた。

 

 「貴様、誰に手出ししているのかわかっているのか? 私はネオデスメタル帝国の最終秘密兵器と呼ばれ、帝国で出世を遂げ、遂に親衛隊の隊長として皇帝陛下の代理人にのしあがった者だぞ!

 私の命令は即ち、皇帝陛下のご命令に等しい。その私に楯突く等、無礼千万にも程がある!」

 

 ナックルコングG3はグリグリとデルの身体を踏み潰そうとする。

 

 「リセル、デル!」

 

 ストームとドレイク、グラッドはリセルを助けに行こうとするが、ゼロファントス部隊がディゾルボムを放ってくるため、中々近付くことができない。

 

 「何をしている? 貴様の相手は私だと言ったはずだぞ!」

 

 「仕方ない。グラッド! お前はリセルを、俺とドレイクはドクターマイルスとゼロファントスを引き付ける。」

 

 「わかった。後は頼む!」

 

 レックスはナックルコングG3に突っ込み、

 

 「レックス、進化 解放! エヴォブラストー!! ファイナルガトリング!!」

 

 レックスは全ての装備を解放してナックルコングG3に撃ち込むが、ナックルコングG3の装甲はそれすらも寄せ付けなかった。

 

 「慌てるな。貴様の相手は後でゆっくりしてやる。」

 

 その時、突然、ナックルコングG3の目が狙撃され、バイザーを貫通して片目が破壊された。

 

 グオ~!!

 

 片目を破壊され、苦しむナックルコングG3、狙撃したのはユリスのディメパルサーのレナだった。

 

 「グラッドさん、今のうちにリセルを!」 

 

 「ありがとう。ユリス! どうやら、バイザーの強度は胴体の装甲程ではないみたいだ。つまり、あの目を狙えば… 」

 

 足を外し、すかさずデルを助けたレックスは攻撃の体勢を取るが、ナックルコングG3は両手でレックスとデルを凪ぎ払う。レナによって潰された片目はいつの間にかスコープが取り付けられていた。

 

 「片目を破壊しただけで、調子に乗るな! 既にそのために対策は練ってある。それに我が帝国のゾイドは例え、バイザーが破壊されてもその支配を解くことは出来ぬわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 到着したカティアはリセルやウィルたちを助けに行こうとするが、カーター大佐のスナイプテラがアッカーマン大佐のナックルコングMk-Ⅱに苦戦しているのを見て、カーター大佐の元に向かった。しかし、目の前に、全身に青みのかかったドクターマイルスのゼロファントスの量産型が現れ、そのコクピットには、かつてのカティアの友人のナッシュがいた。

 

 「やあ、ごきげんよう! ギレル元少尉。」

 

 「ナッシュ!! どうしてあなたが!?」

 

 「俺は生まれ変わったんだよ! 機械化して新たなボディを得て、皇帝陛下に仕える親衛隊に所属し、そして、このゼロファントスという最高のゾイドを、皇帝陛下ほ私に与えてくれた。 もはや、俺の人生は陛下の物なのだ!」

 

 「何を言っているの!? ギャラガー三世は、かつての帝王ギャラガー一世ではない! ギャラガー一世を乗っ取り、この世界を滅ぼす存在、デスザウラーなのよ!!」

 

 「ふん、どちらにせよ、皇帝陛下であることに変わりはない! 貧弱な人間の身体を捨て、不死身に近い身体を手に入れたのも全て皇帝陛下のおかげなのだ!

 もはや、俺の命は陛下のためにある、そして、俺はこのために生まれてきたのだ!」

 

 「もう、あなたには何言っても無駄なの… ?」

 

 「お前だって、望んでたんじゃないか? 強化人間なんかより、機械化して親衛隊に入ることが!?」

 

 「ナッシュ! お願い、目を覚まして!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レックスとデルの全ての攻撃もナックルコングG3に通用せず、デルはナックルコングG3に叩き潰されてしまう。

 

 「グハァ!!」

 

 「つまらん! 我が帝国に復讐するために付けた力がこの程度とは! 余りにも愚かだ。ならば、我が帝国に逆らった罰を受けるがいい! 

 ナックルコング、兵器 解放! マシンブラストー!! 極熱拳!」

 

 ナックルコングの拳がデルに放たれようとした時、アッカーマン大佐は、カーター大佐のスナイプテラとの交戦中にそれを見て、かつて自身もギャラガー三世の操るジェノスピノ率いる帝国軍の一将校として加わり、旧ネオヘリックシティを攻撃した時、三世のジェノスピノとタッカー元帥のナックルコングG3や親衛隊の兵士が旧共和国軍の兵士や民間人を虐殺した惨劇を思いだし、その惨劇を繰り返しまいと、そのままナックルコングG3の元に向かって走っていった。

 

 ズドン!!

 

 アッカーマン大佐のナックルコングMk-Ⅱはデルを庇い、ナックルコングG3はそのままコクピットごとナックルコングMk-Ⅱの装甲を貫いた。それを見たリセルやカーター大佐、コナー少佐、ウィルたちは青ざめた表情をした。 ナックルコングMk-Ⅱを見てリセルは、

 

 「何故… 帝国のあんたが… 俺を… ?」

 

 「私は帝国のために生涯を捧げた男、だから、私は帝国を裏切ることは出来ない。だが、君のような未来ある若者を死なすわけにはいかない。

 君の同士と両親を殺したあのネオヘリックシティの惨劇に私も加わった。そしてその惨劇を目撃し、絶望した。

 それまで正義と信じていた帝国があれだけの残虐な行為をしたことに… 

 そして、私は出世し、遂に四天王と呼ばれる程の地位を得た。だが、それでも帝国そのものを動かす程の権力は無く、ただ、ひたすら、三世陛下に従うだけだった。

 だが、カーター大佐とアーネスト殿下が帝国から離脱してくれて、ホントに良かった。

 これで、私の役目も終わった。君たちなら、帝国を、

世界を変えてくれるかもしれない。

 殿下、カーター大佐、そして、ウルフに乗る青年よ。私の分まで生きてくれ。」

 

 ナックルコングMk-Ⅱはそのまま爆発炎上し、ザンガイだけが残った。それを見たカーター大佐は目一杯の涙を流し、大声で叫んだ。

 

 「アッカーマン中将ー!!」

 

 「ち、裏切り者が! だが、いくら処刑を免れても所詮そんなボロボロじゃ、逃げられない。今度こそ、終わりにしてやる!」

 

 バリン!!

 

 その時、ナックルコングG3のスコープが破壊され、再びナックルコングG3の片目が剥き出しになり、レックスがその背後に掴んだ。

 

 「なんだ! なんの真似だ!?」

 

 「リセルを簡単に死なせるわけにはいかないぜ!」

 

 「何をするつもりだ!?」

 

 「ファイナルガトリング!!」

 

 レックスはガトリングをナックルコングG3の足にうちこみ、ナックルコングG3は足を崩し、ゆっくりと後退していき、直ぐ後ろは崖だった。

 

 「こいつ、放せ!」

 

 「コマンダー! 何故、あなたがそんなことを!?」

 

 「さっきの帝国軍人が教えてくれた。 男ってのはな! 責任は自分で果たす! 今がその時だ。

 それに、お前の時が止まった原因であるこいつを何としても倒さなくてはな! こいつを倒せば、止まったお前の時を動かせる。」

 

 「そんな、これは俺の問題です! あなたが手を出すことではありません!!」

 

 「これは、俺のケジメでもあるんだ! 俺は元々、ネオデスメタルの人間だったからな。その償いをしなくてはな。

 それと、ストーム、お前との付き合い楽しかったぜ! 元帝国軍の俺を受け入れてくれたのはお前だったからな。 こんな俺を司令官にしてくれてありがとうな。」

 

 それを聞いたストームは、

 

 「待て、グラッド! お前はこんなところで死ぬな!」

 

 「いや、俺の役目もどうやら終わったようだ。それにいくら総司令をやってもやはり、リーダーはお前だ!

 流石にフリーダム団リーダーの子孫には敵わないぜ。お前なら、俺がいなくても十分に行ける。そして、お前にはこの戦いが終わったら果たさなければならない旅の目的がある。必ずこの戦いを終わらせてその旅果たせよ!」

 

 「グラッドさん!」

 

 「ウィルか… 帝国軍基地で初めてお前と会った時はただのクソガキかと思っていたが、もうお前は正真正銘のゾイド乗りだ! シーザーを大切にしろよ!」

 

 「くそ、離せ!」

 

 「わりぃな、相棒。最後まで付き合わしちまってよ。でも、帝国軍に入隊して初めてお前と会って俺は救われた。帝国軍から逃げた時、死ぬときは絶対に一緒だぜ!って交わした約束は果たせそうだ。色々あったけど、悔いはない。ありがとうな。」

 

 グオ~!!

 

 グラッドの言葉にレックスは思いっきり咆哮を上げ、ナックルコングG3の装甲の薄い部分にファイナルガトリングを撃ち込み、ナックルコングG3は遂にその攻撃で倒れ、レックスと共に崖の下に真っ先になって落下していった。そして、崖の下から爆発が起きた。 それを見たウィルたちは信じられない光景を見るかのような表情をした。

 

 「ウ、ウワァー!!」

 

 リセルは発狂し、アッカーマン大佐とグラッドの死でレイルは悔やんだ。

 

 「どうして、どうして、アッカーマンやグラッドがが死ななきゃならないんだよ!!」

 

 その時、リセルの叫び声とレイルの悔しさに反応するかのように、倉庫にいるジェノスピノとオメガレックスの目が赤く発光し、自力でバイザーを破壊し、そのまま、倉庫を突き破って現れた。

 

 「全部、お前のせいなんだよ! さっさとくたばりやがれ!!」

 

 ゼロスティレイザーはギルラプターエンペラーを踏み潰そうとするが、ジェノスピノと共に自力でバイザーを破壊し、倉庫をぶち破って現れたオメガレックスの突進攻撃を食らい、ゼロスティレイザーは倒れてしまった。

 同時にジェノスピノもドクターマイルス率いるゼロファントス部隊を蹴散らし、デルの前に現れた。

 デルとエンペラーの前に現れたジェノスピノとオメガレックスを見たウィルとストームは驚いた。

 

 「ジェノスピノ、オメガレックス!!」

 

 「どうして、あの2体が!?」

 

 「そうか、あいつらは三世の操るゼログライジスの脅威を感じとり、自ら支配を解いたのか!」

 

 オメガレックスはギルラプターエンペラーの前に立ち、何かを訴えかけるかのようにレイルを見た。 ギルラプターエンペラーもレイルを向いた。

 

 「オメガレックスはこの僕を必要としているのか?」

 

 エンペラーはそうだと言うようにうなずき、それを見たレイルはギルラプターエンペラーから降り、ジャンプしてそのままオメガレックスに乗り換えた。オメガレックスはゼロスティレイザーに向けて荷電粒子砲の照準を合わせ、

 

 「行くぞ、オメガレックス!」

 

 グオォ~!!

 

 「オメガレックス、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 オメガレックスの荷電粒子砲がゼロスティレイザーに向けて放たれた。ゼロスティレイザーはすかさず、Eシールドで防ぐ。しかし、オメガレックスはそのまま荷電粒子砲を他の親衛隊ゾイドにも向け、一気に蹴散らした。

 

 「皆、今のうちに早く逃げてください!!」

 

 それを聞いたストームは、

 

 「よし、わかった! 全員撤退するぞ!」

 

 ストームの命令で、ウィルたち同盟軍、旧共和国、新帝国のゾイドは撤退していった。アーミテージ大尉はその後を追うとするが、ドクターマイルスが待ったをかけ、

 

 「止せ、あのままにしておけ。我々は今すぐタッカー元帥殿のナックルコングGま3を回収して帝都メガロポリスに帰還する。」

 

 「は? 何言ってんだ! ジェノスピノ、オメガレックスを奴等に奪われた上に逃げられたんだぞ!!」

 

 「それが今回の作戦だ。あの2体を反乱軍の手に渡すことが目的だったのだからな。奴等に真の絶望を与えるために!」

 

 「ああん?」

 

 それを聞いて首を傾げるアーミテージ大尉、

 

 「それにしても、あの2体、皇帝陛下によって捨て駒扱いにされ、処分を免れるために自ら、ライダーを選ぶとはな。どうやら、次の戦いは楽しめそうだな。フフフフフ、ハーハッハッハッハッハ!!」

 

 ジェノスピノ、オメガレックスを奪われたにも関わらず、まるで如何にも罠に掛かったかのように不敵な笑みを浮かべるドクターマイルスの高笑いが響き渡った。

 撤退していくウィルたちはジェノスピノ、オメガレックスを奪還出来た反面、胸に穴が空いたような悲しい表情をしていた。

 

 To be continued




 次回予告

 ジェノスピノ、オメガレックスを奪い返すことに成功した代償にグラッドとカーター大佐の恩人のアッカーマン大佐を失うという代償を払ったが、既にネオデスメタルでは反乱軍を一気に叩く準備をしていた。
 レイル、リセルがオメガレックス、ジェノスピノに乗り、遂にウィルたちもネオデスメタル帝国との最終決戦に望み、帝都メガロポリスに向かった。
 そこにはガネストの操るデスレックス紫龍形態とナックルコングG3、ドライパンサーG3率いる親衛隊、ドクターマイルス率いるゼロファントス部隊が待ち受けていた。

 次回「帝都奇襲」

 本能を呼び覚ませ、ライガー

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。