現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。   作:五月時雨

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 えと……未来の二つ名は、まだ未定です。
 


速度特化と掲示板

 

 NWO開始二日目。

 ハクヨウは初日に確立した戦い方で、今日も楽しく遊んでいた。

 

「【スラッシュ】!」

 

 モンスターとしては、真上という死角からくる突然の斬撃に成すすべなくやられる。

 木を【跳躍】で蹴ったが故の加速力、【AGI 608】という化物な速度、そして落下による重力加速が合わさることで、ハクヨウの姿は白い影としか認識できず。

 【辻斬り】の敵対値(ヘイト)減少に加え、今日のレベル上げ中に取れた【気配遮断Ⅰ】により、ハクヨウはモンスターに全く気付かれなかった。

 

「やった。これでレベル15。モンスターにも見つからないし、完全に暗殺者って感じ」

 

 辻斬りにより、【AGI】が高いほど攻撃の威力が上がるハクヨウは、前日は一撃とはいかなかった大きなムカデも一撃で倒せるようになった。

 

「けど、ダメージ上がり過ぎだよね……ちょっと調べよう」

 

 【辻斬り】は、どのように威力が計算されているのか気になったハクヨウは、木の上でステータス画面を開く。

 

「ふむふむ……?現実で威力って言うと、速さ×重さ。この世界だと、AGI×STR……って単純な話でも無いんだ」

 

 攻撃時の威力はSTRの比重が大きく、AGIは殆ど関係がないらしい。

 特に、システムで設計されたスキルに関しては、完全にSTR値によって計算されていた。

 そして更にちゃんと調べていくと、ついにハクヨウの求めていた解答が出た。

 

「【辻斬り】は攻撃時のダメージ計算のSTRをAGIに置き換える……え"っ」

 

 待って、ほしい。何とか絞り出せた感情がこれである。あれ?見間違いかな?

 STRとAGIの数値を入れ替えて攻撃力として計算するなんて、流石に――

 

「間違いじゃ、なかった………」

 

 だって今、木を登ってハクヨウを狙ってきた大ムカデを、スキル無しで一撃で倒せてしまったから。今日は、ログインしてからずっとスキルで倒していたために気付かなかったハクヨウだが、通常攻撃も基本的にSTRが攻撃力として計算されているため、それがAGIに置き換えられたら?

 

「【STR 608】相当?……しかも攻撃速度もやばい……うん。どうしよ」

 

 余談だが、流石の運営も、完全にAGIをSTRの代わりに計算するようなダメージ計算にしているわけでは無く。

 STRにAGIを五で割ったもの足し、攻撃力としている。

 そのためハクヨウの考えた【STR 608】とは全くの見当違いであり。正しくは、攻撃時の威力は現状【STR 129】相当で計算されている。

 ハクヨウが思ったそれとは、かなりの差が出ている訳なのだが。それでも、驚異的な攻撃力と言う他なかった。

 

 そんなことは知る由もないハクヨウは、けれど、強いことは良い事だと考え直し、10あるステータスポイントを全てAGIに振り切った。

 

 ちなみに、あくまでも計算上、そのような攻撃力を持っているというだけであり、ハクヨウのSTRは今も0のままで、力が強くなる、と言うことはありはしない。

 

「あとは……このずっと見えてる、『赤い線』だよね……【首狩り】の効果だっけ」

 

 森のフィールドに来るまでも全てのプレイヤー、ほぼ全てのモンスターの首に見えている、太さ一ミリほどの赤い線。ここを正確に斬れば、相手は必ず倒せる。頭と体の明確な区別ができないスライムなどのモンスターには見えなかったが、即死技とは強力なスキルだ。まぁそれも。

 

「一ミリしかない線なんて、激しく動きながら狙えるわけない……」

 

 というわけである。とりわけハクヨウ自身が速すぎるために、正確に狙おうにも困難を極めていた。そのためハクヨウの狙いは首周辺というだけであり、殆どが『通り抜けざまに敵に剣を置く』というだけで振っていない。

 移動速度で斬り裂けるから。

 何度も失敗して、首に剣を当てるだけでも成功率は三割。他は全部胴体だ。

 そこから更にミリ単位で精密に剣を置くなど。

 

「むりむり、むーりー……っ」

 

 敵だって動くのだ。動かれれば狙いはズレるし、速すぎる自身の挙動で修正もできない。

 

「どうしかして動きを止められたら別、だ、けど……あっ」

 

 思い出した。ハクヨウは、思い出してしまった。前日に訪れたお店に【状態異常攻撃Ⅰ】や【投擲】、【投剣】といったスキルがあることを。

 

「【投擲】は何でも投げて攻撃できる代わりに威力はあんまり高くない。【投剣】は剣に類するものしか投げられないけど、その分威力はそれなりにある……これに【状態異常攻撃】を合わせれば……うんっ、いけるかも?」

 

 この思いつきが、彼女が『白影』『首狩りアサシン』『アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?』と呼ばれる、その始まりであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 早速街に戻り、お店で【状態異常攻撃Ⅰ】と悩んだ結果【投剣】に加え、一番安い投擲用ピックを素材を売って得たゴールド全額使って大量購入したハクヨウは、速攻で森にリターン。

 木の上でモンスターを探していた。

 

「投擲用ピックだけど、一応武器種は短剣だから【投剣】使えるし……いた、猪」

 

 体も大きく、狙いやすい猪ならば、試すのにうってつけだろうという事で、早速ピックを構える。

 

「【投剣】」

 

 この時、ハクヨウは失念していた。

 自分の攻撃力を。

 例えそれが最安値のピックだとしても。

 例えピックのステータスが【STR +1】だとしても。

 ハクヨウが与えるダメージは、AGIが大半を占めるから。

 

「あっ……」

 

 猪は、知覚外から飛んできたピックが突き刺さると、その瞬間にその体を粒子に変えてしまう。

 

「【首狩り】、試せない……っ!」

 

 偏に、AGIに極振りした結果の高すぎる攻撃力が原因である。

 首狩りで即死を狙うまでもなく、この辺りのモンスターはハクヨウの敵ではないのだ。

 

 しかし、それでもまだ【投剣】に慣れていないのは事実なので、木々を飛び移りながらモンスターにピックを投げ、八つ当たり気味に倒していく。

 モンスターから得た素材の量を考えれば、最安値のピックを使い潰してもお釣りが来るので、使い捨てることを躊躇わない。

 と言っても、近くのモンスターを仕留めた時は回収するし、なるべく近いモンスターを倒すことを心掛けている。

 そのため八割方は使い回しているのだが、それでも最安値ピックは五回も使えば破損してしまう脆いもので、練習量が確保できるだけであり、この日ハクヨウは、全てのピックが破損するまで、【投剣】でモンスターを狩り続けた。

 

 

―――

 

【NWO】森を跳び交う白い影【二日目なのに】

 

1名前:名無しの大剣使い

 サービス二日目にして不思議現象を見た

 

2名前:名無しの槍使い

 kwsk

 

3名前:名無しの魔法使い

 どんな現象よ

 

4名前:名無しの大剣使い

 西の森で戦ってたらモンスタートレインしちゃって死にかけた

 そしたら森の木の上に白い影が通ってその瞬間にモンスターが軒並み倒された

 

5名前:名無しの弓使い

 は?

 

6名前:名無しの大盾使い

 は?

 てかもう森まで到達したのか早いな

 

7名前:名無しの槍使い

 草原もかなり広いからな

 森は死角からもモンスター出てくるから慣れがいるのに 早いな

 

8名前:名無しの大剣使い

 行けると思ったら死にかけたんだが……

 白い影に助けられたんだが 他にも森に入ったプレイヤーで色々噂になってる

 

9名前:名無しの魔法使い

 それ俺も聞いたな

 森のモンスターが空から降ってくる白い影に一撃でやられたとか

 

10名前:名無しの大剣使い

 ピンチになると必ずと言っていいほどモンスターがいきなり倒れるとかな

 それも白い影が近くに見えた気がしたとか言われてる

 

11名前:名無しの弓使い

 白い影……明らかにプレイヤーだよな?

 

12名前:名無しの槍使い

 誰もちゃんと姿が見えねぇってどういうことだよ?

 

13名前:名無しの大盾使い

 それだけAGIが高いのか……

 いやそれだと一撃で倒せる説明にならないよな

 

14名前:名無しの魔法使い

 AGIがやけに高い 白いって情報なら昨日もたしかあったよな?

 

15名前:名無しの大剣使い

 土煙を巻き上げて爆走する白いプレイヤーな

 確かに土煙上げるほどのAGIならいけるのか?いやしかし……

 

16名前:名無しの槍使い

 まず初日にそんだけ高いAGIなのが異常

 

17名前:名無しの魔法使い使い

 やっぱ極振りか?

 極振りなら土煙起こせるん?

 

18名前:名無しの弓使い

 βの検証だとモンスターから逃げ切れる程度で土煙なんて起こらないらしいぞ

 

19名前:名無しの大剣使い

 ならスキルか

 初日のしかも数時間でレアスキル見つけるとかやべーな

 

20名前:名無しの大盾使い

 森の方は知らんが俺そいつ見たわ

 

21名前:名無しの大剣使い

 教えてくれるとうれしい

 

22名前:名無しの大盾使い

 昨日 俺の後ろに出た兎を仕留めてたからな

 一瞬だったからちゃんとは見れなかったが身長150無いくらいの美少女

 白い影ってのが納得の真っ白の長い髪だったな

 で 兎倒した後は恥ずかしそうに顔を赤くして『ご、ごめんなさい!』って走り去った

 

23名前:名無しの槍使い

 なるほど女かそれも美少女か

 

24名前:名無しの弓使い

 恥ずかしそうに顔赤くして『ごめんなさい!』……可愛すぎか

 

25名前:名無しの魔法使い

 やばいそれは萌える

 

26名前:名無しの大剣使い

 んーまた追々情報集めるしかないか

 まだ二日目だしそのうちに自然と集まるだろ

 

27名前:名無しの大盾使い

 また何か見かけたら書き込むわ

 

28名前:名無しの魔法使い

 情報提供感謝します!(敬礼)

 

 

―――

 

 こうして、ハクヨウは少しだけ話題になった。




 
 もうね……前話でもハクヨウちゃん言ってたけど、マジで忍者になっていきそう。
 ニンジャスレイヤーネタ入れてるし、今回からタグにクロスオーバー入れました。
 まぁ、今回はまだ序の口よ。
 次回こそ本気でやばくなりそう。

補足
 【辻斬り】
 STR+AGI÷5
 を攻撃時のみ【STR】ステータスの相当値として計算する。
 あ、本作でも小数点以下は切り捨ててます。
 
 まあPS特化の【精密機械】のデメリットを無くして、威力を下げた感じですね。
 流石にこの計算式をそのまま説明欄に入れちゃうと、スキル名を別のに変えた方が良い気がして……まぁ、そういう設定なんだよってことで、ここは一つ。

 ただ、これをハクヨウちゃんがやるとな?

 例えば……例えばだけど、メイプルちゃんの防御力たる【VIT 10000】超えみたいに。
 【AGI 10000】超えちゃった日には……その時の威力は【STR 2000】相当として計算されちゃうわけで……。マイユイなんて目じゃないというね……ホント、どうしてこうなった。

 これが、極振りのハクヨウちゃんじゃヤバイって理由なわけでございます。

 まぁ、まだまだどんどん強くなるけど……それはまた次回以降にでも。
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