現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。 作:五月時雨
PS特化のUAが、遂に10万を超えました。
どっちも本当にありがとうございます!
偉そうなこと言うつもりはありませんが、評価バーって大事よね。
高評価得たいなら、相応に内容を練るべきだし。いや、私はノリと勢いで書いてるんだけどさ。でも低評価を受けたら、何が悪いのか、より良くするためにはどうするべきかって考えてます。
そして、その最中で生まれた裏事情やら出来事、考えなんかを書いてるから、後書きが長くなるんですよね。マジごめんなさい。
サービス開始から一ヶ月半が過ぎた。
攻略済みのフィールドエリアはかなり広がり、つい先日、更に先のエリアにペインが踏み込んだと、クロムから聞いたハクヨウ。
しかし、フィールド全域を走破する目標こそあるものの、最速攻略自体に拘りはないハクヨウは、この日は『別に良いや』と散歩ついでに東の森に来ていた。
ペインがいるのは西に進んだ先のようなので、位置関係は真反対である。
「あんま、り強く無い、けど、毒あるんだ、ね」
この先には【毒竜の迷宮】というダンジョンがある。それに呼応してか、進むに連れて草木は枯れ、紫に染まった池などが点在するのが見受けられた。
そこの攻略目的と言うわけではないし、単にほとんど来たことのない方角だったため足を運んだだけだが、街に比較的近い辺りでは相手にもならない。
途中に現れるモンスターを鎧袖一触しながら、気付けば目の前に地面が一部隆起し、ぽっかりと口を開けているのが見えた。
「【毒耐性】ない、し……ここは、スルー」
まぁそんなこと関係なく、無視して先に進むのだが。この【毒竜の迷宮】に来るまで、緩い上り坂を登り続けたハクヨウは、まだエリアは続いてるからと更に登り続ける。
この東エリアは、【毒竜の迷宮】を中心に、体内に毒を持ったモンスターが数多く存在する。ハクヨウのように一撃で倒せるだけの攻撃力を持たない普通のプレイヤーは、基本的にダンジョンまでの道中に【毒耐性】を上げて行くのが普通だ。
ダンジョンに挑むにしても、【毒耐性中】を持っていることが、掲示板等で推奨されている。
この東エリアの攻略は殆ど進んでいないのだ。他の方角の方が攻略が、【耐性】スキル等があまり必要無いなどの理由で楽な為、結果的に進んでいない。
しかし、レベルだけはトップクラスのハクヨウさんには関係ない。
AGIに物を言わせてモンスターを倒し、【毒竜の迷宮】をサラッと無視し、どんどんどんどん登っていく。
そして並外れたAGIによって、わずか数分で頂上が見えた。
「ん。着い、た………わぁ……っ」
山頂から見た景色。
毒に侵され、枯れ果てた片側とは打って変わって、緑生い茂る豊かな山の景色と、その先には雄大な渓谷。その景観は北欧で見られるフィヨルドを連想させ、幻想的な風景が広がっている。
現実では見たことがない景色なのもあるが、何よりこの雄大さを今、ここで独り占めしている事に心躍る。東は【毒竜の迷宮】より先の探索は進んでいない。掲示板にも、この様なフィールドの情報は出ていない。
つまり。そう。
「反対側の、最前線……っ!」
攻略にはあまり興味は無かったけれど、しかし、こうも綺麗な景色ならば、隅々まで見て回りたいのが本音。この世界では、迷わず『どうしたいか』に従うハクヨウさん。出す答えなど、とうの昔に決まっている。
「しゅ、っぱーつっ【跳躍】!」
山頂から、飛び跳ねるように一気に下る。途中のモンスターの見た目は、街に近い森と大差ない。ただ、一回り大きく、力強く見えるのは間違いではないだろう。
「【疲燕】!……一、撃なら。問題ない、ね」
正面から襲ってきたモンスターに、偶に【手裏剣術】したり【居合斬り】したりして、全て一撃で倒していく。
【投剣】が【Ⅹ】に達し、【速射Ⅰ】というスキルを新しく取得できたハクヨウは、【投剣】【手裏剣術】においてスキルのクールタイムが短くなり、『AGI×1%分のダメージ加算』が付いている。ハクヨウの今のAGIは【2220】という驚異のステータスを誇るため、いずれは無視できないダメージが出ることだろう。
モンスターの強さは、どれも体感的には以前までの最前線だった湖沼エリアと同等であり、ハクヨウにとっては可もなく不可もなくといった具合である。ただ、ここに来るには毒の山を超える必要があるため、普通なら苦労しそうだ。
「私に、は、関係ないけど、ね」
フィールドに出てから三十分と経っていない。それも歩きで、だ。走ればもっと早く着くし、面倒なら【ばぁさぁかぁ】に乗れば良い。
「ここ、がフィヨルドなら……海と、つながってるの、かな?」
本物のフィヨルドは、氷河の浸食によってできた陸地に深く切り込んだ湾である。つまり、本物ならその先は海だ。だが、見渡す限りでは海らしきものは見えない。
あるいは、もっと遠くまで探索に出る必要がありそうだ。
「現実じゃ、見れない景色を、見れる……ゲームの醍醐味だ、ねっ」
出現するモンスターは、一回り大きなゴブリン……恐らくホブ・ゴブリンやクマ、鹿などの他に、空からは腕が翼になった小人、ハーピーなども襲ってきた。ハーピーは【手裏剣術】で手早く撃ち落とし、地上のモンスターは斬り刻んでいく。
そうして山の中を高速で抜け、視界を覆う森の木々から抜け出した途端。
透き通るほどに青い水面が、日の光に照らされてキラキラと輝いた。
「す、ごい……」
一人で来たのが、残念でならない。
いや、この風景を独り占めできたのは幸運だが、クロムやイズ、ついでに、渋々カスミにも見せて驚かせたい。
そう思えるくらいには、絶景だった。
「魚も、いるんだ……モンスターなのか、な?」
水面を覗き込めば、水中をゆったりと泳ぐ魚の群れを見ることができる。川のような流れもないのでやはり湾だと思うハクヨウは、浸食で削れた海岸線を歩きながら、目新しいものが無いかと探索に出る。
するとやはりと言うべきか、ソロの時は働きにくい【辻斬り】は仕事をせず、フィヨルドからモンスターが飛び出してくる。
「……ウミヘ、ビ?」
見た目は青い鱗のウミヘビだが、三メートルを超える体長はやはりモンスター。
しかも頭のすぐ後ろ辺りには、翼のように見えるヒレが付いていて、水面から飛び出した勢いで空中を滑空して襲いかかる。
「遅い、けど。【跳躍】」
大質量のウミヘビだが、所詮自由落下だと溜め息一つ溢し。自分から跳び上がり、空中でウミヘビと交錯する。
紙一重の真横を通り過ぎ、されどハクヨウの持つ【
「ふ、ぅ。おしまい」
ウミヘビ自身の落下速度、ハクヨウの【跳躍】による驚異の移動速度。
その二つが重なり合うことで、ウミヘビは一撃で頭から尾の先まで綺麗に二枚に下ろされ、粒子へと変わった。
「倒すの楽、だけど……歯応え、ない……」
自分の持つ攻撃力の高さには非常に助かっているが、だからこそ、大抵の敵に苦戦することが無いため、少しだけつまらなかった。
だからもう少し、楽しいことをする。
「地底湖でも、湖沼エリアでも、できた、し……大丈、夫っ」
自らに言い聞かせ、不安と期待をない混ぜにしながら、眼下の水面を見つめる。
陸地が削れ、わずか一メートルからは広く深い水面が顔を覗かせる。
その雄大さに、俄に呑み込まれるような恐怖を抱くが、好奇心は止まらない。
「【文曲】っ」
勢い良く、飛び降りる。さながら足から真っ直ぐに、水中に飛び込むように。
されど、ハクヨウ自身の期待通り、彼女の足は沈まなかった。
生まれたのは、幾重にも広がる二つの波紋。
それだけを残し、水面に立っていた。
「ふふっ……うまく、できたぁ」
更に一歩を踏み出せば、波紋が広がり水の上を滑るように進む。
以前から【水走り】によって、水上を走る、歩くことはできていた。しかし、ただ立つのは、これが初めてだった。やれる確証は無かったが、ハクヨウは『やっぱりできた』と、とあるスキルを見ながら胸を撫で下ろす。
―――
【
一時間、AGIが10%減少し、あらゆる地形を足場として踏破できる。
一日の使用可能回数は五回。
―――
つい先日、【軽業】のスキルレベルがマックスになった事で取得したもの。
使用中は最高速が落ちる代わりに、あらゆる場所を踏破することができるスキル。
走るだけでなく、歩くことも、ただ立つこともでき、壁や天井を走ることもできる。流石に天井は、重力に逆らうことになるので、短時間だが。
もちろん、今ハクヨウがやっているように、水の上に立つことだってできる。
【水走り】は、AGIに物を言わせて水上を走ることができるスキルだが、これはAGIを一時的に下げる事さえ目を瞑れば完全上位互換。
しかも【水走り】には、水上でAGIが5%上昇する効果があるので、互いに打ち消し合い、速度の減少も誤差の範疇。
そのまま、スイーッスイーッと水上を滑るように移動すれば、尾を引くように後ろには扇状の波紋が広がっていく。スケートの経験がないハクヨウも、氷の上はこんな感じだろうかと夢想する。
普通の地面を走るのとは、少しだけ勝手が違うが、しっかりと踏みしめ、蹴る感覚はほとんど変わらない。
「やっぱり……水棲モンスターは、襲ってくる、ね」
水上を滑っている間にも、先のウミヘビだけでなく、魚系のモンスターも多数襲ってくる。が、水面に上がった時点で良い的。【手裏剣術】をばら撒けば余裕で倒すことができる。
そうして、十分ほど水面を気ままに滑っていると、反対側の陸地が見えてきた。
本来なら、フィヨルドを迂回して大回りする必要のある対岸。それをハクヨウは、僅か十分で踏破してしまった。
「っ……あれ、は……」
そして見えたのは、いないと思っていた二人のプレイヤーの姿。
それも、一人は見覚えのある赤を基調とした、西の湖沼で出会い、言葉少なに去ってしまった魔法使いの女の子。
あの時は【瞬光】の影響で見れなかったが、鮮やかな赤を迸らせてモンスターを焼き尽くす姿は圧巻だった。
もう一人は、金髪の女性プレイヤー。白を基調とした神官のような装備に長杖を持った魔法使いのようだ。魔法使い二人で前衛はなく、バランスが悪いように見えるが、赤の魔法使いが前に出ていた。
「あ、れ……?」
ハクヨウは、何故か神官の女性プレイヤーから目が離れなくなる。会ったことはないのに、何処かで見たような、そんな既視感。
顔も見えていないのに、何故か感じた。
幸い、二人はフィヨルドの方ではなく、奥に広がる草原のモンスターと戦っていたので、ハクヨウの存在には気付いていない。
だからハクヨウはそっと岸に上がり、少しの間、様子を伺うことにした。
【気配遮断】で岩陰に隠れてしばらく。
金髪の神官への既視感を拭えぬまま、遠目から様子を伺っているのに我慢ならず、ハクヨウは声が聞こえる所まで近づくことにした。
『ミィ、もう少しですよ!』
『うん!……っとごめん、そっち行った!』
『問題ありません、【ホーリージャベリン】!』
そんな話し声が、確かに聞こえた。
爆炎の衝撃や、光の槍が降り注ぐ戦場で、はっきりと。
「……ん、聞こえ、た。けど、……」
やはり、既視感だけでなく、声にも聞き覚えがある。つい最近、何処かで聞いたような。慣れ親しんだような……。
けれど、それと同じくらい。
「良かっ、たぁ……」
少しだけだが、確かに感じた。
初めて会った二週間前とは違う、年相応の女の子らしい雰囲気。
ミィ。と呼ばれていた赤の魔法使いは、演技なんてする必要のない相手を見つけられた。
それは、共にいる女性がハクヨウにとってのクロムのように、気兼ねの無い相手だったからなのかもしれない。
けれど、もし。
自分の偽善に塗れた言葉が彼女を動かすことができたのなら。
「うん。帰、ろ」
それに勝る喜びは、きっとない。
ハクヨウに真相を聞くつもりは無いし、もしそうだとしても、感謝される筋合いはない。
所詮、自分に嘘をつき続け、欺き続けた先の言葉だ。友人に本当の自分を見せるのが怖い、自分には言う資格の無かった言葉だ。
そんなものに感謝たとしても、自分が困る。
だから、見つかる前にログアウトしよう。
―――そう、思っていた。
突如大地が震え、フィヨルドが白波を立てる。
『へっ?何これっ!?』
それは瞬く間に巨大な渦潮となり、大気を巻き上げ竜巻となり。
『ちょっ、嘘でしょ!?
ないないないないっ!』
『逃げましょうミィ!あれは勝てません!』
(う、そ……
上空にから、大地を砕くほどの獣の咆哮が轟いた。
フィールドボス。
ダンジョン等に出現するボスと違い、
存在を確認されているのは、今のところ前の最前線だった湖沼エリアのみ。そこでは、泥でできたゴーレムだったらしい。物理攻撃が殆ど効果を見せず、広範囲の地形を操作し、水と土の魔法にも耐性があったという、トッププレイヤーたちの即席レイドを殲滅したモンスター。
それより街に近いフィールドでは、一度たりとも確認された事はない。
そんなモンスターと、同格の相手。
(私が、いたから……っ!)
サファイアのような蒼の鱗を持つ有翼の蛇竜。
その首に、【首狩り】の赤い線が見えなかったから、ボスモンスターだと判断できた。
たとえソロだとしても、パーティー単位でカウントされてしまうがために、その低確率を引いてしまった。そしてフィールドボスを最も厄介とされる所は。
『やはり、逃げられませんか……』
『強制戦闘でログアウト不可とか最悪だからぁ――っ!』
そのフィールドにいる全パーティーが、戦闘終了までログアウト出来なくなること。
ボスを討伐する。
大人しく死に戻りする。
ボスモンスターの治めるエリアから出る。
この三つのうち、どれか一つを満たさない限り、ログアウトできない。
そしてダンジョンボスのように情報が出回っているわけではなく、討伐方法が確立されていない。ましてや、ここは掲示板でも情報がない、完全な最前線。なぜ、魔法使いの二人がここにいるのかも気になるが、ボス情報なんて0。
(私が、何とかしない、と……っ)
出現条件である『限りなく近い位置』とは、ハクヨウが近づき過ぎたことに原因があるから。
「【文曲】は……まだ、残ってる」
スキルの残り時間は三十分。しかし、使用可能回数から鑑みれば、時間は十分にある。
だからハクヨウは、少しでも自分が気を引いて、二人が逃げる時間を作ることにした。
「貴女たち、は、早く、逃げて」
岩陰から出て、二人に声をかける。
突然現れたハクヨウに驚いている様だが、今は気にしていられない。
「あれ、は、私がここにいたせい、で、呼んじゃったから。ごめんな、さい」
やっていたことは、先日のドレッドと変わらない。無断で観察していた。その結果、あれを呼び寄せた。ならば、その責任は取るべきだ。
「勝手に見てて。迷惑、かけて。ごめんなさい。私が、時間つくる、から」
「早く逃げて!」
叫び、フィヨルドの中央上空を飛ぶ竜と戦うために水上を駆ける。
「【挑発】!」
【辻斬り】により、つい先程まで二人の方に意識が向いていた竜を、強制的に自分に向けさせる。
「【瞬光】、【韋駄天】っ!」
出し惜しみなんてしていられない。
少しでも長く竜の注意を自分に向けさせて、二人の時間を稼ぐ。
だから、
だから―――
「そ、か………」
やっと、誰なのか分かった。
髪色も違うし、自分を見た碧眼も違う。多分、自分と同じように始めた時に変えたんだろう。
神官服なんて現実じゃ見たこともない。
だけど、あの優しげな眼差しは、間違いない。
「任せ、て。美紗ねぇ」
口元を綻ばせ、プライベートの呼び名で。
聞き取れなくとも、
諭し、己の愚かさを気付かされた少女は、しかし未だ一歩を踏み出せず。
されど偽善の言葉に諭され、勇気をもらった少女は、その一歩を踏み出していた。
そんな対比する白と赤は今一度戦場で出会う。
……もう崩しますねー!
独自設定『フィールドボス』
別名【
私読み【対俺たちの悪ふざけ専用バランス破壊モンスター】
【運営の悪ふざけ】の強力なスキルを持つ奴らに勝てるポテンシャルを持つ、悪意の塊。限りなく低確率で出現し、バランス調整をギリギリ無視した強さを持っている。
・極近い地点に2パーティー以上が存在する。
・その2パーティーのうち三人以上が【運営の悪ふざけ】を取得しているか、エリアにいる全プレイヤーの【運営の悪ふざけ】総取得数が5以上である。
の二点を以って、1%の確率で出現する。
たぶん、今後の出番がほぼ無い独自設定。
今回は、三人とも【運営の悪ふざけ】を持ってること。そうで無くてもハクヨウちゃんが大量所持していること。を以って、確率の壁を超えて出現しました。
【運営の悪ふざけ】を持っていなければ絶対に出現しないので、一般プレイヤーには優しい。
が、出現した時にはやっぱり容赦ない。
作中にもあるようにボスのいるエリア。今回ならフィヨルドの全域が一時的にログアウト不可になり、エリアにいる全プレイヤーが強制戦闘対象に入る。
ぶっちゃけレイドボス。
突然沸いて出るレイドボスほど迷惑なモノは無いと思います。メイプルみたいな!
フィヨルドのフィールドレイドボスの見た目は、金色のガッシュベル!!の『シン・スオウ・ギアクル』そのまんま。知りたきゃググって。
一般プレイヤーだけでは出現しないことと、出現率が限りなく低いことの二点こそが、バランス調整と言っても過言じゃない。
まぁ一つ言うことがあるとすれば。
ミィ好きを公言する私がミィの話をあんな適当に放り出すと思ったか読者諸君!?
って事ですね!
あぁ後、【文曲】分かる人いるのかな?
一応クロスオーバーだけど、アニメやったのは五年以上前だし……。