現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。   作:五月時雨

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 類は友を呼ぶ。

 この三人を表すのに、これ以上の適切な表現は無いのでは……。

 


速度特化と類友

 

 今はハクヨウと二人のレベル差がありすぎるため、取り敢えずレベルあげのためにもフィールドに出ることにした三人。

 ハクヨウ自身が強すぎるため、実際に戦うのは基本的にメイプルとサリーで。ハクヨウはもしもに備えた護衛である。

 目指すは初討伐だ。

 

 

 

 

 町の外にも、町の中ほどでは無いが人がいた。ここで戦ってもいいのだが、ハクヨウ(トッププレイヤー)がここにいると狩場荒らしと間違われることがある。

 

「ごめん、ね。もう少し、遠くに行く、よ」

「いーよいーよ!……というか、私もかっこ悪いとこ見られたくないし……」

 

 そのことを申し訳なく謝れば、完全初心者なメイプルはこの反応である。

 そのままてくてくと歩いていき、AGIの差で時々ハクヨウが止まりながら、人のいなそうな森までやってきた。

 

「ん……懐かし、い」

「来たことあるの?」

「私が最初に、入った森。木の上から、奇襲すると簡単、だよ?」

「その頃から変なことしてたんだね……」

「?」

 

 わずか二日でエリアを変えてしまったが、ここで様々なスキルを取得し、戦い方を考え、今に繋がっている。そう思うと、感慨深いものがあるハクヨウだった。

 

「よーし!ここなら誰もいないし、モンスターさんどこからでもかかってきて良いよ!」

「私もレベル上げたいし、どこからでも来い!」

 

 意気込む二人の邪魔をしないように、ハクヨウは【跳躍】で木の上から眺めることにした。

 無論、【九十九】を一本抜いて、何時でも投げれるようにしている。

 そして二人の声に反応したかは分からないが、尖った角を持った白兎が草むらから飛び出してきた。位置はサリーよりもメイプルよりで、白兎もかなりのスピードで体当たりをしてくる。

 行動補正のかかっていないメイプルが、兎の突進を躱せるかという答えは、当然、否。

 

「メイプル!」

「ちょっ!?わっ、ごめんなさい!」

 

 何に対して謝ってるかもよく分からないまま、メイプルは慌てて構えていた大盾を変にずらしてしまい、尖った角を使った突進攻撃をお腹で受け止めることになった。

 

「痛っ!……く、ない?」

「うっそぉ……」

「わ。すごい」

 

 兎はクリティカルヒットした筈なのに、ダメージが与えられていないのを見て戸惑ったのか、少し距離をとった。

 

「おおおおっ!凄い!痛くないよサリー、ハクヨウ!流石は【VIT 128】!ふふふ……どうだ兎さん。私の腹筋は?」

「ぷにぷに」

「すべす、べ」

「ふふ、二人は黙っててよぉ!?」

 

 お腹に力を入れるメイプルを見て、見たままの感想を告げる二人。慌てて反論するメイプルだが、その様子を挑発と取ったのか、それとも単にそう行動が決められているだけなのか。ともかく兎は再度メイプルに突進する。

 メイプルはそれを、盾を使わずにお腹で受け止め続ける。

 

「ねぇ……これ、どうしよ?」

「楽しそ、う」

「私かハクヨウがやったら、確実に一撃死だけどね?」

 

 【VIT 0】か【VIT】極振りの両極端なパーティーだった。

 ハクヨウをして、この光景は遊んでいるようにしか見えない。兎はしつこく突進を繰り返し、メイプルはそれを楽しそうに受け止め、兎を撫でようとする。

 相手がモンスターでなければ楽しそうな微笑ましい光景。モンスターだから摩訶不思議で掲示板に書き込まれそうな光景。

 これには、サリーも兎を倒すべきか躊躇った。

 

「ほらほらー?もっと気合を入れてー?」

「完全に、じゃれて、る」

 

 完全に兎のと遊ぶ方向にシフトしたメイプルを見て、サリーは一度別行動しようと決めた。

 暇だった。

 

「だね……メイプル。私、別の所でレベル上げに行っても良い?一時間くらいで帰ってくるからさ」

「うん!良いよー!もう少し兎さんと遊びたいからー!」

「じゃ、遠慮なく!」

 

 これで遊んでる所に短剣ザクッ!はメイプルに申し訳ないので、別行動を取る。

 

「フォロー、いる?」

「んーん。大丈夫!ハクヨウはメイプルに付いててよ。こっちはこっちで、好きに楽しんでる」

「ん。わかっ、た」

 

 走り去るサリーを見送って、ハクヨウはメイプルの最初の動きを思い出す。

 慌てて大盾を変にずらし、お腹で受け止めた光景。あれは、信頼する大盾の相棒には絶対に無いもの。いくら今はダメージを受けていなくても、ボスモンスターなんかが相手ではそうも行かないと思った。

 

「大盾の、先生。……クロムに頼もうか、な」

 

 大盾をまともに使えるようになるだけで、生存確率は大幅に上がる。その点で言えば、クロムは生存能力の鬼である。誰より信頼する大盾使いと言えた。

 そうと決めれば話は早いと、ハクヨウは早速クロムにメッセージを送る。友人が大盾を選んだから、使い方を指導してあげてほしい。それだけ。

 しかし、クロムにだって予定があるのは承知の上なので、クロムの予定がいい日で良いとも。

 すると既にログインしていたのか返信は早く。

 

「明後日、か……」

 

 今日は別のパーティーと組む約束があり、明日はログインできない。明後日は空いてるとの事だった。しかし、それはそれで残念である。

 

「明後日、リハビリ……」

 

 多少の時間ならログインできる。が、本当に少しだけ。顔合わせをする時間程度しかいられないと思う。用事で自分はあまり居られないが、それでも良いかと送れば、『大盾のプレイヤーが増えるのは良いことだ。ハクヨウの頼みなら引き受けるぜ』と気前の良い返事が来た。ありがたく、メイプルの預かり知らぬ所で話を進めていく。

 

 そしてクロムから、今日組んでいるパーティーメンバーが揃ったとの報告で話しが終わった頃には、一時間近くが経過していた。

 

 すると。

 

「ん?ちょっと待っててね兎さん」

 

 

 メイプルが、異常枠の一歩を踏み出していた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 サリーは、メイプル達と別れてすぐ、森から出て草原にいた。

 

「ま、少しくらい一人で楽しんだっていいよね」

 

 短剣片手に無防備に歩く姿は、散歩と見紛うばかり。故に、モンスターも隙だらけのサリーを狙って襲い来る。

 

「ほいっ」

 

 メイプルがじゃれていたのと同じ、角を持った白兎が突進してくるが、愛嬌なんて目もくれず、サリーは短剣で突進の軌道をずらし、そのまま斬りつけて即座に倒してしまった。

 

『レベルが2に上がりました』

 

「へぇ。結構すぐに上がるんだ。兎は問題なさそうだし、やっぱり森かなぁ……」

 

 草原にもモンスターは出ているが、どうしても人が多いため、あまり実入りは良くないと悟ったサリー。森との境目付近にまで戻り、様々なモンスターと戦っていく。

 

「狼に猪、大ムカデなんかも居るんだ……うわぁ……うぞうぞしてる……」

 

 虫自体はそこまで苦手ではない。もっと苦手なものがあるので、相対的には、という文言こそ付くが、問題ない。

 しかし、巨大なら話は別だ。生理的嫌悪感は隠せない。早く倒そうと決めて、町でなけなしのお金を叩いて買った魔法を使う。

 

「【ウィンドカッター】【ファイアボール】!」

 

 買ったのは【火魔法Ⅰ】と【風魔法Ⅰ】。いずれは他の属性魔法も揃えたいと思っているが、今はこれでいいと思っていた。

 大ムカデを風の刃で切り裂き、炎で焼き尽くしたサリーは、その光景を見て、少しだけ試したいことができた。

 

「……できなかったら、それまで。出来たらラッキー、だよね」

 

 火を大きくするには、どうすれば良いか。そんな単純な問い。答えは単純で、燃料をくべ、より多くの酸素を送り込めばいい。

 

 燃料は魔法だから変えられない。しかし、酸素は?もし、風魔法で代用できるなら?

 そんな、ちょっとした思いつきだった。

 お誂え向きに、【ファイアボール】と【ウィンドカッター】では、【ウィンドカッター】の方が速い。なら、もしかしたらできるんじゃないか?

 

「試してみるか!」

 

 丁度良く見つけた猪モンスターに向けて杖を構える。猪はまだ自分に気付いていないので、絶好のチャンス。

 

「【ファイアボール】【ウィンドカッター】!」

 

 火球を放ち、即座に風の刃を()()()()()()()()()。それは猪に当たる直前で風が追いつき、全く同時に着弾した。

 

「あぁっ!ダメージ量とか確認したかったのに……でもま、これ楽しいからいっか!」

 

 二発分の魔法でHPを削りきられた猪は、最後までサリーに気付かずに倒され、粒子へと変わってしまった。

 

 

 

 

 サリーは楽しくなった魔法同時着弾を試しに試しまくり、気付けば一時間が経ち、レベルも7まで上がっていた。

 

「あっちゃー……そろそろ戻ろうかな……こいつだけ倒したら!【ファイアボール】【ウィンドカッター】!」

 

 自分に襲いかかる狼を、慣れた動作で魔法を二発撃って倒す。と同時にレベルも上がった。

 

『レベルが8に上がりました』

『スキル【魔法混合】を取得しました』

 

「………はい?」

 

 ……こっちもこっちで、おかしな方向に進み始めたらしい。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「兎さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「ハクヨウハクヨウハクヨウ―――っ!!」

「わ。な………なに?」

 

 戻ってくるなり、突撃木の上のハクヨウさんをかましたサリーは、なんだか物凄い興奮した様子だった。キャラぶれっぶれである。

 落ち着いてほしい。

 【跳躍】を持ってないから、ぴょんぴょんと木の下で飛び跳ね続けてるだけ幸いか。もし普通に下にいたら、押し倒されていたかもしれない。

 あとメイプルも。見れば兎だったのだろう粒子の残りがキラキラと輝き、空間に溶けていく。

 

「二人と、も。どうした、の?」

「凄いんだよ凄いんだよ聞いて聞いて聞いて聞いて!!」

「はぁ……何で死んじゃったの……もう倒す気なんて無かったのに……」

 

 カオスだった。

 この上ないカオスだった。

 取り敢えず、モンスター用に備えていた苦無を二人の額に投げつけておく。

 

「うわっ!」

「いたぁっ!?」

 

 パーティーメンバーだからダメージは無いが、衝撃は無くせないので、相応の威力があった。スキルを使わなかっただけマシである。

 何気にこれ、メイプル初の痛みだったりする。流石に残念すぎるだろう……。

 そしてサリー…躱したなオノレ。

 

「「何するのハクヨウ!?」」

「落ち、着かない、二人が悪、いっ」

「「うっ……」」

 

 地上に降りて、地面に刺さったのとメイプルの足元に転がった(刺すつもりで投げた)苦無を回収する。メイプルに関しては、少し悔しかった。

 

「それ、で?何があった、の?」

「「えっとね……あ……サリー(メイプル)から」」

 

 仲良しか、と。呆れ、明らかに興奮していたサリーから促す。

 

「うん、えっとレベル上げしてたら、凄いスキルが取れて、ちょっと興奮してた」

「ちょっ、と……?」

「うっ……結構興奮してた」

「へぇー!あ、スキルなら私も取れたよ!

 【絶対防御】ってやつ!」

 

 二人ともレアなスキルが取れたようで、二人して隠すつもりもないのかスキル詳細を見せた。

 

 

―――

 

【絶対防御】

 このスキルの所有者のVITを二倍にする。【STR】【AGI】【INT】のステータスを上げるために必要なポイントが通常の三倍になる。

取得条件

 一時間の間敵から攻撃を受け続け、かつダメージを受けないこと。また魔法、武器によるダメージを与えないこと。

 

 

【魔法混合】

 二つ以上の魔法で、相性が良い場合に新しい魔法として使用できる。

 相性が悪い時、殆どの場合で失敗する。

 混合させた魔法の消費MPが混合元の魔法の平均の三分の一になるが、通常魔法の消費が二倍になる。

取得条件

 二種類以上の属性魔法を同時に敵に当てることを一定回数以上繰り返す。

 

―――

 

 

「って、事は……メイプル、今【VIT 256】?わ、凄い……」

「ねぇハクヨウ?ハクヨウの十分の一って考えると、凄さを感じないんだけど……」

 

 自分も【速度狂い】で初日から【AGI 244】を出していたので、何も言えなくなった。いや正確には、【大物喰らい】も取得したため【AGI 488】か。この分ではメイプルも取得しそうだと苦笑い。

 

「……。サリーのスキル、は、扱いが難し、そう、だね」

「あ、話逸した。……けど、そうだね。幸い、【風魔法】と【火魔法】は相性が良いみたいで、ここに戻ってくるまでの相手で試したけど、かなりMP消費が減って楽だったよ」

 

 こんな感じ!と言って杖を木に向け、魔法を行使した。

 

「【風炎刃】!」

 

 【ウィンドカッター】と【ファイアボール】の混合は、炎の刃が高速で飛んでいき、【ウィンドカッター】の切断性で木を切り倒し、直後に【ファイアボール】のように爆発した。

 

「おおっ!すごい!強い!」

「威力も、十分……これ、何属、性?」

「そのまんま、『火・風属性』だよ!風の刃が炎を取り込んでるって寸法だから、どっちかに耐性を持ってても、もう片方でダメージを与えられるね!」

「凄い!凄いよサリー!他にはどんなのがあるの?」

「今はこれだけ。でも、他の魔法も習得したら、色んな混合魔法が作れるし、消費MPも減って威力も出る!……まぁ、混合してない魔法の消費は増えちゃったけど」

 

 それでもなお、威力と消費MPから見れば十分すぎる強いスキルである。

 

 

 その後。

 サリーは新しい混合魔法を作るために、町で属性魔法を買いに行き。

 ハクヨウは、この日はもうログアウトし。

 メイプルは、兎と遊んでいただけで終わるのも何なので、もう少し探索するという事で、全員バラバラになった。

 それがメイプルの異常を高める結果になるとは、誰も思わなかった。

 

 

 

―――

 

メイプル

 Lv8 HP 40/40 MP12/12

 

【STR 0〈+6〉】 【VIT 120〈+34〉】

【AGI 0】【DEX 0】

【INT 0】

 

装備

 頭 【空欄】     体【空欄】

 右手【初心者の短刀】左手【初心者の大盾】

 足 【空欄】     靴【空欄】

 装備品【フォレストクインビーの指輪】

    【空欄】

    【空欄】

 

スキル

 【毒耐性中】【大物喰らい(ジャイアントキリング)】【絶対防御】

 

 

サリー

Lv9 HP 32/32 MP125/125〈+10〉

 

【STR 10〈+8〉】 【VIT 0】

【AGI 55】 【DEX 20】

【INT 10〈+11〉】

 

ステータスポイント:20

 

装備

 頭 【空欄】     体【空欄】

 右手【初心者の短剣】左手【初心者の短杖】

 足 【空欄】     靴【空欄】

 装備品【空欄】

    【空欄】

    【空欄】

 

スキル

 【スラッシュ】【疾風斬り】

 【ファイアボール】【ウォーターボール】【ウィンドカッター】【サンドカッター】

 【ダークボール】【リフレッシュ】

 【風炎刃】【マッドショット】

 【筋力強化小】【知力強化小】

 【MP強化小】【MPカット】【MP回復速度強化小】

 【短剣の心得Ⅰ】【魔法の心得Ⅰ】

 【火魔法Ⅰ】【水魔法Ⅰ】【風魔法Ⅰ】

 【土魔法Ⅰ】【闇魔法Ⅰ】【光魔法Ⅰ】

 【魔法混合】




 
 皆『いきなり単独行動はしないだろ……』って感想くれたけど、忘れちゃいけない。
 こいつら、結構ソロ行動が多いことを。
 原作だとアニメ以上にソロ行動が目立ってることを。今回はその果て。
 きっとメイプルちゃんが楽しそうに兎と戯れてたら、サリー手を出せないと思うんだ……。

 基本、メイプルちゃんは原作通りにおかしくなると思う。だって下手に手を加えたら弱くなりそうなんだもん(白目)

 あと、色んなゲーム系小説にありがちな魔法の混合、融合が、珍しく防振りには無いな……と思ってたから作った。通常魔法が使いづらくなるけど、混合魔法はその分強力になってる。
 拙作サリーは、短剣は防御とかサブ程度に扱うと思います。

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