現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。   作:五月時雨

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 魔法の混合、融合に考察は基本w
 そして今回は短め。ぶっちゃけ気乗りしなかったと言うか、興が乗らなかった。

6/12追記
 後書きにアンケート突っ込みました。
 そろそろ物語がシリアスに突入しそうで、私の精神が滅入ったので、気晴らしです。

 


速度特化と考察

 

「ごめんねハクヨウ。私の手伝いしてもらっちゃって」

「ん。大丈、夫」

 

 メイプルとサリーがログインして二日目。

 この日、メイプルは『もっと色んなスキル取れるかも!』と言って一人、森の中へ散歩に出掛けた。また変なことにならないと良いけど……と祈るばかりである。

 何せ、ハクヨウは自分がそうなのだから。

 対して、今日はサリーの【魔法混合】の種類を増やす協力を頼まれて、二人で人気(ひとけ)のない地底湖まで来ていた。

 なんでも、『一人では思考が偏って似たような混合しかできない』『他の人の発想も欲しい』との事だった。

 ハクヨウとしても、地底湖はかつて防具の素材集めと【水走り】を取得した時くらいしか来なかったので、改めて来るのに丁度良かった。

 

「でも、何で、地底湖?」

「まず、【魔法混合】はレアスキルだから、人に見られたくないっていうのが一つ。次に、ここの魚から取れる鱗が、武器や防具に使えるらしいから、いつか作る装備の素材集め……まぁこれは、まだ方向性すら決まってないんだけどね。で、三つ目にここ、魚だけは多いから魔法試し放題。最後に……いや、これは後でも良いや」

 

 サリーの歯切れが悪いが、釣り竿を取り出したサリーは、もう釣りモードだった。

 これは聞ける雰囲気じゃない、と諦めて、ハクヨウもイズ謹製の【DEX +25】する『すごいつりざお』を取り出した。ネーミングが危ない。

 ちなみに、試作品には『ぼろのつりざお』と『いいつりざお』もあったりする。それぞれDEXを【+5】【+15】するアイテムだ。

 

「ハクヨウの釣り竿、店売りのじゃないんだ?」

「う、ん。生産職の友達、が、暇つぶしに作った、やつ。DEXを上げる、から、私でも結構釣れる、よ」

「へぇー……生産職って武器防具だけじゃなくて、そんなのも作ってるんだ」

 

 釣りにはAGIとDEXが関係してくるが、ハクヨウは【DEX 0】なので【釣り】スキルを取ることができない。それをイズの店でクロムが笑いながら話したら、イズが『これ使って!』とクロムをド突きながら渡してきた。勿論、代金は払ったが。

 そんなわけで、魔法の試し撃ちには困らないとじゃんじゃん釣っていく。

 

「今、サリーが使える混合魔法、どんなのがある、の?」

「ん?えーっと、昨日見せた【風炎刃】は分かるよね?『火・風属性』のやつ」

「うん」

「実はまだもう一つしか出来てないんだよね……【マッドショット】!」

 

 釣り上げた白い魚に泥の塊が当たり、そのまま粒子へと変わる。

 

「おぉ、『水・土属性』?」

「ご明察。水分を含んだ土はかなり重くなるからね。予想通り相性が良かったんだけど……でも、他の組み合わせがあんまり思いつかないんだよね……」

「火と水、で、水蒸気、とかは?」

「それも試したんだけどねー……威力が同じだと属性不利な火が押し負けて、失敗しちゃった」

 

 あはは……と笑うサリーに、ハクヨウは何かしらの規則性が無いかと思考を巡らせる。

 『新しい魔法として使用できる』とありながら、きちんと魔法名が設定されているという事は、【魔法混合】で作り出せる魔法は、全て運営によって設計されていると考えていい。だとしたら、何かしらの規則性の元、組み上げられているはず。それを紐解けば、使用できる魔法は格段に増えるはずだ。

 

「属性、魔法。火、風、水、土、闇、光……?」

「ん……?まぁ、他にも魔法の種類はあるけど、『属性魔法』って括りだと、その六つだよね」

 

 この内、明らかに別枠と考えられるのは闇と光。単体で対を成すこれらは、他の四つと違って概念的なものだから、属性魔法ではあるが別物だと思った。

 なら、あとの四つは?

 

「四大元素だよ、ね」

「ゲームで良く使われる属性っていったら、四大元素か五行説だからね」

 

 西洋のこの地上にあるものは、火、空気、水、土が干渉し合い、成り立つという四大元素。

 東洋のあらゆる物質を火、木、金、土、水の五つの性質で読み解こうとする五行説。

 

 どちらもゲームではお馴染みの考え方である。

 そしてNWOでは四大元素が使われているのだ。

 

 そうなれば、【魔法混合】の規則性もまた、この四大元素の考えに基づくのでは無いか。

 いやそもそも、ゲームにおいて魔法とは何か。

 MPはなぜ四つの属性を発揮し、それらを混ぜることができるのか。

 そう考えた時、ハクヨウの頭にふと、一つの考えが浮かんだ。

 

「……第一質料(プリマ・マテリア)の、一元論?」

 

「プリマテ……なに?」

「第一質料、『プリマ・マテリア』、を、究極の質料。材料、かな?として、四大元素はそれに、ある四つの性質か、ら二つを、組み合わせること、で成り立つってい、う、アリストテレスの考、え」

 

 四大元素によって世界が成り立つという考えの、更に根幹を提唱したアリストテレスの一元論。

 火、風、水、土の四元素は、更にその構成要素として「熱・冷」「湿・乾」の相反する四つの性質の組み合わせで成り立つものとされている。

 元々の四元素は、形相(エイドス)も性質も持たない単純な質料(ヒュレー)であり、そこに「熱・冷」「湿・乾」から二つが組み合わさることで、四元素それぞれとしての形相と性質を持つようになる、と言うものだ。

 そしてその単純な質料を第一質料(プリマ・マテリア)と呼んだ。

 第一質料に性質が加わることによって、全ての四大元素が成り立つことから、『四性質説』あるいは『一元論』と呼称される。

 

「分かっ、た?」

「いや分かんないよ!?」

「む、ぅ……な、ら」

 

 仕方なく、ハクヨウは第一質料をMP……魔力とし、地面に書きながら説明する。

 

「ゲームの中で言う、なら。

 MPは、どんな性質にもなれる(プリマ・マテリア)

 『熱・乾』の性質で、火。『熱・湿』で、風。『冷・湿』で、水。『冷、乾』で、土が、それぞ、れ、できる。で、これら、は、全部干渉しあい、性質が書き換わる、こと、で、転化も起き、る」

 

 地面にも同じように、

 

『何にでもなれる究極の材料=MP

 そこに二つずつ性質が加わることで、四大元素になっている。

 『熱・乾』→火

 『熱・湿』→風

 『冷・湿』→水

 『冷・乾』→土

 これらの性質は相互干渉し、また一つが反転することで別の姿に転化される』

 

 と書いていく。

 

「具体的に、は、同じ性質を持つ、なら、よく干渉、し。たとえ、ば、『熱・湿』が『冷・湿』に変われば、空気(かぜ)は水にな、る」

「風が……水?」

「湿度が同じ、なら、気温が低い方、が雨が、降りやすい、でしょ?」

「あぁ、なるほどね」

 

 だが、ここで注意しなければならないのは、構成される二つの性質が、一度に書き換わるわけではない、ということ。

 「冷・湿」の水はいきなり「熱・乾」の火には変わらない。

 必ず風か土の元素の過程を経ることになる。

 雨上がりに、いきなり火事が起こるだろうか。

 「熱・湿」から「熱・乾」に変わる。つまり、大気中の水分量が減り、空気が乾燥している時、火の手は上がりやすい。

 炎が草木を燃やせば、灰となって土壌に還る。

 つまりはそういう事だ。

 少なくとも昔はそう考えられてきたのだろうと、ハクヨウは語る。

 

「別の性質への転化ってのは分かったよ。じゃあ、干渉っていうのは?」

「火は、乾燥してると燃えやす、く、熱を発する。けど、その時、風も起こるよ、ね?」

「火が燃えるために、大気中の酸素を取り込むから?」

「そ、う」

 

 火が燃えるためには、風が必要だ。正確には酸素だが、当時は空気全般として考えられた。

 故に熱を持つ火と、熱を更に煽る風には、同じ「熱」という性質が見出されたのである。

 他にも、土は水分を地下へと浸透してしまう様子から「乾」を持つ。文字通りの「乾かす」火と事象は違うが、「乾」という性質は同じだと考えられていた。

 

「他も、同、じ」

「なるほどね……」

「加える、なら、反する性質をぶつけれ、ば、打ち消される」

 

 火に水をかけるで火の手が消えるように。

 「熱・乾」に同量の「冷・湿」を加えることで性質変化を無くし、第一質料(プリマ・マテリア)に戻すことができる。水もまた、火の手の勢いで蒸発し、目には見えなくなってしまうため、事実上そこに四元素は見出せなくなる。

 恐らく、それがサリーが失敗した原因だろう。

 他にも当時の人はこう考えたのだろう。『地中で風は吹くか?』と。『大気中に土はあるか?』と。

 

「一方に存在しないのも、また相反すること、ってことだね」

「そういう、こと。世界を構成するもの、は、今よりもっと、単純だって、考えられていた、から。ゲームと、同じ。世界には、【神秘】でしか語れないモノ、が、沢山あるって、思われていたか、ら」

 

 長くなったが、同じ「性質」を持つ属性は良く干渉し、反する「性質」では打ち消し合ってしまうということ。それが、ハクヨウが考えた事だった。

 

「だか、ら。多分、同じ強さの魔法、なら。『火と風』、『風と水』、『水と土』、『土と火』なら、相性良いと思う、よ」

「なるほど!」

 

 物は試し!と、サリーは早速【魔法混合】することにした。

 

「【魔法混合】【ウィンドカッター】【ウォーターボール】!……あ、本当にできた!」

「消え、た?」

「うまく行くと、消えて、魔法名が新しく登録されるんだよ!【斬り雨(きりさめ)】ってこれ、ダジャレじゃないんだから……」

 

 右手に現れた【ウィンドカッター】と左手に現れた【ウォーターボール】を体の前で重ねると、何事も無かったかのように消えてしまったが、それで成功らしい。

 

「失敗、したら?」

「ボンッ!」

「っ!?」

「あははっ、冗談冗談。そのまま二つとも発射されて、それでおしまい」

 

 自爆は洒落にならないので、そうならないで良かったと思った。

 

「兎にも角にも、試してみよー。【斬り雨】!」

 

 放たれた魔法は、地底湖の真上から降ってきた。水蒸気で形作られた、高速の刃。

 大きさは二メートルはあるだろうそれが、サリーからではなく狙いの真上から放たれ、地底湖の水を二つに割った。

 飛沫が高く高く。瀑布の様に上がり。そして、周囲ごとハクヨウとサリーを水浸しにしながら元に戻った。

 

「おぉ……。上から降るん、だ」

 

 威力も高い。

 視覚外からの攻撃なので、奇襲にも有効。

 それをサリーに言おうとしたハクヨウだったのだが。

 

「……サリー?」

「今、見た?」

「?見た、けど?」

「そうじゃなくて!」

 

 魔法の余波で激しく波打つ湖面を見つめながら、サリーが呆然と呟いた。

 

「今一瞬、地底湖の中に洞窟が見えた」

「……それ、ホント?」

 

 地底湖の水中に、意味もなく洞窟があるなんてありえない。ならば考えられるのは。

 

「うん。あれは見間違いじゃない……確か見つかってたダンジョンって二つだよね?」

 

 興奮を隠しきれない様子のサリー。

 

「新しい、ダンジョン?」

「そうかもしれない……でも」

「私は、むり」

 

 ハクヨウは前提として、()()()()()()()()

 ゲームの中でいきなり泳ごうとしても、溺れて即死亡しかねない。

 水上に立つことも走ることもできるけど、水中となると何もできなくなるのが悲しい。

 むしろ、泳げないのに水上に飛び出した思い切りの良さを称賛したいくらいである。

 

「応援しかできない、けど」

「それで十分だよ」

 

 目的は変わってしまったが、今日一日、サリーの手伝いをしようと思っていたハクヨウ。

 手伝えないのは心苦しい。

 だからせめてもの応援に、凄いやる気の出そうな情報を上げることにした。

 すなわち。

 

「サリー。これ、見て」

 

 ハクヨウは、とある説明書がなされた青いパネルを浮かべながら。

 

 

「へ、何これ?」

 

 

 自分の唯一無二を手に入れるチャンスだと、笑いかけた。

 

 

 

 

「ユユ……ユニーク、シリーズぅぅっ!?」

「えへへ……頑張って、ね、サリー?」

 

 




 
 久しぶりに独自設定を盛り込んだ気がします。
 てか今回は独自設定しかないね。
 【毒魔法】とかもあるゲームですけど、普通に手に入る、普通の魔法と言ったらこれ。
 一元論自体は有名ですから、名前くらいは知ってる人もいるでしょうね。今回は、それを元に独自解釈して構築しました。
 こういう昔の説ってネットで調べるしか方法が無くて、多分に自己解釈が入り込んでます。けど、それほど的外れ訳ではないと思います。

 まぁハクヨウちゃんがチラッと迂遠に言ったように、今回の考察は基本大原則に過ぎません。
 スキル説明にも『相性が悪いと()()()()()()()で失敗する』とありますから、つまり例外も抜け道も存在します。
 それを見つけていくことが、サリーの今後の課題になりそうですね。

 そしてやっぱり自由行動するメイプル。
 原作でも三日目にクロムと邂逅して、イズに会って、ユニーク手に入れるでしょ?つまり、そういうことです。

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