現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。   作:五月時雨

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 ネタ読んだ人は久しぶり、読んでない人も久しぶり。エタるギリギリを突き進む投稿者の恥です。はいそこPS特化エタってるとか言わない!凍結する意志はないのでエタってない。いいね?
 


白き災害と炎帝 2

 

 白雷の如き速度で空から降ってきた『それ』は、しかし僅か程の砂煙も立てず。まるで重力を感じさせない軽やかさで着地した。

 

「やっほ、ミィ」

 

 片手を軽く上げて挨拶をする、降ってきた存在ことハクヨウは、“ちょっと通りかかりました”と言わんばかり。

 

「………ハクヨウ?」

「ん。そう、だよ?」

 

 “他に誰がいるの?”とコテンッと首を傾げるハクヨウの姿に、ミィは今更かとため息をついた。

 

「……うん。自力で空を飛んでくるなんて、ハクヨウ以外に居ないよね」

「飛んでない、よ?空を……走ってる、だけ」

「似たようなものじゃん」

 

 話しつつも、ハクヨウは視線を敵プレイヤーから逸らさない。いつ仕掛けてきても可笑しくないバトルロイヤルで、会話にうつつを抜かす愚は犯さない。そんなハクヨウを見て、ミィも気を入れなおした。

 

「割り込んできたんだし、手伝ってくれる?」

「その前、に……一つ確認しても、いい?」

「え?」

「手伝うの、は、良いけど……」

 

 けど、と一瞬言い淀んだハクヨウは、ミィに顔だけ向けて楽しそうな、あるいは挑発するような笑みを浮かべた。

 

「別、に…私が、全員倒して、しまって、も…構わないよ、ね?」

「――――――へぇ?」

 

 『連戦で消耗してるなら、全部倒して()()()』そう言いたいわけだ?この鬼っ()は、と。ミィの表情筋が不自然に歪む。ピキピキと青筋が浮かぶ。フフフ…アハハと乾いた笑い声が漏れる。

 

 けれど、その顔は笑ってない。

 

「やってやろうじゃん?」

「ん、勝負っ」

 

 背中合わせになった二人は、周囲を取り囲む30人を置いてけぼりにして勝負を始めた。

 

「【炎帝】!!」

「【跳躍】っ」

 

 どっちが多く目の前の敵を倒せるか、と。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ず、ずるぅーっ!ハクヨウの速度チートだよチートっ!!」

「そんなこと、ない」

 

 砂漠のど真ん中で、ダイヤモンドダストのようにキラキラと輝く粒子に囲まれながら、ミィが心の丈をぶちまけていた。

 というのも、勝負は一瞬で終わってしまったのである。【炎帝】で包囲網の一部に風穴を開け、ドヤ顔で振り返ろうとしたミィは驚愕に目を見開いた。

 

「何あれ反則じゃん!どんなAGIしてんのさっ!」

「ブイ、ブイっ」

「くっそかわいい腹立つっ!」

 

 勝負を始めた次の瞬間、ミィは取り囲むプレイヤーの()()()()()()()()()()()()()のを、確かに見た。誰もが何が起こったのか分からないという不思議そうな表情で、ゆっくりと重力に従って落ちていく光景は、ホラーとしか言いようが無い。

 それを引き起こしたのが、今ドヤ顔ダブルピースを決めるハクヨウだと思うと腹が立った。

 

 かわいいけども。

 

「で?結局どうやったの?」

「普通に、近づいて、斬った、だけ」

「………にんげん?」

「ひど、いっ」

 

 「本当に、斬っただけ」と頬を膨らませて不機嫌そうに告げるハクヨウ。

 

「これだけの人数を、一度に【首狩り】は無理だ、し…【跳躍】で近づい、て、剣宛てて、グルッと一周した、だけ」

 

 即死効果を持つ【首狩り】だが、スキルによって見える首の線は非道く細い。身長の違う大勢のプレイヤー全員に対して、一瞬の内に修正しながら成功させるのは不可能と判断し、持ち前の高火力をそのまま活かして攻撃したハクヨウに、ミィは呆れるしかない。

 

(本気で、全く見えなかった……)

 

 ミィも初めて出会った時や、フィヨルドで共闘した時は、ハクヨウの走る姿を捉えることは出来なかった。しかし、その後時折パーティを組んで遊ぶようになってからは、初動や方向転換、減速の瞬間だけ辛うじてだが目で追えるようになった。慣れたとも言う。

 攻撃を当てられるかは、別問題として。だが今のハクヨウの動きは、全く見えなかった。

 

(い、いや、久しぶり過ぎてハクヨウの速度を忘れちゃってただけ。うん、きっとそう…多分)

 

 ちょっと力量の差に頭を抱えたくなったミィの考えなど露知らず、ハクヨウは首を傾げている。その姿もイラッとして、けどそんな姿すらしばらく見れなかったと思い出して、問答無用で手刀を振り下ろした。

 深〜いため息を落としながら。

 

「ふぇ……っ?」

「……一週間、心配させた罰、だからね」

 

 ポコンッと言うような軽いものだが。

 久しぶりに会えたと思えば、ハクヨウは軽い調子で“やっほ”な上、まるで一週間のブランクを感じさせない。実力的にも、精神的にも。

 

(心配して損した……じゃ無いけど、このくらい許してよね)

 

 ついでに二、三回チョップチョップチョップ。

 その度にハクヨウから「あぅ」「ふみゅ」「うにぃ」なんて変な声が漏れて、流石にミィも笑いを抑えられなかった。

 ヤバいクセになる……と楽しくなってきたミィだったが、イベント中なのでそろそろ自制。

 

「………」

「ご、ごめんごめん。ちょっと歯止めが利かなかった」

 

 笑いが収まった頃、ハクヨウがジトーっとした視線を向けていることに気付いて平謝り。やり過ぎたかな。

 

「もう、しない?」

「……善処します」

「確約、して」

「………」

 

 サッと目を逸らす。楽しかったんだもの。

 もうこの際、話が変わってる事なんて放置。ハクヨウの視線が痛いけど、そんなの知ったことかと言わんばかり。

 

「はぁ……」

「う……」

 

 拗ねた、或いは叱られるのが嫌な子どものようなミィに、ハクヨウは諦めの溜め息を一つ。

 本当はハクヨウだって分かっている。追加三回は許さないが、何も言わずにゲームにログインしなくなり、心配させた自分が悪いのだと。あとの三回は許さないが。ちょっとダメージ入った。

 イベント初ダメージ――お仕置き。

 

「心配させ、て、ごめんね?もう、大丈夫」

「こっちこそごめん……けど、急に居なくなるとか、寂しかったからね?」

「んっ。もうしませんっ」

 

 仲直りのような何かを果たした二人は、漸く落ち着いて、腰を据えて話すことができる。

 

 

 

 

 

 とか思った時期が彼女たちにもありました。

 

――――ォォォォォォオオオ………

 

「な、なに!?」

「何か、さ、寒気、が……」

 

 遥か遠くから聞こえてくる、何者かの雄叫び。理性の箍が外れたとも感じさせるその叫び声に、ハクヨウは超自然的な恐怖を感じた。

 

 ハ―――ォォォォォォオオオ!!

 

「な、何か近づいてくる……っ!?」

「ひ……っ」

 

 声が少しずつ鮮明になると共に、土煙を上げて猛然と接近する『何者か』を捉えたミィと、思わず小さな悲鳴を上げたハクヨウ。寒気は怖気に変わり、ハクヨウの顔に恐怖が滲む。

 

「ハクヨウ―ォォォォオオ!!」

 

「ひぅ……っ!?」

「カ、カスミっ!?うわ怖っ、こわぁっ!?」

 

 『何者か』は、カスミだった。比較的高いAGIを発揮した全速力で砂漠を猛然と突っ切る姿と鬼気迫る表情に、ハクヨウは死の危険を感じた。

 

「み、みみ、みミミミィ、た、たたすけ…」

「むむむむり……こわ……こわぁ……」

 

 まだ距離こそあるが、高いステータスを持つカスミのAGIでは間もなく襲われる。怖くなり、訳もわからずミィの背後に隠れるも、ミィも怖さでパニックになる。

 

「に、ににに、逃げよ?早く、速く疾くっ」

「そ、そそそそうだね逃げよう!」

 

ふたり は にげだした。

 

「い、韋駄天、韋駄天んんんっ!!」

「【フレアアクセル】【フレアアクセル】っ!」

 

 パニックになって【韋駄天】を使おうとするが、再使用可能時間(リキャストタイム)の関係で暫くは使えないハクヨウと、【フレアアクセル】で何とかハクヨウを追うミィ。

 

「な、なんで逃げるんだ!?待ってくれハクヨウ!!」

「や―――っ!!」

「怖い!怖いってカスミぃいいっ!?」

 

 幸運だったのは、ハクヨウのAGIが素でプレイヤー内最速だったことだろう。グングンとカスミを引き離し、距離を取る。ミィも必死にハクヨウを追うが、やがて距離が開いていく。

 

「ハクヨウ、先に行って!」

「で、でも……っ」

「ハクヨウのAGIなら逃げ切れる!けど私もいたら追いつかれる!」

 

 それに、とミィはハクヨウを安心させるように笑うと。

 

「カスミの狙いは、ハクヨウだけみたいだしね。時間稼ぎするから、早く逃げてよ。さっき手伝ってもらったお礼」

「っ……」

 

 そう言われてしまえば、断ることはできない。焦ってはいるが、それを隠してハクヨウを逃がそうとするミィの思いに、否やは言えなかった。

 

「わ、かった……むり、しないで」

「私を誰だと思ってるのさ―――私は」

 

 一人立ち止まり、猪突猛進するカスミに相対するミィ。その背中を逃げながら見つめるハクヨウ。

 

「【炎帝】の―――

 

「邪魔するなぁっ!【一ノ太刀・陽炎】っ!!」

 

 カスミの姿が、揺らいで消える。

 

「へっ?」

 

 そして次の瞬間、ミィの目の前に現れたのを、ハクヨウは見た。

 横薙ぎに振るわれる刀がミィの胴体を深々と斬り裂く。

 

「ミィ―――――っ!!」

 

 決着は一瞬。カスミの攻撃に対応できなかったミィが破れ、カスミはスキルの硬直で動けない。負けて決まったが、時間稼ぎの目的だけは果たした形になった。数秒あれば、ハクヨウならば遥か遠くまで逃げることができる。

 

()()()

 

「ありがとっ、ミィ」

 

 ハクヨウは振り返らず、恐怖の根源(カスミ)から逃げるために走り続けた。

 

 こうして鬼が追われるという、長い長い奇妙な鬼ごっこが始まった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「あー、くっそ。【白影】まで来るとかふざけんなよ!」

 

 その男は、砂漠からほど近い森の中で復活(リスポーン)した。ここが男の初期地点であり、引き連れていた多くのプレイヤーの中には元々仲間だった者も居たが、多くはここで上手く丸め込み、引き連れてきた。それが。

 

「【白影】、マジで強すぎんだろうが……何されたか分かんなかったぞ……チートか?」

 

 一瞬で、自分含め全滅した。数多くのゲームをやってきたベテランプレイヤーとして、それは己のプライドが傷付けられたと同義。このゲームでも中堅以上の実力があると自負していただけに、《最強》の座は遠いのだと自信が打ち砕かれた。

 

「何にせよ、早くここから離れねえと」

 

 ここには、先程まで協力していたプレイヤーが多くいる。あれほど理不尽な力に蹂躙されたのだ。もう一度協力を頼むのは不可能だろう。だからこそ、今度は率いた自らが標的になる可能性が高い。そう判断した男は、すぐにでも森を抜けるために行動を開始して。

 

「はっ………?」

 

 瞬間、一瞬の浮遊感を感じ、白い残像が目に入った。

 

「じゃまっ」

 

 違和感。

 視界が落ちていく/フラッシュバック

 逆さまの空/数分前の出来事

 立ち尽くす己の下半身/あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ないっ!

 

「あ、あぁ……あぁぁぁぁあぁああああっ!!」

 

 その日から、男は『白』が大嫌いになった。




 
ハ ク ヨ ウ た ん 欠 乏 の 末 路

 皆様はこの様なバーサーカーに変貌してはいませんでしょうか。もししていたら一発ネタをお読みください。きっと白黒、もといハククロを楽しんでいただけると……良いなぁ(白目
 そろそろ本気でキャラ崩壊のタグ付けを検討してます。もう原型ないでしょカスミェ……。
 展開に悩んでいたのですが、鬼ごっこで慌ただしく進めば色んな所に逃げ、色んな人と共闘(そうぐう)し、また鬼ごっこし…という感じでスピーディーにできるのでは?という一周回って安直な考えです。ネタ切れとか言わない。ネタはあるの。文才皆無で文章化できないだけ。……本末転倒?

死亡フラグ(偽)
 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?と某弓兵みたいな事言ってるのに強者ムーブかますハクヨウちゃん。死亡フラグとしてじゃなく、ミィへの挑発として使ったからセーフでした。

名乗らせてもらえない【炎帝(笑)】
 自信満々で「お前は先に行け!」したのに名乗る前にやられちゃうクソザコミィさん。
 NDK(ねぇねぇどんな気持ち)
「う、うるさいっ!【炎帝】【炎帝】っ!!」

砂漠で二人を囲んだプレイヤーの首領
 【炎帝】相手にイキってたら空から【白影】降ってきた。
 何かどっちがいっぱい倒すかとかいう理不尽な勝負始めた。
 一瞬で負けた…お、俺はもっと強いはずだ!
 【白影】にリスキルされた。
 なっ!何をするだァーッ!許さんッ!

 だいたいこんな感じ。
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