現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。   作:五月時雨

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 お、お久しぶりです…(震え声
前回投稿からめちゃくちゃ期間空けちゃって申し訳ないです(なおPS特化
少し前に、このすば×ハクヨウの短編ss上げたんで、まだ見てない人はぜひ見てってください。
 


速度特化と罠祭り

 

「ふみゅ!?」

 

 殺伐としたイベントエリア一角の草原で、間の抜けた悲鳴が上がった。声の主はハクヨウ。シンにカスミ(バーサーカー)から逃げるための殿を任せ、『特性:ゆきがくれ』を捨てて雪山から下山したハクヨウだった。

 そんなハクヨウを待ち受けていたのは、背の高い草が生い茂る草原。草は優に1メートルを超えて、ハクヨウの胸元近くまで隠してしまう。大人でも屈めば簡単に身を隠れてしまうような、同時に、鬱蒼として動きを阻害されてしまうような、そんな草原が広がっていた。

 

「うぅ……」

 

 だからこそ、ハクヨウは慎重に進んだ。【気配察知】全開。目視でも常に周囲を観察し、草を掻き分けながら。

 正直なところ、そんな動作も、ハクヨウは楽しんでいた。車椅子では、こんな草原には入ってこれない。そもそも、現実世界でこれ程の草原は早々お目にかかれない。あるいは色味こそ違うが、収穫目前の麦畑の中にいるかのよう。

 

「取れな、い……」

 

 そうして結構楽しく探索していたら、これである。周囲に目を光らせつつも進んでいたら、不意に足が(もつ)れ、地面にすっ転んだ。顔面から突っ込んだ。擬音では“ビターンッッ”とでも付きそうな、そんな倒れ方だった。これがさっきの悲鳴である。

 幸いなことに、生い茂る草がクッションとなって、ダメージは無い。しかし、なぜ突然足が縺れたのか。ゆっくりと慎重に進んでいたので、そんなことはあり得ないのに。

 そう思ったハクヨウが起き上がって足元を見れば、そこには自らの足に複雑に絡みついた草が。痛み無く助かった要因が草ならば、転んだ要因も草だった。

 進んでいる間に、絡まってしまったのだろう。何せハクヨウの装備は袴で、こういった場所での進行には邪魔になる。

 『これは仕方ない』と割り切って、ハクヨウは絡みついた草を解いた―――否。解こうとした。

 が、結果は先の通り。殊の外頑丈な草なのか、引っ張っても一向に取れる気がしない。いっそ立ち上がり、根っこごと引き抜いてしまおうと考えるも、深く根を張っているのか引き抜けない。

 

「むぅ……斬る」

 

 こんな所で時間をかけてはいられない。既にイベントの残り時間は半分に迫っている。もっともっとプレイヤーを倒して、上位入賞を狙わないといけないと、ハクヨウは解くのを諦め、右手の【鬼神の牙刀】にて草を切断した。すると、頑固に絡んだ草が嘘のように解け、パサリと地に落ちた。

 

「よ、しっ」

 

 次からは足元にも気を付けよう……と、周囲に人がいないことを確認して歩き出す。

 

 しかし、十歩も歩かない内に。

 

「あう……っ」

 

 “カコーン……”という、どこか馴染み深い音と共に、ハクヨウの頭に衝撃が走る。

 頭を振り、あわや『敵かっ!?』と刀を構えるも、誰も襲ってこない。首を傾げつつ衝撃の走った頭を擦る。ダメージは無かったが、一体何が……と足元を見る。

 

「………桶?」

 

 目が死んだ、といえば語弊があるが、訝しむような物凄いジト目になった。そこにあったのは、昔ながらの木でできた古めかしい風呂桶。あの無駄に響く軽快な音はこれか……と分かるが、なぜこんな所で降ってきた。

 

「タライじゃ、ないの……?」

 

 こういう時のお約束では、頭に降って来るのはタライではなかろうか。昔のテレビではそんなコントがあったとか無かったとか。首がむち打ちになって酷いらしいが。いや、それだと絶対にダメージが来るだろうし、望む望まないで問われれば、来ないでほしい(のぞまない)のだが。

 

「でも…絶対だれか、いるっ」

 

 それだけは確かだと、ハクヨウは警戒心をMAXにした。何もない草原でいきなり桶が降ってくるとか、相当敵を小馬鹿にし、挑発するのが大好きな相手なのだろう。楽しみ方は人それぞれだと大抵のことは肯定するハクヨウだが、ほんの少しだけぷんすこする。

 これからは前後上下左右と全方位に気をつけなければならないと憂鬱になりつつも、ハクヨウは元凶をたたっ斬るべく進んでいく。

 

 

 

 

 ―――それからと言うもの。

 

 

 

 

「わわ、わ!?」

 突如地面が消え、落とし穴に嵌り。

 

 

「ひゃっ!【文曲】ぅ!」

 泥沼に嵌りそうになり、慌てて抜け出し。

 

 

「にゃっ!?ちょ、【跳躍】跳躍っ!」

 両側で土がせり上がり潰されそうになり。

 

 

「ひぅ!?」

 いきなり出てきた植物の蔓に絡め取られ。

 

 

「はうっ!?」

 また草に足が絡まって。

 

「ひゃわぁっ!?」

 なんか爆発して。

 

「ぴぃ!?」

 雷が落ちてきて。

 

「い、やぁぁっ!」

 竜巻が発生して。

 

「あぅ……ぅにぃぃぃっ!?」

 また草で転び、そこが落とし穴で。

 

 

 ……などなど。他にも沢山。

 それこそ進めば進むほど罠を起動してしまい、そのたびに悲鳴を上げるハクヨウ。

 そうしてトラップに掛かりまくること十分。

 

 

「……もぅ、()ぁぁぁ……」

 

 土や泥で汚れた半泣きのハクヨウがいた。

 だいぶ疲弊したのか、四つん這いで項垂れている。声にも力が無い。

 いっそ敵は近くでハクヨウを見ていて、進む方向に随時トラップを仕掛けているのではないかと錯覚するほどに、ハクヨウの行く所行く所にトラップが仕掛けてある。

 

「マルクスだ……絶対ぜったい、マルクス、だ」

 

 その悪辣さに、ハクヨウは見覚えがあった。

 モンスターだろうと手玉に取り、罠を仕掛けることで容易に誘導する天才【トラッパー】。かつては共にパーティーを組み、レベル上げをした仲であり、その反則じみた罠仕掛けの才能に助けられた。

 

 その才能が今、ハクヨウに牙を剥いている。

 

 落とし穴コンボがあった時に、明らかに草が意思を持って動いた瞬間を見て、『あ、これも罠の一つなんだ』と遠い目になった。

 直後の落とし穴で慌てたが。底が槍衾(やりぶすま)になってた。死ぬかと思った。

 むしろここまで、ダメージを受けていないのは奇跡と言っていい気さえする。

 マルクスの()る気が強すぎて、ここから一歩も歩きたくなくなった。だって歩いたらトラップ踏むもん、といじける。

 

 けれどイベントでワン・ツー・スリーフィニッシュはメイプルとサリーとの約束だ。破るわけにもいかないし、ハクヨウ自身が破りたくない。

 

 

 だから。

 

 

「―――もう、いい……」

 

 フラフラと立ち上がったハクヨウは、草原をトラップの海にしたマルクスに仕返しするべく。

 そして明言は控えるが、某狂化女侍によって溜まった鬱憤を晴らすべく。

 

 ――()()()()を作ることにした。

 

 

「―――綴る」

 

 

 

――――

 

243名前:名無しの観戦者

 イベントそろそろ半分すぎるけど上位も大分固まってきたな

 

244名前:名無しの観戦者

 2位のペインすら倒したの1500人なのに1位ダブルスコアってマ?

 

245名前:名無しの観戦者

 ハクヨウちゃんだしなぁ

 

246名前:名無しの観戦者

 狂化したカスミから逃げてるしなぁ

 

247名前:名無しの観戦者

 あの二人だけリアル鬼ごっこしてて草

 

248名前:名無しの観戦者

 なお鬼が逃げる側

 

249名前:名無しの観戦者

 鬼ごっこに巻き込まれた奴らの哀れなこと哀れなこと

 

250名前:名無しの観戦者

 お

 今度は草原でかくれんぼみたいだぞ

 

251名前:名無しの観戦者

 ………今回のイベントってなんだっけ?

 

252名前:名無しの観戦者

 鬼ごっこだぞなにいってんだ?(洗脳済み

 

253名前:名無しの観戦者

 鬼ごっこに決まってるんだよなぁ(洗脳済み

 

254名前:名無しの観戦者

 は?今はかくれんぼだろ(J)識的に(K)えて

 

255名前:名無しの観戦者

 バトルロイヤルとは…

 

256名前:名無しの観戦者

 明らかに別ゲー始めてる奴らいるからね

 城(黒い全身鎧の大盾少女)落としとか

 

257名前:名無しの観戦者

 攻城戦かよww

 ………待ってノーダメとか要塞すぎない?

 

258名前:名無しの観戦者

 さっきは避けゲーやってる娘もいたな

 なんかオーラ纏ってた

 

259名前:名無しの観戦者

 あの弾幕避けまくってる娘か…

 なんであんな避けれんの?背中に目でも付いてるの?

 

260名前:名無しの観戦者

 普通に無双するペイン

 普通に暗殺するドレッド

 頭のおかしい防御でノーダメの少女(要塞)

 頭のおかしい回避でノーダメ少女(オーラ)

 普通に煉獄を作り出すミィ

 鬼ごっこしてるハクヨウ(かわいい)

 

261名前:名無しの観戦者

 全員頭のおかしい実力してるのに3人だけ飛び抜けておかしい

 

262名前:名無しの観戦者

 鬼ごっこしてるのが1位とか言うイベント崩壊

 

263名前:名無しの観戦者

 それよか今ハクヨウちゃんどんな感じ?

 

264名前:名無しの観戦者

 >260

 紹介がひでえww

 

265名前:名無しの観戦者

 >263

 どんな感じが順位なのか様子なのか分からんが……

 今は草原を徘徊中

 

 あ 転んだ(かわいい)

 

265名前:名無しの観戦者

 草絡まったのか

 

266名前:名無しの観戦者

 必死だけど引き抜けない(かわいい)

 あ 斬った

 

267名前:名無しの観戦者

 足元に気を付けるんやで

 

268名前:名無しの観戦者

 草の高さ的にハクヨウちゃんの視界悪そうだしな

 奇襲にも気を付けなきゃ

 

269名前:名無しの観戦者

 そう考えるとハクヨウちゃん大変だな

 

270名前:名無しの観戦者

 今度は桶かよww

 

271名前:名無しの観戦者

 ちょっ相手ふざけすぎww

 せめてタライにしてあげろ

 

272名前:名無しの観戦者

 タライの方が非道いだろ

 

273名前:名無しの観戦者

 これで全方位気を付けなきゃねぇ?

 

 

〜〜〜

 

 

288名前:名無しの観戦者

  

289名前:名無しの観戦者

 

290名前:名無しの観戦者

 

291名前:名無しの観戦者

 

292名前:名無しの観戦者

 ……お前ら何か喋ろよ

 

293名前:名無しの観戦者

 だって……ねぇ?

 

294名前:名無しの観戦者

 トラップに掛かりまくるハクヨウちゃん可愛すぎか?

 

295名前:名無しの観戦者

 (・ω・)つ(ハクヨウちゃん悲鳴集)

 

296名前:名無しの観戦者

 有能っ!!

 

297名前:名無しの観戦者

 速すぎww

 有能

 

298名前:名無しの観戦者

 有能ぉ!

 涙目ハクヨウちゃんかわいい

 

299名前:名無しの観戦者

 いじけたハクヨウちゃんかわいい

 

300名前:名無しの観戦者

 お 立ち上がった

 頑張れハクヨウちゃん傷は浅いぞ

 

301名前:名無しの観戦者

 傷は浅い(悲鳴集作られてる)

 

302名前:名無しの観戦者

 >301

 致命傷ではw

 

303名前:名無しの観戦者

 ぴぃっ!?←お気に入り

 

304名前:名無しの観戦者

 んん?

 

305名前:名無しの観戦者

 ちょっハクヨウちゃん何そのスキル

 

306名前:名無しの観戦者

 空中に文字書いてる?

 ……読めん 解読班を呼んでくれ

 

307名前:名無しの観戦者

 あとなんか呟いてるな……詠唱っぽい?

 

308名前:名無しの観戦者

 NWOに詠唱が必要なスキルなんてあった?

 

309名前:名無しの観戦者

 なんかやらかしてくれる予感

 

 

 

――――

 

 

 

 一切合財を水底に沈めると決めた。

 

全ては水より始まった

全ては水へと還るだろう

すなわち水とは生にして死

産み落とす母であり呑み込む蛇

万物は流転し 時すらもその流れには逆らえぬ

 

 力技だがトラップに掛かり続けるよりは、無理矢理にでも解除した方が合理的だと。

 

大河に翻弄される浮船の如く 最後は等しく呑み込まれるのみ

嗚呼 無情なる無常の摂理よ

だがその無情も、無常も、こよなく愛そう

 

 いつまでも追いかけられるより、一度完全に倒した方が安全だと。

 

母の顔などもう忘れた

この身は蛇となりて口を広げ 十億万土を平らげよう

満たされることなき永劫の空虚

飽きることなき永劫の悦楽

 

 ―――だから

 

万物よ、流転せよ 我が腹へと還るべし

 

 

 

 宙に浮く都合十三行にもなる大詠唱。

 その全文を完成させたハクヨウは、そのスキルを現界させる最後の鍵言(トリガー)を叫んだ。

 

「―――【世界喰らいの蛇(ウロボロス)】っ!」

 

 

 スキルの開放と共に右手に凝集した魔法文字を地に叩きつけた瞬間。

 

 ズズン…ッという地響きが鳴り、ハクヨウを起点に大地がヒビ割れる。

 そこから大質量の水が間欠泉の如く吹き出し、その頂点でハクヨウは、小さく微笑んだ。

 

 遠くからどよめきの様な、困惑の声が聞こえてくる。『逃げろぉぉ!』と叫ぶ誰かが、水圧の壁に呑み込まれる。『何なんだよっ!』と誰かが立ち尽くす。『チートだ!』と叫ぶ誰かも水に呑まれたが、最後まで叫び続けた。

 

 吹き出す水は増え続け、ハクヨウを起点として同心円状に四つ、更に遠くに八つ吹き出し、それらが川を作り繋がり、円上にその範囲を広げていく。

 その過程で草原は陥没し、底無しの海に消えていく。仕掛けてあった罠も、視界を遮る長草も。一切合切を呑み込み平らげ。

 

 海と言う名の世界を飲み込む蛇が、そこにあった。

 

「さぁ………っ!」

 

 【文曲】を用いて水面の中心に直立するハクヨウは、さながら大海を統べる王者のようで。

 

「――【鱗刃旋渦】」

 

 それは、嘗ての暴虐の再現だった。

 ハクヨウを中心に海の水よりなお蒼い竜鱗が竜巻の如く回転し、それに呼応するように直径50メートルはある真円の海岸から、等間隔に水でできた20体の蛇が鎌首をもたげる。

 【鱗刃旋渦】については、ただ見た目のインパクトを大事にしただけである。特に意味は無い。1ミリたりとも、意味なんて無い。ただの演出である。

 

 この蛇……水の鞭の様にも見えるこいつらは、全長数十メートルにも達する馬鹿げた大きさであり、それを知っている上でハクヨウがすることと言えば……一つしかない。

 

「全、方位。……草原一帯、を…」

 

 ―――破壊、するっ!

 

 遠大な水蛇を鞭の様に(しな)らせ、その運動エネルギーの全てを大地に叩きつける。

 轟音がイベントエリア全域に轟き、周囲では局所的な地震が発生し、草原は見るも無残な荒れ地へと成り果てた。

 

 ―――そう。

 ハクヨウが考えたのは、至極単純であり、力技で、強引に。すべての罠を、圧倒的に。

 【世界喰らいの蛇】による環境破壊で、()()()()()()()()()。ただ、それだけ。

 

 作戦も戦略も戦術も、罠も搦手も小細工も。

 

 ありとあらゆる技能の総て。

 

 圧倒的な力でねじ伏せる。

 それができる力が、ハクヨウにはあった。

 

 なんか『あり得ないぃぃぃいいっ!?』と叫ぶ馴染みのあるモノクロフードの【トラッパー】が見えた気がしたハクヨウだが、ここまでの恨みでサラッと無視し、水面をスイスイ滑っていく。

 大地は割れ、長草は拉げ、草原だった場所は静まり返る。先程までいたプレイヤーが、軒並み【世界喰らいの蛇】に呑み込まれて死に戻ったからだ。

 なおも縦横無尽に草原を破壊し続ける水蛇は、ハクヨウが残った僅かな罠も、水蛇で触れることで意図的に発動させ、力技で解除する。

 

 ……賢いやり方では、あるのだろう。地雷原を丸腰で歩く人間が、手荷物を地面に投げて意図的に爆発させるように。ハクヨウは今、意図的にマルクスの罠を発動させているのだ。

 地雷原でタップダンスを踊れるか?危険を回避し、最善を征くのが人間だろう?だから、ハクヨウのやり方は正しい。正しいはず、なのだ。

 ……ただ。そう、ただ見た目だけが。ハクヨウの力技で強引に解除するやり方だけが、どうしても。

 

 脳筋に見えてしまったとしても、それは仕方のないことなのだっ!

 観戦席でポンコツ頭脳派脳筋という属性過多な呼ばれ方をしちゃっても致し方ないことなのだ!

 性格はポンコツ、頭は切れる、けれど行動は脳筋が過ぎる。そう判断されちゃっても、多分、きっと《ハクヨウちゃんを妹にし隊》が熱狂するだけで、問題ないのだっ!ないったらない!

 

 

 

――――

 

321名前:名無しの観戦者

 ………

 

322名前:名無しの観戦者

 ………

 

323名前:名無しの観戦者

 ………

 

324名前:名無しの観戦者

 ……なに、あれ?

 

325名前:名無しの観戦者

 バケモンすぎるだろ……

 え?トッププレイヤーって皆あぁなの?

 

326名前:名無しの観戦者

 草原一帯を湖にするとか何?

 は?そんな大規模なスキルあるの?

 

327名前:名無しの観戦者

>325 絶対違う

 ペインよりドレッドよりメイプルよりサリーよりミィより誰よりも頭おかしい

 あんなん対処のしようが無いだろ……ボスモンスターが最後の最後、切り札に使ってくるようなスキルじゃん

 

328名前:名無しの観戦者

 知ってるか?あんな大規模殲滅スキルやらかして近接系のプレイヤーなんだぜ?

 

329名前:名無しの観戦者

 近距離 視認不可能な移動速度で斬り刻まれる

 中距離 視認不可能な無数の刃に擦り下ろされる

 遠距離 視認不可能な速度で苦無(クナイ)が飛んでくる

 全方位 対処不可能な大規模殲滅スキル使ってくる

 

330名前:名無しの観戦者

>329

 すみません どこのラスボスですか?

 

331名前:名無しの観戦者

 なお苦無は大量かつ超重度の状態異常付き

 

332名前:名無しの観戦者

 なお高高度超高速移動によって死角なし

 

333名前:名無しの観戦者

 なお鬼を配下として召喚する

 

334名前:名無しの観戦者

 なお明らかに即死系のスキルを持ってる

 

335名前:名無しの観戦者

 なお他にも未確認のスキルを多数所持してる

 

336名前:名無しの観戦者

 ……ラスボスよりひでぇや

 

 

―――

 

 

 

 

『ハクヨウォォォワァァァアア!?えっ、はぁ!?ハクヨウおまっ、なんっどうやって水の上に立ってるんだぁぁああ!?』

「―――カスミ……」

 

 草原を破壊し尽くし、移動しようと考えていた矢先。背後の海岸から、この短時間で何度も聞いた声が聞こえた。

 

「………えぃっ」

「えっ?ちょまっ!あ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"あ"っ!?」

 

 パチン、と小さく指を鳴らし(特に意味はない)、カスミの目の前で水でできた蛇が水面から“ぐうぅっ”と持ち上がり、鎌首をもたげる。そして間髪入れず、先程草原にしたように水の身体をしならせ、運動エネルギーの全てをカスミに叩きつけた。こればっかりは情け容赦なく、発動中だった【鱗刃旋渦】を表面に纏わせて、さながらおろし金ですりおろすように、カスミを粉微塵にして倒す。

 

「最初、から……こうすれ、ば、良かった……」

 

 誰かに助けてもらうでも、逃げるでもない。倒す。それだけが、カスミから逃げる唯一の方法なのだと悟って。マルクスの罠を解除する時に、丁度いいからカスミも倒しちゃおうと考えた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「なんでだ……なんで逃げるんだハクヨウ……っ!」

 

 水でできた蛇にピチュンッされ、あえなく死に戻りしたカスミの第一声が、これだった。

 

 私はただ、ずっとログインしなかったハクヨウが心配だっただけなのに!

 ただ抱きしめて、ハクヨウを感じたかっただけなのにっ!

 完全に枯渇してるハクヨウニウムを補充したかっただけなのにっ!!

 

 そんな邪念が漏れ出るが、しかし自分のことなんて気付かないっ!

 

「……いや、まだだっ。まだ()()()()()()()()()()()()()()()っ!」

 

 空間ハクヨウニウムってなんだ。と、この場にいつものメンツが居たら白い目を向けた事だろう。だが悲しいかな。ここにはカスミ一人だ。

 虚空に向かってスンスンと鼻を鳴らし、ふらふら〜ふらふら〜とゆっくり歩いていく。その方向は、紛れも無く、先程湖に変化した草原エリア。僅かばかりも方向を間違えず、確実に進んでいた。怖い。

 

「は、ははは……っ。イベントエリアに来た途端にハクヨウニウムを感知したのにはビックリしたが、私からそう簡単に逃げられると思うなよ」

 

 それは正しく、ドレッドや未来のサリーが手にするだろう超直感。第六感の類いだった。

 ハクヨウ捜索に於いてのみ超高精度に発揮するそれは、『空間ハクヨウニウム』なる謎物質を匂いとして感じ取り、確実にハクヨウの居場所を探し出すらしい。対ハクヨウ限定の警察犬だろうか。

 

「絶対絶対、ハクヨウを捕まえるのは私だからな―――っ!」

 

 ………未だ、ハクヨウは逃げ切れそうにない。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 イベントも残り時間が一時間に迫りつつある頃、クロムは一人、荒野行動していた。

 

「ちっ……なんだってアイツら、俺ばっかり執拗に狙うんだ……?」

 

 岩陰に隠れて息を潜めれば、聞こえてくるのは無数の足音。パーティ単位で言えば軽く10パーティはあるだろう多所帯で、どこのレイドボスと戦うのかと言いたい所だが、彼らに狙われているのはクロムだった。

 

『くそ、どこにいる……っ!』

『隠れる場所はそう無いはずだ!岩陰や物陰を徹底的に探せ!』

『フシュー……フシュー……ッ』

『クロム、コロス……コロスゥ……!』

 

「………いや怖ぇよ。俺なんかしたか?」

 

 殺気立っていると言うか、明らかにヤバいやつも混ざっている気しかしないクロムは、隠れる場所の少ない荒野エリアを呪った。建物の多い廃墟エリアを目指してもいいが、逆に自分も視野を狭めてしまうため挟み撃ちでもされたら目も当てられない。

 

「確かに大盾は攻撃力低いし動き遅いしで、こういうイベントじゃカモだけどよ。……それにしてもしつこ過ぎる」

 

 他のプレイヤーには目もくれず、徹頭徹尾クロムだけを狙い続けるそのしつこさは、もはや狂気すら感じさせた。

 

「………うし。全員倒すか」

 

 このまま逃げ回っていても意味は無いし、何より彼ら全員を倒せば、相応にポイントも入るだろうと前向きに考える。

 ……既に半分は倒しているのに、まだあれだけ居るという事実からは、目を背けて。

 

「よぉ」

「っ!そこか!」

 

 残り一時間と少し。覚悟を決めたクロムは、玉砕覚悟で姿を現した。

 

「おーおー。これだけ雁首揃えられると、ある意味で壮観だな、これは」

「クロム……お前だけは絶対に倒す。絶対にだ!」

「斬る斬る斬るきる伐る切るKILLKILLKILL……」

「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい」

「羨ま…恨めしい恨めしい恨めしい……」

 

 怨嗟の声が荒野を染め上げ、さしものクロムも冷や汗を流す。超怖い。

 

「……なぁ、お前らはずっと俺だけを執拗に狙うが、理由はなんだ?イベント上位を狙ってるようなやり方じゃねぇよな?」

 

 クロムを見る彼らの瞳は、恨みつらみ嫉み妬み憎しみ怒り。様々な感情の集合体。

 その感情の濁流の中央にいる一人の男が、この集団のリーダーらしい。クロムを唾棄するかのような侮蔑の視線で見つめている。

 

「……?」

 

 だが何故か、クロムにはその視線の中に、クロムに対する羨望にも似た別の感情が見えた。

 

「なぜ、だと?……そんなの、決まっている」

 

 その男は怨嗟を吐き出すような声と小さく呟くと、次の瞬間、堰を切ったような怒声を張り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様がハクヨウたんを独り占めするからだろうが!羨ましいんじゃボケェェエエエッ!!」

 

 

 

「…………は?」




 
 つい先日、『防振りオリジナル集』ってのを作りました。
内容としては、
・防振り関係での投稿作品の試し読み
・唐突に思いついた設定の走り書き

の2点になります。
『PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。』
『現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。』
『さとり妖怪は仮想世界にのめり込む』
の3作品の始め数話。並びに、気晴らしに書き上げた色々な設定の作品を載せています。ただこちらは本当に思いつきなので、その作品(章)が完結せずに新しいのを書くのでご了承ください。

 書く予定の設定にも、いくつか構想があって。
・防振りキャラたちが他作品の世界に行く
・防振りキャラを全員性転換する
・防振りキャラの性格をシャッフルする など

 性格シャッフルは、例えば
メイプル(in:怖がり out:天然)
サリー(in:天然 out:怖がり)
 みたいな感じ。絶対楽しい。
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