比企谷八幡に憑依した知識チートの人生やり直した男の物語

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人生を諦めるな。
竹を切れ、笹を折れ、木を削れ、今をイキろ!!
ちまき美味しい!!


だから今からでも全力でイキろ!!

 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』というライトノベルに共感した男がいた。

 その男は受験勉強にも出世にも本気になれず、低賃金であり周りに自慢にも出来ない職場の中で、その中でも昇進も出来ない自慢にもならない立場にいた。

 だから妄想の世界にのめり込んで、現実から目を背けていた。

 会社の外では会社を見下されて、会社の中では後輩に立場を抜かれていく事を見下されていた。

 当然妻も恋人も出来なかった。

 そんな男と付き合いたい女なんて、社外にも社内にもいなかった。

 ゴミみたいな人生だった。

 少なくとも男はそう感じていた。

 

「やはり俺が幸せになれないこの世界がまちがっている」

 

 だから男は駅で電車が向かってくる線路の中に飛び降りた──────。

 

 

 

 

 男は気が付いたら赤ん坊になっていた。

 そして両親から「八幡」と呼ばれていた。

 男はそれだけで自分が『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公に憑依したと理解した。

 

 男───八幡は歓喜した。

 八幡には大人になって死ぬまでの記憶がある。

 この記憶は圧倒的なアドバンテージになるに違いなかった。

 しかし、意外と苦戦があった。

 言葉はわかる。

 しかし声を出す感覚がいまいちよくわからないのだ。

 意味のある言葉を言おうとしても、発音がそれに追いつかなかった。

 そして、一度人生を味わった影響か、他の赤子の様に無限の好奇心を持ったチャレンジは行わなかった。

 

 

 

 とはいえ、それでも言葉をマスターするのは他の子供より早かった。

 八幡の両親は喜んだし、何より八幡自身が面目躍如できた。

 

 次の難関は他の児童との関係性だった。

 周りの児童より頭がいい八幡は、周囲の児童のリーダーになるはずだった。

 少なくとも八幡はそのつもりだった。

 

 

 しかし、しかしだ。

 子供というのは、正しいことを言われれば納得するものではない。

 大人だってそうだが、子供は大人以上にその傾向が強かった。

 八幡は正しい事を言えば誰もが自分に感心すると思っていた。

 しかしそうではなかった。

 

 よくわからない難しい言葉をベラベラ並べて、「要するに俺が正しいから従え」というつまらない相手を子供はリーダーには選ばない。

 “正しい知識と理論”を前の人生から持ち越した八幡だったが、それは通用しなかった。

 運動が出来て、カッコよくて、面白くて、会話が楽しく、共感性がある。

 そんなシンプルに凄い男の子がリーダーになれるのであって、理解できない知識と理論で自分の凄さをベラベラと話し倒すだけの男はリーダーになどなれない。

 そんなシンプルな事は、八幡以外の児童は皆わかっており、八幡だけはそれを認める事が出来なかった。

 

 正しい事を言えば、正しく認められる世界。

 そんなものは無いと、本人の生まれ持っての魅力や才能や環境が認められるのが世界だと、八幡は認められなかった。

 それ故にたびたびパニックを引き起こした。

 周囲の児童は八幡から更に距離を置いた。

 

 

 それでも、前世からのお釣りにより、勉強だけは出来た。

 それが八幡の強みだった。

 もし、八幡が自分が唯一認められる勉強だけに人生の全てだと、勉強だけに全力で打ち込めば、高い学歴を獲得して、有名な会社に入って、大人になってから初めて人生を楽しむ気になれば、大人になってからは楽しい人生が待っていた──はずだった。

 

 八幡は「俺が正しい事を言っているのに認められていない今現在をなんとかならないのか!?」と叫んだ。

 なまじ憑依という不思議な事が起こったせいで、不思議な力でまちがっていない本物の世界がやってくる可能性を諦めていなかった。

 

「俺は今正しい事を言ってるんだ!!

俺が今それを認められないのはおかしい!!」

 

 それは八幡だけの理屈だった。

 他の誰にも通用しない理屈だった。

 

 勉強しても認められないのなら、勉強する意欲も落ちる。

 それにアニメや漫画の誘惑もある。

 なまじ高校まで卒業した自信があるから、本気で打ち込まなくても何とかなる気がしていた。

 

 だが──────八幡の知識は高校生までだったのだ。

 挙げ句に、高校自体のレベルも、その高校での成績も良い方ではなかった。

 連立方程式程度は覚えていても、漸化式はそもそも前世の高校時代も覚えていなかった。

 英単語や構文や発音やリスニングも駄目だった。

 知識をお釣りに出来たのは中学生までだった。

 

 履いた下駄(アドバンテージ)は高校生で失った。

 周りを下に見ていた態度による嫌われ具合は、中学校時代から着いてきた。

 実際には頭が悪いのに、頭が良いつもりで偉そうにしている奴を好きになるやつはいない。

 八幡は周りに攻撃されないように身を潜めて暮らした。

 周りも八幡に構う気が無かった。

 八幡は自分の行動と周りの行動が合わさって超ボッチになった。

 

 八幡が自分の能力の中で選んだ行動なのに、その結果は八幡には不満だった。

 それもストレスとなり、結局大学受験は失敗した。

 そこから選べた就職先も、前世と同じところしかなかった。

 以前と同じ仕事なので、差し障りなく流す事は出来たが。あまりやったことがない分野はさっぱりだった。

 それにやり方はわかっていても処理速度や体力が追いつかないのもあった。

 そして第一に、仕事を取り敢えず終えるだけの八幡には、新人に求められるフレッシュな熱意が周囲には感じられなかった。

 それが先輩たちの反感を買い、同期にも見捨てられて、後輩にも馬鹿にされた。

 

 そして今、八幡は駅のホームにいる。

 八幡は以前と同じように一歩を踏み出して身を投げだした───




八幡に生まれ変わっても良いことなんかない。
苦しい人生だって自分の大切な人生だ。
二度目の人生があったとしても今の人生を無駄に捨てるな。
自分の人生を精一杯生きろ!!
ササやタケの様に中身スッカスカでも良い、木の様に成長が遅くても良い、死ぬな生きろ!!
やはり人生やり直すのはまちがっている!!
精一杯、イキろ!!


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