鬼滅の刃~太陽の化身~   作:怪獣馬鹿

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大正ビギンズ第2話にして明悟の事が少しだけわかります。
そして明悟としのぶの関係も動きます。
それではどうぞ!


大正ビギンズ 仮面ライダーアギト

この世に世界は数多存在する。

例えば、もしもここにいる柱が誰か死んでたり、負傷で引退したり、また柱が違う人間だったり、そもそも鬼がいない世界だったり、様々な世界が無数にある。

そんな世界を全て手に入れようとしたのが“大ショッカー“と呼ばれた組織だ。

ソイツ等はまぁ俺と仲間達が壊滅させたが倒しても倒してもゴキブリのようにまた出てくる奴等で死者の蘇生すらも出来た。

そんな中で甦ったのが、《ダミードーパント》のロベルト志島と《王蛇》の浅倉威だ。

ショッカーは志島ではなく《ダミードーパント》の力が欲しかったようだが、あの力を最も引き出せるのはロベルト志島だけで1人だと戦闘に関してはあまりにも弱すぎるので殺し合い位しか人としての興味がない浅倉が一緒に甦った。

ここにいる海東は盗むのが得意で志島自身は小物で取るに足らない男だったからダミードーパントになるのに必要な《ガイアメモリー》・・・お前らも見たあの小さくて腕に挿したヤツだ。それを盗みに行ったんだが、このへっぽこが変身する前に浅倉にボコボコにされて前に見て倒すのに難儀した俺の偽物の記憶をコピーされて、アイツらはショッカーすらも裏切ってあちこちの世界へ逃げた。俺の偽物の力を使ってな。

《ダミー》ってのはあくまでも模倣。

だから、記憶にあった偽物の力よりももっと自由に扱ってる。浅倉に変身させたり、あの女隊士を別の世界から呼び寄せたりな。

俺達はあの2人を倒すためにこの世界に来た。

言い忘れてたがこの服は俺が色んな世界に行くとその世界に与えられた役割と言うか自動的になっちまうから、文句は言うな。それが証拠に名簿に名前があるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

産屋敷のある部屋で朝から突然現れた隠の服をしてる門矢士と海東大樹の説明を明悟を除いた柱と何名かの隠と当主の耀哉、そして轆轤と零余子が聞いていた。

士のスケールのデカイ話に混乱が普通の人間だと起こるが突然現れた存在や甦ったカナエなどの説明が否定すると出来なくなるので信じるしかなかった。

実際に士と大樹の名前は隠が隊士に隊服を作るのに必要な身体的特徴を記した物を纏めた名簿に知らないうちにあった。

 

「コレが俺達の話の全てだ。まぁ大体で良いから理解しろ」

 

士の中々に無礼な姿勢は明悟以上である。そもそも明悟は敵とか親友の耀哉以外には真面目であり、士とは色んな意味で正反対である。

 

「なるほど、つまりその志島と言う男を倒せば良いのだな?」

 

「そう言う事だ」

 

さっぱりと豪快な性格の杏寿郎が元気よく答える。

 

「皆も宜しく頼むね」

 

今回の事件をめんどくさせて尚且つ記憶を“盗まれた“大樹が笑顔で言うが、全員の目付きが鋭くなる。勿論、士もである。

 

「分かった。鬼殺隊は君達2人に協力するよ。但し、終わったらどうなる?」

 

「別の世界に行く。この世界の厄介事はこの世界のライダーがやるべきだしな」

 

士の言葉に耀哉や他の柱も少しだけ安堵した。

と言うのも今まで何百人ではすまないほどに無惨を倒すのに生涯を掛けて散っていった命の数々が突然現れた異世界の人間に倒されてた何のために数多の命が消えていったのかわからない。

だから、彼らは安堵した。

それに士もやるのはあくまでも手助けかショッカー絡みの事だけしか目的がない。

以前、王になりたいライダーを結果的に助けていたのは浅倉等と言った悪人にしないようにするためで、ソイツは魔王になる運命を自分で切り開こうとし続けている。

故に士はこの世界の厄介事を解決しようなどとは考えていない。

あくまでも自分は“通りすぎる“だけしか出来ないし、それ以上はやる気はない。

 

「ライダー?」

 

耀哉が士から出た気になる単語を言う。

 

「どの世界にもいる・・・バカの事さ。自分が傷ついても立ち上がって誰かの為に戦う。その時はいつも誰かの自由が理不尽に奪われる時には誰よりも戦って傷つくヤツらの事だ」

 

「なら、明悟の事だね」

 

「なぜそう分かる?」

 

「私の知ってる人間の中で中で彼は誰よりもバカで誰よりも立ち上がる人間だからね」

 

穏やかな声で話す耀哉。

 

「お館様、その津上さんは今、蝶屋敷で眠ったままです」

 

「ありがとうしのぶ。けど大丈夫だよ、明悟は絶対に立ち上がるさ。明悟ほど常識を知らない人間はいない。・・・気にしてる事をヅケヅケと何気ない声で言って相手を怒らせたり、地雷を平気で踏み抜いたり、しかも全く気付いてないから悪意が無いってのがまた腹立つし、人付き合いが下手な上に頑固だからすぐ謝らないし、食べるのが好きだから店の人と仲良くなるのをよりによって食べるのが難儀な私に話すし・・・お陰でなんどお腹が空いたか・・・更に疲れたからと言って輝利哉やひなき達を出汁に使って休むわ、あまねの本を子供達に朗読して変な趣味を発現させるわ、明悟の常識の無さとあの性格になんど心が折られたか分からないよ・・・けどだからこそなんだけど、絶対に明悟は起きてくる。

起きて“遅れてごめん“って言って“菓子織“でも渡してそこら辺の井戸端会議みたいに気軽に話に加わって、途中からなのにすぐに理解して、またいつものように戦って帰ってくる。だから私は正直に言って“明悟の心配“だけは微塵の欠片もしていない・・・本当にあの性格やらなんやらを直して欲しいよ・・・いやわりと本気で」

 

罵倒してるのかそれとも賞賛してるのか分からない事を言い始める耀哉に全員がドン引きしていた。

だが、明悟が立ち上がる事を当たり前のように言う耀哉に全員が誰も知らない2人だけの“絆“=友情が存在してるのだと認識した。

 

「なるほど、どうやら想像以上にタフなヤツのようだな」

 

「まぁ、私の親友だからね・・・明悟の事はどうでも良いとして、これからをどう対策するかを考えよう」

 

わりと酷い事を平気で言う耀哉はすぐに志島と浅倉、カナエの対策を全員で練る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

1人の赤ん坊が産まれた。

だが、その赤ん坊はとても病弱で産声を上げなかった。死んだと周りから思われたが、その子は産声を上げて生きた。

誰もが奇跡と信じた。

しかし、その子は苦難の人生にいた。

とても病弱で長くは生きられなかった。

善良な医者がその男を治そうとしたが治るどころか悪化し、男は癇癪を起こして医者を殺した。

だが、医者が死んでからやっと効果は現れるようになった。ただし、日の元へは出られなかった。

そして男は鬼舞辻無惨となった。

 

病室で寝ている明悟の深層心理にそんな事実が流れる。

明悟は暗闇の深層心理の中にいてそれを見ていた。

最初は邪悪なんていなかった。

1人の人間が必死に生きようと抗っていた。

多くの人間がそれを手伝った。

だが彼にとってはそれが当たり前になり、そして《過程》と言う意思を無視して《結果》と言う物だけに執着していった。

 

明悟は彼がどんな存在なのか理解できた。

《完全に近い生物》でもなければ《鬼》とかそう言う者と言うよりは自分よりも必死で生きてる人間に《嫉妬》して癇癪を起こしてるだけの《子供》だ。

 

「そう言う事か・・・」

 

「彼が分かったのですか?」

 

明悟は後ろから聞こえた声が気になり、後ろを向くと白い服の男が立っていた。

 

「あんたはこの前の」

 

「覚えて下さり、ありがとうございます」

 

頭を下げる男に明悟はアギトの超能力でその男が何者なのか大体だが理解できた。

 

「貴方は・・・アギトそのものなのか?」

 

「そうとも言えますし、違うとも言えます」

 

白い服の男は空間に座った。

そこには椅子なんて物はないのにまるで椅子に座ってるかのように優雅に座っていた。

 

「君も出来ますよ」

 

明悟は男の言葉に従い、目の前に座る。

そこには確かに椅子があった。

柔らかくまるでソファーに座っている感覚だった。

明悟は不気味に思い、見えないのに存在する椅子を触る。

 

「心配しなくても構いませんよ。確かにソファーは存在し、そしてそれは実は人間とか他の生命だったとかって気分の悪い事にはなりません。貴方がソファーを望む限り」

 

「・・・ここは何処なんだ?」

 

「貴方の深層心理の領域で《無意識の領域》とも呼ばれる場所です。私は貴方をアギトにした者で《火のエル》とも呼んで下さい」

 

「エル・・・色々と聞きたいことはたくさんある」

 

「では1つずつ答えますよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

太古の昔、闇がいた。

彼はこの星を作り、そして様々な生命を作った。

この私、《火のエル》もその1人です。

彼は私と同等の力を持つ、様々な存在《エルロード》を先に作り、《ロード》と呼ばれる生命を造り、彼らの姿を基本にこの世の《動植物》を造り上げた。

そして自分に似た《人間》を造り出した。

《人間》は《動植物》を食べねば生きることさえも出来ない、《ロード》達は人間よりも先に造られたのに《人間》以下と言う事実に嫉妬し、そして人間を家畜のように扱おうとした。

《人間》は闇に姿を似ているように造られた為に傲慢になり、《人間》と《ロード》は互いに互いを下等な物と見下した。

そして長い戦争になった。

私は《ロード》に圧倒的に殺されてる《人間》に同情して《人間》の味方になった。

そして私と人間の間の存在の《巨人》と呼ばれる生命が出来た。

《巨人》と言うのは巨大な人間と言う意味ではなく、巨大なる力も持った人間です。

40年以上に渡る戦争は《エルロード》達が起こした大洪水によって終結しようとしました。

全ての生命を根絶やしにして・・・だが闇はロード達の“人間と何ら変わらない行動“を叱責し、この世の全ての動植物のつがい一組を船に乗せて助けた。

これにより、1度世界は滅んだ。

《巨人》も消えた。

 

戦争が終わり、闇は《巨人》を造った私を殺しそうとした。

 

咄嗟に私は持てる力の全てを使い、時空を移動して約1000年以上前のこの国に飛びました。

ギリギリ体を透明にも出来て気配も消して動けたので大騒ぎになることもなく、この国で誰にも気づかれずに療養しながら、人の暮らしを見てました。

そして死にかけの無惨を見て、記憶を見て私は彼が不憫に思い、力を渡しました。

しかし、傷がまだ深かった私の力はかなり衰えていて、私1人の力では完全に治す事は出来なかったので、彼を治そうとしていた医者の薬を全て飲めば人間になれるように調整する事は出来たからやった。

ただ、無惨は全ての薬を飲む前に癇癪を起こして医者を殺した。

薬を全て飲んでいれば完全に人間になるように調整した為に無惨の中にある私の力はそれまでの医者の薬に対応しそして無惨を守るために《アギトとは異なる進化》をしてしまい、無惨は鬼になりました。

 

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●●●

明悟は愕然とした。

想像以上と言いようがないほどの壮大な話だ。

無惨と鬼殺隊の1000年に渡る物語以上に壮大な人類史であり、神話であった。

 

「想像以上だな」

 

「混乱してますね」

 

「混乱するなって方が無理だよ・・・これ以上の話はパンクするから絞った言うけど・・・その闇ってのが無惨を殺そうとしない理由はなんなんだ?」

 

「それは理由があり、私も無惨が生まれてすぐに彼なら干渉して人間を守ると思っていましたが、調べてると彼は今、自分で自分を封印してます。海の底に十字架の棺を突き立ててそこで眠っています。彼が自分から出るか、人間の手によって開けられないと彼は動きません」

 

「人間の手で?」

 

「私がそれを見つけて助けて貰おうとしましたが触ることも出来ませんでした。恐らく私が人間では無いからでしょう。アギトである貴方や芦原轆轤や氷川零余子が上げようとしても無理でしょう」

 

「海の底にある・・・柱ならば・・・」

 

「海底一万メートル下にあり、柱とかそう言う問題ではなく人間だと水圧でぺしゃんこになります」

 

「・・・闇は無理だとして《ロード》は?」

 

「先の戦争では彼ら自身も問題でしたので誰も介入しないでしょう。そもそも創造主の闇が寝ているときに下手な事をやっては今度こそ殺されますからね」

 

「・・・さっきの話を聞くに、無惨は俺と同じアギトで良いのか?」

 

「いえ、厳密には違います。元となる力の根源は同じですが無惨はアギトとは違った進化の遺物であり、怪物でもある。しかし、まぁ一緒の存在と捉えても構わないほどに似ています」

 

「・・・無惨は何をしようとしているか分かるのか?」

 

「彼は《青い彼岸花》を手に入れようとしてますが、それは永遠に不可能でしょう」

 

「《青い彼岸花》ってのが分からないから、それの説明も含めて貰って教えてくれ」

 

「《青い彼岸花》と言うのは1年に数回だけ日中のみに咲く花で、本来の彼岸花と違う色なのは大気中にある太古の昔の先の戦争時に於ける私の力の残り香のような物が終結して出来た幻の花です。あれを煎じて飲めばアギトの力は更に強化され、無惨は完全に地球上で唯一無二の無敵になるでしょう」

 

冷や汗が出ると同時に安心した。

日中ならばどんな鬼でも不可能であり、絶対に摘まれはしない。人間の協力者が入れば別だが、ここまで痕跡を残さない無惨がわざわざ残す可能性が高いのをやるとは思えない。その点から無惨の目的はまだ大丈夫なのだと安心した。

 

「それは人間の手で作れないのか?」

 

「《青い彼岸花》そのものの種があれば可能ですよ。それに無惨もこれを造れます」

 

「何!?」

 

「彼の血を普通の彼岸花にかければ良いんです。ただし、100年は最低でもかかりますし、花は枯れてもかけ続けないとなりません。彼の性格では無理ですね」

 

枯れても血を与え続けないと《青い彼岸花》にならないとは何とも気の遠くなる道だと明悟はこれしか方法がないならば問題はないと思った。

 

「アギトの血でも出来ます。時間は同じくらい掛かりますが・・・」

 

「最後の質問なんだけど、俺は何処から来たんだ?」

 

明悟は自分の耀哉と会う前の事を尋ねる。

それでどうなるかは関係ない。自分は自分だと確り認識しているが、鬼とアギトの関係を知り、いずれ自分もまた無惨に近い存在になるかもしれないと言う恐怖があった。

 

「申し訳ないですが、知りません」

 

「知らない?・・・・・嘘だろ?」

 

「私が貴方に出会ったのは、11年前。君が産屋敷耀哉と会う1日前だ。森の中で倒れてる君に出会った。手は血だらけで飢餓状態の君に会った。私には2つの選択があった。このまま知らん振りをするか、それとも命を捨てて助けるかの2つでした。無惨の件があり、助ける事に躊躇しましたが助けました。君のそれより前の記憶は完全に無かった。書物で例えるならば記憶喪失になると必ずある《破ったような後》すらない。しかし、昨日今日生まれた生命でもない。君が何者なのか私ですら把握できない」

 

エルから言われた内容は明悟の予想よりも斜め上に行っていた。誰にも自分の存在が分からない。いや存在は分かるがどこの生まれでどこで生きてたかまるで分からない。

 

「君達には謝っても謝りきれない。私が無惨に同情なぞしなければ誰も不幸にならなかった。私が全ての元凶なんだ」

 

エルは深く後悔していた。

全てがこのエルが無惨に同情したことから始まった。

しかし、明悟はそれに対して怒りはなかった。

 

「平穏や平和は目指す人の意志が重要。人の為に何かをしたい良心、悪事は赦さない矜持、自信と責任に溢れる誇り、苦難に立ち向かう勇気と言った《光輝の意志》が必要なんだ。持っていても平穏や平和には必ずたどり着けるなんて甘い世界じゃない。しかし、それらを成した者は皆このような《光輝の意志》を持っている。貴方にはそれを感じる。だから俺は貴方を赦す。始まりが例え苦難に満ちた始まりだとしてもそれが人を苦難に貶める免罪符にはならない。無惨は俺が倒す。例えそれで相討ちになったとしても絶対に倒す。それが俺の選んだ道だ」

 

「津上明悟・・・・・」

 

「覚悟は出来てる。そして俺には夢がある。カナエは鬼と人が共に歩める世界を目指そうとした。そして轆轤や零余子のようにアギトに目覚めれば助けられる鬼が居るのも理解できた。今、カナエが操られて鬼の味方になってる。俺は倒すのに・・・・・躊躇してないんだ。愛してるのに大好きなのに、大事な人なのに心が何も無かったかのように冷静なんだ・・・俺は狂ってるのか?」

 

目に涙を浮かべる明悟。

愛する人を倒さなくてはいけない。葛藤や躊躇するのが普通で覚悟していてもそれは起こるが明悟には無かった。何故なのか明悟には理解出来なかった。

故に明悟は自身はとっくに鬼のような《怪人》なのではないのかと今、苦悩している。

 

「それは貴方自身が見つけないと意味がない物です・・・貴方は私を赦してくれた、しかし罰が無いのではなく、罰が少しだけ緩くなっただけです。私は貴方の為にこの世界で生きます。もうこの深層心理に貴方は永遠にこれないでしょうからお別れです。しかし私は常に貴方達を信じ続けます」

 

エルは別れの言葉を言う。

光に包まれて明悟は目を覚ます。

 

1人残されたエルが呟く。

 

「《光輝の意志》か・・・津上明悟・・・君の中にあるその意志は人を導くだろう。彼や無惨のような一方的なものでなく共に歩き、共に学び、共に悲しみ、共に怒り、共に喜び、共に楽しむ。君はアギトで無惨と同じ異形だ。しかし、君はこの世の誰よりも素晴らしい《人間》だ」

 

エルの顔は憑き物が落ちた顔をした爽やかな物だった。彼は自分を永遠に罰するだろう。無惨を造った罪を償うために、そして彼は永遠に人を愛するだろう。津上明悟と共に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

 

明悟は目を覚ました。

そこは自分が1週間も来なかった蝶屋敷の柱専用の個人病室だった。

 

「起きたのですね」

 

突然の声に明悟は頭を覚醒させて声の方向を見るとしのぶが病室の明悟が寝ている唯一のベッドの横に置かれてる花を変えていた。

 

「・・・どれくらい、寝てた?」

 

「半日であの後すぐ・・・・ついさっきまで会議が行われていて、3時間程の休憩を挟む事になったので戻ってきたんです」

 

「そう・・・」

 

明悟は体を起こす。

傷だらけで包帯が体や頭に巻かれていて痛むが1度座ると楽になった。

 

「では、私はこれで・・・」

 

しのぶは立ち去ろうとする。

そのまま去れば明悟にとっては幸運だろう。

カナエの事を根掘り葉掘り聞かれても何も答えられないからだ。

しかし、それは逃げである。

 

「待って、しのぶちゃん!」

 

明悟はしのぶを呼び止める。

しのぶも明悟の言葉を素直に聞いて止まる。

 

「なんですか?」

 

「俺と・・・君の姉さんの事を話したいんだ」

 

しのぶは静かに黙って、明悟の隣に座る。

 

「話してください。姉さんとの事を」

 

しのぶに言われ、明悟は深呼吸してから話始める。

明悟はしのぶにありのままを話した。

何時であって、そして明悟とカナエの思い出を話した。喧嘩したこと、互いに頑固な所、共に戦った事、そして愛し合った事、子供ができて幸せの絶頂に居たこと、全てを話した。

 

「・・・・これが俺と君の姉さんとの全てだ。カナエが死んだ時、俺は別の任務に就いていた。訃報を受けて頭が真っ白になって、何も考えたくなくて俺は・・・1人任務にもやらずに逃げて逃げて、酒を飲んで倒れて飲んで倒れてを繰り返して1ヶ月後にやっと落ち着く事が出来て、任務で何もかもをぶつけてを繰り返した・・・それで4年経って今だ・・・・・俺のせいだ。もっと冷静になれば良かった。安易に子供を作って、カナエの意思をネジ負けても休ませればこうならなかった。カナエの不調の元凶は俺だ・・・俺がカナエを殺したんだ」

 

「違います・・・」

 

明悟の懺悔にしのぶが異論を示す。

 

「姉さんを殺したのは鬼で上弦の弐で津上さんじゃない。姉さんは貴方を愛してた・・・貴方じゃない。私はもう行きますね」

 

しのぶは立ち上がり、部屋を出ようとする。

 

「君には・・・君達は俺を恨む権利がある!」

 

明悟の叫びをしのぶは聞くが彼女は部屋を出た。

明悟は、立ち上がる。

急いで彼女を追い掛けたかった。

自分は逃げた。

逃げて遺族である蝶屋敷の皆に真実を隠して何も知らないふりをした。触れられて欲しく無かったからだ。しかしそうもいかない。カナエは蝶屋敷皆の姉で家族。秘密はあるものだし、隠し事はある。

しかし、死者となっては出来ない。

だから明悟にはそれを話す責任がある。

何故ならそれは遺族の権利だからである。

フラフラになりながらもしのぶを探しに部屋を出る明悟。

千鳥足で、前は霞んでいるが見つけて話したい一心でしのぶを探す。

多分、自室にいると思い、明悟はしのぶの部屋まで歩く。

そして日照りの良い彼女の自室の襖を開けると、しのぶは箱を取り出していた。

突然、現れた明悟に目を丸くするしのぶ。

 

「津上さん、まだ安静にしてないと!」

 

「ごめん・・・それは?」

 

明悟は取り敢えず、話の種になりそうな箱の事を尋ねる。

 

「これは、姉さんからの貴方への贈り物です。遺品整理の時に見つけました。《愛する人へ》と書いてあって私も他の子も誰もこの中身を見たことも読んだこともありません・・・私は貴方が憎いです。確かに殺したのは鬼だし、貴方を恨むのは筋違いも甚だしい。けど姉さんの強さを知ってたから、それを奪った貴方を《許せないんです》・・・すみません」

 

涙の籠った目で睨むともすがるような目とも違う目を向けるしのぶ。

彼女もまた明悟と同じようにカナエの死から立ち直れていない。

 

「これは姉さんからの物です。見てあげて下さい・・・」

 

しのぶは明悟に箱を渡す。

そしてそのまま立ち去ろうとするが、明悟はしのぶの手を掴む。

 

「・・・一緒に見よう。カナエの形見だ」

 

「・・・良いんですか?」

 

「・・・頼む」

 

しのぶは無言で開いていた部屋の扉を閉めた。

明悟は座り、しのぶはその隣に座って彼らは箱を開けた。

 

中には3つの物が入ってあった。

桜色の2つの蝶の髪止めと手紙。

明悟は手紙を手に取り、開く。

しのぶは横から覗き見る。

その手紙はカナエから明悟への遺書だった。

 

『明悟さんへ

これを読んでる事は私は死んだのでしょう。お腹の子も死んだのかそれとも産んだ後に死んだのか、または一緒に生きて私が先に寿命を迎えたのかわかりませんが明悟さんが読んでると思います。私の人生は辛い事がたくさんありました。親は鬼に殺されて辛かった。しのぶには戦いを止めて欲しくて私の代わりにお婆ちゃんになるまで生きてほしい。私はどうなっても良かった。貴方に会うまでは、変に頑固で子供みたいに味の好みに煩いし、1人で勝手に居なくなって勝手に成果だけ上げて、最初は嫌いでした。けど共に戦って貴方はただの不器用で真っ直ぐな人なんだってわかって、無理矢理繋がった時に一緒に成功して嬉しかった。下弦の肆の戦闘で私が泣いた時に貴方はその涙を認めてくれた。貴方は私の夢や感情を否定しなかった。それが何よりも嬉しくて勇気が出た。柱になった後の宴会で大喧嘩した時に恥ずかしい事を言い合って互いに意地を張って貴方がやられて4ヶ月も寝込んだ時は死ぬほど怖かった。その時にやっと気づいてそして切なくなったんです。あの時の接吻は起きなかったらもう二度と会わない為の物でした。けど目覚めて・・・消え入りそうに恥ずかしくなったけど目覚めた事が嬉しかった。私は貴方との初夜を何よりも覚えてますよ。熱くて私も貴方も声を上げて初めてだから痛かったけど繋がってる事に幸せを感じて、私の爪が背中に食い込んじゃったり、肩の肉を噛んじゃったのはごめんなさい。無我夢中で分からなかったの、けど貴方は笑って赦してくれた・・・もしもこの子と一緒に死んじゃったら貴方は絶対に自分を恨むでしょう。はっきり言ってそれは私をバカにしてます。私があの時繋がり、この子を授かったのは私の意思です。貴方だけの責任じゃない。これに関して誰も口を挟ませない。それがしのぶでも絶対にさせない・・・明悟さん、私は貴方と出会えて幸せでした。一緒に居れて幸せでした。しのぶに貴方を紹介したい。しのぶなら私達の事を認めてくれるもの、だってしのぶは何時も怒った顔をするけど私が本当にやりたくてやった事は笑ってくれるもの・・・出来ればこの手紙は明悟さんと笑って読みたいなぁ。ただの気のやり過ぎみたいな感じで笑い話にしたい。もしも無理なら、明悟さんは生きて下さい。生きて生きてお祖父さんになってから来てくださいね・・・ただ、私以外の人とはあんまり仲良くなって欲しくないなぁ。あまね様とは特に!私はあまね様とは違ってガツガツ行くような人ですけど負けてもないですからね!明悟さんは私の旦那なんですから・・・やっぱり忘れて下さい。死人に振り回されない人生を歩いてください・・・明悟さんのやりたい事をやって必死に生きて、一緒に入ってる髪止めは私との思い出です。持っててくれますか?もしも要らないなら、埋めてください。あの世でそれをつけて待ってますから

 

貴方の妻 津上カナエより』

 

明悟は泣いていた。

遺書には違いないけど、彼女は死んでもなお自分を赦してくれた。

優しい彼女に泣いた。

芯の強い彼女に泣いた。

明悟は彼女に感謝した。

 

「何だよ・・・・・先に死んで・・・・・ごめん・・・・・ごめん、俺は君を護れなかった・・・畜生・・・畜生!!!」

 

慟哭する明悟。

しのぶも涙を流していた。

カナエの子供を宿した母親としての覚悟はしのぶの中にあった明悟への恨みを消していた。

涙を拭いて立ち上がるしのぶ。

明悟も拭いて立ち上がる。

深呼吸をして明悟は髪止めを取り、握り締める。

 

「カナエ・・・今度は絶対に君を守る・・・でないと旦那失格だもんな」

 

「隊服は部屋にあるので、先に行ってますよ・・・・“明悟義兄さん“」

 

しのぶはそう言ってさっさと先に行った。

明悟は部屋に戻り、服を着る。

鬼から身を守るために特殊な繊維で作られた隊服を着て、耀哉からの贈り物のコートを着て、あまねからの贈り物であるハットに蝶の髪止めをつける。

互いに向かい合うカナエの髪型のような付け方ではなく、片方に二羽とも寄り添うような付け方をして明悟はそれを被る。

 

 

明悟は幸運な人生を送った。

耀哉は傷だらけで倒れてた明悟を助けてくれた。

その良心がコートになり、優しさが巡る。

あまねは地雷を踏みまくり、侮辱した明悟を叱ってくれた。

その矜持がハットになり、誇りを宿させる。

カナエは1人孤独な明悟に寄り添ってくれた。

その愛が髪止めになり、勇気をくれる。

 

明悟の人生は幸運で包まれている。

それは掛け換えのない明悟が歩んできた生き方。

 

《人生》の賜物である。

 

故に明悟は生きる。

彼等の《意思》と《夢》を守り続ける為に彼は前に進むのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明悟は産屋敷に行く途中、芋長に寄り、何時ものように駄菓子を買った。

 

産屋敷につくと隠や隊士が驚いた顔をしながら明悟を見る。

そして明悟は会議をやってる部屋に入る。

他の面々を驚いた顔をしていたり、当然だと言うような顔をしていたり、様々な表情を明悟に向ける。

 

「遅くなってごめん・・・続けて」

 

耀哉の言った通りだった。

本当に戻ってきてすんなりと話に入ってきた事に耀哉以外の全員、轆轤や零余子や士まで・・・起きたことを知っていたしのぶはともかく、全員が耀哉と明悟の固い絆に驚愕した。

 

「明悟・・・おかえり」

 

「ただいま」

 

「さぁ・・・反撃の準備だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●

会議が終わり、もうすぐ日が沈む頃、明悟は1人夕焼けを見ていた。

 

「よぉ、津上だったか?」

 

「士君だったっよね?」

 

「あぁ、合ってる・・・夜の戦いに備えて寝ないのか?」

 

「眠れないんだ・・・」

 

「そうか・・・」

 

「ねぇ、仮面ライダーって何なの?」

 

明悟は士に藤の山から気になってた事を聞いた。

 

「自由の使者だ。人の自由が脅かされると突風のように突然現れ、嵐のように戦い、そよ風のように人知れずに去っていく・・・正義とか大義とかの為に戦わない戦士だ」

 

「なるほど、仮面ライダーか・・・」

 

「産屋敷が言ってたがまるでお前のようだと言ってた」

 

「耀哉のやつ・・・じゃ、俺は《仮面ライダーアギト》とでも名乗れば良いのかな?」

 

「好きにしろ、誰かの居場所を守るために戦うなら、誰もが皆、仮面ライダーだ」

 

士の言葉に明悟は納得した。

自分がそんな大層な物だとは明悟は思ってないが、何もない自分も成れるならば成りたい《仮面ライダー》に

 

「何か悩んでるな・・・教えろ」

 

「・・・いい助言でも出せる?」

 

「時と場合によるな」

 

「・・・カナエと戦うのに迷いがないんだ。迷えないしね。それが良いのかどうかも分からない。どうすれば良いのか分からないんだ」

 

「迷わなくていいんじゃないか?」

 

明悟の吐露に士が答える。

明悟は士を見る。

 

「ある男がいた。そいつには仲間がいた赤鬼や青い亀や黄色い熊や紫の龍だ。このまま戦い続けたら消えるかも知れない時にそいつは迷わなかった。迷ってない自分が分からなくて、そいつらを自分から離れさせて全部をどうにかしようとした」

 

「それからどうなったの?」

 

「そいつらは最後まで一緒に戦ったさ・・・今を守るために」

 

「今を・・・」

 

「お前が守りたいのは何だ?」

 

士の問いに明悟は考える。この問題を解くにヒントが出て、明悟は漸く自分がなぜ躊躇してないのか理解できた。

 

彼女の《夢》を守りたいからだ。

納得いく答えだった。

それが分かった事に明悟は嬉しかった。

 

「昔、とある少年が死者を甦らせた。ある組織がそれを悪用した。ただ、その組織は俺や仲間達の死者への無念から出てきた。前の世代と激突した。ただそれでも俺達は死んだ奴らの《意思》を受け継ぐ。そう俺達は決めたんだ」

 

士の話した事は明悟にはあまり理解出来なかった。だが死んだ大切な人の《意思》を受け継ぐ事は理解できた。

 

「俺には《夢》がある。無惨を倒して皆が笑い和える日を作ることだ」

 

「それがお前の《夢》か・・・綺麗事では片付かないのは知っててか・・・呪いにもなるが良いのか?」

 

「覚悟の上だ・・・」

 

明悟の目に宿る意志は固く、それは何があっても絶対に折れないと言う目付きだった。

 

「成る程な。せいぜいくたばらないようにな」

 

士はそう言ってさっさと寝に戻った。

明悟はそのまま夕日を見る。

 

それは優しく明悟とカナエの無事を祈って明日もまた会おうと言う、ある種の別れのような切なさを明悟は感じていた。




《光輝の意志》とは
1つ、他者に対する良心
1つ、悪事を赦さない矜持
1つ、自信と責任に溢れる誇り
1つ、苦難に立ち向かう勇気
を持つものである。
そして意志を持つ者の瞳には光輝く白銀の刀のようなビジョンが現れる。

ジョジョシリーズに於ける《黄金の精神》や《漆黒の意思》をこの作品で表すならこうなるなと思ってやりました。

さて、明悟の過去は実は何にもわかりませんでしたと言うのが真実です。
様々な作品を見たり読んだりしてて漫画だけでなく映画とかも含めて、案外主人公の過去って分からなくても問題ないなと思ってこうしました。

ご容赦下さい。

そしてしのぶと明悟との因縁も漸く終わりました!
しのぶは実は明悟の責任でないことを知っていますが原因ではあるので赦せなかったと言う話でした。

次回も楽しみにしてください!

因みにこの章は5話で完結する事に決めました。
次回は明悟とカナエとの激戦になると思うので楽しみにしてください。

批判感想質問は気軽に送って下さい。
それではまた来週・・・ちょっと用事が今週な後半に重なってしまったので、遅れるかも知れませんが3日以上は遅らせませんのでどうか宜しくお願いします。

大正ビギンズの主題歌は何にしましょうかね?(このアンケートはあくまでも読者の皆様に読んでる時にBGMとして聞いてほしいと思う曲を選ぶ物です。1番多い物はビギンズか終わり次第、章の名前に付け加えます)

  • ONE WORLD
  • Bright our future
  • 事件だッ!
  • Be the one
  • 我ら思う、ゆえに我らあり
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