次回は絶対に1週間で出せるように努力します。
では、津上明悟の本当の過去編をどうぞ!
1話で終わります。
時は光柱 津上明悟が12歳の時。
つまり今から11年前に戻る。
とある村に彼はいた。
まだ彼は津上明悟ではなかった。
家はどこの田舎にでもあるような田や畑をやっている家で彼はそこの長男である。
彼の名前は・・・
「哲哉!哲哉ってば!」
「明悟・・・朝から煩いぞ!」
耳を抑えて幼なじみの明悟に怒鳴ってるのが、昔の明悟・・・当時の名前は沢木哲哉。
「哲哉が何も言わないからじゃん」
「うるせぇ!」
当時の明悟は今のような性格ではなかった。
傲慢で非常にキレやすかった。
「それよりもさぁ、ほら山の寺に行くのは止めない?」
「何でだよ・・・今晩、行くんだろ?どうせ、後少ししたら嫌でも行くんだから、下見したって良いだろ?」
「でもさぁ、昼に行った方が安心するし」
「バカ!夜に行かされるんだから、昼に行っても意味が無いだろ!」
「そりゃそうだけど・・・行きたくないよ」
「住職の元で修行すれば寺の後継ぎにしてくれるんだから、行ってちょっと早い挨拶をやっても問題ないだろ!」
「ちぇ、哲哉は良いよな。農家の子供で」
「農家のどこが良いんだよ。こんな村、早く離れたいね」
「生まれ育ったあかつき村を捨てるの!?」
「好きでここに生まれたわけじゃない。俺は明悟が羨ましいよ・・・孤児だから自由で・・・」
哲哉の暴言に明悟はただ黙る。
怒り悲しみ様々な感情が明悟に溢れる。
明悟は黙って哲哉に背中を向ける。
「自由かも知れないけど幸せじゃないよ。哲哉にはわからないだろうね」
明悟は静かに怒りの籠った言葉でそう哲哉に言うが哲哉にはその感覚が分からなかった。
それほどまでに彼は傲慢であり、差別的であり、自己中心的だった。
●●●
あかつき村。
どこにでもあるような小さな村ではあるがある習慣が1つあった。
それは1年に1回、1人の子供を山にある寺に送る習慣があった。それから村に戻ってきた者は1人もいない。村は日本の発展に伴う影響で若者がドンドン村から出ていく事が多くなり、産まれてくる子供も少なくなってきた。
哲哉はそんな村で産まれた。
明悟はそんな村に捨てられてた。
赤子からの幼なじみである2人は本当の兄弟のように仲が良かった。
そして習慣により、1人の子供が寺に行かされる事が決まり、明悟が自分からそれに立候補した。
村人としては孤児の明悟が行くので自分達には何の被害もなく、ありがたかった。
哲哉は勿論、それに反対し、そして明悟が行くことになって喜ぶ親や村人達を見て心底、気持ち悪く感じた。
だから、彼ら2人は今晩調べに行くのだ。
その寺は外から見れば普通に見える。
住職だって村に良く来る。
優しい人間だと云うのも哲哉と明悟は知ってる。
だからこそ、その習慣と帰ってこない事に疑問を感じるのだ。
夜になり、哲哉と明悟は寺に続く山の麓まで来る。
提灯を持って寒くないように厚手の格好をして2人はゆっくりと寺に続く階段を上っていく。
「ねぇ止めない?やっぱりさぁ、住職を疑うのは嫌だよ」
「お前はどこまでバカなんだよ。今まで誰も帰ってこない所に行かされるんだぞ?怖くないのかよ・・・これはお前の為なんだって・・・それにお守りは持ってるだろ?」
明悟は確かに自分の名前が刻まれたお守りを首から掛けていた。だが、所詮はお守り。
何の気休めにもなりはしない。
「でもさぁ、大人に見つかったら・・・」
「見付かっても何も無ければ少し怒られて済むだけだ、安心しろ」
「・・・それは哲哉だからだろ、もしも僕が見つかったら、村の和を乱したから明日からは此処で生きていけないよ」
「なら、一緒に出ていこうぜ、そんで生き残れば良い」
「その自信はどこから来るんだ?」
「褒めるなって、ほら行くぞ」
2人はそう言い合いながら寺に向かった。
寺の前に来ると門が夜中なので当然閉まっていた。
哲哉と明悟は提灯の明かりを消し、塀を協力して登る。
寺の敷地内に入り、辺りを見回す。
とは言っても会堂に小さな物置小屋位しかない。
哲哉は明悟を引っ張りながら、会堂を除くがそこにあるのは仏像だけで何も他に変わってる所など無かった。
寺の床下などを覗いたり、色々見てもおかしな所など無く、至って普通の寺だった。
「ほら、やっぱり普通の寺だよ。全部、哲哉の思い過ごしだって・・・」
「ちょっと待てって、まだ小屋の中を見てないだろ?」
哲哉は小屋を指差す。
「あんな小さい所になんて何にも無いよ」
「ここまで来たんだ。無いなら無いで見ても別に良いだろ?」
哲哉は明悟の言葉に耳を貸さずに小屋の扉を開ける。
するとそこには大きな穴が地面に掘られていた。
大人1人が入れそうな程の大きな穴だ。
「なんだこれ?」
「・・・哲哉・・・もう帰ろう。危なすぎる・・・」
「お前たち!何をしている!?」
突然、後ろから光と怒号が飛んで来る。
後ろを振り返ると住職が提灯を持って立っていた。哲哉と明悟の物音に起きてきたのだ。
「逃げるぞ!」
哲哉は先に明悟を穴の中に落として、自分もその後に続く。
2人はそのまま奥深くまで落ちていく。
ズザザァと音を立てて漸く止まるとそこは大きな空洞になっていた。なぜかは分からないが蝋燭が灯っていて少しだけ周りが見えた。
「随分、落ちたな」
「落ちたねぇ~・・・じゃないよ!?どうすんの!?本気で危ないじゃん!てか突き落としただろ!?先に行かせただろ!?盾にする気か!?」
「俺がそんな人間に見えるの?」
「だんだん見えてきたよ」
「とにかく、行くぞ。終わりよければ全て良しってな」
「いつか大変な事になりそう」
哲哉はそのまま前に進んでいく。
薄暗い丸い石だらけの洞窟の中を歩いていくとボキボキと音がなって明悟の足が少し沈む。
「うわ!?」
「どうした!?」
「一体、なんなん・・・」
明悟は足下の物を持ち上げると、割れた頭蓋骨だった。
気持ち悪く、明悟はすぐに捨てる。
哲哉は急いで蝋燭を地面に投げると足下は全て頭蓋骨だらけだった。
荒く息をする2人。
一体誰の骨なのか2人にはすぐに分かった。
帰ってこない人達のだ。
皆、ここで骨にされたのだ。
早く出ようと2人が顔を見合わせると後ろで大きな物音が鳴る。
2人はその方向を見るがそこには何もない。
「今、音したよな?」
「絶対にした」
2人は互いに顔を見合わせて・・・・
「走れ!!」
哲哉の掛け声でとにかくその場から逃げる。
かなり大きい物音を立てながら、何かが後ろから追ってくる。
哲哉は明悟の手を引きながら走る。
しかし、大きな”何か”が明悟を掴み上げる。
あまりにも急な力により哲哉はその手を離してしまう。
「明悟!」
「哲哉、逃げて!」
明悟はそのまま暗い洞窟の奥に”何か”に連れられて行った。
哲哉は急いで後を追いかける。
洞窟はかなり奥まであり、下は頭蓋骨だらけで何回も足を取られて転ぶが哲哉は止まらない。
そして走っていくと明かりが見えてくる。
フラフラな足取りで明かりの元に着くと、そこに明悟がいた。
「明悟・・・明悟!」
明悟を揺する哲哉。
死んでないか最悪が頭をよぎったが、明悟は無事だった。
「少年・・・お前は誰だ?」
突然、耳に届いた声に哲哉は急いでその方向を見る。
そこには”何か”がいた。
手足が異常に長く大きく、人間でない事だけしか哲哉には分からなかった。
「なんだよ・・・お前・・・」
「私は・・・元十二鬼月上弦の弐、名前はもう自分でも忘れた」
「・・・鬼?・・・」
「そうだ。始まりの鬼・・・私は、あの方が最初に生み出した鬼・・・そして重宝された鬼」
”何か”がそのまま自分語りを始めようとしたので哲哉はこっそりと明悟に近づき、逃げようとする。
「こら、少年。年寄りの話は聞くものだ」
「うるせぇ!学がねぇ俺にも分かるのは、お前が人喰いで明悟を食べようとしてる事だ!そんな野郎の話なんて聞くか!」
「最近、食欲が無くなってきてるがの」
「知るか!・・・・明悟起きろ!」
「~哲哉?」
「逃げるぞ!」
寝ぼけてる明悟の肩を担ぐ哲哉。
”何か”はそれを黙って見ていた。
「少年、無駄な事はするな・・・明悟は死ぬ運命にある」
「は?」
”何か”は大量の岩を持ってくる。
ただの岩ではない人の顔がある不気味な岩だ。
その岩の中には明悟の顔もあった。
「私の血鬼術 因果岩・・・これから鬼に関わる者、もしくは鬼そのものの生死がわかる。この中にはあの方も十二鬼月もいない故に未来永劫絶対に死ぬことはない。だが、明悟はいる。つまり、何があっても明悟は死ぬ運命にある」
長い説明を聞いて哲哉は近くに置いてあった大金槌で明悟の岩を砕く。
うんざりしたのだ。
元来の短気な性格とマイペースな性格、そして傲慢な性格がこの行動を生む。
「これで問題ないな」
哲哉は金槌を捨てて明悟を担いで去っていく。
”何か”はそのまま、砕かれた岩の欠片を見ていた。
「人は運命の奴隷・・・産屋敷の呪いと同じようにこれもまた人智を越えた術。それから逃れられる術などない」
”何か”の言葉に哲哉は耳を貸さない。
しかし、明悟は”何か”をじっと見ながら、哲哉と一緒に去っていった。
●●●
洞窟を進んでいって漸く出口が見えた。
出口を抜けて外に出ると外は酷い大雨で嵐が吹いていた。
「何でこんな嵐が・・・」
「急いで戻ろう!」
突然の嵐に戸惑う哲哉に明悟はそう言う。
嫌な予感が明悟の背中を走った。
山を降りてく2人。
村の入り口が見えてくる距離になり、異変に気づいた。
赤く明るかった。
こんな嵐が吹き荒れている夜なのに村の方は赤く明るかったのだ。
「嘘だろ・・・」
「そんな・・・」
漸く2人が村を見ると、村は火の海だった。
嵐になり、雨が降り、風も出てるのに火の海状態であり、村人の悲鳴すら聞こえない。
「運命の代償が現れた」
哲哉と明悟が力無く後ろを見ると”何か”が大量の小さい石を持ってやって来た。
「これを見ろ」
”何か”は石を哲哉と明悟の前に捨てる。
石には人の顔があった。
あかつき村、全員の顔だ。
村長も自分の親も医者も近所の知り合いもその子供達も同年代の知り合いも住職に至るまで全員の顔があり、明悟の顔もまだあった。
「運命は壊せない。壊そうとすれば代償が来る」
淡々と話す”何か”に哲哉は明悟を連れて逃げようとするが明悟は動かなかった。
「明悟、なにやってんだ?早く・・・」
「逃げて、どうにかなるの?」
「・・・・・」
「哲哉、今分かってるのは、哲哉が岩を壊した。それで狂った。だから村の皆が死んだ・・・哲哉が皆を殺したんだ・・・僕は皆が好きだった。本当に僕は死んでも良かったんだ・・・死んでも良かったんだ!!・・・君が全部壊した・・・」
「明悟、俺は・・・」
「君は傲慢すぎる」
明悟からの一言に哲哉は何も言えなかった。
そもそも明悟は最初から今日の事全てに反対していた。付いてきたのは哲哉の頑固さを知ってるからである。
しかし、それ故に穴に落ちて、化け物に拐われ、村の皆が死んだなどと言う結末になった。
哲哉にも明悟にもそんな事は予想できなかった。
予想できるはずもなかった。
だから、哲哉は岩を破壊し、それの代償が出たのだ。
嵐のせいか木々がギシギシと軋む。
吐く息が白い。
「明悟・・・ごめん・・・」
「・・・ごめんで済む・・・・哲哉、避けろ!」
「え?」
次の瞬間、哲哉の周りの木々が倒れる。
メキメキと音を立てて派手に倒れる。
明悟はすぐに動いて哲哉を弾く。
木々は容赦なく明悟の上に倒れ、明悟は弾いた腕以外の全てが潰されて、片腕だけがそこに残された。
「明悟!そんな!?・・・・そんな、嘘だろ!?」
哲哉は急いで木々を持ち上げようとするが子供の哲哉には持ち上げるなんて出来ず、血がどんどん地面に溢れる。
哲哉は素手で地面を堀始める。
「少年、明悟は死んだのだ」
「黙れ!」
「運命には誰しも逆らえない。絶対に無理なのだ」
哲哉は”何か”の言葉に一切耳を貸さずに掘る。
爪は剥がれ、皮膚は擦りきれ、手が血塗れになっても止めない。
”何か”は暫くその姿を見ていたが、どういうわけか自分の怪力に物を言わせて、木々を持ち上げた。
そこには人だった”肉塊”しかなかった。
哲哉はゆっくりと肉塊に手を伸ばし、持ち上げて抱き締める。
涙が頬を伝わり、嗚咽が周りに響く。
哲哉は泣いた。
一晩中、泣いた。
嵐がまだ続き、太陽なんて見えないほどに曇っていた。
”何か”は哲哉をただじっと見ていた。
哲哉はフラフラと立ち上がり、血塗れのお守りを首に掛けて洞窟に戻っていく。
洞窟の中の骨に足を取られて転んでも何も動じずに淡々と因果岩まで歩く。
因果岩は何百もあった。
その中には炭治郎、善逸、伊之助、カナエ、カナヲ、しのぶ、義勇、天元、行冥、杏寿郎、小芭内、蜜璃、無一郎、実弥、玄弥、耀哉、あまね、ひなき、にちか、輝利哉、くいな、かなたなど仲間達全員の顔もあった。
哲哉はそれを全て壊す。
岩が石になり、また収束されて更に死ぬ運命の人間が増えてくる。
「少年、何をやるつもりだ」
「お前ら化け物の親分・・・あのお方ってのを無理矢理、引き寄せてやる」
「何百では効かないほどに死人を増やすぞ。代償も高くなる」
「知るかよ」
哲哉はどんどん壊していくが、人が増えるだけで鬼など一体もでない。
”何か”はそれを見ていた。
食人衝動は勿論出ている。
だが、そんな本能を越える何かを哲哉から感じていた。
1日が過ぎて漸く鬼の死者が出てきた。
人の被害者も300を越えていた。
2日が過ぎて下弦の鬼が出てきた。
しかし、無惨の顔は1つも出ない。
哲哉の体はとっくに限界を越えていた。
手は既に握力など存在せず、服を破ってぐるぐるに巻いて無理矢理金槌を持って岩を砕いていた。
空腹で腹など最早空いてる感覚も無くなり、目も寝不足で意識も朦朧としていた。
それでも岩を壊すのを止めない。
「少年、なぜお前はそこまでやる?」
「・・・友達が死んで親も知り合いも死んでやることがない。早く死んで会いに行きたいけど、こんな事の原因が笑うのなんか想像したくもない。だから道ずれにしてやる」
「結局は気休めにしかならない可能性を考えないのか?」
「気休めでも良い・・・出来る事はやりたい、それだけ・・・」
哲哉はそう言って、また壊し続ける。
そして3日目、一体何回壊したのかさっぱり分からなくなるほどにまた岩を壊す。
そして岩がまた収束される。
その顔は無惨だった。
「嘘だろ・・・」
”何か”は驚きのあまり呟き、哲哉はそれを聞き逃さなかった。
無惨の顔がある岩を持ち上げて”何か”に向ける。
「こいつが親分か!?」
カラカラに枯れた喉で叫ぶ。
血が口から流れるがそんな事を気にせずに叫ぶ。
「そうだ・・・少年・・・だが、代償はすぐに来るぞ」
哲哉の後ろで先ほど破壊した岩が収束される。
それはまだ人の被害者も大勢いてその筆頭は哲也だった。
「まぁ、良いや・・・どうせ地獄行きだし・・・逃げれないし・・・」
哲哉はもう気力なんて無かった。
明悟の逃れられない死を間近で見て、徹夜は完全にこの血鬼術から逃げる事を諦めていた。
「・・・少年・・・良いものを見れた・・・」
”何か”は哲哉に対して優しい笑みを浮かべる。
「なぁ、あんたって何でこんな所で1人なんだ?」
「長くなるので手短に話すが女の肉に執着する若造に負けて、この力のお陰でお情けを貰っての・・・でももう戻る気はない。疲れた・・・肉はもうあまり喰えないし人の運命を見るのも疲れた・・・」
「・・・こいつにひょっとしてばれてる?」
「勿論、バレてるぞ・・・・でも、殺させない」
”何か”は哲哉を持ち上げる。
「少年・・・運命に歯向かう者よ・・・お前がやった傲慢な意地と自己満足は久方ぶりに驚き、楽しめた。願わくはこれで死なないことを祈る・・・この岩の中に今の”上弦の弐がいない”のは少しばかし腹が立つが愉快だった」
”何か”は哲哉を投げた。
自慢の怪力で洞窟の外までぶん投げた。
哲哉は首に掛けてるお守りを握りしめる。
そして地面にぶつかり、木々にぶつかり、ゴロゴロと転がり、頭を強く打った。
洞窟の中で”何か”は暴れて、あちこちに穴を開けて夜空が見えるようにした。
月の光があちこちから照らされて、その中でじっと前を向いていた。
すると琵琶の音が洞窟に鳴り響き、襖が現れてそこから無惨が現れる。
「あの小僧は何処だ?」
確実に怒ってるのがわかる。
”何か”の体が呪いで縛られる。
しかし、そんな事はもう些細なことだった。
「洞窟の外に捨てました。今どこにいるかは分かりません」
「なぜ、早く食べなかった」
「もう疲れました・・・だから見届けたのです。貴方もまた運命に縛られる者だ」
”何か”の一言に無惨は顔を歪める。
「運命だと!?運命とは常に私を中心に回るのだ!現に私は1000年もの間、生き続けている!」
「それもやがて終わる・・・この世に永遠不滅などない。ないから永遠不滅なのです・・・この血鬼術はあくまでも運命を見る為の物。運命を操る物ではない。この因果岩に写るのは写された者の行動による結果。そう足掻きの結果だけ。簡単には行かない。やっても変わらない結果が写る事が大半。しかし、少年のように限界を越えた者の足掻きは全てを変える」
延々と話す”何か”に対し、無惨がキレる。
「黙れ!その耳障りな能書きを止めろ!何が運命だ!何が変えるだ!?こんな岩など!」
無惨は自分の顔がある岩を壊す。
収束されるとまた無惨の顔が浮かび上がり、それどころか黒死牟まで浮かんでくる。
「結果は変わりません・・・貴方の大好きな不変ですよ」
「・・・もう良い・・・恩情で生かしておいたのに役立たずが・・・」
「結構です」
”何か”は刀を取り出す。
それはかつてこの場所に来た鬼殺隊を殺して奪った日輪刀である。
「では、さらば。運命に縛られし我らが王よ・・・恐らく自らの運命を2度と悟れないと思うがその運命に幸あらんことを」
”何か”はそのまま自害しようとするが無惨がそれを止める。
「そうはさせん・・・ムカつくが運命は私の物だ」
”何か”は笑みを浮かべる。
「詰めが甘いですよ・・・それに・・・もう太陽は登りかけてます」
無惨はその言葉に反応し、洞窟の外に目をやるともう朝日が昇ろうとしていて空が明るかった。
「鳴女!」
無惨が叫ぶとまた琵琶の音が鳴り響き、障子が”何か”と無惨の足下に現れる。
開き、2人が落ちて一瞬だけ無惨は笑みを浮かべるが、2人が障子の下に落ちるよりも早く太陽は昇り、あちこちの穴から”何か”に直接光が照らされて落ちるよりも先に何かは死んだ。
無惨に対して笑みを浮かべたまま死んだ。
ドンと無限城の床に落ちる火傷だらけの無惨。
「(くそが!!!不味い、すぐにアイツを殺さないと・・・鳴女、すぐに私を戻せ!)」
「(無惨様、それは出来ません。あそこは既に太陽が昇っております)」
「(なら、あのガキを!)」
「(どのガキでございましょう?それにどこにいるのですか?)」
無惨は思い出した。自分が”何か”に経由されて送られてきた情報に哲哉の姿はあってもどこに行ったのかまでは分からなかった。
その日の晩、無惨は鳴女に命令し、辺りをアチコチ回ったが誰も見つける事が出来ず、唯一の手掛かりな明悟のお守りも血塗れの状態で落ちており、無惨は苦々しい思いをしながら、そのお守りをぐしゃぐしゃになるまで踏んづけていた。
●●●
”何か”に投げられた哲哉は目を覚ました。
傷は塞がっていた。
喉も手も元通りに治っていた。
火のエルが彼を助けたのだ。
「あれ?ここどこ?・・・俺は・・・誰だっけ?」
しかし、記憶を失っていた。
哲哉は辺りを見回すとお守りが落ちていた。
明悟のお守りだ。
「”津上明悟”?」
哲哉はお守りを持って歩くが何をすれば良いのか、どこから来たのか、そしてどこへ向かえば良いのか分からず、頭をボーっとして歩き続けた。
そしてその時にお守りを落とした。
哲哉は拾うか迷ったが、自分の血で汚れていた上に何のお守りかも分からないのでそのまま放って置いた。
町に出て、どうしようかと迷うがどうすれば良いのか分からないので哲哉はそのまま町外れにある誰も居ないあばら屋の外に歩き疲れたので座った。
道行く人が色々と哲哉を見るがそれで終わりであり、誰も何もしない。
夕方で夜になりかけ、腹も鳴り響く。
どうすれば良いのか分からない哲哉はとりあえずそのまま眠って明日考えようと息をゆっくりし始める。
「どうかしたのですか?」
哲哉の前から声が聞こえてくる。
哲哉が目を向けるとそこにはまだ若い頃の産屋敷耀哉がいた。
「誰?」
「私の名前は産屋敷耀哉です。もうすぐ夜ですがどうかしましたか?」
耀哉の言葉に哲哉は何も返さない。
ただ、腹の音が盛大に鳴る。
「耀哉様~!!」
「あ?」
「げっ!」
哲哉が突然声がした方に目を向けると隠士が走ってくる。
呼ばれた耀哉は嫌そうな顔で見る。
「耀哉様!また私達を撒いて逃げて!鬼に出くわしたり、悪漢に拐われたらどうするつもりなのですか!?最近では男の子でも拐うとんでもない奴もいるのですぞ!?」
隠士の言葉に耀哉は耳を塞ぐ。
「またそんな耳を塞いで!良く聞かないとお館様にまた叱られますぞ!もう少し、自覚をキチンとしてくれませぬと、私の心臓が・・・」
「そんなことより・・・」
「そんなことより!?この私の心臓をそんなこと!?」
「この子が・・・」
耀哉は哲哉に向かって目を向ける。
「君、どうかしたのか!?名前は!?親は!?」
隠士は哲哉を認識するとあれこれ聞いてくる。しかし、哲哉には答える事が出来なかった。
「早く帰ったら?」
「君はどうするの?」
哲哉がそう言うと耀哉が返す。
「関係ないだろ?」
立ち上がり、去ろうとする哲哉。
しかし、耀哉が手を掴んで止める。
「危ないよ!鬼が出るのに!せめて家まで送らせて!」
耀哉の言葉に哲哉は遂に我慢の限界が来たのか勢い良く睨み付けるが真剣な眼差しをして確りと見てくる耀哉に黙る。
「家は無いし、親は知らない・・・何も知らない」
「?なら、どこに住んでたの?」
「覚えてない・・・何もない・・・」
耀哉と隠士は顔を見合わせる。
「なら、私の家に来ない?安全だよ!」
「ほっといてくれ」
耀哉の手を振りほどいて、哲哉は歩く。
腹の音を鳴らし続けながら、
「私の家に来れば美味しいご飯が食べられるよ」
耀哉のその言葉を聞いて哲哉は止まった。
腹は本当に減ってるし、行く当てもない。
さっき、断ってたのは単純に体に染み付いた素の性格が強い。
しかし、本当にどこに行っても行かなくても何も無いので哲哉は耀哉の方を向く。
「行く」
「良かった、君の名前は?」
「津上・・・明悟・・・」
哲哉・・・いや津上明悟はさっきのお守りの名前を言った。それが自分の名前だと思ったからだ。
こうして、沢木哲哉は津上明悟になった。
津上明悟は死亡する運命にあった。
しかし、”何か”は言った。
明悟の因果岩の先に上弦の弐の岩がないと、そう童磨の死は元々、運命になかったのだ。
運命は変わったのか、それとも変わってないのか、
初めて出会い、そして親友になった明悟と耀哉。
2人の運命がどうなるのか誰にも分からない。
運命の結末まで後、3ヶ月。
というわけで駆け足ぎみですが、津上明悟の本当の始まりはこんな感じです。
作中での鬼・・・元上弦の弐ですが名前は考えてないです。書く前に原作を読んでて思ったのが下位の十二鬼月が上位に挑めるあのシステムって絶対にやられたら喰われるか殺されると思いますが、生き残るとしたらどんな血鬼術だろう?と思って書いたのが”何か”です。
因みにこいつは千才を越えてます。
個人的な裏設定でありますが、元産屋敷家の人間で無惨が最初に殺して鬼にした存在です。
ヤバイな・・・いくつか話が作れそう・・・
これ以上設定を考えるとまた作って無駄に長くなると思うので止めときます。
批判感想はご自由にどうぞ。