ではどうぞ
チュンチュンと朝から雀が鳴く。
明悟は体を伸ばしながら起き上がる。
本当はこのまま、バン!っと障子を開けて朝日を全身から浴びたいが、生憎とそうはいかない。
鬼の禰豆子がいるのだ。
朝日を部屋に入れたら、絶対に禰豆子は死ぬ。
明悟は細々と部屋から出て浴びようと思って、起き上がると部屋の中は凄い事になっていた。大量の切り傷にあり、善逸が頭に大量のタンコブを作りながら失神していて、炭治郎も大量にタンコブだらけだった。
因みに禰豆子は箱の中に戻ったのか、いなかった。
明悟は禰豆子の入ってる箱に近づく。
「禰豆子ちゃん、いる?」
箱の外から尋ねる明悟。
するとカリカリと壁を引っ掻いてる音がなり、とりあえず禰豆子の所在の確認は取れた。明悟は2人から事情を聞くかどうか迷ったが、止めて先に朝日を浴びる事を決めた。
部屋を出て、玄関に行き、草履を履いて庭に出る明悟。朝日に朝の暖かさ、それに太陽が上っていない為に少し残る涼しさ、明悟は朝が好きである。昼も夜も同じように好きだが、それでも朝が好きである。新たな1日1日ずつ進む人生、それらを感じられる朝が好きである。そして明悟は生きる事が美味しく感じる。
何を持って生きるのが美味しいかはわからないが明悟はそう感じるのだ。人と関わってもそう感じる時がある。
けど、そう感じる人間はあまり鬼殺隊にはいない。
皆、不味く感じてしまうのだ。
何故なら鬼殺隊は呪われてる。
鬼に呪われてる。
鬼に身内を殺された者、身内が鬼になってしまった者、様々な境遇の者がいるが、非常に不本意ながらも鬼への復讐心によって生きてる人間が多い。
絶対に彼らは認めないが、彼らは鬼によって生かされてる。
明悟は不味いと思いながらも羨ましかった。自分の人生は何の味もしない。
不味いと感じなければ美味しいとも感じない。
酷く無価値な人生である。
輝哉と再会した時にその趣旨を言ったら、輝哉ではなくあまねにえらい剣幕で激怒された。
そりゃ、無惨の呪いで苦しんでる輝哉に対して言っていい言葉ではない。あまねが激怒するのも仕方なかった。輝哉からは何も言われなかったが暫くの間、会話をしなかった。
生きる意味がなく、自分の人生が無駄だと思ってしまう明悟。
その無駄な人生の量すらも決められて無駄に出来ない輝哉。
彼らの仲直りは別居暮らしと交換日記から始めた。互いに違う場所にすんで毎日日記を書いて交換しあう。
但し、絶対に家の中で終わらないようにした。毎日何処かへ行って感じたままに書いた。明悟は最初どう書けば良いか分からなかったが、段々と書くのが楽しくなった。毎日、自然を人を流行を楽しんで書くようにしたら明悟は漸く自分の人生が美味しくなった。自分の生きてる意味は分からないがそれで輝哉が楽しんでくれて喜んでくれた。明悟にはそれが堪らなく嬉しかった。暫くして明悟は輝哉に謝罪してアギトの力を見せた。
それは明悟が輝哉の為に戦うと決めた瞬間でもある。
輝哉はその謝罪と決意を受け入れた。
そして根本的に何かを恨むと言う事が出来ない明悟に鬼の被害者がいる所にわざと送って決意を奮い起たせるようにした。
明悟もそれを知ってて受け入れた。何故なら明悟にとって生きるとは輝哉なのだ。1度で良いから輝哉と一緒に長旅をしたりしたい。
2年でも3年でも何年でもいつまでも良いから一緒に生きたいのだ。
こうして彼らは絆を深めあった。
以来、彼は毎日が美味しいと感じる。特に朝は格別だった。
人生の美味しさを感じる明悟。そんな中で藤の家の中が煩くなる。炭治郎達が起きたのだろう。善逸の昨日から続く恨み節と伊之助の元気あふれる声、炭治郎の生真面目な声。全てが美味しかった。
明悟は人生を一緒に美味しく感じる為に家の中に戻った。
●●●
炭治郎が実力行使込みの方法で善逸の誤解を解くと今度は異様に炭治郎にゴマを擦ってきたため、炭治郎に気持ち悪がられるも平然と禰豆子とお近づきになろうとしていた。明悟は良くやるなぁと思いながら、味噌汁を飲んでいた。
伊之助は明悟のアギトの力を見たがってたが朝御飯を済ませたらと言ったら、秒速で食って外に行った。
1日やそこらで骨折が治るわけでもないので炭治郎も善逸も伊之助も暫くの間暇になった。明悟は任務があるからお別れかと思ったが、鎹烏からは何の通達もなく、問い質したら、暫くは炭治郎達と一緒にいろと何の事やらわけが分からなかったが、禰豆子関係だろうと思った。と言うかそれ以外に理由らしい理由が無かった。
まぁ交換日記しかり、輝哉の行動は意外に上手くいく事が多いから別に良いかと思った。
朝御飯をゆっくり噛み締める明悟。
炭治郎や善逸が終わってもまだ食べていた。
量も多いが兎に角食べるのが遅い。
炭治郎や善逸が食べ終わり家から出て待ってると暫くして明悟が家に出た。食事時間は一時間以上。
物の30秒位で食べ終えていた伊之助は頭に怒りマークを浮かばせながらイライラしていた。これには炭治郎も一緒にイライラして善逸もイライラしていた。
炭治郎も善逸もいくら一緒に食べるのが好きでもこんなにゆっくり食べないからだ。しかも人が待ってたら急いで食べて合わせるのが普通かも知れないが、明悟にそれは出来ない。やるつもりもない。だって折角美味しい御飯をゆっくり味わえないのは嫌なのだ。
絶対にそれだけはやりたくないのだ。
家の外に出るとイライラしてる3人が明悟に近づいた。
「明悟さん!遅いです!」
「遅いよ!どんだけ待たせるの!!?」
「番井明治!とろくさいぞ!」
「ごめんごめん、ゆっくり味わいたくってさ。今度は気を付けるよ」
3人はその言葉を聞くと離れるが、明悟のこういう場合の気を付けるは数分位で全然変わらない事を知らなかった。
●●●
明悟は体を大きく伸ばして、ベルトを出現させる。
そして、右手を伸ばし、左手は左腰に当てる。
「変身!」
両手を前に出してクロスしてからベルトの両脇に着いてるスイッチを押す。
すると胸から徐々にアギトの姿になっていき、アギトになった。
炭治郎は2回目に見る変身に驚きこそすれ、そこまでだった。善逸はアギトの変身に悲鳴を上げてビビっていた。伊之助は変身に興奮していた。
「これが基本的な姿かな?」
「えっ!?何!?急に人が変わったし、音も変になったんだけど、怖!!」
「変にってどんな風に?」
「子守唄みたいだったのが、デデン、デ、デデンってすんごい聴いたことがない音になってんだけど!」
「祭りの太鼓かな?」
「もっと煩い」
祭りの太鼓よりも煩い音って何だよと明悟は内心考えるが分からなかった。
「すげぇ!すげぇ!こんなもん見たことねぇぜ!おい!俺と闘え!」
「言うと思った。嫌だね」
「じゃあ、此方から行くぞ!」
伊之助は明悟の話なんて聞かずに突進する。日輪刀を持って斬りかかってないだけましだが、明悟にとってはめんどくさい事、この上なかった。
軽く対処しようとして拳を振りかざすもいくら本気の攻撃でないとはいえ、それを軽々避けていく伊之助。
これには理由があり、まず第一に明悟は手加減して攻撃してる。何故なら本気で殴ると死にはしないと思うが骨折が悪化するのは目に見えていた。
次は戦い方だ。
伊之助は体を低くして攻撃する為に非常にやりにくいのだ。勿論対処出来ないわけではないが、明悟は折角の機会だから、この際もう1段階変身すると決めた。
右腰のスイッチを押すとベルトが赤く染まり、右腕と体が変化した。右肩が隆起して赤くなり、体も赤くなった。
仮面ライダーアギト フレイムフォームである。
「色が変わったからなんだってんだよ!」
伊之助が猪突猛進に突っ込んでくるが、明悟は軽く避ける。伊之助の厄介な攻撃を避けて避けて避けまくる。イライラしながら、攻撃していく伊之助。
「避けんじゃねぇ!」
「いや、普通避けるよ」
攻撃を速くするも全く当たらない。これはフレイムフォームの特性の1つである。ストームフォームが風を起こし、速く動けるのが特性ならば、フレイムフォームは炎を操り、超感覚で敵に対応する特性がある。その超感覚は呼吸で言うところの透き通る世界に匹敵する。
伊之助がどんだけ、攻撃しても当たらずに遂にイライラが頂点に達して大振りの雑な攻撃をする伊之助。明悟はそれを避けて何事も無かったかのように流れるような動きで伊之助の首に手刀を当てて気絶させた。
変身を解く明悟は頭を欠いて欠伸をする。
「君達もやる?」
「すみませんがご遠慮します!」
「は?やるわけねぇだろ?俺は弱いんだぞ?あんたと戦ったら死ぬわ!」
炭治郎と善逸はアギトの力に畏れていた。
そりゃまぁあの煩い伊之助を一瞬で気絶させたのだ。これで反応が変わらなければ2人とも昨日のめんどくさい状況は物の数分で終わらせていただろう。
●●●
昼御飯前には伊之助も起きてきて、また勝負勝負と言ってきたが、明悟は相手にしなかった。それでもしつこかったのであばら骨が治ったらやると言ったら、大人しくなった。人の体を鍛えるには鍛えて鍛えて鍛えるしかない。普段から半裸で鍛えられた体の持ち主である伊之助も流石に怪我を治さないと闘わないと言われたら、治す方に集中したようだ。
明日まで持つかはわからない。
炭治郎はまた善逸に追い掛けられて鉄拳制裁で沈めていた。善逸はタンコブだらけになって気絶している。
「そう言えば、炭治郎君も善逸君もタンコブだらけだったけどどうしたの?」
「実は、善逸が襲いかかってそれで何を言っても聞かないから頭突きで沈めようとしたら、全然効かなくて効くまでやったら、俺もフラフラになって一緒に倒れたんです」
「善逸君、あんなに炭治郎君の頭突きを怖がってたのに恐ろしい位に丈夫だね」
「俺の頭突きにここまで耐えたのは善逸が初めてです」
明悟は単純な丈夫さなら3人の中で一番なのではと思いながら、沈んでる善逸を見ていた。
そんな時に襖が開く。
老婆がいた。
「鬼狩りの皆様、昼食の御用意が出来ました」
老婆の言葉に飛び出した伊之助。
明悟はその様子に冷や汗を欠く。
「炭治郎君申し訳ないけど、伊之助君を止めてくれないかな?」
「どうしてですか?」
「多分、善逸君の御飯を食べるかも」
炭治郎は未だに失神してる善逸を見て、伊之助を止めに行った。
明悟は善逸を運び、水場に行って水で顔を濡らして起こす。
「え?何?え?本当に水を被せたの!?」
「早くしないと伊之助君に昼御飯を食べられるよ」
「なぁぁぁぁ!!!!俺の昼御飯!!」
善逸は昼御飯目掛けて描けていった。
明悟は元気だなぁと思いながら、自分も向かって行くとあれ?善逸君、寝てたのに状況を理解してる?と不思議がったが早く昼御飯を食べたかったのでこの事はすぐに忘れた。
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それから、1ヶ月半の間、彼らは寝食を共にして無事に完治した。
唯一何も怪我をしてなかった明悟は流石に休みが長すぎると思って1週間位して輝哉に直接連絡をしたら、本人(代筆あまね)から炭治郎の監視を言い渡された。
楽だし、炭治郎君は大真面目で禰豆子も優しくて穏やかだったので了承した。
その間、明悟は自身の読書好きを活かして炭治郎や善逸や伊之助には朗読をした。伊之助は最初は聞く耳持たなかったが、選んだ推理小説の朗読が気になったのか聞くようになった。次に選んだのは演劇「ハムレット」だった(大正時代には既に翻訳されてます)
炭治郎は復讐の為とは言え、自分を慕ってくれるオフィーリアを無下に扱ったことに憤慨して、善逸は慕ってくれるオフィーリアがいることにとてつもなく嫉妬して、伊之助はさっさと復讐をしないハムレットにイライラしていた。
(あれ?この戯曲、結構良い話なのに何故?)
明悟は歴史的な名作がこうも受けが悪いことに悩むが人それぞれとして次の話で挽回した。
それは父親の為に頑張ってた1人の江戸を追われた男が素流と言う武道の道場の師範に拾われて師範の体の弱い1人娘と恋をするが仲の悪かった剣道道場の奴等が毒を井戸に投げ込んで師範と娘を毒殺し、怒り狂った男が剣道道場の人間を惨殺して何処かへ消えてしまう話だ。
元々は江戸時代に実際に会った事件として記録されてたが、余りにも荒唐無稽過ぎて明治に入ってから作り話になってたのが書籍化された話だ。
炭治郎はその男の辛い顛末に涙し、善逸も不幸が異様に続く物語に胸が苦しくなり、伊之助も復讐を果たしたとして何もかも無くなった男に言葉に出来ない感情を抱いていた。
明悟もこの主人公は好きである。
何処までも不器用で愚直な姿に共感し、憐れとしか言えない顛末に同情し、何も無くなった事に涙した。
明悟には何故かは分からないがこの物語が嘘ではなく本当に会った事だと思えた。
江戸時代の話なので本当であっても男は“人間ならば“もう既に死んでいない。
願わくはいつか会いたいと思った。
こんな風に彼らの一時の日常は過ぎていった。
アギトの説明回をするつもりが一瞬で終わっちゃいました。
まぁ、設定の説明でしかないのでしょうがないですね。
次回はいよいよ山に行きます。んでオリジナルの展開を入れます(勿論、鬼滅の刃の世界観や今後の流れを思いっきり変えるような事はする気がございません)
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