明悟はほとほと困っていた。
ここ最近ではかなり珍しいくらいに困っていた。下弦の弐と遭遇した時よりもめんどくさい状況になった。
「では、津上明悟。掛かってきなさい」
岩柱の行冥が自分の武器の鎖斧を持って鉄球をブンブンブンブン振り回してる。あまりの力強さと速度に少しその鉄球に向かって風が引っ張られてる。
明悟はほとほと困った。
ー少し前ー
明悟は叫び終わると、耀哉に詰め寄っていた。
「耀哉、何言ってんの?」
「明悟の事も言ったし、そもそも明悟は柱としての条件の1つの鬼を50体以上倒す条件を優に越えて、150体倒してるじゃないか。8年で」
「いや、だから柱なんてめんどくさいのやりたくないって言ってるじゃん」
「そうだね。だから今の柱達が居るんだけどね」
「あ、それを言ったらダメ!」
明悟が耀哉の口を抑えるが、時は既に遅く。
柱の全員が明悟に詰め寄っていた。
中でも一番長く柱をやってる行冥が凄い威圧感を放つ。
「それは一体どういう事でございましょうか?」
明悟は耀哉から手を離した。
「明悟はこう見えて8年も鬼殺隊で所属してるからね。前の柱達が引退すると柱になるように言ってたんだけど、めんどくさいってずっと言ってね。それにアギトの力もあるからね」
「アギト?」
「明悟の異形の力だよ。夢の中でそう言われたんだって、確か黒い短髪の人からってそれで明悟の次に柱に相応しい人を柱にしてたんだ」
「お館様、それは何時から始めました?」
「行冥が柱になってすぐだよ。行冥も明悟も同じときに鬼殺隊に入ったからね。まぁ明悟は1ヶ月ぐらい遅れてだけど」
他の柱が一斉に明悟を見る。行冥は鬼殺隊の中でもかなりの古参であり、現柱の中では最古参で最年長。そんな行冥と明悟がまさかの同期とは最低でも8年以上は所属してる事になる。
「勿論、柱は9人と言う決まりがある。しかし、明悟の上げた実績はその決まりを凌駕しつつある。僕の代限定だけど明悟を10人目の柱として認めてくれないだろうか?」
「「「「「「「お断り致します」」」」」」」
無口な義勇と無一郎以外全員が明悟に柱と同等の立場を与えるのに反対した。
そりゃそうだ。
行冥以降の柱が全員明悟がめんどくさがって放棄した立場のおこぼれと言われれば腹が立つ以外に選択肢はない。
因みに声明を出してない義勇と無一郎に関しては、無一郎はどうせ忘れるから良いやと思い、義勇に至っては内心自分の変わりに柱になって貰う気まんまんである。
まぁ声を出して無いのでそれが皆に届くことは無いが・・・
「ダメかい?」
「お館様の命でも賛同できません。自ら柱としての役割を放棄し続けてきた者に責任ある立場の柱を名乗らせるなどもっての他です」
「耀哉・・・あの本当にさぁ勘弁して、行冥さんの言うとおりだよ、これ以上の地位は要らないから」
「明悟も柱になればその性格も良くなると思うんだけどね」
「それが本音?俺の性格のせい?」
耀哉は目が全く見えない盲目の筈なのに明悟に顔を向ける。不気味に明悟と輝哉の目が合う。
「忘れもしないよ。明悟と再会して大喧嘩した後、明悟の遠慮が無くなって、ある日大工をしてて私も経験にとやって鋸を持って木を切ってる時に鋸自体を壊した時の明悟の不器用って悪気のない煽りは」
「いや、不器用だったじゃん。しかもムキになって鋸を2本も折った上に、血へど吐いてたし」
「他にも冷奴の件についてもまた煽ったしね」
「いや、あれもムキになった耀哉が悪い。しかも絹ごし豆腐取れなかったじゃないか」
「いや、木綿豆腐の時に煽った明悟だよ。それに12の時の羽子板も明悟が私の頭にわざと当てたからじゃないか」
「だから違うって、それにそれは中盤の1回で最後の方は耀哉の失敗が多かったじゃないか、しかもその後やけ食いして腹壊してたじゃん。それにその前の恵方巻の時なんて耀哉だけおにぎりになったじゃないか」
「私はああいうのが好きなんだ」
「ただの不器用じゃないか、それに恵方巻に関しては耀哉の方からやろうって言ったじゃん。てか話を反らすくせは相変わらずだな」
「明悟もその煽るくせは相変わらずだね。絹ごし豆腐を箸で取れないからなんだい?匙で掬えば良いだけだよ」
「お前がいい始めたんじゃないか」
互いに互いが捲し立てるように相手の欠点を言っていくが互いに遠慮が一切無いため、かなり強い口調で丁寧な言葉で話してる。
「お父様に明悟叔父様、申し訳ありませんが漫才をやってる時ではございません」
ひなきが皆の代表として2人の口喧嘩を止める。
「柱の皆様、申し訳ありません。お父様と叔父様は1回喧嘩すると1刻ほど延々と喧嘩を続けて喧嘩別れしてしまうのです」
呆然と見てた柱達が再び意識を戻す。そりゃ人格者な耀哉と真正面から喧嘩できる人間など見たことがない。ついでに尊敬してる耀哉の不器用話も聞いたことがない。あまりのいつもとのギャップに柱全員が固まってた。
「では明悟に柱と同等の権限を与えるのに賛成の者は手を上げて欲しい」
「いや、手を上げる奴はいないだろ」
すると手が上がった。
上げたのは水柱こと義勇だった。
その事に対して明悟は本気で頭を抱えた。何故にめんどくさいのを回避したいのにしかも現柱の殆どが反対の意思を取ってるのに何故、接点も縁もない明悟を柱と同等の権限を与えようとしてるのだこの水柱は?
「富岡さん・・・」
「「富岡~」」
「それは派手にねぇだろ」
しのぶと義勇が嫌いな小芭内と実弥に天元は義勇の行動に呆れ果てる。
「富岡さん、そんなんだから嫌われるんですよ」
「俺は嫌われてない」
「いや、義勇君。空気読もうよ。俺はそういうの向いてないんだって」
「では、私に1票入ったね。しかも現柱の義勇が言ってるんだ」
「たかが、1票じゃねぇか」
「されど1票だよ」
「お館様、1票では納得いきません」
「では明悟が権限を得るのにどうすれば納得できる?」
「津上明悟が柱に相応しいと証明できれば納得します。ここで私と津上明悟の一騎討ちを望みます」
「え?」
時は戻り、こうして明悟と行冥の一騎討ちになったのである。
ブンブン振り回してる鉄球に明悟は本当にめんどくさそうな顔をした。明悟が柱になろうとしなかった理由は単純に会議云々がめんどくさいからとこの力の関係上他の隊士とそこまで親しくなれなかったからである。なれたのは炭治郎や善逸、伊之助の他に死んでしまった“彼女“ぐらいでそれ以外とは基本的に恨まれたり、憎まれ口を叩かれたりと仲良くはなれなかった。
そういう理由もあって断ってきたのに何故にこんなややこしい状況になったのか理解できなかった。
しかし、対面してる行冥もやる気満々で他の柱も集中して見てる。
明悟は覚悟を決めてベルトを出現させる。
「変身」
無茶苦茶にやる気の欠片もない変身の声を出して両側のスイッチを押してアギトになるが、流石に本能が優先されるアギトになると先程までとは売って変わって全身から気迫が出て空気が張り摘める。
「先ほどとは違う、それがアギトと言う物か」
「あぁ」
他の柱達も明悟の変身に声を出したり、特別に驚くことは無いが内心驚いてる人間が多かった。とある派手好きは顔には出てないが純粋に良いなと思ってた。
明悟も構えて臨戦態勢に入る。
行冥は小手調べに明悟の顔面に向かって鉄球を放つ。明悟はそれを軽く避ける。
行冥は手斧も投げつける。
それすらも避けるが、すると鉄球が目の前に迫っていた。
「岩の呼吸 肆の型 流紋岩・速征」
鉄球と手斧の縦横無尽な攻撃。
明悟は両手に光を溜めて、鉄球・手斧・鎖全てを打ち返す。
しかし、それでもダメージはあったのか、両手が痺れて手をぷらぷらさせる。
「威力、おかしくない?」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・」
お経をぶつぶつ言い始める行冥。
明悟は逆にどんどん息を殺していって静かになっていく。
そして次に動いたのは明悟からだ。
飛び掛かって殴ろうとする。
「岩の呼吸 参の型 岩躯の膚」
行冥が鉄球を自分の周りのブンブン振り回して明悟の攻撃を相殺する。呼吸によって防御された明悟は弾かれて地面を転がる。
「岩の呼吸 弐の型 天面砕き」
鉄球が上から超高速で明悟の頭に向かって落ちてくる。明悟はそれをギリギリで何とか避ける。明悟、鉄球についてる鎖を引っ張って行冥を引き寄せようとする。しかし、行冥は少し動いただけで引き寄せられはしなかった。行冥も同じ事をやる。するとアギトに変身してる筈の明悟が行冥に引っ張られる。行冥はすかさずに自分の方に飛んでくる明悟に向かって手斧を投げる。飛んでくる手斧を右手で弾いてそのまま右手を行冥に向かって殴ろうとするが、行冥は鎖から手を離して明悟の右手を受け止めた。行冥は左手で持ってる鉄球を投げて鎖で明悟と自分の体を捲き込みながら鉄球が明悟の頭に入るようにする。当たる寸前でそれを防ぐが鎖が巻き付いて逃げられずしかも、行冥に右腕を極められてしまう。
凄い豪腕である。
明悟はストームフォームに変身して体からハルバードを出してそれをそのまま行冥に当てる。行冥は突然の攻撃に予測出来ずに喰らい、そのまま明悟と離れて地面を転がる。
明悟は離れたと同時にストームフォームからフレイムフォームになる。理由は完全に力で行冥に負けたので力を上げて再びやるためだ。それに先ほどまでの闘いで行冥はアギトになった明悟と互角にやりあっていた速さを上げても対処出来ないとは思えない。だったら速さではなく力を上げて攻撃をある程度受けて尚且つ接近戦になる前提で挑んでそれを上回ればいい。
この事を明悟は僅か数秒で尚且つ本能で理解してやった。
行冥はすぐに立ち上がり、また鉄球をブンブン振り回す。この行為には意味があり、行冥は目が一切見えない盲目である。故にこうやって鉄球をブンブンと振り回し風を起こし、僅かな空気の擦れを感じる事でそれを探知機のように使い明悟の位置を把握しているのだ。そして明悟の変身すらも把握している。
ベルトから刀状の武器フレイムセイバーを取り出す。
互いに互いの隙を突こうと慎重に体を操作していく。
そして明悟が行冥に向かって走っていく。
「岩の呼吸 壱の型 蛇紋岩・双極」
鉄球がきりもみ回転して明悟に向かってくる。
明悟はセイバーでそれを弾き、行冥に詰め寄る。
セイバーの鍔のクロスホーンが開き、セイバーが紅くなるほど熱を発していき、やがて業火を出す。
行冥に向かってセイバーを振るうが手斧で防ぐ。
しかし、セイバーの温度は今や摂氏7000度の超高温。
手斧を融かしながら行冥に向かっていく。
たまらず、行冥は鉄球を操作して明悟に向かって飛ばしていく。
やがて手斧を全て焼き斬る直前、明悟はセイバーを止めた。行冥も明悟の行動を受けて咄嗟に鉄球を操り、明悟に当てなかった。
「なぜ止めた?」
「あくまでも実力を見る手合わせの筈、これ以上は無意味だ。どっちかが死ぬ。それにこっちは行冥さんの武器を斬り落とす直前。実力はわかった筈だ」
行冥は完全に斬れる直前の手斧を少し揺らして空気の擦れからくる形の変化を感じとる。
「成る程、確かにこれ以上は無意味。君に柱としての実力が有ることだけは認めよう」
行冥は武器を下ろして、明悟は変身を解く。
その様子に見ていた他の柱達は苦虫を噛み潰した表情が多い中、何名かは明悟の実力を認めた。
柱の中でも最古参で最強の行冥の武器を壊しかけた、そんな芸当が出来る柱は他にいない。
この事実は柱達全員が確かに受け止めた。
「どうしたのかな?」
「明悟叔父様が柱としての実力を認めてもらえました」
「それは良かった」
「いや、耀哉。何も良くないって!」
「それじゃ、他の柱達も明悟を柱として認めてくれるね?」
「「「「「「御意」」」」」」
「いや、御意じゃない!俺は本当に・・・」
まだ喚く明悟の肩に行冥の手が置かれる。
「津上明悟・・・・・受け止めろ」
「・・・・・はい」
とてつもなく威圧感全快で迫る行冥に明悟は逆らえなかった。
「では、任命するよ。私だけの代の10人目の柱」
明悟の元にひなきとにちかが来て、明悟の私物のコートとハットを明悟に渡し、それを着る明悟。
「津上明悟、君を光柱に任命する」
「堅苦しいけど、もう諦めるよ」
深く息を吐きながら受け入れる明悟。
耀哉は笑顔になる。
(やっと、明悟が責任感と立場のある地位に入ってくれた。これで性格が直れば良いけど)
(覚えてろよ耀哉)
内心、性格を改める気が全く無い明悟であった。
●●●
それから、非常に長い会議がやっと終わった。他の柱は平然と聞き、会議に大真面目に参加してたが明悟は初めての会議故に何とかマジな態度で聞いていたが終盤になるとイライラし始めてた。
理由は簡単で腹が減ってイライラしてきたのだ。
会議が長くなると平然と生活習慣を崩すのは日本人の悪いくせと内心口に出さずに真面目にやっていた。
鬼の活発化とそれに伴う被害状況、無惨の目的から今までの行動を元に考察。あーでもない、こーでもないとやってたら遅くなり、朝の7時に裁判が始まって、そのまま戦闘も含めて気がつけば夜の9時。腹が減る処ではなくて減りすぎて減ったと言う感覚が分からなくなるほどだ。
「ではこれにて柱合会議を終わる。皆、ご苦労様」
耀哉の一言で漸く会議が終わった。他の柱はそれぞれ耀哉に一言断りを入れてから立ち上がって去ろうとするが、明悟はさっさと会議をやってた部屋から出ていった。
「あの野郎」
「うむ、凄く失礼だな!よもやよもやだ」
実弥と杏寿郎は明悟に対して声を出す。
他の柱も良い印象はない。
但し、耀哉は違っていた。
「お館様、良いのですか?津上にあんな態度を取らせて」
「大丈夫。寧ろ安心したよ。何時もならとっくに晩御飯の方に行ってるからね。良かった、風邪は引いてないようだ」
「はい!明悟叔父様は至って健康ですね」
「良かったです」
耀哉だけでなく、ひなきとにちかまで明悟を擁護する。と言うよりも普段がどんだけだと殆どの柱が心の底から思った。
そして、さっさと御飯を食べに行って産屋敷家の居間で御飯を食べ始める明悟。
本日の御飯は椎茸と人参の炊き込みご飯にホウレン草の玉子とじ、切り干し大根、アジの開き、そして味噌汁である。
茶を飲んでから食べ始める明悟。
そして手をつけたのは切り干し大根である。シャキシャキともポリポリとも違う不思議な食感を楽しむ明悟。次はホウレン草の玉子とじ。熱々の優しい食感の玉子にホウレン草の玉子とは違った食感。塩で玉子の味を壊さずにホウレン草が旨くなってる。アジの開き、アジにはクロアジとキアジがいる。クロアジは回遊する習性があるがキアジはそうじゃなくてあまり回遊しない。獲られ方も変わっていて、クロアジは網で一気に獲るが、キアジは釣り上げる。またクロアジはそのまま築地に出るがキアジは活け〆して出す。
そうすると鮮度が保たれて旨い。
キアジの開きはやっぱり旨い。
骨も最大限取ってくれてるのでがぶっと食べれる。何気に臭みになってる皮も明悟は意外に好き者で確り食べる。
すると一緒に食べる炊き込みご飯も負けておらずに旨い。椎茸と人参のシンプルな炊き込みご飯だが、椎茸の香りにしっとりとした食感の人参、加えて味噌汁。この旨い炊き込みご飯やおかずと比べるとややパッとしないがこの安定の味が逆におかずや炊き込みご飯をより特別に感じさせてくれる。
一心不乱に黙々と御飯を楽しみながら食べる明悟。
暫くして漸く御飯を食べ終わった。
満足である。
「食べ終わりましたか?」
突然、居間の襖が開かれる。居たのは耀哉の奥方のあまねだ。
「あまねちゃん、久しぶり」
「お久しぶりでございます。お館様からの伝言です。柱の屋敷はもう用意してあるけど久しぶりに会ったから今日は泊まって良いよとの事です」
「やっぱり、最初から俺を柱にする気だったな」
「半年前から決めていたようです」
明悟は耀哉の手際の良さにひょっとしてわざとしのぶとぶつけたのではと思ったが、いやもっと逃げ道が無いようにするかと思ってその考えを捨てた。
「お風呂の用意は出来ておりますのでではこれで」
「ありがとう。あまねちゃん」
あまねは立ち止まる。
「その呼び方は変わらないんですね」
「ごめんね。慣れちゃって」
あまねは溜め息を吐いて、居間を後にした。
明悟は耀哉と大喧嘩をした時からあまねの明悟に対する扱いはこんな物だ。
喧嘩の内容が、噛み砕いて言うなら、
『鬼の呪いとはいえ 生きる理由があって羨ましい』
呪いで苦しんでる人間に言って良い言葉ではない。耀哉からは手は出てこなかったがあまねからは怒号と平手打ちが飛んできた。
仲直りして、鬼殺隊に明悟が入って、耀哉とは仲直りしたが、あまねにはそんな事はなかった。
しかし、出産の時にお腹が大きくなってきてからはほぼ毎日のように屋敷に顔を出していた。勿論、任務は完璧にこなしながら・・・そして無事に出産して明悟は耀哉と一緒に喜んだ。あまねも一緒に喜んだ。
暫くして明悟は過労で倒れた。
激務をやり過ぎた。
あまねは呆れた。
けど、どんなに苦しくても決して人には悟らせずに人と一緒に笑おうとした明悟には少しだけ嬉しくなり、完全に嫌いだった状態からマシにはなった。
以来、好きでも嫌いでもない友人の関係が続いてる。あまねの最近の悩みは子供達が明悟の影響を受けすぎて将来が心配になると言う物である。
●●●
風呂に入り、寝間着に着替えて布団を敷く明悟。
輝哉とあまねには風呂に上がった後に一言言ってから布団を敷き始めたので問題はない。
後は寝るだけと思いきや、まだ襖が開かれる。
底には布団を持った女中さん達がいて、明悟の布団の周りに子供用の布団を5つ敷いていく。
「叔父様・・・今日も良いですか?」
「良いよ」
ひなきとにちかを筆頭に長男の輝利哉、妹達のかなたとくいなの5人の子供達。
全員が明悟に対しての印象が良い。生まれたときからの知り合いで、世話もよくしてくれた。輝利哉に至っては明悟は憧れの存在である。自由気ままで見栄っ張りじゃない素を常に出し続けられる人。
4歳の時に真面目に将来の事を耀哉やあまねに言われてそうだと弱齢ながらも覚悟はしていたが、毎日の教育は厳しかった。それが生きる為の愛情からであるのは知っていたが辛くないわけではなかった。そんな時に明悟に1回だけ泣き付いた時がある。
明悟は厳しく言うことも出来なければ優しく受け止める事も出来なかった。
けれど次の日、明悟は馬を借りてきた。
そしてその日の日中だけ、明悟と輝利哉は馬に乗ってあちこち走り回った。
吹き抜ける風を感じながら、自由を感じた。
明悟は何も言わないし、助言を出さなかったが毎日の教育で息詰まってた輝利哉にこの1日の自由は何よりも嬉しかった。
そしてその晩、愛する耀哉とあまねにもしも無惨の呪いが解けたらと言われて、輝利哉は明悟のようになりたいと言った。
そして、2人から本気の説教を味わった。
それでも輝利哉にとって明悟は憧れであり、優しくて強い兄ちゃんである。
それはひなき達も一緒である。
ひなきは誕生日にキネマに一緒に行って貰った。にちかは歌舞伎にかなたは能でくいなは浅草の祭りに連れていって貰った。
皆が産屋敷と言う家に生まれたことに後悔は微塵も無いが息が詰まらないわけではない。そんな時、明悟は必ず何処かへ連れていってくれて楽しませてくれた。
それだけなく、明悟自身も色々と見聞が深く、子供達を楽しませるのに向いていたし、誕生日の最後の夜に子守唄を歌ってくれたが上手く、ぐっすり眠れた。
翌朝にはもう子供達が起きる前に任務に行っていた為に子供達はその事に気づくまで本気で屋敷中を探し回って任務と知るとちょっとだけ暗くなっていた。
それ以来、4年間。
子供達は明悟が必ず絶対に来る自分達の誕生日を楽しみにしていた。更には柱になれば柱合会議で必ず来る為に早く柱になることも心待ちにしていた。
子供達にとって今日は吉日である。
明悟は子供達と一緒に寝た。
「皆、俺は明日は早いからね」
「はい・・・でもお屋敷には行って良いですよね?」
「耀哉とあまねちゃんが許可してくれればね」
「私は行きたいです」
「私も」
「私も」
「私も」
「全く、またあまねちゃんに怒られるな」
「お母様、嫌いですか?」
「嫌いじゃないよ。けど俺は悪い見本だからね」
「そんな事無いです!明悟叔父様は好い人です」
「そうです」
「そんな事はあり得ません」
「全くです」
「お母様は何もわかってません」
明悟は嬉しく思いながらも子供達の頭を擦っていく。
「ありがとうね。でもお母様の気持ちも考えてあげないと」
明悟の言葉に子供達も静かになった。
確かに明悟は大好きだが、必死に愛情深く育ててくれたあまねも大好きだ。
皆、深い愛情を思い出しながら、ゆっくり落ち着かせていく。
「叔父様、歌を歌って下さい」
「歌?良いよ」
「だったら、恋の歌を歌って欲しいです」
「恋?ならこの曲かな?」
明悟はそう言って歌い始めた。優しくて儚い歌詞が美しい曲だった。
明悟は『ゴンドラの唄』を歌いながら、子供達もそれに聞き惚れながら、眠った。
先日、アギトでG3を着て闘ってた氷川誠役の要潤さんのYouTubeチャンネルでなんと監督の田崎竜太さんと脚本の井上敏樹さんが出てG3ユニットのメンバーと一緒に焼き肉を食べる座談会と言う内容を上げておられて楽しく観ていました。そこで初めてアギトのテーマが「水」って田崎監督が言ってたんですけど井上さんがそれ初めて知ったって言って爆笑しました。
因みに作者も初めて知りましたが冷静に思い出していくと確かに「水」に落ちたり、打ち上げられたり、それを司る敵がトラウマだったりと結構あって中々新鮮でした。やっぱり名作って何年経っても新しい発見があるんだと再確認できました。
この作品ではテーマが「水」と言うのを今さらやっても軌道修正が難しいですし、そもそも作者自身が二、三日前に知ったことをやるのもあれですので、そこは無視します。
さて今回の話ですが、行冥さんが強かった。アギトファンの皆さん、決して明悟が弱いわけではありません。行冥さんがべらぼうに強いんです。原作の描写を見ながら上弦の壱を格下げせずに調整したらこうなりました。
こうしないとシャイニングフォームVS鬼が出来なくなるので、
そして鬼滅ファンの皆さん、行冥さんが弱いわけではありません。アギトも大体こんな感じに無茶苦茶強いんです。2話目で敵を2体倒してそのまま本能的にG3に攻撃していくんですよ?そりゃタフだよ。
そしてアギトにおける不器用にして豆腐の破壊者の異名は耀哉が引き継ぐことになりました。だって完璧すぎて不器用ネタが映えたので、まぁ盲目になってからは不器用の更新は無くなりましたけど、
そして耀哉とあまねの子供達に人気な明悟。
強くて優しい兄ちゃんはZOやJを手掛けた雨宮慶太さんの仮面ライダー像ですね。
あの感じが好きなんですよ。まぁアギト本編の翔一君は強くて優しいけど何処かのほほんとしてるお兄ちゃんですけど。
明悟も出来ればそれを目指したい。
批判感想質問は気軽に送ってください。返信致します。また作者にとっては読者様の反応は嬉しいので是非ともお願いします。
仮面ライダーと名乗らせるか名乗らせないか
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名乗らせる→ディケイド登場
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名乗らせない→このまま