雷の剣士、時間も世界も超越す   作:かーねーごーん

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大正こそこそ話

善逸の元の世界は本来の鬼滅の刃に準拠した世界だが、炭治郎は長生き出来なかった世界。
雲取山まで帰れたが体調が安定せずにいたようで、
カナヲとの間には二児を授かったが我が子の成長を見届ける事なく亡くなってしまった。
炭治郎死後はカナヲは旧蝶屋敷に住まいを移し子育てに専念。アオイ達の支援もあり無事に子供達を成人させている。
残された炭治郎の実家は善逸と禰豆子で暮らしたそうだ。



再演の最終選別

大正?年 深夜

 

 

うるさい程に聞こえてくる音色に目眩がしてくる。

そんな感覚に襲われた善逸はこめかみを押さえながら状況を理解しようと考える。

自宅の庭で落雷を受けて一瞬、気が飛んだと思えば火傷もなく、次の瞬間には暗い森の中に一人佇んでいる。

 

 

「新手の血鬼術?いや、鬼は殲滅した。間違いない、お館様も徹底して調べて確認済みと言っていた。誘拐?こんな爺を誘拐して誰が得をするというね、そもそも、此処はどこよ?なんで森の中?なんで鬼の音が聞こえんの?夢?痛い!夢じゃない!しかも声が高い!若い頃みたい!」

 

 

一人でわちゃわちゃと喋りながら顔をつねったりギャーギャーと騒ぎ、奇行を繰り返す善逸。

その背後から一つの影が善逸に向かって飛び掛かった。

 

 

「肉だ、肉を食わせろー!」

 

 

飛び掛かる影、それは鬼。

 

人を殺め、人を食い、世を乱す悪鬼。

 

それは滅ばさねばならぬもの。

 

普通に暮らす人々にとっては脅威に他ならない。

 

鬼に親しき者達を殺され、涙を流した人は数知れず。

 

だから、排さねばならない。

 

己の携えたこの刀は、鍛え上げたこの力は、

 

弱きを助けるためにあるのだから。

 

 

 

「霹靂一閃」

 

 

攻撃は一瞬。瞬きの刹那。

雷となった善逸を捉えられる者はいないだろう。

鳴柱(なりばしら)…いや、雷柱(いかづちばしら)となった、彼を。

 

 

「は?え、なん…」

 

 

頸をはねられた事すら知覚出来ずに灰になる鬼。

霹靂一閃、鬼がいなくなり鬼殺隊が解散となるその時まで使ってきた善逸の得意とする雷の呼吸の一の型。

若かりし頃のように鬼に怯える事もなく繰り出されたその技は年月とともに洗練され、余計な動きも溜めも無く繰り出せるようになっていた。

 

 

「えぇ~~~…ちょっと待ってよ。これ、本当に鬼じゃん、どうなってんのよ。この状況」

 

 

灰になった鬼を眺めながら困惑を隠しきれない。

何故、鬼がいるのか、山の中にいるのか、隊服を着ているのか。

何がなんだか分からないがとりあえず鬼がいるのなら切らなければと、音を聴く。

年老いても衰えること無く、耳をすませば色々な音が入ってくる。

 

 

「あー、うん。とりあえず行かなきゃやばいな」

 

 

遠くから悲鳴と怒号が聞こえてくる。

音を頼りに善逸は駆け出した。

 

 

 

場面転換

 

 

 

錆兎、義勇、真菰。三人の子供は異形の鬼と対峙していた。体を腕や手で覆い尽くした巨大な鬼。

その鬼から繰り出される攻撃を三人が各々動き回ることによって躱し、切り裂き、いなす。その攻防が十数分と繰り返されていた。

普通に考えればこのような異形の鬼と対峙したならば逃げるのが正解と言える。

何故なら此処は選別の山、藤襲山。

入山する前に行われた説明には鬼殺隊が捕えた力の弱い鬼しかいない筈のこの山で、7日間生き残る事が鬼殺隊への入隊条件である。

そう、本来ならこのような異形の鬼はいない筈なのだ。

 

「義勇!錆兎!下がって!」

「チッ!また地面から腕が!」

「近寄れない…!」

 

真菰が指示を飛ばし、錆兎が頸を切らんと駆け回り、義勇が二人の補助をする。育手、鱗滝左近次に教えを受けて鍛え上げられた三人は同門、同期故の連携を駆使して異形の鬼と何とか渡り合えていた。

 

『ちょこまかと逃げ回るなあ!狐ぇえ!!』

 

翻弄される異形の鬼…手鬼は何本もある手と腕を振り回して三人を捕えようとするが一人を捕まえようとしたら二人に邪魔され、三人同時に相手にすれば隙が出来てしまい接近を許してしまう状況に苛立ちを隠そうともせずに叫ぶ。

 

「誰が捕まるか!馬鹿鬼が!」

 

接近してきた手に対して逆に踏み込んですれ違い様に切り落とし、相手を挑発する錆兎。

 

「水の呼吸、一の型、水面切り!」

 

手鬼が錆兎に意識を向けた瞬間、頸を切ろうとして飛び上がる義勇だが、それに気づいた手鬼が腕を一本犠牲にして頸を守る。

 

「義勇!水の呼吸、水車!」

 

そして空中で無防備になってしまった義勇に迫る手を切りつけて離脱の時間を稼ぐ真菰。

ただ、咄嗟に庇ったために威力が足りず腕を切り落とせなかった。そして、それが仇となる。

 

『おぁああ!!』

「あっ、が!?」

 

手鬼は切りつけられた腕をそのまましならせて真菰に叩きつける。技を出した直後に攻撃をまともに受けてしまった真菰は咄嗟に受け身は取れたが呼吸が上手く出来ず、その場に膝を着いてしまった。

 

「「真菰!」」

『死ねぇ!狐ぇえ!!』

 

上段から振り落とされた手が真菰に迫る。真菰からみればそれはひどくゆっくりとした動きに見えた。それこそ避けれそうな程に遅い動きだ。

視界の端には此方に駆け寄る義勇と錆兎も見えた。

だが、それでも痛む身体は動かず迫る手に何も出来ない。

 

(あ、死んじゃう)

 

一瞬、鬼に殺されてしまった両親が頭をよぎる。

何も成せずに死ぬのか、殺されてしまうのか。

両親の仇を取るのではなかったのか、鬼に幸せを壊された人を少しでも減らすのではなかったのか?

様々な思いが頭を巡る。

悔しさが、悲しさが込み上げてくる。

覚悟はあった、鬼と戦う以上は死と隣り合わせだと師である鱗滝に常に言われていたから。

 

でも、それでも、死にたくない。

 

 

「誰か、助けて」

 

 

眼前まで迫る手を前に、泣きそうになりながらも真菰は呟いた。

その声は小さかった。義勇や錆兎、手鬼にすら聞こえなかっただろう。

 

だが、ただ一人だけその声を聞いた者がいた。

そしてその者は、この絶望を覆すことが出来る者でもあった。

 

 

「霹靂一閃、五連」

 

 

ドン!、と雷が落ちたような音が辺りに響いた。

 

それが五回。

 

音に驚いて目を閉じてしまった真菰。

辺りが静かになり、来るべき手鬼の手も来ないことに困惑してゆっくりと瞼を開けるとそこには信じられないような光景が広がっていた。

 

音に驚いたのか尻餅をついている義勇。

 

刀を構えたまま唖然とした表情をした錆兎。

 

腕と頸を断ち切られて崩れ落ち、灰になっていく手鬼。

 

そして…

 

 

「ふぅー、間に合って良かったぁ」

 

 

白い鞘と黒い鞘の二刀を腰に差して、髪を黄色に染めてその髪に合わせたような黄色の羽織を着た隊士がそこに立っていた。

 

 

 




思いつきが沸いたら続くやもしれませぬ。
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