雷の剣士、時間も世界も超越す   作:かーねーごーん

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大正こそこそ話

本作品の善逸は雷の呼吸を一通り使用することができたりする。
ただ使用出来たのが鬼殺隊が完全に解散後だったことに踏まえて元柱で師匠の桑島や兄弟子の獪岳の技より威力、冴えが悪く使えはしても微妙なモノだった。
なので解散後も結局は霹靂一閃ばかり日々の鍛練として練習したそうだ。


邂逅、それは何を意味する?

大正?年 深夜

 

 

異形の鬼を斬り捨て、善逸は三人を見据える。

あの巨躯の鬼を三人がかりとはいえ相手取る事が出来るとは、見処があるなぁと観察していると宍色の髪に頬に傷のある子供が刀を下げつつ一歩、此方に出てきた。

 

 

「助力、救援に感謝する。しかし、ここは最終選別の場。何故、隊士の方が居られるのかお訊きしたい」

 

 

警戒を解かない少年に善逸は感心した。

そう、選別の山ではどんな状況だろうと鬼殺隊の隊士が救援に来る筈がないのだ。

この山で生き残らなければ鬼と戦うなど出来ない、という考えなのだろうが、それで将来の芽がつぶれてしまってはと考えたのは歳をとって自伝を書いていた時になってからだった。

 

 

「あー、うん。そうだなぁ、なんというか…」

 

 

声を聞いて駆け出し、その勢いでそのまま助けに入ったが、特に考えもしなかったので問われて言葉に詰まる。

と、いうよりは自身の現状すら覚束ない状態なのでそこまで頭が回らない。

 

 

「錆兎、真菰が!」

 

 

もう一人の少年の叫ぶ声に引かれて目を向けると、先ほど殴られた少女が意識を失ったのかぐったりとしていた。

 

 

「真菰!しっかりしろ!」

 

 

堪らず宍色の子、錆兎と言われた子が駆け寄る。

このまま去る事は容易に出来る。この子達は才はあれどまだまだ未熟だ、追い付けはしないだろう。だが…

 

 

(絶対寝覚めがよくないよなぁー…)

 

 

それに、そんな薄情な事をすれば自分が死んだ後に逝った時に、彼方にいる嫁に顔向け出来やしない。

 

 

「ちょいと、ごめんよ。そんなに動かさない方がいいよ。打ち所が悪いとまずいし」

 

 

少し離れた位置、後ろから声をかける。警戒している相手に近付かれたら彼らは尚更落ち着けないだろう。

 

 

「で、でも、どうすれば…」

「落ち着きなさい。此処から見たところ外傷は切り傷だけのようだし、あと一歩で死ぬかも知れなかったんだ。緊張が切れてしまって気を失ったんだと思うよ」

 

 

所感だけどね、と付け加えると二人落ち着いたのか肩から力が抜けて腰を落ち着けてしまった。

 

 

「まぁ、それはそれとして」

 

 

グッと脚に力を込めて一足で跳び、彼らを越えてその先にある茂みに飛び込む。そのまま少し駆けると此方の存在に驚いていた鬼と目が合う。

流れのままに呼吸を深めて柄を握りしめる。

 

 

「な、なんで…ばれて、」

「分かりやすいんだよ、お前達の音は」

 

 

善逸と鬼との擦れ違い様の言葉。

鬼の言葉が聞こえる頃には、善逸はドンッと脚で地面を踏み抜き、瞬時に頸を断ち納刀、駆けた勢いを止める為に脚に力を込めてザリザリと土を抉ぐり、止まった時には喋る者もなく、夜の静けさが辺りに戻る。

塵となって消えていく鬼を確認し、先ほどの子供達の元に戻ろうとして、ふとこのまま逃げようかとも考えたが現状確認の為にもそのまま歩を進め戻る事にした。

それに、気になる事もある。

 

 

(真菰少女が口にした名前…)

 

 

『義勇』

 

 

善逸はこの名前が気になって仕方がなかった。

水の呼吸を使っていた親友の兄弟子であり、痣を発現させた事により若くして亡くなった水柱のあの人と同じ名前。

容姿は暗がりな事もあってよくは見えなかったが頬に傷があるのが錆兎少年なら、気絶していたのが真菰少女、その横にいたのが義勇少年の筈だ。

 

 

「これは、とんでもない事になってるのでは?」

 

 

もし彼が自分の知っている水柱、富岡義勇と同一人物だとしたら彼が少年といえる体躯をしているのも解らないが、そもそも死者が生き返る事はない、あり得ない、あってはいけない。

 

 

だとするならば、此処は本当に何処なんだ?

 

この身に何が起きているんだ?

 

此処は…自分の生きてきた時代なのか?

 

 

「やだやだ、もう嫌な予感が凄いんだけど。もう確信になっちゃいそうだよ、これ。いや、確信しちゃうね。そりゃ形見の刀で?友の型を真似たのは罰当たりだけどさ?この老体だよ?神罰にしては重すぎません?神様?あれ?でも俺、今若いんだっけ?鏡が無いから分からん!分からんことだらけで不安しかねぇよ!誰かー!何とかしてぇえぇええ!」

 

 

ボソリと呟いた言葉が叫びに変わるが、それは誰に聞かれる事もなく、夜の森の中に消えていった。

 




めっちゃくちゃ遅いし、エスケープしそうな本作品に感想をくれる方がいて、鬼滅人気は凄いと感じる。

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