雷の剣士、時間も世界も超越す   作:かーねーごーん

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大正こそこそ話

このお話の善逸は柱になった、と言っていますが他の柱については規模縮小もあって解散するその時まで9人揃う事はありませんでした。有能な隊士達が無惨との戦いで戦死したからです。残された者達で覚悟を決めた者達だけが鬼殺隊に残り、最後まで戦い抜いたそうです。


雷の剣士は出会う

大正?年 明け方

 

 

鬼を討ち、善逸が錆兎少年達の元に戻ると真菰少女は気を取り戻したようで木に背を預けて休んでいた。

茂みから現れた善逸に対して錆兎と義勇が咄嗟に刀を向ける辺り、しっかりと育手に教え込まれて事が活きていた。

 

 

「あ、先ほどの…」

「いやぁ、突然飛び出していってすまないね。ちょっと鬼が此方を見ていたから討伐しておきたくてね」

 

 

三人がホッと息をつく。

手鬼の討伐、距離を保った対応が功を奏したようだ。

若かりし頃の善逸なら其処まで気を回せなかっただろう。だが、今此処にいる善逸はそれなりの年月を生きてきた男だ。子供に対しての接し方もある程度心得ていた。

 

 

「そういえば、俺の名前を名乗ってなかったね。俺は善逸と云うんだ。君達の名前を聞いてもいいかい?」

 

 

表面上は澄ました顔をしているのだがこの男、内心は激しく乱れていて義勇少年の名前が富岡じゃありませんように!と必死に神頼みしていた。

でなければ、自分は過去に戻ったということになり、また鬼退治をしなければならなくなるからだ。

 

 

「あ、名乗らずにいてすみません。真菰といいます」

「俺は錆兎です。助けて頂きありがとうございます」

「俺は…義勇です。ありがとうございます」

 

 

善逸はなるほど、と頷くが内心は複雑だ。

三人とも名乗ってくれたが肝心の名字が解らない。

だが、此処で深く詮索するのは憚られた。

自分の名前、我妻善逸も自身が捨て子だったから名前が無く、自分で名乗るようにした名前だからだ。

彼らもそうなのかもしれない、と思うと聞くに聞けなかった。

 

 

「真菰、義勇、錆兎だね。よし、袖触れあうのも多生の縁だ。君達が良ければ少しの間、一緒に行動しないかい?今は選別の最中だろうけどあんな巨躯の鬼が居たのは明らかな異常事態、其処を隊士である俺が助けたとしても問題ない筈だ。なんせ異常事態だからね」

 

 

善逸はそう提案したあと、音に集中する。

三人のうち義勇と真菰は驚きが少し、あとは安堵が大半といったところだから良し。

だが、錆兎からは不安と不満の音がしている。

何か問題があったろうか?と考えたが思い当たる節もない。

善逸のそんな考えが顔に出ていたのか、錆兎が一歩此方に出てきた。

 

 

「申し出はありがたいと思います。けれど、それでは最終選別を真に乗り越えたと言えないと、俺は考えています。確かに、あの手鬼は異常だったと思いますがここから更に貴方を頼っては、力を当てにしてはいけないと、そう思います」

 

 

きっぱりと言いきる錆兎。

その言葉にハッとして覚悟を決めたのかしっかりとした顔つきになる義勇と真菰。

善逸は錆兎の心意気に感心しつつも、残念に思った。

善逸としては一緒に行動することで信頼を得て義勇の名字、更には現状を少しでも聞き出そうと思っていたからだ。

 

 

「そうか、分かった。君がそう言うのであるならば、俺が無理強いするのも野暮だ。俺は此処で別れるが君達の武運を祈っているよ」

「はい、ありがとうございます!」

 

 

錆兎達に背を向け、明け方の森へと駆ける善逸。

それを背中を見届けた錆兎は後ろを振り返り、義勇と真菰に目を合わせる。

 

 

「すまない、お前達の気持ちも聞かずに俺の気持ちを優先して言葉にしてしまった」

 

 

頭を下げる錆兎。そんな錆兎に義勇と真菰は目を合わせてクスリと笑う。

 

 

「ううん、大丈夫だよ。錆兎が言わなかったら私はあの人に頼りきりになっちゃったかもしれないし」

「大丈夫、錆兎は正しい」

 

 

二人の言葉に頭をあげてありがとう、と伝える錆兎。

気持ちを新たに最終選別に挑む3人が無事に山を下る事が出来たのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

場面転換

 

 

 

最終選別の終わりまで後二日になったころ、明け方の山の麓で待機していた隠の隊員達の前にその男は現れた。

 

 

「あのー、すみません。自分、隊士で善逸と言うものなんですが今、年号はなんでしょうか?」

「は?」

 

 

隠達は困惑していた。

最終選別の山から降りてきたのが選別を受けていた者達ではなく、隊服を身につけた隊士だったからだ。

しかも髪は黄色、羽織も黄色、二刀を佩いた隊士とかなり突っ込みどころ満載の人物なのが困惑に拍車をかける。すわ鬼の血鬼術かと警戒したら年号はなんでしょうか?と聞いてくる。

 

 

「と、とりあえず階級を示してください」

 

 

下手な対応は命に関わると判断した隠の代表格の一人が警戒しつつも善逸と名乗る男に告げる。

鬼なら階級など示せないし、隊士であるなら手の甲に階級が浮かび上がってくるはず。

 

 

「はいはい、階級ですね」

 

 

男が腕に力を込めて『階級を示せ』と口にする。

その言葉に反応して浮かび上がってくる文字にひとまずは安堵した隠達。そして階級を確認しようとして、回りに居た隠はさらに困惑することになる。

 

 

「「「「雷?」」」」

 

 

浮かんだ文字は雷、階級以外の文字が浮かぶのは鬼殺隊においてお館様の次に最高位の存在として存在している柱以外にあり得ない。

 

 

『柱』

 

 

鬼殺隊の中で最高位の称号。

甲の隊士が十二鬼月を討伐するか、鬼50体以上の討伐を達成する事が条件であり、特例でもない限りは「柱」の画数が示す通り9人しか至れない称号だ。

 

そんな称号を示したこの男は柱なのか?と隠達は思ったが場所と状況が困惑を加速させていた。

そう、柱がなぜ藤襲山にいるのか?山から降りてきて年号を聞いてきたのか?

そして、最近は新しい柱が任命されたとは聞いてはいないし、何よりも「雷」の文字から雷の呼吸だと推測されるが雷の呼吸なら代々鳴柱(なりばしら)として任命されているから手の甲には「鳴」が浮かぶ筈なのだ。

そもそも、今の柱には…

 

 

「随分と騒がしいですね?」

 

 

隠達の困惑の外から聞こえた声に全員が顔をそちらに向ける。

ザリ、ザリと砂利を踏み鳴らしながら現れたのは黒い隊服に黄色い羽織を纏い、肩の辺りまで伸ばした髪を揺らしながら開いているのか分からないほど細められた狐目の青年であった。

 

 

「はじめまして、隊士の善逸君。私はお館様から鳴柱を拝命致しています、小金井 修(こがねい おさむ)といいます」

 

 

やんわりと笑顔を浮かべて、自然体でありながら警戒心を一切解かない鳴柱。

そう、隠し達が困惑した理由の1つ。今はいるのだ。雷の呼吸の使い手にして、柱にまで上り詰めた人物が。

 

 

「ちょっと私とお話しませんか?」

 

 

そう言われた黄色の髪の男、善逸はヒクヒクと表情筋を痙攣させながら笑っていた。

 




広げた風呂敷、ちゃんと畳めるかしら?
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