そのシュール過ぎる光景にハジメは引いていた。
目の前には空中に浮遊する下半身と両腕を明らかにただの石材でないであろう素材で作られた物で固定されている金髪でそしてその髪で胸が隠れているだけの少女。
そしてその目の前で見事なまでの DO・GE・ZA をしている武一。
「痛かったんだけど?」
「ハイ、ゴメンナサイ!」
「突然攻撃とか、非常識だと思うんだけど?」
「ハイ、ゴメンナサイ!」
(俺は一体、何を見せられているんだ?)
ハジメはそのシュールな光景に率直にそう思った。
時はわずかに遡る。
サイクロプス2匹を倒した武一はハジメと共にあからさまな封印の施された扉を開けようと意見が一致した。
しかし先程は事前に気付いていたとはいえサイクロプス2匹が門番として配置されていた。
この扉自体に何かしらの仕掛けが施されていないとも限らない。
それこそ、この奈落の底に落ちるきっかけとなったグランツ鉱石に転移トラップの様に。
「じゃあ、触れずに開けるしかねぇじゃねぇか。どうやるんだ?」
「それについては考えがある。念の為、ハジメはそのサイクロプスの死体の影にいてくれ」
「ああ、気味のいいもんじゃないけど分かった」
ハジメが手近なサイクロプスの死体の影に隠れる。
武一はデプスクロウラーに乗り込み、封印扉の正面に移動する。
「武一の奴、あれでどうする気だ・・・?」
そう疑問に思うハジメの目の前で・・・
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
ガトリング砲の弾丸とラピッドバズーカの弾頭が魔法で保護されている封印扉をそれ以上の力で物理的に削って行く。
ハジメは武一がサイクロプスの死体に隠れろと言った意味を理解した。
ラピッドバズーカの爆風やガトリング砲によって砕かれた封印扉の破片が飛び散るからだった。
事実、ハジメの隠れたサイクロプスの死体が吹き飛んできた封印扉の破片で損傷している。
ハジメは損傷したサイクロプスの死体の中から球体の魔石を見つける。
「サイズといい形と言い、これがあの扉の鍵なんじゃねぇか・・・・?」
しかしとっくにその鍵穴とも言うべき封印は砕けており、やがて封印扉の耐久力が限界を迎え、崩壊する。
その際、内部にラピッドバズーカの弾頭が数発飛び込んで行った。
そして現在。
武一は相変わらず少女にDO・GE・ZAしていた。
この部屋にあるいくつかの柱の一部が損壊している。
飛び込んできたラピッドバズーカの弾頭が破壊したのだろうか。
下半身と腕が空中に浮遊する立方体に埋め込まれている少女のいる場所の真下周辺にもそ柱の破片が転がっている。
小石程度の大きさのものもあれば握り拳大の破片もある。
よく見れば少女の髪にも砂粒の様な大きさの破片が所々ある。
「本当に反省している?」
少女が武一に言う。
「アッハイ」
「じゃあ、反省している誠意を見せてもらえる?取り敢えず、私をここから出して」
「ハイ、ヨロコン「待てやコラ」ぶべっ!?」
ドゲシッと土下座している武一の頭をハジメは踏む。
「ハジメ、何をする?」
「いやいやいや、なにこんなあからさまに怪しい相手の言いなりになっているんだよお前!?怪しさMAXじゃないか!」
ハジメは最初この少女が目に入った時、「間違えました」とか「失礼しました」とでも言って扉を閉めたかった。
しかし扉はほぼ粉々に砕かれており、それは叶わなかった。
「悪いな、余計なリスクは避けたいんでね。行くぞ武一」
クルッと踵を返し立ち去ろうとするハジメ。
「ま、待って!・・・利用しようとしたのは・・・ごめんなさい・・・。でも、本当に助けて欲しいの・・・!!」
「助け?こんな地の底で明らかに封印されているようにしか見え「私、悪くない!裏切られたの!」な・・・」
ハジメが言い終える前に少女は自らが裏切られたと主張した。
「・・・・裏切られただと?よし、まずはお前の言い分を聞いてみようか」
「私、先祖返りの吸血鬼。凄い力持っていてどんな怪我をしても、頭を潰されても時間が経てば元通りになる・・・。この力、みんなの為に使った。でも・・・この力は危険でお前は殺せないからって・・・」
「で、封印されたと」
「・・・・・・お願い・・・助けて・・・・なんでもするから・・・!」
「ん?今なんでもするっ「だから空気読め!」ぐふっ・・・・」
再び武一の頭を踏むハジメ。
気を取り直し、ハジメは再び少女と会話をする。
一通りの話を聞き、ガリガリとハジメは頭を掻く。
「あの・・・そろそろ頭を上げてもいいでしょうか?」
シリアスシーンをぶち壊す声にハジメと少女の視線が声の主・・・絶賛DO・GE・ZA中の武一に向かう。
ハジメは(こいつ、まだやってたのか・・・)と心の中で思ったとか。
「う、うん・・・もういいよ・・・まだやってたんだ・・・・」
未だにDO・GE・ZAをしていた武一に少し引き気味の少女の声。
「で、どうするハジメ?」
「どうするって・・・」
「現状俺の使える方法はほとんど爆発が伴う。この封印道具?の破壊は可能だろうがどうしてもこの子に被害が及ぶ。助ける頃にはスプラッター映画みたいになってると思う」
「どうするって、そっちのどうするかよ・・・」
「ん?お前の中じゃ助けるのは決定事項だろ?」
「そうだが・・・・なんか色々ぶち壊しな気がするな・・・・」
そうぼやきながらハジメは錬成で少女の救出に取り掛かる。
その間武一はこの階層の捜索を続行する。
捜索を続行していた武一のレーダー上、ハジメを示す青い光点と封印されていた少女を示す白い光点が隣り合っているそのほぼ同位置に突如として赤い光点が出現した。
「マジかよ!?」
すぐにデプスクロウラーをその場で引き返させ封印部屋に急行する。
結果としては到着寸前に部屋から青い光が数秒だけ見え、デプスクロウラーを降り走り出した時には赤い光天は消えた。
中の様子を見ると巨大な蠍の様な怪物の死骸が転がっていた。
「ハジメ、無事か!?」
「おう、ここにいるぞ!」
すぐに死骸の反対側から声が聞こえ合流する。
「しかし、でかい蠍だな・・・侵略性外来生物を思い出す。1匹だけでよかった」
「どうやらユエの封印が破れた時に備えて仕掛けられていたらしい」
「仕掛けられてたって事は、野生の魔物とかじゃなく人工的に作られたって事か?ん?ユエ?」
「ああ、こいつの名前だ」
「ハジメに付けてもらった」
ピトッとハジメの腕に体を寄せるユエ。
「事案発生?」
「黙れ」
ダンッ!
ハジメは躊躇なく武一にドンナーを一発ぶっ放す。
「躊躇なく撃ったっ!?何をする酷いじゃないか?アーマーが削れてしまったぞ」
「ったく、武一、お前一体どうなってんだ・・・・」
「武一、あなた本当に人間・・・?」
「うわ、ひでぇ・・・」
「気にするな、俺も言われた」
苦笑いしながらハジメが錬成で周囲に壁を作る。
「今日はここでキャンプだ。弾丸をかなり消費したから補充したいし腹も減ったからな」
ハジメは錬成で作ったナイフで巨大蠍の肉を切り取りながら喋りながらとある疑問に突き当たった。
「そう言えば武一、俺達が奈落に落ちたのは同じ日だよな?」
「ん?ああ、橋の崩落で落下したからな。もっとも、俺は川に流されてハジメとかなり離れ離れになっちまったが」
「俺も気を失っていた期間があるから不確実だが、俺達が合流するまで一ヶ月近くは確実にあったはずだ」
「ああ、俺も気絶していたいたし不確実だが、少なくとも一ヶ月近くは経っているな」
「さっきも言ったが、俺は神結晶と神水のお陰で魔物の肉を食っても無事だったが・・・・・お前何食って生き延びた?」
「何って・・・」
ゴソゴソと軍用ポーチを開け、中から一つのアルミ包装に包まれた物を取り出す。
「軍用携行食、レーションだけど」
「一つでいい、くれ!」
「いいぞ」
「マジか!?」
ポイっと放り投げられたそれをハジメはキャッチし、包装を破ると中の固形物に齧り付く。
「う、うめぇ・・・!!」
しばらく前の階層で美味い果物を投げつけてくるトレントモドキから集められるだけ集めていたがしばらくはそれを食べていたが次第に傷み出し、泣く泣く捨ててからは再びクソまずい魔物肉を食べていた。
そんな中、久々の加工食。
ハジメは涙を流しながら食べる。
「な、泣く程か・・・。遠慮するな、まだあるから・・・」
貰い泣きしながら武一はポーチからレーションをいくつか出す。
「ん?ユエ・・・も興味あるのか?」
武一はハジメが夢中になって食べるレーションを興味深そうに見るユエにもレーションを渡す。
ユエはハジメの様に包装を破り、中身に齧り付いた。
「美味しい・・・でも、ハジメの血の方が美味しかった」
ペロッと舌舐めずりをしながらハジメを見るユエ。
「ハジメ、まさかこんなロリっ子に・・・。じ、事案発生!?もしもしポリスメン!?」
思わず無線機を取り話すが返事は当然無い。