はじまりの罪を背負う者達は…魔王達と共にあり 作:五月雨☆。.:*・゜
闇野楓が自分と香織のことを助けに来ているなどとは梅雨も知らない南雲ハジメと白崎香織。
ハジメは、錬成して掘った穴で香織と死を待っていた。
数日前。
ハジメと香織はこの世の弱肉強食の現状を目の当たりにする。
弱き者が淘汰され、強き者が生きるこの世界。
ハジメの片腕は楓が戦闘をした爪思い熊により死んだ。
片腕を無くしたことで香織は泣いていた。
「結局…僕が足を引っ張っちゃって……ごめん、白崎さん」
「全然、足引っ張ってなんかいないよ!」
ハジメの言葉に香織は叫んでいた。
ハジメの言動が無ければ死んでいただろう。
「約束したのに……南雲君のことを守るどころか、守られてばかりだし、守れなかった……。何が治癒師なの……私のほうがよっぽど無能だよ!!」
「違うよ…白崎さんが…いなかったら僕は…あの魔物に…殺されていた…白崎さんが居てくれたから……回復してくれた………感謝しか無いよ…ありがとう、白崎さん……」
「南雲君…う…ん…(泣」
ハジメの言葉でさらに泣き出す香織だったがハジメの背中に抱きついた。
そんな香織を見て、ハジメは、見て見ぬフリしていたことを口にした。
「……白崎香織さん。……僕はあなたのことが好きです」
「…えっ?」
それに対して、香織は泣いていた顔を上げてハジメの顔を見て、首を横に振ると涙を流しながらも嬉しそうに天使のような1番の笑顔で返した。
「……南雲くん……ううん。南雲ハジメくん。私もあなたのことが好きです」
「香織…」
「ハジメくん」
ハジメと香織はお互いの名前を呼び合うとお互いの唇を重ねた。
ファーストキスはレモンの味がするというがこの時の2人は血の味がした。
気絶した2人は水滴の音で目を覚まして自分達に起きたことを再確認した。
ハジメの片腕がないこと。
そして無いはずの左腕に激痛を感じた。
幻肢痛というやつだ。
その時、再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。
それが口に入った瞬間、ハジメと香織は、また少し体に活力が戻った気がした。
「……まさか……」
「……ハジメくんを助けてくれたの?」
ハジメは、右手を水滴が流れる方へ突き出し錬成を行った。
香織はふらつくハジメを支えながら…。
ハジメは再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。
ハジメ達は遂に水源にたどり着いた。
「こ……れは……」
「綺麗……」
2人は知らないが、実はその石は"神結晶"と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。
神結晶は、大地に流れる魔力が、1000年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。
直径30センチから40センチ位の大きさで、結晶化した後、更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。
その液体を"神水を"と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。
欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。
神代の物語に神水を使って人々を癒すエヒト神の姿が語られているという。
ようやくハジメと香織が死の淵から生還したことを実感したのか、
2人はそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。
だが、地獄はこれから始まるのだ。
「((誰か……助けて……))」
ここは奈落の底、2人の言葉は誰にも届かない……。
「((助けて……楓/闇野君…雫ちゃん……))」
それでも、2人は助けを、特に自分が困ったときにいつも助けてくれた親友達の助けを願わずにはいられなかった。
「(どうして僕/私がこんな目に?)」
何度もその疑問が頭の中を駆け巡る。
幻肢痛がハジメの体を悩ませ、香織はハジメを抱きしめて…それから逃れるために水を飲んだ。
そうすることを何度も、何度も何度も繰り返していく。
意識を失うように眠り、苦痛が精神を叩き起す。
しかし神水のせいで体は健康体のままだ。
さらに三日経つ。
一時ピークを迎えた、治まりかけた飢餓感だったが、再び反逆の狼煙を上げてハジメと香織を襲う。
幻肢痛は一向に改善などされることも無く、ハジメと香織の精神を、一滴ずつコップに水を注ぐように少しずつ崩壊させていた。
「(まだ……死なないの/か……あぁ、早く、早く……死にたくない/よ……)」
ついには正常な思考などできるはずもなく、支離滅裂なうわ言を呟くように…。
すでに浸水は飲んでいない。
このままでは死へと一直線だ。
更に更に時間が経つ。
神水の効果は既になく、食料も無い。
このままでは二日と持たずに死ぬんじゃないかと予測される。
極限状態というのは人間の精神に異常をきたす。
度重なるストレス、その根源が彼の精神をドロリしたコールタールのような黒いものへと2人を変えていく。
少しずつ、少しずつ、侵食していくのだ。
「「(なぜ僕/私が苦しまなきゃならない……僕/私が何をした……)」」
「「(なぜこんな目にあってる/の……なにが原因だ/なの……)」」
「「(神は理不尽に誘拐した……)」」
「(クラスメイトは私達を裏切った……)」
「(ウサギは僕を見下した……)」
「(ウサギはハジメくんを喰らった)」
これまでの精神とは別に、黒い感情が生まれていく。
白紙の紙が黒いインクに侵食されるように、どんどん2人は歪んでいく。
無意識に敵を探し、飢餓感、幻肢痛、様々な要因が黒い感情を加速させる。
「(どうして誰も助けてくれないの…)」
「(誰も助けてくれないならどうすればいい?)」
「(この苦痛を消すにはどうすればいいの?)」
ついには、無意識のうちに現状の打開策を考えるようになっていた。
「「(俺/私は何を望んでる?)」」
「「(俺/私は"愛するものとの生"を望んでる。) 」」
「(それを邪魔するのは誰だ?)」
「(邪魔するのは敵だ)」
「(敵とはなに?)」
「「(俺達/私達の邪魔をするもの、理不尽を強いる全て)」」
「(では俺は何をすべきだ?) 」
「(俺は、俺は……)」
ハジメと香織からほとんどの感情が無くなった。
全てどうでもいいこと、と切り捨てたのだ。
「「((殺す!))」」
生に縋りつくための、純粋なる殺意。
この世界の誰よりも研ぎ澄まされた殺意だけが芽生えた。
自身の敵になるならば、それがなんであろうと殺す。
そして、飢餓感から脱出するためには……。
「「((殺して食ってやる))」」
此処に来て、みんなが知るような優しく温厚な南雲ハジメと学校の女神の白崎香織は死んだ。
今此処に誕生したのは、度重なる理不尽が心を鍛えた、生に伴う純粋なる殺意を敵に振りかざす南雲ハジメと魔女と呼ばれることになる新しい白崎香織が誕生した。
すっかり弱ってしまった体をハジメは動かし、神水を犬のように飲む。
香織も同じように体を動かして掌で神水をすくって飲んだ。
飢餓と幻肢痛は戻らないながらも、身体中に活力が戻る。
「「殺してやる」」
ギラギラと光った瞳、獰猛に牙を覗かせ、宣言するようにもう一度呟いた。
あれから、南雲ハジメと白崎香織という人間は昔の南雲ハジメと白崎香織が跡形もなく消滅するほど格段に成長した。
魔物を駆り、血肉を喰らい、その体は別の者へと作りかえられる。
その際に伴った痛みすら耐え、ハジメは知識と魔法を、応用して武器を作った。
大型リボルバー式拳銃、燃焼石だけではなく、固有魔法である纏雷の電磁加速によって銃弾を射出するそれを、"ドンナー"と名付けた。
しかし、ハジメが生産した武器達は、例外に漏れず全てが魔物に牙を剥いた。
特にドンナー、この長身型バレル搭載の大型拳銃に急所を撃ち抜かれれば、ほぼ確実に相手は死ぬ。
あまりの威力に、急所部位とそこを中心に円形の中型くらいの穴が空くのだ。
これを駆使し、ついには宿敵であった爪熊にも勝利を収める。
その後は上階をめざして探索を続けることによって日が過ぎていく。
だが、自然とその足はさらに下の層へと向いたのだ。
そしてついに五十階層過ぎたあたりで、ハジメと香織は運命の出会いをすることになる。
300年前に滅んだはずの吸血鬼の生き残り、自動再生により桁外れの不死性を手にして封印された少女。
少女はハジメに新しい名前をつけて欲しいと頼み、ハジメは名の無い彼女に"ユエ"と名付けた。
彼女の力は規格外で、当代最高と呼ばれるほどの魔法使いだったらしいがいまは大変なことが起こっていた。
「どうして逃げないの?」
現在、ハジメと香織はユエを解放したことにより発動したトラップのサソリと敵対していた。
「何を今更。ちっとばっかし強い敵が現れたぐらいで見放すほど落ちてねぇよ」
「うん、そうだよ。ユエ」
ハジメと香織は言い放つ。
ユエは、ハジメと香織に言葉以上の何かを見たのか納得したように頷ずいた。
「キシャァァァァァァァ!?!!?!!?!??」
「なんだ!?」
突如、サソリが断末魔のような声を上げた。
その声に、ハジメ達はサソリを注視する。
「シャドーリベレーション!!」
どこか聞き覚えのある声と共に、サソリへ防御無視の闇のダメージが直撃する。
「キシィィィィ!!」
「まだ、耐えるのか….......闇の刻印!!ルナティックアサルト!!」
闇の刻印により攻撃力が上がり敵に防御無視の闇のダメージを与えてついでに体力を奪い殺す。
「……こんな所か…17年も封印されていたからな…この力は…まだ慣れないな…」
偶然にも、その影はハジメ達の目の前に着地する。
「っ!...........お前は!」
「嘘っ!」
見覚えのあるその背中に、驚きのあまりハジメは片腕で目を擦って香織も腕で擦った。
此処にあいつ/彼がいるのはありえない。
しかし、現実にはそこにいる。
着ている服、異常に伸びた髪、赤黒い翼は違えど、あきらにその姿は、闇野楓、だった。
闇野楓君の追加して欲しい技能
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夜目
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バッドステータスを受け付けない(呪い等)
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戦い度に少しずつ攻撃力が上がる
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闇の憤怒、掌に赤黒い炎で全て灰にする力