はじまりの罪を背負う者達は…魔王達と共にあり   作:五月雨☆。.:*・゜

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ハジメは、右目の怪我はないことにしますのでご了承ください。


闇の王子は死闘を繰り広げる。

気持ち悪い魔物との死闘した階層から遂に100層目にたどり着く。

ハジメ達はその手前で消耗品を補充しながら雑談していた。

 

 

「遂に百層目か、これでこの迷宮は終わりだといいんだがな。」

 

 

「そうだね、ハジメくん」

 

 

「あっ、忘れるところだった。楓。出来たぞ、ネックレス」

 

 

「すまなかったな、色々注文を付けてな」

 

 

ハジメは「別にいい」という顔をするとまた作業しながら会話する。

特にユエはハジメをずっと見ている。

ユエはハジメが好きなようだ。

作業が終わり楓達は足を進めた。

 

 

「そういえば、楓。覚醒状態にはネックレスがないと出来ないのか?」

 

 

ハジメからの突然の話で楓は困った顔をする。

 

 

「俺のステータスプレートに"四魔幻獣の闇"って書いてただろ?四魔幻獣って言うのは黒の王国が所持していた古代兵器でその中に埋め込まれてた闇が俺の身体の中にあるんだ。

もし、ネックレス無しに覚醒状態になって四魔幻獣の闇を操れば…考えたくも無いが俺は、闇の獣になり世界を破壊するだろう。」

 

 

楓は話終わると無言だった。

 

 

「悪いな、変なこと聞いてな」

 

 

「大丈夫だ。いつかは話さないと行けなかったからな…」

 

 

「ハジメ………楓……香織……………いつもより慎重……」

 

 

「うん? ああ、次で百階だからな。もしかしたら何かあるかもしれないと思ってな。一般に認識されている上の迷宮も百階だと言われていたから……まぁ念のためだ」

 

 

「絶対、誰かは居るからな…」

 

 

「此処まで来たら何があるか分からないからね」

 

 

しばらくして、全ての準備を終えた4人は階下へと続く階段へと向かった。

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。

柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。

柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。

天井までは三十メートルはありそうだ。

地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

 

「(白の王国にいるみたいだな…)」

 

 

 

楓達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。

すると、全ての柱が淡く輝き始めた。

ハッと我を取り戻し警戒する楓達。

柱は楓達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

 

ハジメ達はしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。

二百メートルも進んだ頃、前方に巨大な扉だ。

全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。

特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

 

 

「ここって…」

 

 

「……反逆者の住処?」

 

 

「如何にもって感じだ…」

 

 

実際、感知系技能には反応がなくともハジメ達4人の本能が警鐘を鳴らしていた。

 

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

 

ハジメは本能を無視して不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「……んっ!」

 

 

ユエも覚悟を決めた表情で扉を睨みつける。

 

 

「うん、後一踏ん張りだよ」

 

 

香織は杖を握り込む。

 

 

「此処まで来たら…行くしかないだろう…」

 

 

楓は真・ダークドミネイターと真・ロウブレイクに手をかけて何時でも抜けるよう、臨戦態勢をとる。

そして、4人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

 

その瞬間、扉と楓達の間30メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。

赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

 

ハジメ達、日本組は、その魔法陣に見覚えがあった。

忘れようもない、あの日、ハジメと香織と楓が奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。

だが、ベヒモスの魔法陣が直径10メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は3倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

 

「おいおい、なんだこの大きさは?」

 

 

「……大丈夫……私達、負けない……」

 

 

「私達だって強くなったからいけるよ!」

 

 

「あぁ、殺すだけだ。」

 

 

3人の言葉に「そうだな」とハジメは頷き、魔法陣を睨みつける。

どうやらこの魔法陣から出てくる化物を倒さないと先へは進めないらしい。

 

 

魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。

咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメ達。

光が収まった時、そこに現れたのは……

 

 

体長30メートル、6つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。

例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

 

「「「「「「クウルゥゥァァン!」」」」」」

 

 

不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がハジメ達を射貫く。

同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。

それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

 

4人は同時にその場を左右に飛び退き反撃を開始する。

ハジメはドンナーと香織は光属性の攻撃魔法を電磁加速された弾丸が超速で赤頭を狙い撃つ。

弾丸は狙い違わず赤頭を吹き飛ばした。

 

 

白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。

すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。

 

 

「回復魔法だと!?」

 

 

ハジメ達に少し遅れてユエの氷弾が緑の文様がある頭を吹き飛ばしたが、同じように白頭の叫びと共に回復してしまった。

その時、紫の竜巻が楓を包み、竜巻が晴れるとハジメ達が最初に会った時の姿をしていた。

ハジメは舌打ちをしつつ"念話"でみんなに伝える。

 

 

『みんな、あの白頭を狙うぞ!キリがない!』

 

 

『んっ!』

 

 

『うん!』

 

 

『わかった!』

 

 

青い文様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを回避しながら4人は白頭を狙う。

ドパンッ!ドパンッ!

 

 

「"緋槍"!」

 

 

「グラビティルナティック!!」

 

 

闇が纏った無数の剣と燃え盛る槍と魔力を纏った斬撃が白頭に迫る。

しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。

そして淡く黄色に輝きハジメのレールガンも香織の光属性の攻撃魔法もユエの"緋槍"も楓の"グラビティルナティック"も受け止めてしまった。

衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいてハジメ達を睥睨している。

 

 

「ちっ!盾役か。攻撃に盾に回復にと実にバランスのいいことだな!」

 

 

「なら、攻撃力を上げるまでだ!力を与えよ!!破壊の矛!!」

 

 

楓はルーンの演唱で味方の攻撃力を上げたのを確認したハジメは魔物の頭上に向かって"焼夷手榴弾"を投げて同時にドンナーの最大出力で白頭に連射した。

香織とユエも合わせてリジェクト・ウィンク(敵に光属性ダメージと味方の治癒魔法)と"緋槍"を連発。

楓は赤黒い翼で空を飛び破壊の矛と同じ能力の闇の双刃を唱えダークツインブレードでダメージを与える。

 

 

ユエの"蒼天"なら黄頭を抜いて白頭に届くかもしれないが、最上級を使うと一発でユエは行動不能になる。

吸血させれば直ぐに回復するが、その隙を他の頭が許してくれるとは思えない。

せめて半数は減らさないと最上級は使えない。

 

 

黄頭は、4人の攻撃を尽く受け止める。

だが、流石に今度は無傷とはいかなかったのかあちこち傷ついていた。

 

 

「クルゥアン!」

 

 

すかさず白頭が黄頭を回復させる。

しかし、その直後、白頭の頭上で"焼夷手榴弾"が破裂した。

白頭にも降り注ぎ、その苦痛に悲鳴を上げながら悶えている。

 

 

ハジメは全員で同時攻撃を仕掛けようとするが、その前に絶叫が響いた。

 

 

「いやぁああああ!!!」

 

 

「「!?ユエ!」」

 

 

ハジメと香織は咄嗟にユエに駆け寄ろうとするが、それを邪魔するように赤頭と緑頭が炎弾と風刃を無数に放ってくる。

未だ絶叫を上げるユエに、歯噛みしながら一体何がと考えるハジメ。

そして、そういえば黒い文様の頭が未だ何もしていないことを思い出す。

 

 

「(既に、何かしてるなら!)楓!!あの黒い頭を狙ってくれ!!」

 

 

「わかった!ハジメ!!ブラッククロウ!!もう一度おまけだ!!ブラッククロス!!(全く同じ箇所にブラッククロウとブラッククロスを合わせて五つの衝撃……少し身体に響くな……)」

 

 

ユエをジッと見ていた黒頭が楓の攻撃で吹き飛ぶ。

同時に、ユエがくたりと倒れ込み、香織はその身体を支えた。

その顔は遠目に青ざめているのがわかる。

そのユエを喰らおうというのか青頭が大口を開けながら長い首を伸ばしユエ達に迫っていく。

 

 

「させるか!!」

 

 

ハジメは青頭に向けて、ドンナーの引き金を引いた。

射撃音と共に噴火でもした様に青頭の頭部が真上に弾け飛ぶ。

それを確認するとハジメは、"閃光手榴弾"と"音響手榴弾"をヒュドラに向かって投げつけた。

二つの手榴弾が強烈な閃光と音波でヒュドラを怯ませる。

その隙にハジメはユエを抱き上げ香織と楓と共に柱の陰に隠れた。

 

 

「おい!ユエ!しっかりしろ!」

 

 

「ユエ!」

 

 

「……」

 

 

「7つの力のうちの一つ、慈愛の光よ。傷付いた心を治せ!」

 

 

ハジメと香織の呼びかけにも反応せず、青ざめた表情でガタガタと震えるユエ。

香織に回復魔法をかけてもらいながら"神水"も飲ませてハジメは楓の慈愛のルーンで回復を頼んだ。

しばらくすると虚ろだったユエの瞳に光が宿り始めた。

 

 

「……ハジメ?香織?楓?」

 

 

「うん、香織だよ」

 

 

「あぁ、楓だ。」

 

 

「おう、ハジメさんだ。大丈夫か? 一体何された?」

 

 

パチパチと瞬きしながらユエはハジメと香織と楓の存在を確認するように、その小さな手を伸ばし3人の顔に触れる。

それでようやくハジメと香織と楓がそこにいると実感したのか安堵の吐息を漏らし目の端に涙を溜め始めた。

 

 

「……よかった……見捨てられたと……また暗闇に一人で……」

 

 

「見捨てた?」

 

 

「ああ? そりゃ一体何の話だ?」

 

 

ユエの様子に困惑するハジメと香織だが、楓は考えるように頭に手を置く。

ユエ曰く、突然、強烈な不安感に襲われ気がつけば3人に見捨てられて再び封印される光景が頭いっぱいに広がっていたという。

そして、何も考えられなくなり恐怖に縛られて動けなくなったと。

 

 

「幻系の魔法か。厄介だな」

 

 

「確かに、厄介すぎるよ!」

 

 

「……ハジメ、香織、楓」

 

 

敵の厄介さに悪態をつく楓に、ユエは不安そうな瞳を向ける。

よほど恐ろしい光景だったのだろう。

ハジメ達に見捨てられるというのは……何せ自分を三百年の封印から命懸けで解き放ってくれた人物で吸血鬼と知っても変わらず接してくれるどころか、日々の吸血までさせてくれるのだ。

心許すのも仕方ないだろう。

 

 

そして、ユエにとってはハジメたちの近くが唯一の居場所だ。

一緒にハジメたちの故郷に行くという約束がどれほど嬉しかったか。

そのため、植えつけられた悪夢はこびりついて離れず、ユエを蝕む。

ヒュドラが混乱から回復した気配に3人は立ち上がるが、ユエは、そんなハジメの服の裾を思わず掴んで引き止めてしまった。

 

 

「……私……」

 

 

泣きそうな不安そうな表情で震えるユエ。

ハジメは何となくユエの見た悪夢から、今ユエが何を思っているのか感じ取った。

そして、普段からの態度でユエの気持ちも察している。

どちらにしろ、日本に連れて行くとまで約束してしまったのだ。

ハジメはユエの前にしゃがみ目線を合わせて額にキスをしたが香織は不貞腐れているが自分に「今は許す」と自分に言い聞かせていた。

 

 

「ヤツを殺して生き残る。そして、地上に出て故郷に帰るんだ。……みんな一緒にな」

 

 

「ユエの力は必要だよ?」

 

 

「俺より凄い魔法使うんだからな?」

 

 

ユエは未だ呆然とハジメをキョロキョロと見ていたが、いつかのように無表情を崩しふんわりと綺麗な笑みを浮かべた。

 

 

「んっ!」

 

 

ハジメは咳払いをして気を取り直しつつ、ユエと香織と楓と雫に作戦を告げる。

 

 

「ユエ、シュラーゲンを使う。連発できないから援護頼む、香織は何時でも回復魔法を使える準備、楓は敵を引き付けてくれ!」

 

 

「……任せて!」

 

 

「わかったよ!」

 

 

「……わかった」

 

 

楓、香織、ユエの3人は覇気に溢れた応答をした。

大きな咆哮を上げ、ハジメ達のいる場所に炎弾やら風刃やら氷弾やらを撃ち込んできた。

4人は一気に柱の陰を飛び出し、今度こそ反撃に出る。

 

 

「"緋槍"!"砲皇"!"凍雨"!」

 

 

矢継ぎ早に引かれた魔法のトリガー。

有り得ない速度で魔法が構築され、炎の槍と螺旋に渦巻く真空刃を伴った竜巻と鋭い針のような氷の雨が一斉にヒュドラを襲う。

攻撃直後の隙を狙われ死に体の赤頭、青頭、緑頭の前に黄頭が出ようとするが、白頭の方をハジメが狙っていると気がついたのかその場を動かずに代わりに咆哮を上げる。

 

 

「クルゥアン!」

 

 

すると近くの柱が波打ち、変形して即席の盾となった。

それを楓は防御無視の最大の闇のように切り裂き、障害を取り除く。

ユエの魔法は楓が切り開いた先に進み、魔法が三つの頭に直撃した。

 

 

「「「グルゥウウウウ!!!」」」

 

 

悲鳴を上げのたうつ三つの頭。

黒頭が、魔法を使った直後のユエを再びその眼に捉え、幻系の魔法を行使する。

しかし、ユエはその不安に押しつぶされる前に、先ほどのハジメからの額のキスを思い出す。

すると、体に熱が入ったように気持ちが高揚し、不安を押し流していった。

 

 

「……もう効かない!」

 

 

ユエは、ハジメ達を援護すべく、更に威力よりも手数を重視した魔法を次々と構築し弾幕のごとく撃ち放つ。

回復を受けた赤頭、青頭、緑頭がそれぞれ攻撃を再開するが、ユエと楓で一頭ずつそれと渡り合った。

尽く相殺し隙あらばユエが魔法を打ち込み、楓の魔法剣で確実にダメージを受けて行く。

 

 

一方、ハジメは三つの首が2人に掛かり切りになっている間に、一気に接近する。

万一外して対策を取られては困るので文字通り一撃必殺でいかなければならない。

黒頭がユエに恐慌の魔法が効かないと悟ったのか、今度はハジメにその眼を向けるが楓は黒頭に立ち塞がる。

 

 

「魔物、お前の相手は俺だ。」

 

 

1つの首を切り落とした楓が黒頭に舞うように斬りつけていく。

黒頭はハジメよりも目の前の脅威である楓へと向かう。

黒頭が恐慌の魔法を楓にかける。

前世の頃の大崩壊が頭に過ぎる。

 

 

「悪いな、その光景は乗り越えたんだ!!」

 

 

楓はすぐに無数の大量の闇が纏った剣を黒頭を切り落とす。

白頭がすかさず回復させようとするが、その前にハジメが"空力"と"縮地"で飛び上がり背中に背負っていた対物ライフル:シュラーゲンを取り出し空中で脇に挟んで照準する。

黄頭が白頭を守るように立ち塞がるが、そんな事は想定済みだ。

 

 

「まとめて砕く!」

 

 

 

ハジメが"纏雷"を使いシュラーゲンが紅いスパークを起こす。

弾丸はタウル鉱石をシュタル鉱石でコーティングした地球で言うところのフルメタルジャケットだ。

シュタル鉱石は魔力との親和性が高く"纏雷"にもよく馴染む。

通常弾の数倍の量を圧縮して詰められた燃焼粉が撃鉄の起こす火花に引火して大爆発を起こした。

 

 

「くっ!!」

 

 

大砲でも撃ったかのような凄まじい炸裂音と共にフルメタルジャケットの赤い弾丸が、更に約一・五メートルのバレルにより電磁加速を加えられる。

その威力はドンナーの最大威力の更に十倍。

異世界の特殊な鉱石と固有魔法がなければ到底実現し得なかった怪物兵器だ。

 

 

発射の光景は正しく極太のレーザー兵器のようだ。

かつて、勇者の天之河光輝がベヒモスに放った切り札が、まるで児戯に思える。

射出された弾丸は真っ直ぐ周囲の空気を焼きながら黄頭に直撃したが黄頭もしっかり"金剛"らしき防御をしていたのだが……まるで何もなかったように弾丸は背後の白頭に到達し、そのままやはり何もなかったように貫通して背後の壁を爆砕した。

階層全体が地震でも起こしたかのように激しく震動する。

 

 

後に残ったのは、頭部が綺麗さっぱり消滅しドロッと融解したように白熱化する断面が見える二つの頭と周囲を四散させてどこまで続いているかわからない深い穴の空いた壁だけだった。

 

 

一度に2つの頭を消滅させられた残り4つの頭が思わず、自分たちの相手を忘れて呆然とハジメの方を見る。

ハジメはスタッと地面に着地し、煙を上げているシュラーゲンから排莢した。

チンッと薬莢が地面に落ちる音で我に返る4つの頭。

ハジメに憎悪を込めた眼光を向けるが、彼等が相対している敵は眼を離していい相手ではなかった。

 

 

「"天灼"」

 

 

 

かつての吸血姫。

その天性の才能に同族までもが恐れをなし奈落に封印した存在。

その力が、己と敵対した事への天罰だとでも言うかのように降り注ぐ。

3つの頭の周囲に6つの放電する雷球が取り囲む様に空中を漂ったかと思うと…次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばしてつながり、その中央に巨大な雷球を作り出した。

 

 

「相変わらず、凄いな……」

 

 

ズガガガガガガガガガッ!!

中央の雷球は弾けると六つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らした。

三つの頭が逃げ出そうとするが、まるで壁でもあるかのように雷球で囲まれた範囲を抜け出せない。

天より降り注ぐ神の怒りの如く、轟音と閃光が広大な空間を満たした。

そして、十秒以上続いた最上級魔法に為すすべもなく、三つの頭は断末魔の悲鳴を上げながら遂に消し炭となった。

 

 

「や、やった」

 

 

ユエがペタリと座り込む。

魔力枯渇で荒い息を吐きながら、無表情ではあるが満足気な光を瞳に宿し、3人に向けてサムズアップした。

3人は頬を緩めながらサムズアップで返す。

ハジメはシュラーゲンを担ぎ直して楓は2つの魔法剣を持ち直してヒュドラの僅かに残った胴体部分の残骸に背を向けユエの下へ行こうと歩みだした。

その直後……。

 

 

「「「闇野君/楓!!」」」

 

 

ハジメと香織とユエの切羽詰まった声が響き渡る。

何事かと見開かれた2人の視線を辿ると、音もなく7つ目頭が胴体部分からせり上がり、楓を睥睨していた。

思わず硬直する楓。

 

 

「おいおい、嘘だろ」

 

 

七つ目の銀色に輝く頭は、楓から視線を逸らし、ユエとハジメと香織をその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光が襲おうとした。

楓は七頭目が3人を狙った瞬間、動いていた。

そして極光が3人に襲いかかる前に楓は立ち塞がる事に成功する。

後ろの3人直撃は受けなかったものの余波により体を強かに打ちぬかれ吹き飛ばされた。

 

 

極光が収まり、3人が全身に走る痛みに呻き声を上げながら体を起こすが、極光に飲まれる前に楓が割って入った光景に焦りを浮かべながらその姿を探す。

 

 

楓は最初に立ち塞がった場所から動いていなかった。

仁王立ちしたまま全身から煙を吹き上げている。

地面には融解した真・ロウブレイクの残骸が転がっていた。

 

 

「か、楓?」

 

 

「や、闇野君?」

 

 

「しっかりしろ!!楓!!」

 

 

「……」

 

 

 

楓は答えない。

そして、そのままグラリと揺れると前のめりに倒れこんだ。

 

 

「「楓!!」」

 

 

「闇野君!!」

 

 

ユエは焦燥に駆られるまま痛む体を無視して楓に駆け寄ろうとするが魔力枯渇で力が入らず転倒してしまうので香織は立ち上がって楓の下へ今度こそ駆け寄った。

 

 

うつ伏せに倒れこむ楓の下からジワッと血が流れ出してくる。

楓の傷は酷いものだった。

指、肩、脇腹が焼き爛ただれ一部骨が露出している。

顔も右半分が焼けており右目から血を流していた。

 

 

「香織!楓に"神水"を振りかけろ!!それで傷は治るはずだ!!」

 

 

「っ!」

 

 

ハジメの激で香織は急いで柱の影に隠れてユエと共に"神水"をかける。

神水は止血の効果はあったものの、中々傷を修復してくれない。

 

 

「どうして!?」

 

 

ユエと香織は半ばパニックになりながら、手持ちの神水をありったけ取り出した。

ヒュドラのあの極光には肉体を溶かしていく一種の毒の効果も含まれていたのだ。

普通は為す術もなく溶かされて終わりであるが、"神水"の回復力が凄まじく、溶解速度を上回って修復しており、速度は遅い。

もっとも、右目に関しては極光の光で蒸発してしまい、"神水"や回復魔法では欠損は再生できない以上治らないのだ。

 

 

「私の回復魔法じゃ…この傷は…」

 

 

その時、ハジメもヒュドラの攻撃で壁に激突した。

 

 

「ハジメくん!!/ハジメ!!」

 

 

「く、くそったれ…」

 

 

その時、白い光が辺りに輝いた。

 

 

「な、なに?」

 

 

【私の愛おしい彼を傷つけたのは貴方なのね?】

 

 

そこには、美しい銀色の髪に澄んだような青い瞳純白の翼に水色のドレスを着た人がいた。

 

 

「あ、あんたは?」

 

 

【私は、アイリス。白の王国を治めていた光の王。彼とある約束をしたのよ。7つの力のうちの一つ、慈愛の光よ。傷つき倒れし戦士を救え!!】

 

 

楓の演唱より強力な演唱によりハジメ達の傷は塞がり楓の傷も良くなったが右目は元に戻らない。

 

 

【貴方の好きにさせない。スパークルアフェクション!!】

 

 

この技は、楓のダークツインブレードと同じように無数の光が纏った剣をヒュドラの身体中に突き刺してヒュドラは大きな咆哮をするがそのまま絶命した。

 

 

【これで大丈夫でしょう。あなた達の進む道に光の導きがありますように……。また、会いましょう。約束の人…】

 

 

「…アイ……リス…」

 

 

呆然としている3人を置いてアイリスの思念体は消えて扉が開いた。




今日の6時までのアンケートです。
オスカーの家に住んでいる白猫キャラ


1、鬼族の歌人 キサラギ


2、キツネの巫女、コリン

感想でお答え下さい
投票終了しました。

闇野楓君の追加して欲しい技能

  • 夜目
  • バッドステータスを受け付けない(呪い等)
  • 戦い度に少しずつ攻撃力が上がる
  • 闇の憤怒、掌に赤黒い炎で全て灰にする力
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