はじまりの罪を背負う者達は…魔王達と共にあり   作:五月雨☆。.:*・゜

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第二章、ライセンの大迷宮と新たな仲間
地上の光と少女


魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。

どこか新鮮さを感じる空気に楓達の頬が緩む。

やがて光が収まり目を開けた楓達の視界に写ったものは……洞窟だった。

 

 

「「なんでやねん」」

 

 

「当たり前だろ、反逆者って言われてた人の住処だろ?隠してるに決まってるだろ。」

 

 

ハジメと香織の服の裾をクイクイと引っ張るユエ。

ユエは自分の推測を話す。

 

 

「…楓に同感……秘密の通路……隠すのが普通…」

 

 

「あ、ああ、そうか。確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか。てか、コリン。お前知ってたんじゃないか?」

 

 

「…確かに…どうなの?コリン」

 

 

「…ど、どうだったかな?(汗」

 

コリンはダラダラと汗を流している。

ハジメと香織はコリンの同様でそれ以上聞かなった。

途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されて行く。

 

 

5人は、一応警戒していて拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。

ハジメ、香織、楓はこの数ヶ月…ユエに至っては三百年間…求めてやまなかった光。

5人は近づくにつれ徐々に大きくなる光に外から風も吹き込んでくる。ずっと清涼で新鮮な風だ。

五人は、"空気が美味しい"という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

そして、遂に5人は同時に光に飛び込み待望の地上へ出た。

 

 

断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。

西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を人々はこう呼んだ。

 

 

 【ライセン大峡谷】。

 

 

楓達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。

地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。

 

 

「……戻って来たんだな……」

 

 

5人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとハジメは香織とユエは抱きつき、楓はネックレスを握り締めた。

 

 

「よっしゃぁああーー!!戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

 

「ん!!」

 

 

「やったぁぁぁ!」

 

 

「久しぶりの外だ〜。」

 

 

「光が眩しいな…」

 

 

5人は喜んでいるとすっかり……魔物に囲まれていた。

 

 

「はぁ~、全く無粋なヤツらだな。……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

 

「災厄だな…」

 

 

ドンナー・シュラークを抜きながらハジメが首を傾げる。

楓は真・ダークドミネイターを構える。

 

 

「……分解される。でも力づくでいく」

 

 

ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。

もちろん、ユエと香織と楓の魔法も例外ではない。

ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。

 

 

「力づくって……効率は?」

 

 

「……十倍くらい」

 

 

ハジメはおもむろにドンナーを発砲した。

楓は真・ダークドミネイターを構えて斬撃を放つ。

ごくごく自然な動作でスっと銃口を魔物の一体に向けると、これまた自然に引き金を引いたのだ。

 

 

取り囲んでいた魔物の一体が何の抵抗もできずに、その頭部を爆散させ死に至った。

辺りに銃声と斬撃の余韻だけが残り、魔物達は何が起こったのかわからないというように凍り付いている。

未だ凍りつく魔物達に、ハジメと楓は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「さて、奈落の魔物とお前達、どちらが強いのか……試させてもらおうか?」

 

 

「…楽しめそうだな…(ペロ」

 

 

ハジメの眼に殺意が宿る。

楓の眼には狂気の眼で魔物を睨む。

その眼を見た周囲の魔物達は気がつけば一歩後退っていた。

しかも、そのことに気がついてすらいない。本能で感じたのだろう。

自分達が敵対してはいけない化物を相手にしてしまったことを…。

 

 

意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の二体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。

 

 

「ガァアアアア!!」

 

 

ズドンッ!!

ザシュッ!!

 

 

しかし、ほぼ同時に響き渡った銃声と斬撃と共に一条の閃光と闇の力が走り、その魔物は避けるどころか反応すら許されず頭部を吹き飛ばされた。

魔物達は、ただの一匹すら逃げることも、突破することも叶わずに頭部を吹き飛ばされ骸を晒していく。

辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに五分もかからなかった。

 

 

ドンナー・シュラーク、を太もものホルスターにしまったハジメ、楓は真・ダークドミネイターをしまう。

ハジメは首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 

 

「お疲れ様、南雲君」

 

 

「……ハジメ、どうしたの?」

 

 

「楓、この魔物達どう思う?」

 

 

「呆気なかったな…」

 

 

「だよな、ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思ってな」

 

 

「……ハジメと楓が化物。」

 

 

「そうだね、ハジメ君と闇野君が化け物に見えるよ」

 

 

「…化物って言わないでくれ…」

 

 

「ひでぇいい様だな。香織、ユエ。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

 

 

「まぁ、闇の王子を含めて君達はオスカーの迷宮をクリアしたんだ。此処ら辺の魔物は余裕だと思うがね?」

 

 

「そうか…さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする?ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。

せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

 

「……なぜ、樹海側なんだい?南雲ハジメくん」

 

 

「コリン、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ?樹海側なら、町にも近そうだし……」

 

 

「「「……確かに」」」

 

 

「私にはその発想は無かったね。」

 

 

ハジメの提案に、3人は頷いた。

魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。

ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。

ハジメと香織の"空力"やユエの風系魔法や楓の翼を使えば、絶壁を超えることは可能だろうがどちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので断る理由はない。

 

 

ハジメは、右手の中指にはまっている"宝物庫"に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。

 

 

「1台なのかい?」

 

 

「あっ、お前達のこと忘れてた……」

 

 

「構わない、コリン。なんか小型の動物になれ。」

 

 

「なるほど、君の翼で行くのかい!コンコンーー!!!!」

 

 

コリンは話終わると"コンコン"と遠吠えを吐くとぼふんっと辺りに煙が舞って中なら現れたのは小狐だった。

 

 

「どうだい?私の化ける術は?」

 

 

「か、可愛い。コリン、後で触らせて……」

 

 

「もちろんだよ。香織」

 

 

コリンはそういうと楓の肩に乗る。

脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。ハジメ達も、迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快に魔力駆動二輪を走らせていく。

 

 

「木が邪魔だな…」

 

 

「もう少し、優しい飛んでくれないかい?闇の王子」

 

 

「文句を言わないでくれ。コリン」

 

 

しばらくするとそれほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。

少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。

もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

 

楓は突き出した崖を回り込むとその向こう側に大型の魔物が現れた。

かつて見た迷宮の魔物に似ているが頭が二つある。

 

 

だが、注目すべきは魔物ではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だ。

 

 

「誰だい?」

 

 

「知らないぞ、俺は…」

 

 

ハジメは魔力駆動二輪を止めて楓は地上降りてコリンも元の姿に戻ると胡乱な眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

 

「……何だあれ?」

 

 

「なんかウサミミ生えてるね」

 

 

「……兎人族かい?いやでも白銀の髪の兎人族は居ない筈だけどね?」

 

 

「コリン、ユエ、兎人族って谷底が住処なのか?」

 

 

「……聞いたことない」

 

 

「私も知らないね?」

 

 

コリンは首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。

別に、ライセン大峡谷が処刑方法の一つとして使用されていることからウサミミ少女が犯罪者であることを考慮したわけではない。

赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。

 

 

そんな呑気な5人をようやくウサミミ少女の方が発見したらしい。

魔物に吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出してその格好のまま、楓達を凝視している。

 

 

そして、再び魔物が爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされてゴロゴロと地面を転がり、その勢いを殺さず猛然と逃げ出したのだ……楓達の方へ。

 

 

「なんでこっちに来るんだ?」

 

 

それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊し楓達に届く。

 

 

「だずげでぐだざ~い!ひっーー!!!!死んじゃう!!!死んじゃうよぉ!!!だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!!!!!」

 

 

滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。

そのすぐ後ろには魔物が迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。

このままでは、が達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

 

 

「……迷惑」

 

 

「私達助けるつもりないのに…」

 

 

「私はどっちでも良いけどね。」

 

 

「ハジメの判断に任せる。」

 

 

楓達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、楓達に助ける気がないことを悟ったのか……。

少女の目からぶわっと更に涙が溢れ出した。

一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い!!!!!おねがいですぅ~!!!!!」

 

 

ウサミミ少女が更に声を張り上げる。

それでも、ハジメは、全く助ける気がないので、このまま行けばウサミミ少女は間違いなく喰われていたはずだった。

そう、魔物がウサミミ少女の向こう側に見えた楓達に殺意を向けさえしなければ……。

 

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

 

それに敏感に反応するハジメと楓だ。

 

 

「アァ?」

 

 

「めんどくさい…」

 

 

「なら、私に殺らせてよ。」

 

 

楓はコリンが立候補したので任せることにした。

いま、自分は生存を否定されている。

捕食の対象と見られている。

敵が己の行く道に立ち塞がっている!

魔物の殺意に、ハジメの体が反応してその意志が敵を殺せ!と騒ぎ立ていた。

 

 

魔物が、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。

ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識してその瞳に絶望を写したが次の瞬間…。

 

 

ドパンッ!!

ザシュッ!!

 

 

聞いたことのない乾いた破裂音と斬撃音が峡谷に響き渡り、恐怖にピンと立った二本のウサミミの間を一条の閃光と剣閃が通りすぎた。

そして、目前に迫っていた魔物の口内を突き破り後頭部を粉砕と切断をしながら貫通した。

 

 

「……天狐神楽……」

 

 

力を失った片方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。

魔物はバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。

その衝撃で、ウサミミ少女は再び吹き飛ぶ。

狙いすましたようにハジメの下へ。

 

 

「きゃぁああああー!!!た、助けてくださ~い!!!」

 

 

眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。

その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。

たとえ酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

 

「よっと、大丈夫かい?」

 

 

落ちそうになったウサミミ少女をコリンはキャッチした。

 

 

「はぅ、た、助かりました…ありがとうございます…」

 

 

「いえいえ、こちらこそ…」

 

 

「てか、巻き込みやがって……」

 

 

ハジメのコートの裾をギュッと掴み、絶対に離しません!としがみつくウサミミ少女を心底ウザったそうに睨むハジメ。

 

ユエが、離せ、無視するなというように足先で小突いている。

香織は何ハジメ君にしがみついているのよ!と嫉妬していた。

楓とコリンは見て見ぬふりをしていた。

 

 

「い、いやです!!いま、離したら見捨てるつもりですよね!」

 

 

「当たり前だろう?なぜ、見ず知らずウザウサギを助けなきゃならないんだ」

 

 

「そ、即答!?何が当たり前ですか!!あなたにも善意の心はありますでしょう!!いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!!」

 

 

「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つうか自分で美少女言うなよ」

 

 

「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」

 

 

「いらねぇよ。ていうか汚い顔近づけるな、汚れるだろが。」

 

 

「き、汚い!?言うにことかいて汚い!!あんまりです!!断固抗議しまッ「グゥガァアア!」ヒィー!!!お助けぇ~!!!」

 

 

ウサミミ少女がハジメの言葉に反論しようと声を張り上げた瞬間、魔物が咆哮を上げて突進しようと身をたわめた。

 

 

ウサミミ少女は情けない悲鳴を上げて無理やりハジメとユエの間に入り込もうとする。

ユエが、イラッときたのか魔力駆動二輪に乗ろうとするウサミミ少女を蹴り落とそうとゲシゲシ蹴りをかますが、ウサミミ少女は頬に靴跡を刻まれながら「絶対に離しませぇ~ん!!!」と死に物狂いでしがみつき引き離せない。

そして、魔物が突進を開始した。

 

 

直後、ハジメの手が跳ね上がり銃口が魔物の額をロックオンしてコリンの神楽鈴には電気が溜まりコンマ一秒にも満たない時間で照準から発砲までプロセスを完了し、一発の銃声と空からは雷鳴が共に閃光が魔物の眉間を貫く。

一瞬、ビクンと痙攣した後、魔物はあまりに呆気なく絶命し、地響きを立てながら横倒しに崩れ落ちた。

 

 

その振動と音にウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそるハジメの脇の下から顔を出して魔物の末路を確認する。

 

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

 

ウサミミ少女は驚愕も表に目を見開いている。どうやらあの魔物は"ダイヘドア"という。

 

 

呆然としたままダイヘドアの死骸を見つめ硬直しているウサミミ少女だが、その間もユエと香織に蹴られた。

さっきから、長いウサミミがハジメの目をペシペシと叩いており、いい加減本気で鬱陶しくなったハジメは脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろした。

 

 

「へぶぅ!!」

 

 

呻き声を上げ、「頭がぁ~!、頭がぁ~!」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。

それを冷たく一瞥した後、ハジメは何事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。

楓は翼を出してコリンも小狐に戻り楓の肩へそして先へ進もうと空へ飛ぼうとしていた。

 

 

その気配を察したのか、今までゴロゴロ地面を転がっていたくせに物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!!!!」と再びハジメの腰にしがみつくウサミミ少女。

 

 

「先程は助けて頂きありがとうございました!!!私は兎人族ハウリアの一人、シアといいます!!!取り敢えず私の仲間も助けてください!!!!」




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キツネの巫女、コリンの転職について

  • 月華の舞姫
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