はじまりの罪を背負う者達は…魔王達と共にあり   作:五月雨☆。.:*・゜

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月下の語らいの夜想曲

【オルクス大迷宮】

 

それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 

 

楓達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。

新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

 

久しぶりに普通の部屋を見た気がするハジメはベッドにダイブして気を緩めた。

全員が最低でも二人部屋でありハジメと楓がペアになった。

明日から早速、迷宮に挑戦だ。

今回は行っても二十階層までらしく、それくらいなら、ハジメのような最弱キャラがいても十分カバーできると団長から直々に教えられた。

 

 

「南雲くん、起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

 

ハジメは慌てて扉に向かう。

そして、鍵を外して扉を開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

 

「……なんでやねん」

 

 

「……」

 

 

「えっ?」

 

 

ある意味、衝撃的な光景に思わず関西弁でツッコミを入れてしまうハジメ。

よく聞こえなかったのか香織はキョトンとしている。

 

 

ハジメは、慌てて気を取り直すと、なるべく香織を見ないように用件を聞く。

いくらリアルに興味が薄いとはいえ、ハジメも立派な思春期男子。

今の香織の格好は少々刺激が強すぎる。

 

 

「あ~いや、なんでもないよ。えっと、どうしたのかな?何か連絡事項でも?」

 

 

「ううん。その、少し南雲くんと話したくて……やっぱり迷惑だったかな?」

 

 

「…………どうぞ」

 

 

最も有り得そうな用件を予想して尋ねるが、香織は、あっさり否定して弾丸を撃ち込んでくる。

気がつけば扉を開け部屋の中に招き入れていた。

 

 

「うん!」

 

なんの警戒心もなく嬉しそうに部屋に入り、香織は、窓際に設置されたテーブルセットに座った。

 

 

「それじゃあ、お邪魔虫は退散するから…二人でごゆっくりどうぞ」

 

 

「えっ!ちょっ、楓!?」

 

 

楓のいきなりの行動にハジメは慌てて、呼び止めようとした。

しかし、楓はそれを無視して、「早く、彼女と会いたい」と考えながら、ドアノブに手をかけた。

 

 

「待って!」

 

 

しかし、そこで香織が呼び止めた。

これがハジメのように恥ずかしさから止めようとしているなら、楓は無視したが、香織の声にはどこか、思い詰めた感じがあった。

そのため、楓はドアノブに伸ばしていた手を引っ込めて、振り返った。そこには、どこか思い詰めた表情をした香織がいた。

 

 

「お願い……。闇野くんにも聞いてほしい話なの……」

 

 

そんな香織の言葉を聞いて、これはただ事じゃないなと思い、彼女は扉から離れた。

 

 

 

「それで、話したいって何かな。明日のこと?」

 

 

ハジメの質問に「うん」と頷き、香織はさっきまでの笑顔が嘘のように思いつめた様な表情になった。

 

 

「明日の迷宮だけど……南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから!お願い!」

 

 

話している内に興奮したのか身を乗り出して懇願する香織。

ハジメは困惑する。

ただハジメが足手まといだからというには少々必死過ぎないかな?と。楓もそんな香織を訝しげに見た。

 

 

「えっと……確かに僕は足手まといとだは思うけど……流石にここまで来て待っているっていうのは認められないんじゃ……」

 

 

「違うの!足手まといだとかそういうことじゃないの!」

 

 

香織は、ハジメの誤解に慌てて弁明する。

自分でも性急過ぎたと思ったのか、手を胸に当てて深呼吸する。

 

 

「いきなり、ゴメンね」

 

 

少し、落ち着いたようでと香織は謝罪した。

 

 

「別に構わない。それよりも理由を訊いても良いか?ハジメが足手まといだからっていう理由じゃないのは、同じように周りから無能扱いされている俺の名前が無かったことからわかってる。何か別の理由があるんだろ?」

 

 

楓の言葉に香織は「うん」と頷き、静かに話し出した。

 

 

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……南雲くんが居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」

 

 

その先を口に出すことを恐れるように押し黙る香織。

ハジメは、落ち着いた気持ちで続きを聞く。

 

 

「最後は?」

 

 

香織はグッと唇を噛むと泣きそうな表情で顔を上げた。

 

 

「……消えてしまうの……」

 

 

「……そっか」

 

 

「……(アイリス…)ギリッ」

 

 

しばらく静寂が包む。再び俯く香織を見つめるハジメ。

確かに不吉な夢だ。

しかし、所詮夢である。

そんな理由で待機が許可されるとは思えないし、許された場合はクラスメイトから批難の嵐だろう。

いずれにしろ本格的に居場所を失う。

故に、ハジメに行かないという選択肢はない。

ハジメは、香織を安心させるよう、なるべく優しい声音を心掛けながら話しかけた。

 

 

「夢は夢だよ、白崎さん。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員がついているし、天之河君みたいな強い奴も沢山いる。

むしろ、うちのクラス全員チートだし。

そんな中のチート4人組にあっさりと喧嘩で勝った楓もいる。

敵が可哀想なくらいだよ。僕は弱いし、実際に弱いところを沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」

 

 

語りかけるハジメの言葉に耳を傾けながら、なお、香織は、不安そうな表情でハジメを見つめる。

 

 

「それでも……それでも、不安だというのなら……」

 

 

「……なら?」

 

 

ハジメは若干恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに香織と目を合わせた。

 

 

「守ってくれないかな?」

 

 

「え?」

 

 

自分の言っていることが男としては相当恥ずかしいという自覚があるのだろう。

既にハジメは羞恥で真っ赤になっている。

月明かりで室内は明るく、香織と楓からもその様子がよくわかった。

 

 

「白崎さんは"治癒師"だよね? 治癒系魔法に天性の才を示す天職。何があってもさ……たとえ、僕が大怪我することがあっても、白崎さんなら治せるよね。

その力で守ってもらえるかな?それなら、絶対僕は大丈夫だよ」

 

 

しばらく、香織は、ジーとハジメを見つめる。

ここは目を逸らしたらいけない場面だと羞恥に身悶えそうになりながらハジメは必死に耐える。

 

 

「うん!!」

 

 

それから色々話してしばらくすると、香織は一言挨拶してから、そのまま部屋に帰っていった。

 

 

その後は楓もハジメもベッドに入った。

ハジメはベッドに横になりながら、思いを馳せる。

なんとしても、無能の汚名を返上しなければならない。

そのために楓と共同で開発した武器と楓にメンテナンスを頼まれていた剣で明日がんばろうとハジメは決意を新たにし眠りについた。

闇野楓君の追加して欲しい技能

  • 夜目
  • バッドステータスを受け付けない(呪い等)
  • 戦い度に少しずつ攻撃力が上がる
  • 闇の憤怒、掌に赤黒い炎で全て灰にする力
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