はじまりの罪を背負う者達は…魔王達と共にあり   作:五月雨☆。.:*・゜

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発動した宝石の罠

現在、楓達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

ハジメとしては薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 

 

なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだ。

戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っているのだ。

まるでお祭り騒ぎだ。

 

 

楓とハジメは談笑していると……

 

 

「おはよう!南雲くん!闇野くん!」

 

 

「おはよう。2人共」

 

 

香織と雫が楓とハジメに近づいてきた。

 

 

「おはよう。白崎さん。八重樫さん」

 

 

「あぁ、おはよう」

 

 

それに対して、2人も挨拶を返した。

そして、そんな2人に対して、いつものように睨む視線が集まった。

 

 

そこで雫が何かに気がついたように楓に話し掛けた。

 

 

「ねぇ、闇野君。あなたのその2つの剣は何かしら?結構、良いものみたいだけど、城から貸してもらったアーティファクトには無かったと思うけど……」

 

 

雫が気になったのは、楓の腰にぶら下げている2本の剣だった。

今回、楓が迷宮で使う武器だ。

シンプルな形だが、切れ味が物凄く良さそうなのが、雫にはすぐにわかった。

しかし、そのような剣を見たことがなかったために尋ねたのだ。

 

 

「見たことがねぇのは、当然だろうな。1つは俺の剣でもう1つのこれは、ハジメが作ったやつだからな」

 

 

「えっ!?これ、南雲君が作ったの!?」

 

 

「すごいよ!南雲くん!」

 

 

楓の説明に雫と香織は驚いたように見ていた。

そう、"真・ダークドミネイター"は元々持っていた剣でハジメが作ったのはその剣と似ている剣、"真・ロウブレイク"と名付けた。

2人に注目されたハジメは照れ臭そうに頬を掻きながら言った。

 

 

「そんな、大したものじゃないよ。」

 

 

「だが、メルドや他の騎士たちの話では、この剣が一般の兵士が使う物よりも格段に優れているし、城抱えの錬成師でも、これほどまでのものはそうそうできないって聞いているぞ」

 

 

楓の言葉に香織と雫はメルドのいるほうを向いた。

どうやら、メルドやアランを含めた騎士たちも今の話が聞こえていたのか、うんうんと頷いていた。

それを見て、2人は感心した様子でハジメを見た。

そして、一向は大迷宮の中に入っていった。

 

 

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

縦横5メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。

緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

 

一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。

しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。

ドーム状の大きな場所で天井の高さは7、8メートル位ありそうだ。

その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 

その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。

 

 

間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。

その間に、香織と特に親しい女子2人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。

魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

 

彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの1つで、お約束に漏れず名称は"聖剣"である。

光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという"聖なる"というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 

 

龍太郎は、空手部らしく天職が"拳士"であることから籠手と脛当てを付けている。

これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。

龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。

無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 

 

雫は、サムライガールらしく"剣士"の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。

その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

ハジメ達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」

 

 

3人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。

「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 

 

気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。

他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。

 

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 

生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド。

しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルドは肩を竦めた。

 

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 

メルドの言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

そこからは交代しながら戦闘を繰り返して、階層を下げて行った。

 

 

「よし、お前達。ここから先は1種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。

今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!

今日はこの20階層で訓練して終了だ!気合入れろ!」

 

 

メルドのかけ声がよく響く。

そして、一行は二十階層を探索する。

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から1ヶ月はかかるというのが普通だ。

現在、47階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。

トラップに引っかかる心配もないはずだった。

 

 

20階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと21階層への階段があるらしい。

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。

 

 

すると、先頭を行く光輝達やメルドが立ち止まった。

訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。

どうやら魔物のようだ。

 

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

 

メルドの忠告が飛ぶ。

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。

そして胸を叩きドラミングを始めた。

どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

 

「(前世では、見たことが無い魔物だな)」

 

 

「ロックマウントだ!2本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

 

メルドの声が響く。

飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。

光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

「うわっ!?」

 

 

「きゃあ!?」

 

 

体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法"威圧の咆哮"だ。

魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

 

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。

見事な砲丸投げのフォームで!咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。

避けるスペースが心もとないからだ。

 

 

しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。

香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

「白崎さん達!伏せろ!」

 

 

そこで楓が叫ぶのが聞こえて、香織たちは思わず伏せた。

それと同時に"真・ダークドミネイター"のスキルを発動してロックマウント達を吸い寄せてダメージを与えた。

 

 

「グゥガァァー!!?」

 

 

痛みでロックマウントの攻撃が止まった時に片方にあった剣"真・ロウブレイク"で切り伏せた。

 

 

「ほら、とっとと立てよ。魔物は待ってくれないぞ?」

 

 

楓の言葉に香織達は、「う、うん。ありがとう」と立ち上がるものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。

そんな様子を見てキレる若者が一人。

正義感と思い込みの塊、我らが勇者、天之河光輝である。

 

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 

どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。

彼女達を怯えさせるなんてと、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする天之河光輝。

 

 

「(いや。怪我を負わされたとかならともかく、この程度でキレることは無い…前世の仲間ならもう少し持つけどな?)」

 

 

それを見て、前世の仲間のことを思い出しながら、呆れる楓。

しかし、その楓も光輝の怒りに呼応してか輝きだした聖剣を見て、この後の展開に不味いと感じた。

 

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ!!"天翔閃"!」

 

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 

「(あの馬鹿勇者が!)」

 

 

メルドの声を無視して、天之河光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。

逃げ場などない。

曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

 

パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。

「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った天之河光輝。

香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。

もう大丈夫だ!と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルドの拳骨を食らった。

 

 

「へぶぅ!?」

 

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうすんだ!」

 

 

メルドのお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する天之河光輝。

香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。

 

 

「何を考えてるんだよ。あの馬鹿勇者は……」

 

 

「まぁまぁ、楓」

 

 

その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

まるでインディコライトが内包された水晶のようである。

香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。

特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。

求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ3に入るとか。

 

 

「素敵……」

 

 

香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

 

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。

グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。

それに慌てたのはメルドだ。

 

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 

しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

メルドは、止めようと檜山を追いかける。

同時に騎士団員の1人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして一気に青褪めた。

 

 

「団長!トラップです!」

 

 

「ッ!?」

 

 

「(そういうことか!)」

 

 

しかし、メルドも、騎士団員の警告も一歩遅かった。

楓も先程の疑問に納得したが同様に一歩遅かった。

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。

美味しい話には裏がある。

世の常である。

 

 

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

 

「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」

 

 

メルドの言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

部屋の中に光が満ち、楓達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

ハジメ達は空気が変わったのを感じた。

次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

 

尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。

クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルドや騎士団員たち、楓など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

楓だけは教室のときと同じだと感じたため、うまく着地して尻餅すらつかず、メルドたち同様に周りを警戒した。

 

 

どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。

現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

輝夜たちが転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと100メートルはありそうだ。

天井も高く20メートルはあるだろう。

橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

それを確認したメルドが、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

 

「お前たち、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒たち。

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。

階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。

更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……。

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルドの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」




次回、運命の時

闇野楓君の追加して欲しい技能

  • 夜目
  • バッドステータスを受け付けない(呪い等)
  • 戦い度に少しずつ攻撃力が上がる
  • 闇の憤怒、掌に赤黒い炎で全て灰にする力
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