最強の悪魔、ペプシの悪魔に、デンジが絶体絶命のその時! 助けに現れたのは、コーラマンとなったアキだった……。

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Q.君からもらうのは?

 「あーー最高な気分だぜーー〜〜」

 「びゃっはっはっはっ!! デンジがいっぱいおるぞ~~!!」

 「ばっか! 俺は、ひとりだっつーの〜」

 「いるもんは、いるんじゃ〜〜!」

 「あーくっそ……慣れてねえのにそんなにがぶがぶ呑んでんじゃねえよ……」

 

 床に大の字になったままにやつくデンジとソファで笑うパワーに、皿を洗いながらアキは、一緒に転がってる空き缶を見て、嘆息を零した。

 酒を間違って呑んだ辺りで、止めておけばよかった。アキの脳内を駆け巡るのは、後悔。後悔しても遅いのだが後悔は後からやってくるから仕方がない。だから後悔なのだ。

 

 「おい、お前ら。テーブルの上のゴミまとめてもってこい」

 「うびゃーデンジ! ウヌの仕事じゃろーー」

 「があ! 大声出すな! 頭に響うぷ……」

 「お、おい!! 吐くなよ!? 吐いたらお前殺すぞ!??!!?」

 

 両目を裏返しそうになりながら、口元を手で抑えたデンジを見たアキが焦りを浮かべ、キッチンから飛び出てきた。

 

 「ぎゃはははは!! デンジが酷い顔してうっぷ……」

 「お前もだぞ、パワー!!」

 

 顔をどす黒いブルーベリーみたいに染め上げるパワーに、アキは、思わず怒鳴り声を上げた。

 

 「う、うっせえ……だからでけえ声出す……うえ……」

 「そ、そうじゃ! ここで無様に吐き散らかしたら全部お主のおっ……」

 

 その時、アキの脳裏に過るのは、今は亡き酔っぱらいの姿。寂寥どころか殺意を覚える様子。寝ゲロは、流石にやめてくれ。絡みゲロもやめろ。数多のゲロを思い出したアキの頭で何かがプツンと弾けた。

 

 「「うおっ!?」」

 

 デンジにパワーをアキは、脇に抱えていた。悲劇を繰り返さないため、行動に出たのだ。鬼気迫る表情で、リビングを抜け、廊下に出て、

 

 「びゃ!」

 「ぎゃ!」

 

 二人まとめて浴室に叩き込んだ。丁度、湯の溜まった湯船に着水したからそれなりの水飛沫が上がる。

 

 「そこで酔いを冷ましてろ!」

 

 がらがらぴしゃっ!と浴室のドアを閉めたア

キは、曇りガラス越しでも分かるくらいに肩を怒らせ、去っていった。皿洗いの続きをするのだろう。

 チャポンと蛇口から水滴が落ち、ぽかーん口を開いたままのデンジは、少し酔いが冷めてきていた。上がっていたテンションもだだ下がり。湯のお陰だろうか。

 

 「あー気持ち悪……」

 

 ただ胸のムカつきとか喉の酸っぱさとかは、収まってなかった。

 

 「おい、パワ――ふぎゃ!」

 

 最後までデンジは、言葉を出せなかった。何か布状のものが彼の口と鼻と目を覆っていた。

 

 「な、なんだこれぇ!?」

 

 濡れてぺったり張り付くそれを引き剥がして、デンジは、気づく。これワイシャツだ。と矢先に、新たな飛来物。一つ、二つと飛んできて、デンジは、キャッチ。

 

 「パンツだ……」

 

 生温かい……。びよんと伸びる白のパンツ。くるくる指で回してみる、女のやつだ……女? デンジは、首を捻って。

 

 「ふー邪魔じゃった……これで風呂に入れるわ」

 

 満足げに笑う全裸のパワーに、デンジは、目を釘付けにされた。

 いつもの小憎たらしい笑顔の下、細い首と鎖骨を通れば服の上からは、想像できないほどに小さな胸――このへんで、デンジは、鼻血をぶちまけた。

 

 「て、テメエ! 何やってんだ! 服着ろ服!!」

 「はーー?! 服着てたら風呂に入れんじゃろがー! やっぱりデンジは、馬鹿だのー」

 「パワー、テメエ……!」

 

 へべれけ顔に、心底馬鹿にした表情を浮かべたパワーに、何か言い返そうにもそっちを見れない。うんこを流さないし虚言癖塗れの悪魔だが――女だ。

 

 (くそう……! おっぱいとか見ちまう……!)

 

 思春期の敗北。デンジは、顔を逸したまま視界の隅に、パワーを捉えてチラチラ見た。

 

 「おい! デンジ! チラチラ見とるなー! 変態め! スケベ!」

 「な! パワー元はてめえが――!!」

 

 これには、デンジもむかっときた。脱いだのは、そっちだろう!と振り返り、視線が合った。至近距離。デンジとパワー。見つめ合って、数秒。

 

 「おろろろろろろろろろろろろ!!!!」

 「ばっか! 風呂の外にって、じゃねえ! 俺にかけんなおろろろろろろろろろろろろろろろろ!!」

 

 被りゲロして、もらいゲロした。

 

 

 

 +++

 

 

 

 この後、アキがマジギレした。

 

 

 

 




A.もらいゲロ


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