古き死の王の目覚め   作:梵丸

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お久しぶりです。めっちゃお久しぶりです。覚えている人がいるかどうか定かではないですが、ようやく続きを執筆出来そうだな、と思ったので、これから亀更新ですがちまちま進めていこうと思います。月に1、2回の更新になりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。


第14話 最下層の死の騎士

 バハルス帝国に存在する魔法省。その最下層には限られた者達しか足を踏み入れる事は出来ない。

 その最下層への長い階段を、数人の人間達が降りていく。その先頭を降りているのは、人間では無いが。

 アインズは直ぐ後ろを歩くエンリへと声をかけた。

「エンリ、いくら永続光(コンティニュアル・ライト)に照らされているとは言え、足元は若干見えづらいと思う。気を付けるのだぞ」

「はい、分かりました!」

 そのエンリの後ろを、フールーダが慣れた足取りで付き従っていた。更にその背後には数人の弟子達もいる。

「師よ、もうそろそろ、最下層へと到着いたしますぞ」

「うむ」

 そうして辿り着いた最奥、そこは厳重に封が施された重厚な扉があった。フールーダが先頭に立ち、その扉の前で何かの呪文を唱える。すると、鈍い音を響かせながら、ゆっくりとその扉が開かれた。

 冷たい部屋の空気が、アインズの頬骨を撫でていく。最下層とだけあって、その部屋には窓も無い。そして、今回アインズがこの場所へと赴いた目的の存在は、直ぐに見つける事が出来た。

「ヴ、グ、アァァ!」

 ジャラッと金属の音が響く。その身に幾重にも巻かれた鎖が擦れる音だ。

「これが、我らが未だ支配できないでいる死の騎士(デス・ナイト)です、師よ」

 恭しく頭を垂れるフールーダの直ぐ隣で、死の騎士(デス・ナイト)は呻き声をあげながらこちらへ視線を向けていた。

「ふむ、これがカッツェ平野で自然発生したと言う死の騎士(デス・ナイト)か……」

 アインズの後ろから、エンリもそっと彼の姿を見つめた。身動きが取れぬまま、どの位この地に縛り付けられているのだろうか。それを思うと、何とも痛ましいものがある。

「アインズ様」

 エンリの眼差しに、アインズはコクリと一つ頷いた。

「フールーダ、念の為少し離れていろ」

「ハッ」

 アインズの言葉に、フールーダは素早く己の身を移動させる。アインズはエンリと共に、縛り付けられ身動きが取れずにいる死の騎士(デス・ナイト)の元へと近付いた。死の騎士(デス・ナイト)は、アインズが自分と同じ死の気配を纏っている事に気付いたのだろう。先程よりも唸り声を潜め、様子を窺うようにこちらを向いていた。

「どうやら気付いたようだな。そうだとも。私も貴様と同じく死の存在だ」

「ヴァ、アア」

 死の騎士(デス・ナイト)は、アインズの言葉を理解したのか、その赤く灯る眼光を何度か瞬かせる。

「貴様は一人ではない。私がいる。そして、貴様と同じ死の騎士(デス・ナイト)達が、私の国には数多く存在している。私と共に来い。こんな冷たい場所にいるのは、苦しいだろう?」

 そっと骨だけの手を伸ばす。その手をジッと見つめて、死の騎士(デス・ナイト)は不思議そうに首を傾げた。何故助ける、とでも言いたげである。

「大丈夫ですよ、死の騎士(デス・ナイト)さん」

 今まで黙っていたエンリが、口を開けた。

「アインズ様の仰る通り、貴方と同じ方々が私の村には沢山いらっしゃいます。仲間がいるんです。ですから、一緒に私達と此処から出ましょう?」

 細く、しかし沢山の修羅場を潜り抜けて来た手が、死の騎士(デス・ナイト)に巻き付いた鎖へと触れる。

「誰も、貴方を傷つけようとする人はいませんから。なので、心配はいりませんよ」

 そう言って微笑むエンリを、死の騎士(デス・ナイト)は興味深そうに見つめている。エンリには指揮官系の能力があった。それが無意識の内に作動しているのかも知れない。エンリの言葉が死の騎士(デス・ナイト)に届いているのは、アインズの目から見ても分かった。

(これは良い兆候だな)

 エンリの指揮官系の能力がもっと伸びれば、より死の騎士(デス・ナイト)達の統率が取れる。やはりエンリを連れて来て正解だった。

 

死の騎士(デス・ナイト)よ。貴様の力が私には必要だ。共に行こうではないか」

 アインズは、彼の身に繋がれている鎖を、思い切り引き千切った。普通の人間では不可能な事でも、アインズにとって容易い事。彼を苦しめていた鎖は、あっという間に床へと落下する。その一連の流れを、死の騎士(デス・ナイト)は信じられないものを見るような顔で見ていた。本当に自分を此処から連れ出すと言うのか? 眼孔に灯る赤き光が、戸惑うように揺れている。

「貴様に名を与えよう。名は己の身をこの世界へと繋ぎ止める。そして、新たな生を宿す事になるのだ。まぁ、死んでいるのに生を宿す、と言っていいものかは分からぬがな」

 カタリと骨を鳴らし、アインズは笑う。

「エンリ、彼に名を付けて欲しい」

 アインズの頼みにエンリは頷き、死の騎士(デス・ナイト)を見上げた。

「今日から貴方の名は【ヴィゴーレ】。宜しくね」

 悍ましい姿に躊躇せず、エンリはその手に触れた。その瞬間、死の騎士(デス・ナイト)――もとい、ヴィゴーレ――は大きく目を見開く。

 

 自分を助けようとしてくれたアインズ、そして自分に名を授けたエンリ。その両名がヴィゴーレの主人となった瞬間だった。

 

「おおおお……! 師よ、流石でございます!!」

 その様子を見守っていたフールーダは、歓喜の声をあげる。

「長年我々が支配下におけなかった彼を、あっという間に支配下に置いてしまうとは……!」

 興奮を隠せぬフールーダに、アインズは静かに首を横に振った。

「買い被り過ぎだ。私はただ、彼に言葉をかけただけさ。私がコイツと同じ死の存在だったから、話が通じたのが大きい。それ以外は何も特別な事はしておらんよ」

 そう答えると、アインズは再びヴィゴーレに向き合う。

「ではヴィゴーレ。これからは私の元で動く事になる。詳しい事はカルネ村に戻ってから伝えるとしよう」

「ヴァアア!」

 唸り声と共に、彼は力強く頷いた。

 

 

   ・

 

 

「――という訳で、魔法省の最下層にいた死の騎士(デス・ナイト)を、私が引き取る事になった」

 カルネ村に帰還したアインズは、一旦エンリとその場で別れ、自身はヴィゴーレを連れてエ・ランテルの館へと戻っていた。館には常にレエブン候がいる。因みにブレインは、冒険者育成の為に建設中のダンジョンへと遣わせていたのでこの場にはいない。まあ、彼は根っからの脳筋なので、レエブン候のように書類仕事は得意ではないのだ。適材適所で仕事は進めるべきだろう。

「では、そちらの死の騎士(デス・ナイト)は今後カルネ村に配置するのですか?」

 レエブン候の問いかけに、アインズはうむ、と頷いた。

「カルネ村、というかエンリの護衛に付けようかと考えていてな。一応、八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)達は付けているが……」

 彼らは万一の場合も兼ねて不可視化されており、普通の人間達には見えない。なので、目に見える形での護衛も付けておきたいというのがアインズの気持ちでもあった。ブレインや、それこそガゼフを護衛に付けていても良いのだが、今後国を動かしていく上で彼らにも任務を与える機会が増えるだろう。現にブレインがそうだ。

 なので、ヴィゴーレをエンリ専門の護衛に付けようと考えた次第である。

「成程、確かにそれは一理ありますね。今後様々な国とやり取りをしていく中で、彼女に赴いて貰う機会も増えるかと思います。その際に護衛として死の騎士(デス・ナイト)を付ければ、まず何かされる事は無いでしょう」

 そもそも、この魔導国の国民に対し何かしようとする輩がいるかどうか、であるが。

 レエブン候は視線をそっと動かした。ヴィゴーレはアインズの斜め後ろに直立不動で立っている。左腕には紫色のスカーフを巻いていた。恐らく、エンリが巻いたのだろう。エンリが名付けた死の騎士(デス・ナイト)達は他と区別をつける為に全員スカーフを巻いている。その数もだいぶ増えてきたな、とレエブン候は思った。

 彼女に指揮官系の能力が備わっている事は、アインズから聞いている。どうやらその能力も少しずつ成長しているらしい。自分にはそのようなタレントが無いので感覚が分からないが、彼女は自分が変わっていく中でどんな思いを抱えているのだろうか。平凡な村人として生きてきた筈なのに、今ではカルネ村の村長であり、アインズの手助けをする立ち位置にいるのだから。

(今までと全く違う道を歩んでいるのは、私も同じだな……)

 その道の先に何があるのかはまだ分からない。だが、生き残った者として、その先を見届ける義務があるのは確かだ。その為にも、自分は生きねばならない。死んでいった者達の分まで。

 

「レエブン候?」

 何かを思案しているような彼の姿に、アインズは不思議そうに首を傾げた。

「どうかしたか?」

「……あ、いえ、何でもありません」

 レエブン候は思考の海から意識を浮上させると、ヴィゴーレへと視線を向けた。

「取り合えず、彼を今後エンリさんの護衛に付ける事には賛成です。後程、エンリさんには伝えておきましょう」

「うむ、そうだな。ああそれと、君にも護衛をと思ったんだが、暫くは八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)達だけで我慢してくれ。君には今、内政に専念して貰いたいからな。あまり外へ出す事は無いと思う」

 そう告げるアインズに、レエブン候は内心ホッとしていた。これ以上、何かに見張られるというのは流石に息苦しい。しかし、それと同時に、エンリへの負担が大きいのでは? と心配にもなる。

「陛下、その、大変言いにくいのですが、現状、エンリさんへの負担が大きいのではないかと思うのですが……」

 レエブン候の言葉に、アインズは心配ない、と頬杖をついた。

「彼女には、地下聖堂の王(クリプト・ロード)死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)など、知性の高いアンデッド達を彼女の補佐に付かせているからな。城に私がいない時などは彼らに村の事は任せている」

 彼らの宿した英知は常人を凌ぐ。そんな彼らを補佐に置けば、自分がいない時も安心だ。エンリへの負担も減るだろう。そう考えての布陣だった。案の定、その答えを聞いたレエブン候は納得したのか何度か頷いている。

「そうでしたか……それなら問題無さそうですね」

「だろう? 暫くはこの形で色々進めて行こうと思う」

 何もかも初めてなのだ。失敗もするだろうが、一つ一つ着実に進めていくのが大事だろう。国を運営するとなると尚更だ。

「さてと、報告は以上だ。そちらも特には無いな?」

「はい、特に事件等もありませんでしたし、書類もあらかた片付けたので」

 アインズはその報告に対し、満足げに眼孔の灯火を瞬かせた。

 ならば、今日はもう城へ戻っても大丈夫だろう。ヴィゴーレの事をエンリに話す必要があるし、今日一日の村の様子も死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)達に聞かねばならない。やる事は多いが、充実していると感じる。

 

(国を動かすのは大変だが、これも魔導国を発展させてその名を世界に知らしめる為だ。種族に囚われずに、皆が不自由無く暮らせる世界――それこそ魔導国が目指すもの)

 

 アインズは改めて、自分の目指す未来を再確認した。この理想を叶える為に、今後より多くの犠牲を払う事も出てくるかも知れない。それでもアインズは、自分の想いを曲げる気はしなかった。

 

「これから忙しくなるな」

 

 アンデッドが支配する国。それを周囲が放っておく訳が無いのは分かっている。その中で自分は、どんな選択をしていくのか。未来の事は分からないが、せめて、悔いのない選択をしていこう。そう決意するアインズであった。

 

 

 




リハビリも兼ねての文章なので、以前よりちょっと短めになってしまいましたね。これから少しずつ感覚を取り戻していきたい。
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