pixivに投稿していた作品を此方にも投稿しました。内容としては悪ノ娘・悪の召使の二次創作です。ハッピーエンドで終わって欲しいという想いを込めて書きました。

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「逃げ出した悪の娘と召使」

ルシフェニア王国王宮

 

「・・・ああ、私の城が愚民共に汚されていく・・・。」

 

昔々、エヴィリオス歴500年エヴィリオス地方の大国・ルシフェニア王国に悪逆非道の王女がいた。齢僅か14の彼女はその絶対の権力を使い、民衆からありとあらゆるものを搾取し、逆らう者は誰であろうと容赦なく首をはねた。 そして、積もりに積もったその怒りは遂にこのような形となって現れたのである。そして今まさに民衆に狙われているのがその王女、リリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリシュである。

 

「リリアンヌ!!」

「アレン!?」

 

窓から外を見つめていた王女に駆け寄るは彼女の一番の忠臣であり、血を分けた姉弟のアレン=アヴァドニアである。

 

「ねえ、アレン。どういうことなのよ!! 何で愚民共が私の城に押し寄せてるのよ!! 兵士たちは、家臣たちは何しているのよ!!」

 

王女の剣幕に臆すことなく主人であり、姉であるリリアンヌに事実をアレンは告げた。

 

「僕以外、大臣も兵士も民衆に恐れをなして逃げ出すか寝返ったよ。今君の味方は僕たった一人だ。」

「・・・・・え?」

 

一瞬の静寂。

 

「・・・・う、嘘でしょ・・・アレン? こ、こんなの・・・。」

「・・・・・・・。」

 

笑みを全く浮かべない召使。

 

「こ、こんなの・・・暴動でしょ? は、はやく・・・はやk・・・鎮圧しなさいよ・・・王女の・・・・命令よ・・・。」

 

震えながら涙を浮かべる少女。彼女自身分かっているのだ。今起きているのは革命であり、暴動なんて生易しいものではないと。ただ、それを受け入れられない。もしそれを受け入れるということは

 

「アレン・・・・私・・・・死にたくないわ!!」

 

召使に泣きつく王女。少しづつ革命軍の足音や怒号が聞こえてくる。

 

「大丈夫だよリリアンヌ。君は僕が守るから。」

「ほ、本当?」

「勿論さ。僕は君の召使だ。この命燃え尽きるその時まで僕は君の為に尽くす。逃げ出した大臣共とは違うからね。」

 

そう言うと召使は自身の上着を脱ぎ、こう告げた。

 

「僕の服を貸してあげる。直ぐにこれに着替えるんだ。」

「・・・・へ?」

 

王女はその意味を一瞬で理解した。

 

「・・・・アレン・・・もしかして私の。」

「最悪の場合はね。僕だって死ぬのは怖い。死にたくなんてないさ。だけど、君が生きててくれるならこの命、君の為に捧げても悲しくなんてないよ。」

「だ、駄目よ!! アレンがいなくなったら私。」

「あくまで最悪の場合って言ってるだろ!! 可能な限り僕は君と共に逃げる!! だけど、もし逃げ切れないと僕が判断したら僕が君の身代わりになる!! あいつらの目的はあくまで君だ。」

「・・・・・・・うう、アレン。」

 

泣く王女を召使は優しく抱き締める。

 

「大丈夫、僕らは双子だよ。きっと誰にも分からないさ。」

 

 

「・・・・着替えたよ・・・アレン。」

 

服の交換が終わり、王女は召使の恰好で姿を現す。

 

「あはは、流石だね。まるで僕がもう一人いるみたいだ。」

「そ、それで! どうやってここから逃げるのよ!!」

「ああ、それはね。」

 

召使は火を壺に投げ入れた。すると炎が一瞬にして大きくなった。

 

「この城に今火を放った。これで奴らの進行も少しは鈍る。今のうちにジョセフィーヌで逃げるよ!!」

 

召使に手を引かれ王女は走る。死から逃れる為に必死に走った。

 

「・・・よし、ここまでは奴らは来ていないみたいだ。ここまで来ればもう大丈夫さ!」

「ほ、本当よね?!」

「あとはこれを被るんだ! 僕たちの顔を隠す!」

 

そして、二人はジョセフィーヌにまたがると、全力で王宮から逃げ出した。一方の革命軍は突然放たれた炎を前に進撃を中断し、消火作業に当たっていた。そこには何が何でも王女を捕らえて断頭台にかけてやると言う怒りが出ていた。しかし、消火作業に全力を注いだがために馬で逃げる二人を完全に取り逃がしてしまっていた。

 

「これで完全に奴らの監視を突破出来た。王宮さえ出てしまえばこっちのものだからね。」

 

二人は監視の目を掻い潜り、街の外へと逃げ出すことが出来た。

 

「でも、どうしてこんなにスムーズに脱出できたの?」

「それは、僕が君の召使だからさ。」

 

こうして昼夜問わず走り続けた二人は町はずれの森に辿り着いた。

 

「今日から僕たちはこの森の奥深くで暮らすんだ。」

 

森の奥深くに手入れの行き届いた小さな家が建っていた。

 

「こ、こんなところにどうして家があるのよアレン。」

「君を守るためにこんなこともあろうかと隠れ家を用意していたんだ。」

 

その言葉に王女は心を打たれた。

 

「ねえ、アレン・・・。」

「どうしたんだいリリアンヌ。」

「アレン・・・どうして貴方はここまで私に尽くしてくれるの? 愚民共には圧政を強いて革命を起こされた女よ!! 貴方以外の家臣には全員裏切られた女よ!! なのに・・・なのにどうして!!」

 

その場で崩れ落ちる王女。

 

「どうして・・・アレンはここまで尽くしてくれるの? どうして?」

「・・・リリアンヌ。」

 

召使は優しく王女を抱き、耳元で囁いた。

 

「君の笑顔が僕は好きだからだよ。それ以外に理由なんて必要かい?」

「うう、アレン・・・。」

「もう泣かないでよ。君に涙なんて似合わないよ。」

 

ハンカチで涙を拭きながら彼は隠れ家に彼女を招き入れた。

 

「ここでは以前のような豪華絢爛な生活を営むことは不可能だけど、可能な限り僕は君を不自由にはさせないよ。」

「豪華絢爛な物なんていらないわ。」

「? リリアンヌ?」

「今初めて気付いたの。私に一番必要だったのは豪華絢爛な暮らしでも、国でもないってこと。一番必要なのは。」

 

王女は召使の頬にキスをしてこう言った。

 

「アレン。つまり貴方、それだけなの。」

 

でも、今の彼女は違う。どんなに困難であろうとも、大好きな召使と一緒なら乗り越えてやるという想いだ。

 

「・・・ふふ。」

 

笑顔で召使は王女の顔を見る。

 

「実にもったいなきお言葉で光栄でございます。リリアンヌ王女様。」

 

 

一方、城を制圧した革命軍であったが、肝心の王女は逃亡済であり赤っ恥をかかされる結果となった。一部では馬で逃げる二人組の姿を見たという証言はあったが、多数の未確認情報に埋もれ活用されることはなかった。そして、革命軍は戦死した王女派の女性兵士の遺体を王女の遺体であるとして革命成功を宣言するのであった。しかし、後にそれが新たなる混乱を生むことになるのは、また別の話。

 

(完)


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