殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!!   作:☆桜椛★

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第10弾 一応任務達成

遠山くんが俺に電話を掛けて来る約30分前、俺は超アクロバティック三毛猫のみーちゃんを追って、建設中のビルの中を走り回っていた。

 

 

「待たんかゴラァァァアア!!」

 

「なーん!!」

 

 

そしてみーちゃんと俺がコンクリートの階段を登って6階に上がった時、なんとみーちゃんはまだガラスの嵌められていない窓から外に飛び出した。流石にこの高さから飛び降りたら死ぬと思った俺は慌てて手帳にペンを走らせ、『独歩吟客』で鉄線銃(ワイヤーガン)を具現化しながら窓を飛び出した。向かいに建つ廃ビルに向けて鉄線銃を撃ち、落ちる猫を捕まえてそのまま向かいの廃ビルに飛び移る為だ。

飛び出すと同時に撃った鉄線銃のフックは俺にしては珍しく、奇跡的に向かいの廃ビルの屋上の手摺りに引っ掛かった。後はみーちゃんを捕まえて飛び移るだけなのだが……、

 

 

(あれ?あいつどこ行った?)

 

 

飛んだ先にみーちゃんの姿は無かった。もう既に堕ちたのかと下を見てみるが、それらしき影は無い。

 

 

「………ま、まさか?」

 

 

ゆっくりと重力に従って下に落ちて行く中、俺はなんとかさっき飛び出した窓の方を見る。するとそこには、窓のすぐ下を通っていた細いパイプの上に座り、フン!と鼻を鳴らしながらしてやったりとドヤ顔で俺を見下ろしているみーちゃんの姿があった。

 

 

「なーん」

 

テメェやりやがったなこのクソ猫ぉぉおおおぉぉぉぉ!!?

 

 

俺はそのままワイヤーに引っ張られてターザンの如く向かいの廃ビルに向かって飛んで行き、窓を蹴破って廃ビルの中に突っ込んだ。

 

 

ゲボォ!?

 

「あ……」

 

 

なんか木箱の中にあったライフル銃を手に取って見ていたマフィアのボスっぽい青髭生やしたおっさんの後頭部にキックを喰らわせながら。

 

 

「マイボォォス!!オ気ヲ確カニィ!!」

 

「なんだテメェ!?武偵か!?何故ここが!?」

 

「敵襲ネ!お前達!あのガキを即刻始末するヨ!」

 

「撃て撃てェ!!撃ち殺せェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てな訳で、その場にいたヤクザやギャングやマフィアなどの連合軍と銃撃戦になったから近くの部屋の中に飛び込んで、中にあった机なんかを使って簡易的なバリケード作って応戦中ってのが今の俺の状況で御座います。取り敢えずあのクソ猫は三味線の材料にしてやる。

 

 

『なんでそんな事になってんだよ!?お前猫探しに行ってたんじゃ!?』

 

 

遠山くんの驚きの声が電話から聞こえて来るが、こんな馬鹿っぽい事を素直に話せる訳ない。言えねーよ自分でも『俺何やってんだろ?』と思ってんのに、超アクロバティックなみーちゃん追ってたら嵌められて飛び込んだ先でマフィアのボスっぽいおっさんやっちまって銃撃戦になったとか、こんなのあいつ等に知られたら恥ずかしくて死ぬ自信があるわ。

取り敢えず『超推理』で分かった内容を言ってなんとか誤魔化しとこ……。

 

 

「何、ただの偶然だ。それよりさっさとここに来い。俺の推理だと、今君が立っている場所から正面に5m程歩いた場所の壁に、古いカレンダーが貼られているはずだ」

 

『え?古いカレンダー……あ!あったぞ!』

 

 

うん、推理通りだな。んじゃ、次は……。

 

 

 

 

 

 

遠山金次side…

 

 

『そのカレンダーのマスを4日、30日、10日、14日、9日の順に凹むまで押せ』

 

「わ、分かった」

 

 

俺は綾辻の指示に従って、目の前にあるカレンダーのマスを順に押して行く。なんでこの場所に古いカレンダーがある事をあいつが推理出来たのかは謎だけど、4日のマスを指で押してみると、カチッと言う音と一緒に凹んだ。次の30日のマスも押すと、同じ様にカチッと音と共に凹む。

 

 

「うお!?マジか!?本当にこんな場所に仕掛けがありやがった!」

 

「まさかカレンダーが仕掛けのスイッチになっているなんてね……彼はどうやって推理したんだろう?」

 

「…………」

 

 

これを見た武藤達が俺の背後で驚きの声を上げる。まぁレキは相変わらず声も表情も出てなかったけど、心なしか驚いている様に見える。俺だって驚いてるさ。

そして最後に9日のマスを押した。すると……、

 

 

ガコン!!

 

「うわぁ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

 

突然俺達の背後から大きな音がして、特殊部隊の隊員達の悲鳴が上がった。驚いて視線を向けると、なんと倉庫の中央の床が動き出し、数分もしない内に大型トラックも入れる程の地下へと続く坂道となった。

 

 

『その道を真っ直ぐ進み、最初の角を左に曲がれ。行き止まりに辿り着いたら壁にあるキーボードにそこを開いた数字を順番に打ち込めばここに来れる』

 

「お前、なんでさっきの説明でここまで言い当てるんだ?もう推理の域を超えて別の能力的な何かの域だぞ」

 

『早く来るといい。ぐずぐずしていると、終わってしまうぞ』

 

 

綾辻はそう言って電話を切った。『終わってしまう』って……早く行かねーと先に全部片付けるぞって意味か!?それはちょっと困る!下手したら俺達の報酬が下がっちまう。そうなると俺の今晩の飯がもやしオンリーに!

 

 

「おい!早く行くぞ!ぐずぐずしてると綾辻に全部片付けられちまう!」

 

「何ぃ!?それじゃ報酬が下がっちまうじゃねーか!」

 

「なら急がないとね。皆さん!先程武偵の仲間から連絡がありました!その通路の先に密売組織が居るそうです!」

 

 

不知火の言葉を聞いて、突然出現した隠し通路に驚いていた特殊部隊の隊員達が速やかに行動に移った。てっきりそんな馬鹿なとか言われると思ったが、どうやら俺と綾辻の電話のやりとりを聞いていた様だ。そして実際に道が出来たから、信用したんだろうな。

 

 

「って、こうしちゃいられねぇ!俺達も行くぞ!」

 

 

どんどん隠し通路へ隊員達が入って行くのを武藤はそう言って走り出し、俺達も後を追った。

……俺達の分、残ってるか?

 

 

 

 

 

 

「『独歩吟客』!弾箱(バレットケース)!」

 

 

異能力を発動すると、『弾箱』と書かれた紙から光の文字列が溢れ出て、紙は弾入りの箱になった。俺は具現化された弾箱から弾丸6発を取り出すと、『S&W M19』に込めて撃つ。もう異能力で弾を補充するのはこれで10回目だ。いったいどんだけの仲間がいるんだあいつ等?マジでなんとかしねーと本当に終わっちまうぞ!俺の命がな!!

 

 

「チッ!ナンナンダ!?アノ武偵ハ!?異常ナ強サダ!」

 

「このままじゃ埒があかねェ!おい!手榴弾持って来い!」

 

「ふざけるんじゃないヨ!そんな物使ったら、あの部屋の中にある他の爆発物が誘爆してしまうかも知らないネ!」

 

えぇー!?この部屋の中の木箱全部爆発すんのぉ!?冗談じゃねーよあいつ等こんなもんあるのにあんだけ撃ちまくってやがったのか!?馬鹿か!?どれかに当たって爆発したらどうするんだよ!?檸檬型爆弾じゃないから俺の『檸檬爆弾』は機能しないぞ!!殺す気か!?

 

 

(……って、殺す気でいるから撃って来てるのか。畜生ぉ〜!遠山く〜ん!武藤く〜ん!不知火く〜ん!レキく〜ん!お願いだから早く来てくれぇ!!殺されるぅ〜!!)

 

 

でもこんな事思っても漫画やアニメみたいにタイミングよく助けなんか来ないんだよなぁ!ヤッベェ今人生最大のピンチじゃねーの!?どうすんだよこの状況!俺の異能力はこんな場面では回避くらいしか役に立たないぞ!?『超推理』で俺に当たる弾を推理して来る度に伏せてるだけだからな!あぁーもうホントどうしよう!?完全に詰んでるよコレ!責めてあの時くじ引きでもっといいのが当たってたらなぁ!『羅生門』や『夜叉白雪』が有ればあんな連中倒してくれそうなのに!

 

 

「はぁ……『独歩吟客』!手鏡(ハンドミラー)!」

 

 

俺は再び手帳にペンを走らせてそのページを破り取ると、異能力で手鏡を具現化した。せめて敵が後どれくらいいるのか確認したかったので、バリケードの影からこっそり手鏡を出して、鏡に映る敵の数を数えた。

 

 

(えぇ〜っと……ボスっぽい奴が4人、拳銃が20人、機関銃が8人、散弾銃が6人か……下手したらまだまだ増えそう。嫌だなぁ……む!?

 

 

俺が敵の人数を数えていると、敵の背後にある窓の向こうで俺をこんな目に合わせてくれた超アクロバティッククソ猫ことみーちゃんがこちらを覗いているのが見えた。

 

 

(あいつ……!あんなとこでいったい何やってんだ?)

 

 

どうやら向こうも手鏡に気付いているらしく、鏡の中のみーちゃんとバッチリ目が合っている。鳴り響く銃声の中、しばらく鏡越しに見つめ合っていると、みーちゃんはくるりと背を向けて何やらゴソゴソし出した。

 

 

「……?なんだ?」

 

 

しばらく様子を見ていると、みーちゃんはいったい何処から持って来たのかは知らないが紙を口に咥え、こちらを向いた。そしてその紙にはなんと……!

 

 

『その程度なのかね?』

 

 

と書かれていた。しかも端っこの方にご丁寧に肉球の印がある。ふむふむ、あの猫、アクロバット以外に人間の字を描けるのか。しかも意味も理解しているようだ。天才猫だなみーちゃんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのイカレ猫ぶっ殺す!!!

 

 

あの野郎人の命が現在進行形で危ないってのに!な〜にが『その程度なのかね?』だ!!つーかあの紙どっから持って来た!?その字を書くのに使ったであろう墨と筆はどうした!?そしてなんでそんな無駄に綺麗な文字書けるんだ!?最早猫が出来る範囲を完璧に飛び越えちゃってるよ!!

 

取り敢えず俺はあのクソ猫に向かって『S&W M19』に入ってる6発の弾丸を連射した。だがこんな時でも俺の射撃センスの無さは健在で、全てがあらぬ方向へ飛んで行ってしまった。だが俺は諦めずリロードするとまた連射した。しかしこれもあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。

 

 

「………っ!全弾撃ち尽くすまで撃ってやる!」

 

 

もう『独歩吟客』用の手帳のページ全部使い切ってでもあのクソ猫に1発御見舞いしてやる!

 

 

 

 

 

 

違法密売組織のボスside…

 

 

ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!

 

「ぎゃあああああ!!?て、手がああああ!!」

 

「何してるネ!!さっさとあのガキを始末するヨ!」

 

「グワー!ヤラレター!!」

 

 

チッ!なんなんだあのガキは!?今日ウチに武器やドラッグやらを買いに来た世界のクズ共と、ウチの部下達が次々とやられて行く!クズ共は兎も角、ウチの部下達はBランク武偵すら打ち負かす程の猛者揃いなんだぞ!なのになんでたった1人のガキに半数以上やられるんだ!?しかも奴はこっちを見もしねーで弾を全て当てて、こっちの弾は全て当たらねぇ!予知能力でも持ってやがんのか!?

 

とにかくこのままじゃマズい。このままクズ共と一緒にあのガキといつまでも殺り合ってたら、あのガキが呼んだ筈のサツ共が仲間を大勢引き連れて俺達をパクリに来ちまう!そうなる前になんとかあのガキを始末して、最悪商品を置いてでも隠し通路使って逃げねーと!

 

 

「おいテメェ等!とっととそいつをぶち殺せ!このままだとサツ共にパクられちまうぞ!!」

 

「し、しかしリーダー!あのガキ異常な強さで、俺達じゃ歯が立ちません!」

 

「ソレニアノ部屋ハ爆発物ノ入ッタ木箱ダラケ、爆弾モ使エナイ」

 

「下手をすれば我々も吹き飛ばされるヨ。ワタシここで死ぬ気、無いネ」

 

 

クソ!あのガキ、まさか知っててあの部屋の中へ飛び込んだんじゃあるめーな!?そもそもなんでこの場所が分かったんだ!?ここは港も高速道路も近くには無ーし、警察も『デカい取引をする場所には不向きだから居ないだろう』なんて考えるだろうからここに大金払ってこっそりアジトを作ったってのに!

 

 

ガウンガウンガウンガウンガウンガウン!!!

 

「ナ、ナンダー!?」

 

「や、野郎いきなり激しく抵抗し始めたぞ!?」

 

「で、でも1発も当たらないどころか、変な方向に飛んでってるネ。自棄になったカ?」

 

(自棄になっただと?あれだけの腕が有って、弾だってこれだけ有りながら、自棄になるものなのか?)

 

 

奴の突然の行動に俺が首を傾げていると、突然頭上からビシビシッ!と言う音がしたので視線を上に向けた。すると天井にはあちこちに亀裂が入っており、パラパラと天井のコンクリートの欠片が降って来ていた。

俺は何かヤバいと感じてその場を離れると、奴の放った1発の弾丸が天井にぶち当たり、天井から大きな瓦礫が幾つか降り注いだ。

 

 

「ぎゃっ!?」

 

「グエッ!?」

 

「な、何ぃ!?」

 

 

俺は目を疑ったぜ。なんせ降って来た瓦礫は全部世界のクズ共と俺の部下達全員の頭に直撃して、1人残らず気絶しちまったんだからな。その時点であのガキには敵わないと悟った俺は、俺1人でも逃げ延びようと隠し通路の入り口に向かった。

 

だが………、

 

 

「な、なんで………?」

 

「武偵だ!銃を捨てて、両手を上に挙げろ!!」

 

「こちら突入チーム!違法密売組織のリーダーを発見!信じられません!本当に彼の言っていた推理通りです!」

 

 

それは隠し通路から現れた武偵とサツの特殊部隊の登場によって、叶う事は無かった。

 

 

 

 

 

 

綾辻行人side…

 

 

なんか我武者羅に撃ちまくってたら敵がみんな気絶してた。おまけに遠山くん達もやっと来たし、クソ板のクエストも達成してなんとか俺の命は助かった。

でもクソ猫に弾は1発も擦りもしなかったし、クエストの成功報酬がまさかの1円玉100枚と言う悪意しか感じない内容だったのが解せぬ。

 

 

「いや〜助かったぜ綾辻!ありがとな!」

 

「ホント凄えなお前の推理!驚いたぜ!」

 

「うん、僕も驚いたよ」

 

 

うん、普通じゃ無いから『超推理』って名前の異能力なんだけどね。まぁ褒められて悪い気分じゃ無いからいいんだけどさ。

 

 

「…………」ジー

 

 

てかなんかレキくんがめっちゃこっち見てるんだけどどうしたの?俺の顔になんか付いてんの?せめてなんか喋って。

 

 

「兎に角これで報酬ゲットだ。ホントにありがとな!」

 

「……いいさ、気にするな。俺はもう行く。まだやる事が残ってるからな」

 

 

後の事は遠山くん達に任せて、俺は取り敢えずあのクソ猫を三味線の材料にしに行こう。しかし滅茶苦茶頭痛いからしばらくは『超推理』は無理だな。頭痛薬のんでおくか。

 

 

「すみません。猫探しの任務を受けて下さった、綾辻行人様でしょうか?」

 

「……ん?」

 

 

廃ビルを出てしばらく歩いていると、背後から女性の声がしたので振り返った。そこにはいかにも秘書って感じの眼鏡を掛けた黒髪の女性が立っており、彼女の腕の中には、なんとみーちゃんが居た。

 

 

「………貴女は?」

 

「初めまして、私はこちらのみーちゃんの捜索依頼を出させていただきました、春野(はるの)菜穂美(なおみ)と申します。この度は任務を受けて下さり、ありがとうございました」

 

 

みーちゃんの飼い主か?まぁ捕まえてくれたならありがたい。三味線の材料に出来なかったのは残念だったが、もう正直疲れるからみーちゃん探しはしたくないしな。

 

 

「こちらは今回の任務の報酬です。お受け取り下さい」

 

 

そう言って彼女は2万円が入った封筒を渡して来た。ぶっちゃけ捕まえられなかったからちょっと受け取るのに抵抗があったが、なんか彼女から『受け取れ』って感じのオーラを何故か感じたから大人しく頂いた。

 

 

「では私はこれで失礼いたします」

 

「なーん!」

 

 

彼女はそう言ってペコリと頭を下げると、みーちゃんを抱えて去って行った。

 

 

「……出来れば、もう逃がさないでくれたまえ」

 

 

俺はポケットから取り出した水蒸気煙管を吹かしながら、切にそう願った。

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