殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!! 作:☆桜椛★
この世界で目覚めてから早くも数年が経過して、俺は今や9歳の小学3年生になった。病院を無事退院出来た俺は、
爺さんの名前は
さて、ここで残念なお知らせが幾つかあります。俺は病院を退院するまで、医療技術が妙に現代に近いレベルまで発展している剣と魔法のファンタジー世界に転生したと思っていたんだが、その考えは病院を出て目にした光景によって粉々に粉砕されてしまった。
並び建つコンクリートの巨大な建造物、アスファルトで舗装された道、その上を走る様々な形をした車両、空を見上げれば青空に一筋の白い雲を作る航空機。
はい、御察しの通りここはファンタジー世界じゃありません。普通に現代日本です。
つまりあのクソガキ俺を『殺人探偵』にしやがった挙句、普通にバリバリ電気や携帯やガスが普及してる現代日本に転生させやがった。こんな世界の何処に魔法や超能力がありますか?ねーよそんなもん!百歩譲って超能力があったとしても、そんな奴がそこら辺にゴロゴロ居る訳ねーだろ!!これで使えると思ってた『人間失格』が特典失格になっちまったじゃねーか!
しかもだ!あの事件解決過去の見通し未来予知なんでもござれの異能力『超推理』!爺さんから貰った度無しの伊達眼鏡で何度か試したけど、能力を解除した後滅茶苦茶頭が痛くなるんだよ!しかも前に『超推理』でなんで『超推理』使った後に頭痛がするのか推理したら、『無理矢理乱歩さん並みの観察力や推理力に上げているから脳が悲鳴を上げている』って答えが推理出来たんだよ!凄いけど痛いなこの異能力!?
はぁ……まぁ、『独歩吟客』はこの世界でも便利だよ。使えた時はマジで嬉しかった。買ってもらった大きめな手帳のページに『
まぁ、そんな風に『独歩吟客』で遊んだり、爺さんが書いた推理小説を頭痛耐性付ける為に『超推理』で推理したりして過ごしていたある日、俺宛に1通の手紙が送られて来た。今俺はその手紙を自室に置かれている机の上に置いて睨み付けていた。
送り主の名前はないが、手紙には道化師を模したマークの印が押されている。『超推理』を使うまでもない、絶対あいつだ。
「……仕方がない。読んでみるか」
俺は封筒の封を切って中の手紙を読んだ。そしてやっぱり送り主はあのクソガキだった。
『綾辻行人くんへ
やぁ、久しぶりだね。神様だよ。新しい体は気に入ってくれたかな?実は伝え忘れていた事があったから手紙を書く事にしたんだ。まぁ念話とかそういうのでも良かったんだけど、面倒臭いし、疲れるから別にいいよね!』
(そう言うとこが神様っぽくないんだよクソガキ。で?伝え忘れていた事ってなんだ?この世界がファンタジー世界じゃない事はもう何年か前から知ってるんだが?)
『君にあげた4つの異能力の特典と一緒に、君には呪いみたいなのがかけられる事を伝え忘れてたんだ。2つで1つの呪いだから、君の場合は2つの呪いみたいなのがかけられるよ』
「…………」
(はぁ!?)
俺は読み間違いではないかと何度も何度もその部分だけ読み返した。だが何度読み直しても『呪い』じゃなくて『祝い』と書かれているとか、そんな感じの書き間違いや読み間違いはなかった。
『では先ず1つ目!内容は『檸檬爆弾を3分以内に4個爆破すると、人格が梶井基次郎みたいになる』だよ!つまり一人称が『僕』になったり、いきなり『うははははは!!!』なんて笑い出したりするよ。これで梶井基次郎の格好してたらしてたら完璧にコスプレ出来るね☆』
うわぁマジか!?何その地味に嫌な呪い!?つーか俺が梶井みたいになるってキャラ崩壊ってレベルじゃ済まないだろ!?で、でもまぁ?俺は檸檬型爆弾なんて持ってないし?しかもそれを3分なんてカップ麺出来る時間以内に4個も爆破させるなんてする訳ないでしょ。
『はいでは続いて2つ目!『ミッションの発生』だよ!まぁこれは君にもメリットがある。簡単に説明すると、これは不定期に発生するミッションをクリアしなければならないと言うもの。発生したら目の前にミッションの内容が書かれた光の板みたいなのが現れるけど、これは君にしか見えないから安心してね!そしてそのミッションをクリアしたら御褒美が貰えるよ♪まぁ、失敗したら大変な事になるから、気を付けてね〜☆』
うん?いまいちよく分からん。つまりあれか?ゲームとかでやるクエストみたいなものか?なんか失敗したら大変な事になるって書かれてるけど、最後の『気を付けてね〜☆』で一気に大丈夫そうに思っちまった。
『後、君がその世界に行ったのは僕が態々ファンタジー世界からその世界に行き先を変更させたからだよ♪元の日本ではないけど、日本にかなり近い世界だから感謝してね☆因みにこの呪いはこの手紙を読み終えた後から始まるからね。では、良い人生を〜☆』
あいつ態とやりやがったのかぁ!!いやまぁモンスターとかがそこらじゅうを徘徊してるよりはよっぽどいいけどさ!?これじゃあ『人間失格』を魔法や超能力消せる様にした意味がねーだろうが!
「……ん?裏に何か書かれているな」
俺は手紙の裏側にもまだ何か書かれているのに気付き、手紙を裏返して読んでみた。どうやら追伸の様だ。
『P.S.神様ってね、人の心が読めたりするんだ☆クソガキで悪かったね〜あっはっは(殺)』
(心読まれたぁ!!心の中でずっとあいつの事クソガキ呼ばわりしてんのバレてたぁ!!)
ヤッベ〜!手紙の文章から神様の怒りが伝わってくる!そりゃこんな扱いになるよなぁ!?だって追伸の最後に『(殺)』って書かれてるもん!!怒り通り越して殺意抱かれてるもん!!
シャラン♪
「………っ!?」
俺がクソガ…神様に心の中を読まれていた事に軽く絶望していると、鈴のなる様な音と共にいきなり目の前に半透明なプレートの様なものが出現した。ちょっとびっくりしたけど、もしかしてこれが手紙にあったミッションか?
俺は恐る恐るその板に書かれている内容を読んでみた。
『1分以内に手紙を燃やせ!ーーー残り時間45秒』
プレートにはそう書かれていた。カウントダウンがもう始まっている。成る程、これはチュートリアルみたいなものか。どうやら成功報酬と失敗によるペナルティも確認できる様だな。どれどれ?
『成功報酬ーー現金500円。クエスト失敗ーー事故死』
(………うん?)
俺は見間違いかなと目を擦ってからもう一度読む。
『クエスト失敗ーー事故死』
見間違いじゃねぇぇぇええ!!?
「『独歩吟客』!!
俺はすぐ様常に持ち歩く様にしていた手帳にペンで『点火器』と書き、そのページを破いて異能力を発動させる。すると紙から光の文字列が溢れ出て、紙はライターになった。
俺は慌ててそのライターで手紙に火を点けると、手紙は一瞬で灰になった。バッ!と宙に浮かぶプレートを見ると、残り時間は僅か2秒。プレートは手紙が灰になったと同時に500円玉になった。
チャリン!と音を立てて床に落ちる硬貨を見て、俺は座っていた椅子に体を預けてやや暗い色をした木製の天井を見上げた。
(あっぶねぇぇぇええ!!なんだこのクソ板!?成功報酬とクエスト失敗によるペナルティの差があり過ぎるだろ!!なんだ500円か事故死って!?俺の命は500円か!?割に合わねぇ!!)
こんなのが不定期に起こるのか………、この世界で無事に寿命を迎えられるのかな?俺?
★
綾辻源蔵side…
儂の名は綾辻源蔵。今は数々の推理小説を書いている爺いじゃよ。数年前、儂は息子とその妻を事故で亡くしてしまった。それはそれは残念じゃったよ。
じゃが、唯一良かったのは孫の行斗が生きておった事じゃ。残念ながら、孫も記憶喪失になってしまっておったが、やはり孫は息子の血を濃く受け継いでおった。
儂の息子は、普通の人間より優れた推理力と観察眼を持った『武偵』じゃった。
武装探偵ーーー通称『武偵』
凶悪化する犯罪に対抗して新設された国家資格であり、武装を許可され、逮捕権を有すなどの警察に準ずる活動を可能とし、報酬に応じて迷子の子猫探しから凶悪犯罪組織の制圧まで、“武偵法”の許す範囲において、あらゆる仕事を請け負う謂わば“なんでも屋”じゃ。
そんな危険と隣り合わせの武偵である儂の息子は、武偵を育成する教育機関『武偵校』を卒業した後、『世界一の名探偵になる!』と豪語し、私立探偵として多くの難事件を解決して来た。
そんな息子の子供、行斗にはそれと同等……いや、確実にそれ以上の才能がある。それに気付いたのは行斗を引き取ってから数ヶ月が過ぎた頃じゃ。
その日、ちょうど儂らが住んでいる地域に台風がやって来て、行斗の通う幼稚園が休園になり、行人が自分の部屋で本を読んでおる間、儂は書斎で新しい推理小説を書いておった。
事件の舞台はとあるストーカー被害に悩まされている女性が住むマンションの1室。彼女はある日、私立探偵である主人公に調査を依頼して自宅に案内すると、彼女の部屋でストーカーをしていた男性が背中に包丁を刺されて死んでおった。
部屋はしっかりと鍵がかけられており、窓から入ろうにも彼女の部屋は4階で、窓を割られた形跡も無い。女性は出かける前にしっかりと施錠されているのを確認してから外出しておった為、密室殺人となっておる。なかなかの自信作じゃった。
休憩を終え、再び続きを書こうとペンを取ったちょうどその時、行人が儂の書斎に入って来おった。
『なんじゃ?行人。儂に何か用かの?』
『何、ついさっき読んでいた小説を読み終えてしまってな。続編を読もうと思って取りに来たのだが……それは小説を書いているのか?』
行人は儂が書いていた推理小説に興味を持ったらしく、読ませてくれと頼んで来おった。儂も別に読まれて困るものでも無かったので、その時はまだ殺人事件が起き、室内の状況くらいしかまだ書けておらなんだが、その書きかけの原稿を行斗に読ませてやった。
しばらく黙って原稿を読んでいた行斗じゃったが、ポケットから儂がプレゼントした息子が儂が書いた推理小説を読む時にかけていた眼鏡を度無しにした眼鏡を取り出し、それをかけた。行人は少し沈黙すると……、
『……犯人は死んだストーカーの男自身だな。氷で作った土台に包丁を設置し、部屋の暖房を入れっ放しにしてから椅子に登り、背中から飛び降りる。するとその衝撃で氷が砕け、バラバラに飛び散った氷の破片は暖房によって温められた部屋で溶けて消える。つまり自殺だ。どうだ?当たっているだろう?』
『………っ!?』
儂は自分の耳を疑った。とうとうボケたかとも思ってしまった。今でも信じられんしな。行人はまだ室内の状況くらいしか書いておらんのに、行人は儂が考えておった犯人どころか、そのトリックまでも完璧に推理しおったのじゃ。
儂はまさかと思い、過去に書いた推理小説の数々を行斗に読ませてみた。するとどうじゃ?行斗はその全てを現場の状況や僅かな情報で、真犯人から犯行時刻、犯行手口、証拠のありか、凶器の隠し場所、更には犯人がどうやれば自分から証言するかなどを完璧に推理しおった!
しかもじゃ、行人め。儂の自信作の謎を全て完璧に解き終えた後、眼鏡を外して額に手を当てながら、溜め息を吐いたんじゃ。
まるで儂が書いた推理小説のレベルが、『この程度なのか』と残念がる様に。(『超推理』使って頭が痛かっただけ)
その時儂は確信した。この子はきっと息子の意思を継いで世界一の名探偵になるじゃろうと。
それに最近、行人は体を鍛える様になった。どうやら将来の為に体作りをしておる様じゃ。同年代どころかもっと年上の子も泣いて逃げる様な厳しいやつをのう。もう少し成長したら、儂の友人が師範を務めておる道場にでも行かせてやろうかのう?ほっほっほっ♪将来が楽しみじゃ。
む!行人のやつめ、今日も鍛えに行く様じゃのう。頑張るんじゃぞ行斗!儂もお前が満足する様な推理小説を書いて待っとるからな!
(あのクソ板ぁ!!なんでサイ○マのトレーニングを毎日毎日俺にやらせるんじゃい!俺をワンパン○ンにしようってのか!?あれはサイ○マがおかしいのであって!普通の人間は同じトレーニングやっても隕石ぶっ壊せる程強くならねーんだよ!畜生あのクソガキピエロ!いつか会った時はその顔面ボッコボコにしてやるからなぁぁぁあああ!!!)