殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!! 作:☆桜椛★
あの
あの手紙が送られて来たからというもの、この世界に来てからなりを潜めていた俺の巻き込まれ体質も復活し始め、さっきだって学校の帰りにどう見ても堅気じゃ無い頭に『ヤ』のつく人達にぶつかって、追いかけ回された。まぁあのクソ板のおかげであっと言う間に撒けたがな。
俺は家に入ると自室に入り、机の上に鞄を置くとベッドに倒れ込んだ。もう疲れた。今日は珍しくあのクソ板が仕事してないし、このままゆっくりと……、
シャラン♪
(寝れると思ったらこれだ畜生……)
もう聞き慣れた鈴の様な音に顔をしかめつつ、俺は小さく溜め息を吐くとベッドから起き上がり、宙に浮かぶ半透明のプレートを見る。今度はどんなクエストをやらせる気だ?またワンパン○ントレーニングか?もう苦にならなくなっちまったぞこの野郎。おまけにいつの間にか表情筋もあまり仕事しなくなったしな!
『東京武偵校の試験に合格しろ!』
東京武偵校?確か前世には無い過激になった警察みたいな連中を育成する学校だったっけ?うわぁ、嫌だ。だってあそこのパンフレット見たけど、あんな物騒な学校前世じゃ聞いた事無いぞ。なんだよ『校則として拳銃・刀剣の携行及び『防弾制服』の着用が義務付けられている』って?そんなおっかない所に入学なんてしたら、俺の命がただでさえ危ないのに余計に危なくなっちまう。
(でも行かないと死ぬって書かれてるんだろうなぁ。今度はどんな死に方が書かれてるんだ?昨日は転落死だったが……?)
俺は今回のクエストの成功報酬と失敗した時の死に方を確認した。
『成功報酬ーー檸檬型爆弾×1。クエスト失敗ーー異能力『きのうの影踏み』』
「ふむ?今回はいつもと違うな…」
成功報酬が檸檬型爆弾ってのは敢えて気にしない。だってこの間成功報酬で国木田くんが使ってた『
問題はクエスト失敗時のペナルティだ。『きのうの影踏み』ってアレだよな?外伝に登場する内務省異能特務課に所属してる映画の影響受けやすい新人エージェントの
あー、でも護身用と考えればいいか?俺が相手を殺そうと思うなんて、それこそ自分の命が滅茶苦茶ヤバい時だけだろうし、もしかしたら操れる状態の方を貰えるかもしれない。だとしたらこれ程心強い護衛はそうそう居ないだろう。
(あれ?これクリアしなくてもいいのでは?)
俺は少し考えた結果そんな答えに辿り着いた。いやだってそうじゃん?クエストをクリアしちゃったら武偵校と言う物騒な学校に通わされる挙句、成功報酬が檸檬型爆弾が1個だろ?対して失敗したらそんな学校ではなく普通の学校に通える上に、護身用としてなら心強い異能力が貰える。
うん、これはクエストクリアしない方が断然良いな。制御出来る可能性があるなら断然失敗した方がお得だ。だって檸檬型爆弾なんて普通の学校では使わないし、武偵校に行ったとしても使う機会なんて無いだろ。
(よし、じゃあ今回は失敗する方向で!)
俺が心の中でそう決心すると、足下にある俺の影がゆらりと蠢いた。俺がそれを見て驚いている間にも影はどんどん形を変え、やがて巨大な鎌を持った黒い獣の様な姿をした不気味な異形となって俺の影から出で来た。
そう。これこそが、辻村深月の異能力……、
「『きのうの影踏み』か……」
うっわ凄い迫力。実物見れて結構嬉しいけど、思ったより怖いな。ま、まぁ?これから俺の異能力になるなら今の内に慣れておかないとな。こんなん夜中に見たら気絶するっての絶対。
ほら、『影の仔』が早速大鎌を振り上げて、俺の首目掛けて振り下ろして……って!?
(危なっ!!!)
俺は咄嗟にしゃがんで回避し、大鎌は俺の頭上を通り過ぎて空を切った。後少し遅かったら首が跳んでいたので、嫌な汗がだらだらと滝の様に流れ始めた。
(こ、殺す気か!?何冷静に俺の首刈り取ろうとしてんだよ!後少し回避遅れたら死んでたぞこの野郎!)
『影の仔』はゆっくりと俺の方を向くと、再び大鎌を振り上げやがった!ま、まさかあのプレートに書かれた『クエスト失敗ーー異能力『きのうの影踏み』』って、失敗したらこいつに斬り殺されるって事か!?俺が失敗する方向で行く事を決心したから早速俺を殺しに来たの!?凄い働き者だな!サボれ!!
働き者な『影の仔』は、俺がそう心の中で叫んでる間にもゆっくりと大鎌を振り上げ、今度こそと俺の首を斬り跳ばそうとする。
「(ちょちょちょちょ!?ちょっと待て!分かった!分かったから!)武偵校に入る。だからお前はさっさと影に戻れ」
『……………』
『影の仔』はじっと大鎌を振り上げたまま俺を見下ろし、しばらくすると俺の影の中に入って行った。命の危機が一時的にとは言え去った事に俺は安堵し、部屋の椅子にどっかりと座り込んだ。
「………武偵校、受験するか」
最悪、ズルとかインチキとか言われようが頭痛薬飲みまくってでも『超推理』使いまくろ。死ぬよりよっぽどマシだわ。
★
綾辻源蔵side…
「爺さん、話があるんだが……」
「む?行人か。どうかしたのかの?まだ小説は書き終えておらんぞ?」
儂が新しい推理小説を書いておると、行人がそう言いながら書斎に入って来た。儂がまだ小説は書けておらん事を告げると、行人は首を横に振った。
「今回はその件で来たんじゃない。少し知らせておきたい事があってな」
「ふむ……?」
儂は取り敢えずペンを止め、行人に向き直った。行斗は相変わらず無表情ではあるが、何やら真剣な雰囲気を纏っておる。まるで自分の命を懸けた戦いに向かう決意をしたかの様じゃ。(正解)
「して、知らせておきたい事とは何じゃ?」
「あぁ、俺の進路なんだが……東京武偵校にする事にした」
「……っ!そうか」
やはり行人は武偵校に通う事に決めおったか。行人よ、お前はやはり息子と同じ道を行くと言うのじゃな?ならば、聞いておかねばならぬ事がある。
「行人よ。本当に武偵になるのか?武偵は危険と隣り合わせじゃ。何が起こるか分からん。行人、お前自身が命を落とす可能性も高い。それでも行くのか?」
儂の問いに対し、行人は何やら不満そうな顔になった。まるで、『何を当たり前な事を言っているんだ』とでも言いたそうな顔にな。
「行くと決めたから報告しに来たんだ。今更変えるつもりは無いぞ。(だって殺されるもん)それに、危険と隣り合わせの日常なんてものは、今更何の苦にもならないしな。(だって前世から犯罪に巻き込まれまくってるし)」
「……っ!クククッ♪そうか、そうか。少し待っていなさい」
あれ程決意を固めておったとはな。昔の息子にそっくりに育ちおって。
儂は昔を思い出しながら席を立ち、行斗に渡すために前々から用意しておったあるものを取りに書斎を後にした。きっと、行人も喜ぶじゃろう。
★
綾辻行人side…
「ほれ、コレをやろう。大事にするんじゃぞ」
俺は書斎に戻って来た爺さんに渡されたものを見て驚いた。まぁ、表情はあまり変わっていないだろうが、とにかく驚いている。
俺の前に置かれたのは、薄い色のレンズの遮光眼鏡、イエローオーカーをベースに襟とエレポットが赤いデザインのジャケット、朱色ベースのチェック柄の縁取りの入った白シャツと、灰色のニットベスト。くすんだ橙色のチェック柄のニッカポッカズボンに、ベージュのブーツと黒いキャスケットだ。
うん、まぁ……そういう事だ。
「(綾辻行人の衣服ぅぅ!?何でこんなもんがあんの!?)……爺さん。これは?」
「うむ、それはお前の父親が仕事の時にずっと着ていたものでな。全て防弾繊維で作られたものじゃ」
マジか顔も知らぬ父よ。貴方はこんなものを普段仕事の時に来ていたのですか?つーか防弾繊維で出来てるのに軽いなこの服。本当に銃弾防げんのか心配なんだけど。
「試験の日にでも来て行け、あそこは銃声が絶えないらしいからのう。あぁ、それとこれも渡そう」
「……爺さん、俺が何歳か知っているか?」
爺さんが差し出して来たのはなんと煙管だった。俺はまだ中学生だぞ、未成年の俺が煙管なんて吸えるか!なんてもんをプレゼントしてんだよ。
「安心せい。これはお前の父親が愛用していた煙管を知り合いに頼んで改造してもらったものじゃ。見た目は煙管じゃが、出る煙はただの水蒸気じゃ。勿論これで刀を受け止めたり、銃弾を弾く事も出来る」
(誰だよそれ改造したの!?俺にはこんな細くて短いやつで刀を受け止めたり銃弾弾いたり出来ないぞこの野郎!俺に何求めてんだ!?)
俺は名も顔も知らぬこの煙管の改造を引き受けた爺さんの知り合いにそう心の中で叫んだ。
でもまぁ、着てみたい気持ちはある。いやだってあの『殺人探偵』綾辻行斗になったんだから、彼が着ていた服を着てみたいじゃん?
と、言う訳で……、
「あぁ、有難く受け取ろう」
俺は爺さんに礼を言ってから、渡されたものを持って書斎を後にした。部屋に戻った俺は、早速渡された綾辻行斗(原作)の衣服を着て、鏡の前に立ってみた。うん、見た目はちょっと若過ぎるが、完璧に『殺人探偵』の綾辻行人だ。
「ふむ、なかなか似合うな」
ヤッベ、結構気に入ったわコレ。
★
ーーー東京武偵校、試験当日。
今日はいよいよ試験当日。なんか時間が
俺は早速受付で手続きを済ませ、俺は自分の試験会場を探す。この武偵校はレインボーブリッジ南方に浮かぶ南北およそ2キロメートル・東西500メートルの人工浮島を丸々学校にした所で、『
俺が受けるのは探偵学部だ。この学部には、探偵術と推理学による調査・分析を習得し、外部からの依頼で迷子や行方不明者を探したり、未解決事件のプロファイリングなども行う『
む?探偵科じゃないのかだって?俺に未解決事件解決させて犯人を全員『Another』で皆殺しにさせる気か?絶対に行かんぞ俺は!
「しかし広いなここは。俺の試験会場は何処だ?」
「ん?おいそこのお前!そんなとこで何しとる!?もう試験が始まるんやぞ!」
自分の試験会場を探していると、長い髪をポニーテールにしたスーツ姿女性がなんか逆らっちゃいけない不良か極道っぽいオーラ放ちながら近付いて来た。
「済まない。試験会場の場所が分からなくてな」
「はぁ!?ったく地図もろくに読めへんのかアホンダラ!中学で何習って来たんじゃ!」
主に普通の国数社理英の5教科ですが何か?つーか誰だよアンタ?マジモンの極道か何かか?いや、でもスーツ来てここに居るって事はまさか教師か?武偵校ってこんな人ばっかなのか?
「……あん?お前のその服、防弾仕様か?」
「そうだが?」
「だったらさっさと来んかい!!もうお前以外の受験生は集まっとるんやぞ!!」
「グェッ!?」
ちょ!?死ぬ死ぬ死ぬ!ちょ、待って!首!首絞まってる!アンタ教師なんだろ!?受験生殺す気か!?てか力強っ!?どんな筋力してるんだよアンタ!?
「あぁ、
「じゃなかったらここで防弾繊維で出来た服着とらんやろ!オラ!さっさと準備しろ!それともここでいっぺん死んでみるか!?」
「ゴホッ!ゴホッ!……あぁ、分かったよ。連れて来てくれてありがとう」
俺は咳き込みながらも、取り敢えず少しでも離れようと乱暴な蘭豹先生に一応礼を言って試験会場に入った。俺はまだ死にたくないんでね。
試験会場には大勢の受験生達がいた。が、何か様子変じゃね?みんな異常に殺気立ってるし、柔軟とか、瞑想とかしている人居るし、何故か銃の整備っぽい事やってる奴居るし……って!?
(ちょっと待てやぁ!!)
何で探偵学部の試験会場にこんな奴等が集まってんだよ!?明らかに探偵とはかけ離れた見た目の奴等ばっかじゃねーか!何で柔軟してんの!?何で銃の整備してんの!?何でそんなに殺気立ってんの!?
(ま、まさか。ここって……?)
超絶嫌な予感を感じまくっていると、先程俺を殺しかけ…いや、この試験会場に連れて来た蘭豹とか言う教師がみんなの前に立った。
「全員揃ったな!じゃあ、これより!強襲科の入学試験を始める!!」
(強襲科かよぉぉぉおお!!?)