殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!!   作:☆桜椛★

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第5弾 異能力『Another』

遠山金次side…

 

 

俺が(綾辻行人)を見付けたのは試験が始まってからしばらくした後だった。殆どの受験生を倒し、残りあと少しと言うところで、偶々この階で彼を見付けた。初めは気付かれていない内に死角から奇襲して意識を奪うつもりだったんだが、彼の敵の弾や罠を利用して他の敵を巻き込んで自滅させたりする戦い方に興味が湧いて、隠れながら跡をつけた。

 

最初は完璧に尾行出来ていると思ってた。実際俺が尾行を始めてから数回交戦し、残りが俺と彼だけになるまで彼は俺に気付いた様子は無かったからな。

 

 

「はぁ……いつまで続けるつもりだ?」

 

(……っ!?)

 

 

最後の交戦が終わった後、彼は一度もこちらを見る事無く溜息を吐きながら俺にそう話し掛けて来た。だが、どうやら最初から気付かれていた様だった。しかも俺の尾行は彼にとって溜息が出てしまう程甘いものだったらしい。

今の俺は、とある状態(・・・・・)になっていて、普段の倍以上は尾行は上手く出来ている筈だったんだが……彼には敵わなかったらしい。

 

ヒステリア(H)サヴァン(S)シンドローム(S)

 

性的興奮によってβエンドルフィンが一定以上分泌されると、神経伝達物質を媒介し大脳・小脳・精髄といった中枢神経系の活動を劇的に亢進され、思考力・判断力・反射神経などが通常の数倍以上になる特異体質。これが発動している間を、俺は『ヒステリアモード』と呼んでいる。

 

実は試験開始前にちょっと失敗してしまって、ヒステリアモード状態で俺はこの試験を受けていた。お陰で射撃精度・判断力・反射神経・思考力・その他諸々が普段の倍以上に跳ね上がり、これまで無傷で他の受験生を圧倒して来た。

そんな状態になっている俺の尾行に気付いていたなんて驚きだが、予想出来ていなかったわけではない。バレているのなら隠れてる必要も無いと判断して、銃を彼に向けながら物陰から出て行った。

 

 

「フッ……やっぱり気付いていたのか」

 

 

彼はゆっくりと俺の方を向く。遮光眼鏡越しに向けられる彼の視線は氷の様に非常に冷たい。しかもゴム弾とは言え、銃口を向けられているにも関わらず、彼は表情一つ変えず、銃も構えない。つまり彼にとって、『ヒステリアモード』の俺すら、他の受験生と変わらないのだろう。

 

 

「よく分かったな。まるで背中に目でもついているかの様だ」

 

「そんな人間がいる訳がないだろう」

 

 

呆れた様子でそんな事を言う彼に思わず笑ってしまった。

 

 

「ははっ!確かにそうだな。さて、じゃあそろそろ俺ともやり合おう。もうこの建物に残っている受験生は君と俺だけなんだからな」

 

「………何?」

 

 

ここで初めて彼の雰囲気がガラリと変わった。体中から嫌な汗が流れるのを感じ、無意識に銃を握る手に力が籠る。

 

 

「……俺は全く戦闘は出来ないんだがな」

 

 

彼はそう言いながら掛けていた遮光眼鏡を外し、ポケットにしまった。俺は全く動けない。何故かは自分でも分からないが、彼は隙だらけなのに、今動けば一瞬にして倒されると思ってしまう。

ジッと警戒しながら彼を観察していると、彼はポケットから眼鏡を取り出した。

 

 

「……眼鏡?君は視力が低いのか?」

 

「いや?これはただの伊達眼鏡だよ」

 

 

彼はそう言いながらその伊達眼鏡を掛ける。何故彼が閃光手榴弾や音響手榴弾の閃光を防げる遮光眼鏡を取り外し、視力も悪くないのにそんなものを掛けるのか分からない。あの伊達眼鏡は何か特別なものなのか?

 

そして伊達眼鏡を掛けた彼は、こんな事を言い出した。

 

 

「……俺と戦う前に、君は背後に隠れている殺人鬼(・・・・・・・・・・・)に銃を向けておいた方がいいぞ?」

 

 

背後に隠れている殺人鬼?いったい彼は何を言っているんだ?

 

 

「?いったい何を言って……っ!?」

 

 

俺が疑問を口に出そうとすると、突然背後に何者かの気配が現れた。直ぐに振り返って銃を向けると、そこには赤い髪をした1人の成人男性が立っていた。いつの間に背後に居たんだ?その男は何も言わず、ただジッと彼を見ていた。

 

 

「初めましてだ連続殺人鬼くん。いや、今は試験官くんと呼んだ方がいいのかな?」

 

「……私が?殺人鬼?ククッ……何を言うかと思えば、失礼な受験生だね。確かに私は試験官だ。この試験で最後に残った受験生を奇襲し、その受験生がキチンとそれに対応出来るかをテストする為のね」

 

 

赤髪の試験官を自称する男はやれやれと首を振ると、笑顔を浮かべながら自分が何故この場に居るのかを簡単に説明した。試験官が紛れていたのは驚いたが、何故彼は試験官をいきなり『連続殺人鬼』と呼んだんだ?会話の内容からして、彼と試験官は初対面らしいが……?

 

 

「その試験官が行う内容に、気絶した受験生を殺害する……なんてものがあるのか?その右腕の裾の中に隠し持っている血の付いたナイフで、ついさっきも1人の受験生を滅多刺しにして来たんだろう?」

 

「な、何を言っているんだ?ふざけるのも大概にしろ!」

 

 

淡々と告げる彼に対して、とうとう試験官が怒りだした。しかしなんだ?この試験官は怒っていると言うより、どちらかと言うと焦っている様に感じる。

 

 

「犯行時刻は今から10分42秒前。場所はこの1つ下の階にある階段近くの1室。被害者はそこの受験生くんが倒した男子受験生。気絶している被害者を見つけた貴様は、監視カメラに映らない様に細工をした後、衣服を全て裏返しに着てから、右腕の裾の中に隠しているナイフで滅多刺しにて殺害した」

 

「………っ!?」

 

 

彼が告げる推理の内容を聞いていく内に、試験官の顔が驚きに染まり、次第に青褪め始めた。流石に俺も怪しいと思い、少し下げていた銃を構え直した。

 

 

「そして被害者が死んだのを確認した後、手とナイフに付いた血を服で軽く拭い取り、裏返していた衣服を正しく着直してから、さっきの音響手榴弾を聞きつけてここへ来た……違うか?」

 

「で、出鱈目だ!私が受験生を殺した!?武偵である私がか!!何をバカな事を……!だいたい、証拠が無いじゃないか!」

 

「ならその右腕の裾をまくって見せろ。貴様が犯行に使ったナイフを入れたケースが右腕に付けられている筈だ。さっき貴様が腕を少し上げた時、左腕に対して右腕が若干下がっていたし、少しだけ衣服が盛り上がっていたぞ?それと、貴様の髪に付着している被害者の血液が何よりの証拠だ」

 

 

彼に指を差された試験官は、ハッとした様子で赤い髪を隠す様な素振りを見せた。余程動揺しているのか、自ら自分が犯人だと言っているも同然の行動をしてしまっている。

そして彼の指摘した試験官の赤い髪には、一部茶色っぽく変色している部分があった。成る程、アレが証拠と言う訳か。

 

 

「血液は乾燥すると、ヘモグロビン色素が空気中の酸素で酸化して茶色に近い色に変色する。殺害した後手鏡で顔なども確認したんだろうが、付着した直後は君の髪と同じ赤色だったから気付かなかったのだろう?隠すならもっと上手くやる事だな。……まぁ、俺の前では何をしても無駄だが」

 

「……っ!!」

 

 

試験官……いや、男は悔しそうな顔をすると、右腕の裾から血がべっとりと付着したナイフを取り出して構え、もう片方の手で腰に携えていた銃……あれは『USSR トカレフ』だな。それを構えた。どうやら本当に彼は殺人鬼だったらしい。

 

 

「……何故だ?何故私が殺人犯だと分かった!?私とお前は今ここで会ったばかりの初対面!そしてお前が私を見て殺人鬼と言うまで10秒も経っていないんだぞ!!」

 

「何、少し推理しただけだ」

 

 

殺人鬼が睨みながら叫ぶのに対し、彼はそう答えた。たったの10秒程度であれ程の推理が出来るとは俄かに信じられないが、彼が言った事が事実だとすると、彼は凄じい推理力を持っている事になる。

はははっ。底が知れないな……彼は。

 

 

「さて、普通ならこの場合、俺とそこの受験生くんは貴様を逮捕するべきなんだろうが……俺はそんな事はしない。君も奴を捕らえようとするな、受験生くん。巻き込まれる(・・・・・・)ぞ?」

 

「こいつは殺人鬼なんだろう?なら逮捕するべきなんじゃないのか?」

 

 

急に何を言い出すかと思えば……逮捕するな?ヒステリアモードの俺にさえ理解出来ない。何故彼は殺人鬼だと確信しているのに逮捕しようとしないんだ?何か理由があるのか?それに巻き込まれるとはどう言う意味だ?

 

 

「……何を考えているかは知らないが、お前の推理力は危険だ。ここでお前には死んでもらうぞ」

 

「いや、俺が死ぬ事は無い。何故なら、その前に貴様が事故死(・・・)するからだ」

 

(?事故死……?彼は何を言っているんだ?)

 

 

俺は彼が言っている事が理解出来なかった。すると彼は殺人鬼に向けて指を差し、こう言った。

 

 

「『予告しよう』、これから君は崩れて来た天井に潰されて事故死する。圧死……それが貴様の死因だ」

 

 

彼の出した『死の予告』に俺も殺人鬼も絶句した。

 

 

「………ふざけているのか?」

 

「少なくとも俺は真面目に言っている。今これから訪れるものが、貴様の死だ。よく味わえ」

 

「〜〜〜っ!!!」

 

 

彼の言葉に痺れを切らしたのか、殺人鬼が1発だけ発砲した。だが狙いが甘かった為、弾は彼の頭上を通り越して背後にあった天井を支える柱に命中する。

 

 

「何が予告だ!ふざけるな!決めたぞ!お前は直ぐには殺してはやらん!脳と急所を外して苦しませながら殺してやる!既にこの階の監視カメラには細工を施した!そこの受験生を殺してからでも、殺して逃げるだけの時間は十分稼げる!」

 

 

そう叫びながら殺人鬼は俺の方に銃口を向けた。俺も先に奴の拳銃を撃って弾き飛ばそうと狙いを定め、引き金に掛けている指に力を入れる。

 

そして俺の銃の引き金が完全に引かれる瞬間……、

 

 

「………時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー異能力『Another』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の予告が、現実となった。

 

 

 

 

 

 

蘭豹side…

 

 

はぁ!?そんな訳ないやろ!!テメェそれちゃんと隅々まで調べたんやろうなぁ!?

 

「し、調べました!調べましたから!取り敢えずその手を離して下さい!は、吐く!吐いちゃいますから〜!!」

 

 

試験が終わってから数時間経った頃、ウチは鑑識科の奴等の調査報告を聞いて納得が行かず、報告しに来た鑑識科の奴の胸倉掴みながら揺すりまくった。まぁ、本当に顔青くして吐かれそうになったから直ぐに止めたったけどな。

 

今回、この試験には連続殺人鬼が紛れとった。そのアホンダラは今日強襲科を受ける予定やった受験生を人気の無い場所で刺し殺した奴と同一犯、そして試験中に更にもう1人の受験生を同じやり方で殺しとった。まさか教務科(マスターズ)の中に現役の連続殺人犯が紛れとるとは思わんかったわ。

……うん?ウチは元マフィアやし、他の奴も元自衛隊やら元警察OB、元特殊部隊、元傭兵とかが前職やったし、紛れてても不思議やないんか?あー、いや。でも前職がそれってだけで今も続けとるアホは今回の奴だけか。

 

ウチはそう思いながらそいつの方に目を向ける。だがウチの視界内にそいつの全身は(・・・)写らへん。写ってるのはそいつのナイフを握った左腕(・・)だけや。

 

 

「はぁ…はぁ……ふぅ。な、何度も言いますが、これは事故死で間違い有りません。死因は見ての通り、崩落した天井の下敷きになった事による圧死。崩落の原因は建物の老朽化です。偶々彼が立っていた場所の真上の天井が鉄筋すら錆び切ってぼろぼろになっている状態まで老朽化が進んでおり、そのまま自然に崩壊した様です」

 

 

そう、犯人はウチの目の前にある瓦礫の山の下敷きになって死亡した。偶々建物の老朽化が進んでいて、偶々1番老朽化が進んでいる場所の真下に、偶々その殺人犯がおって、偶々そのタイミングで自然に崩落して犯人が事故死する?

 

 

「……そんな偶然が有り得るんか?」

 

 

遠山金次とか言う受験生の話やと、あいつはこの殺人犯を一目見て10秒も経たん内に完璧な推理でいつ犯行に及んだか、どのように殺害したか、そして『連続殺人鬼』と呼んでいた事から、おそらくそれ以前の犯行なども全て、まるで直に見て来たかの様に言い当てて見せ、果てにはそいつの死を予告しとったらしい。

 

たった10秒程度でそれら全てを推理するなんて、プロの武偵でも非常に難しく、どんなに早くても数十分から数時間は掛かるらしい。しかもそれは司法解剖や鑑識科による調査の結果を受けた上での話や。ましてや相手がどう死ぬかなんて推理出来るんか?確認したらあいつは普通の一般中学卒やぞ?

 

 

「……どんな頭しとるんや、あいつは?」

 

 

 

 

 

 

綾辻行人side…

 

 

はぁぁぁああぁぁぁあ〜〜……

 

 

ヤッベーよ!罪悪感半端無ぇーよ!相手が連続殺人鬼とは言え、俺とうとう人殺しちゃったよ!すまない殺人鬼くん!責めて怨むならこんなクソクエスト出して来たクソ板と、それを送り付けて来やがったあのクソガキを怨んでくれ!だから化けて出ないでくれよ!

 

 

「はぁ……まぁ、試験はなんとか乗り切った。後は合格するかだな」

 

 

合格してるといいなぁ……これで不合格だったら俺にはもう『死』しか無いんだもんなぁ。試験落ちてたら『きのうの影踏み』の『影の仔』が俺を殺しに来る……うわぁ〜めっちゃ嫌だ。責めて優しく殺してくれないかなぁ?苦しまずに一瞬にして死ねないかなぁ?

 

 

「……そう言えば、乱入クエストの成功報酬は何だ?」

 

 

ふと思い出した俺は、早速クソ板を確認した。するとクソ板に書かれていた『乱入クエスト』の文字が『クエスト達成』となっており、その下に文章が書かれていた。

そしてその文章を読んでみると、思わず俺は絶句した。何故ならその文章には、こう書かれていたからだ。

 

 

『成功報酬ーー「褒めてやる」(福沢社長風)』

 

………ブチッ!

 

 

この時、俺の頭の中で何かが切れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんのクソ板がぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁあ!!!!」

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