殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!! 作:☆桜椛★
「…………」
『…………』トントン
クソ板が出しやがったふざけたクエストの所為で人生初の間接的な殺人を犯してしまったあのクソ最悪な試験の日からしばらく経ったある日、遂に俺の下にその試験の結果が送られて来た。
自室の机の上に置かれた東京武偵校から送られて来たその分厚い封筒を睨んでいる俺の背後では、処刑執行人である『影の仔』が俺の影から這い出て来て、ギラリと光を反射している大鎌を自身の肩に乗せてトントン肩を叩きながら『さっさと開けろや』と無言の圧をかけている。
(いや怖えよ!!何でそんなに殺る気満々なんだよ!?何!?これもしかして失格って書かれてるから前もって準備してんの!?それとも単に自分も知らないから実際に見ようとしてんの!?どっちなの!?)
こいつさっきから多分ト○コの鬼威嚇やル○ィの覇王色にも負けないくらいの威圧感放ってんだよ!もうこいつの威圧だけで俺の心臓止まりそうだわ!
(つーかホントに大丈夫なのか!?試験は受けたけどアレ完全に別の学部の試験だったし、仕方が無かったとは言え、俺試験中に犯人殺人しちゃってんだけど!?)
やばい自信無くなって来た。そもそも普通に考えて犯人逮捕する側の武偵校に間接的で俺自身にはどうしようもなかったとは言え殺人犯しちまった俺が入れる可能性がある訳がないしな。でもあの暴力極道女教師が勤めてんなら可能性はなくもないと信じたい!
『………』ガスッ!
「……おい、お前今蹴ったな?」
こいつ等々痺れ切らせて無言で椅子蹴り始めたぞ畜生!早くしろって顔にデカデカと書かれてるわ!何だよお前思ってたより人間っぽいな!?
(あ、痛!こいつ今度は俺の足蹴って来た!あぁもう!分かった!分かったよ!覚悟を決めりゃいいんだろこの野郎!!)
俺は『影の仔』を一度睨み付けてから封筒の封を切り、中身を掴むと目を瞑って勢い良く封筒から取り出した。そして恐る恐る閉じていた目蓋をゆっくりと開き、そこに書かれている結果を確認した。
そしてそこに書かれていたのは…、
ーーー『合格』の2文字!
(ッシャァァァァオラァァァァアア!!!)
やったぁぁぁあ合格だぁぁぁああ!!どうだ見たか死神異能力!合格だぞ合格!!これで俺はお前に首を斬られる事は無くなった!ぶっちゃけ予想外の事が起きまくって内心7割程諦めかけてたけど、無事に合格してやったぞ!!
俺はニヤリと笑いながら無言で佇む『影の仔』に向かって合格と書かれた書類を見せ付けた。さぁ、これでもうお前とはおさらばだ!次また会わない事を全力で祈ってるよ!!
『…………』
『影の仔』はジッと俺の持つ書類を見詰めた後、俺の方を向いた。
『………………チッ』
「……うん?」
え?何こいつ?舌打ちした?ねぇ今完全にお前舌打ちしたよね!?畜生お前どんだけ俺の首斬りたかったんだよこの野郎!!おいこら!何とか言ってみろよ!
『……………ハァ』
(溜め息吐いてんじゃねぇーよ!!!)
『影の仔』が非常に残念そうに溜め息を吐いたのを見て、『もうこいつ全身全霊を懸けてぶっ飛ばしてやってもいいよな?』と割とガチで思った俺は間違っていないだろう。
しばらく残念そうにしていたサイコ異能力だったが、やがてあの光の文字列の様なエフェクトに包まれると、それが弾けるのと同時にサイコ異能力は姿を消した。
じゃあなサイコ異能力!もう二度と来んな!!
『きのうの影踏み』が消えた後、今度はクソ板が成功報酬の檸檬型爆弾に変わり、そのまま落ち……って!!?
「危なっ!!!」
俺は慌てて檸檬型爆弾をキャッチした!何考えてんだクソ板!これ爆弾なんだろ!?もし落ちた衝撃でピンが抜けて爆発したら、『檸檬爆弾』持ってる俺はともかく、俺の家が大変な事になるだろうが!!
「………ふむ、これがあの檸檬型爆弾か」
うん、改めて見ると見た目は手榴弾に付いてるピンがある事を除けば完璧に檸檬だ。これまさか梶井基次郎本人が作ったやつだったりするのか?ピンが無ければ普通に料理とかに間違えて使われてしまいそうな程に本物そっくりなんだけど?
いやまぁ、そんな事すれば俺以外のみんなは漏れなく爆死(ガチな方)するんだろうが……。
「しかし、これで俺はまた生き延びれた訳だ。やれやれ、全く冷や冷やさせてくれる………うん?待てよ?」
そう言えば武偵校に合格したはいいが、俺はいったいどの学部に入るんだ?本来受けるのは鑑識科の試験だったんだけど、実際に受けたのは強襲科だった。ならそのどっちかって事になるけど、あの馬鹿キンジ(後で名前聞いた)が事情聴取で俺が一瞬で犯人を推理した事暴露しやがったからもしかしたら探偵科って可能性もある。
(そうなったら一気に日本の事故死亡率が上昇しちゃうんだけど……)
俺は容易に予想出来てしまった未来にゾッとしながら、送られて来た書類を手に取った。どの学部に入るかはコレに記載されているはずだからな。
「さて、個人的には鑑識科であって欲しいが……」
さぁ何処だ?俺の希望である鑑識科である可能性はぶっちゃけ低い。結局最後まで鑑識科の試験受けなかったし、強襲科の試験で一応生き残っちゃったし、何より某幻想殺しウニ頭の不幸少年や子供死神探偵並みの巻き込まれ体質を持つ不幸人間であるこの俺が希望してるからな!!(泣)
「む?これか……どれどれ?」
俺は複数ある書類から1枚を手に取り、そこに記載されているある一文を読み、その内容を理解するとその一文に視線が釘付けになった。
そこには、こう書かれていた………、
『受験生、綾辻行人を強襲科『
「…………」
さて、ここで説明しよう。なんでも武偵には通常EからAまでのランクが存在し、民間からの有償の依頼解決の実績や学科の各種中間・期末試験の成績からランク付けされるらしい。そしてAランクの上には特別なSランクなるものが存在し、限られた人物にだけそのランクが与えられているらしいのだ。
そして、強襲科のSランクともなれば、あちこちからテロリストやマフィアなんかの凶悪犯罪組織の制圧及び逮捕とかが主な常に命の危険が滅茶苦茶有りまくる依頼を押し付けられるであろう事が容易に想像出来る。
え〜〜〜っと、つまりこれは………、
(地獄への片道切符ぅぅぅぅううぅぅうううう!!!!!)
最悪だどうすりゃいいんだよこれぇ!?俺みたいな狙った所に弾が飛んでかないちょっと体力があって異能力が使えるだけのド素人がSランク武偵としてやってける訳ねぇーだろーが!!
「……っ!そうだ。今から入学を拒否して普通の高校に行けば《シャラン♪》………え?」
なんかいきなり目の前にクソ板が出現しやがった。『また無理難題クエストか?』と思ったけどなんか『メッセージを受信しました』って書いてある。このクソ板利用してメッセージ送ってくる奴は1人しかいない。
俺は滅茶苦茶嫌な予感を感じながらもそのメッセージを開いた。
『入らなかったら、殺しちゃうぞ☆ーーーby神様』
(クソがぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!)
畜生あの野郎退路断ちやがった!!なんだよ『殺しちゃうぞ☆』って!?なんだよ『☆』って!?テメェちょっと星とかハートとか付けて可愛らしく見せれば許されるとでも思ってんのか死神クソピエロ!!つーかお前どっかから俺の事見てんの!?仕事しろや!!
「………そう言えば、少し離れた場所に誰も寄り付かなくなった廃墟があったな」
ふとある事を思い付いた俺は、檸檬型爆弾と手帳とペンを持つと、『超推理』を発動させて誰にも会わないルートを推理しながらその廃墟へ向かった。
ーーー翌日。
『次のニュースです。昨夜11時頃、神奈川県横浜市のとある廃墟で、大規模な爆発が起こりました。近所に住んでいた住民によると、夜中に突然凄じい爆発音が鳴り響き、同時に『うはははは!!』と言う笑い声が爆発音に混じって聞こえて来たと証言しており、警察は、何者かによる犯行の可能性が高いと、現在も捜査を……』
「ほう……この廃墟、かなり近いわい。どっかの馬鹿者が自作でもした爆弾を試しておったのかのう?」
「さぁな。俺には関係の無い事だ」
「それもそうじゃな。………む?行人よ、少し顔色が悪い気がするのじゃが、具合でも悪いのかの?」
「何、少し寝不足なだけさ。昨日の夜は寝付けなくてな」
★
時は流れ、気温も暖かくなり、桜の花が咲く季節になった。武偵校に通う事になった俺は現在、働きアリのようにせっせと自分の荷物を武偵校が所有している寮の部屋に運び込んでいた。まぁ、要するに引っ越しだ。
正直、こんな武偵校の為にある様な人工浮島に住むなんて滅茶苦茶嫌だったんだが、爺さんに『武偵になるなら身の回りの事は自分でやれる様になれ!!』って言われて半ば強引に荷物と一緒に家を追い出された。
「ふぅ……これで最後か」
俺は最後の段ボールを部屋に運び込むと、部屋の中を改めて見回した。部屋はなかなか広く、元々4人部屋だったのになんか知らんが俺1人で使っていいよって言われたから有り難く1人で使わせてもらう事になった。これもSランク武偵の力だったりするのか?
「もう12時半か……思ったより時間が掛かったな」
昼飯どうすっかなぁ?そう言えば確か近くにコンビニが一軒あったな……よし、今日の昼飯はコンビニの弁当にしよう。そうと決まれば早速買いに……、
《 ガン!! 》「あべし!?」
「ん?」
なんかドア開けたら、ドアに衝撃が来た上に誰かの悲鳴が聞こえた。何事かと思って確認したら、どっかで見た事ある少年が顔を押さえながら悶絶していた。
え?もしかして俺が開けたドアにぶつかったの?何そのどっかのアニメとかでありそうなやつ?
「おい、大丈夫か?」
「いててて……だ、大丈夫だ。……って、綾辻?なんでお前がここに?」
あれ?誰かと思えば事情聴取で俺の推理力暴露してくれた馬鹿キンジくんじゃないか。こんな所で何やってんだお前?
「なんだ君か。実は俺は今日からここに住む事になってな。……まさか君もか?」
「まぁな。ちょうどこの隣の部屋に住む事になったんだよ」
あれ?なんかこいつ、試験の時と大分雰囲気違うな。あの時と比べて今はなんと言うかこう……根暗っぽい感じと言うか、不幸そうな雰囲気と言うか?ホントにこいつ遠山くんか?
「……君、前あった時と雰囲気が違うな」
「え!?そ、そそそそんな事ないぜ!?き、気の所為じゃないか!?」
はい!この時点で何か隠してる事が判明しました!つーか嘘下手だなお前!そんなん誰が見ても何か隠してるって分かるわ!もしかしてアレか?銃を握ったら性格が変わる的なやつか?うっわ面倒臭せぇ。
「(良し、触れないでおこう)……そうか。じゃあ俺はこれからコンビニに昼食を買いに行くから、失礼するよ」
「あ、あぁ。じゃあな……」
………う〜〜ん。でもこいつもこれから武偵になるんだよな?なら今の内にちょっとだけアドバイスしておくか。
「あぁ、そうだ。俺は別に知ったところで誰かに言いふらすなどしないが、隠し事をするならもっとマシな嘘を吐く事をお勧めするぞ」
「は、はい……」
なんか遠山くんがガックリと膝から崩れ落ちちゃった。……そんなに自分の嘘に自信あったの?
★
遠山金次side…
その日、俺はコンビニで昼食として唐揚げ弁当とペットボトルのお茶を1本買って、これから武偵校に通う間の3年間住む事になる寮の部屋に向かっていた。
階段を上り、廊下を歩いてもうすぐ自分の部屋に着くって時に、突然俺の部屋の手前の部屋のドアが開き、俺はどっかの漫画の如く額をぶつけて悶絶した。勿論、コンビニの唐揚げ弁当は死守したぜ!
だけど……、
「ふぉぉぉおおおぉぉぉぉおお!?!?!?」
めっちゃ痛えぇぇぇええぇぇぇえええ!!防弾制服に銃弾直撃した時に比べても差があんまり無いくらい痛いんじゃないか!?鼻血……は、幸い出てないな。すっごい痛いけど。
「おい、大丈夫か?」
やっと痛みが落ち着いて来た時に、俺の頭上から声が掛けられた。きっとドアを開けた俺の部屋の隣の部屋の住民だろうと思い、俺はまだちょっと痛む鼻を押さえながら立ち上がって、彼に大丈夫である事を伝えた。
「いててて……だ、大丈夫だ。……って、綾辻?なんでお前がここに?」
「なんだ君か」
ドアを開けた人物は試験の時に会った綾辻だった。相変わらず無表情な奴だなぁ……しかしなんで綾辻がこんな所に居るんだ?
「実は俺は今日からここに住む事になってな。……まさか君もか?」
「まぁな。ちょうどこの隣の部屋に住む事になったんだよ」
俺は自分の部屋を指差しながら答えた。しかし試験で最後まで残った2人が隣部屋同士か。こんな偶然もあるんだな。
「……君、前あった時と雰囲気が違うな」
「え!?そ、そそそそんな事ないぜ!?き、気の所為じゃないか!?」
しまった!!いきなりだったからついきょどっちまった!そうだよ、綾辻に初めて会った時俺はヒステリアモードだったから、ヒステリアモードが解除してる俺を綾辻は見てないんだった!こいつのあの有り得ない推理力なら俺のヒステリアモードの事がバレちまうかも知れねぇ!?
い、いや待て待て落ち着け。冷静になれ。よくよく考えたら、幾らなんでもヒステリアモードの事を推理出来るわないだろ。そもそもこれは俺の家に伝わる特異体質だぞ?大丈夫さ。
「……そうか。じゃあ俺はこれからコンビニに昼食を買いに行くから、失礼するよ」
「あ、あぁ。じゃあな……」
(よし!ちょっと間があったのが気になるけど、なんとか誤魔化せたっぽいぞ!)
綾辻はそのままコンビニに向かう為に歩き出したのを見て、俺は内心ホッとした。そりゃそうだよな。さて、早く部屋に戻って弁当を食べよう。
「あぁ、そうだ。俺は別に知ったところで誰かに言いふらすなどしないが、隠し事をするならもっとマシな嘘を吐く事をお勧めするぞ」
「は、はい……」
背後から聞こえた綾辻の言葉を聞いて俺は膝から崩れ落ちた。もしかして、推理して全部分かった上で言ってるのか?
(どんだけ規格外なんだよ……)
俺は綾辻の推理力の恐ろしさを改めて再確認した。