殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!!   作:☆桜椛★

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第8弾 入学式から大遅刻

時は流れて、入学当日がやって来た。俺は何時もより早めに起床し、朝食を済ませ、素早く身支度を整えると、弾入りの(・・・・)『S&W M19』が入ったホルスターを装着して寮を出た。

何故何時もより早めに起床してさっさと家を出たのか?それは俺の前世の人生経験と、最近蘇りつつある俺の巻き込まれ不幸体質が原因である。

 

前世の俺は所謂『ボッチ』と呼ばれる人種であった。俺がボッチだと認識したのは小学生1年生の頃だったと思うが、前世の親曰く、それは保育園に入園してからずっとだったそうな。

そうなってしまった原因は判明している。それは俺が入園式及び入学式全てを事故又は事件によって欠席してしまったからだ。

 

保育園と幼稚園の頃は俺の記憶に残ってはいないが、前世の親の話によると、保育園の時は家に居眠り運転のトラックが突っ込んで入園式どころでは無くなって不参加。幼稚園の頃は無事家から出て車で園に向かっている途中、偶然ビルの上から胸にナイフが刺さった男性の遺体が降って来て車のボンネットに直撃。車は天に召され、両親は警察に事情聴取されて、結局その日も入園式には行けなかったそうだ。

そして小学生から先は、通学路で轢き逃げに遭って病院送りになったり、念の為に早めに出てバスに乗った結果、そのバスがジャックされたりと、まぁ兎に角入園式及び入学式には俺は一度も参加した事は無い。

 

その結果、友達作るタイミングを完璧に逃した上に、後から作ろうにも、その時には俺が事故や事件に巻き込まれ易いので危険と認識されてしまって友達なんて出来た事は無い。つーか必要以上に会話どころか人が近寄って来なかったんだよ畜生め!

 

ま、そんな訳で俺は出来るだけ早めに家を出た。今の俺の巻き込まれ不幸体質は完全に蘇っては居ない。何故なら今世では入学式にはなんとか参加出来たし、昨日だって2回通り魔と遭遇しただけ(・・)だったんだ。今回も大丈夫だとは思うが、念の為に早めに出た上に、バスジャックを警戒して徒歩で行く事にしたのだ。

あ、因みに服装は普段の防弾探偵服セットに武偵校のワッペンを縫い合わせたものだ。ダメ元で許可貰いに行ったらこれでOK貰った。意外。

 

 

「………だと言うのに」

 

「あぁ?何言っとんじゃゴラ?調子乗っとんとちゃうか?おん?」

 

「テメェ、ワシ等の前を挨拶も無しに横切りやがって……ヤクザ(・・・)舐めてんのかァ!?ああん!?」

 

なんでこうなったぁ!?

 

 

なんで選りに選って入学式当日の朝っぱらからこんなヤクザ連中が堂々と歩き回ったんだよ!?しかもどいつもこいつも刀やら拳銃やらで完全武装してんじゃねーか!よく見たら他にも散弾銃(ショットガン)機関銃(マシンガン)まで持ってる奴もいるし!何!?なんなの!?これからどっかの国と戦争でもおっ始める気かよアンタ等!?ここ東京武偵校のすぐ近くだよ!?

 

 

「止めろテメェ等、こんな餓鬼に腹ぁ立ててもしょうがないじゃろ。カタギに迷惑かけてんじゃねぇ」

 

「「「「「あ、兄貴!!」」」」」

 

 

うっわ!なんか奥からいかにも極道ですって感じの滅茶苦茶怖い顔した大柄なおっさんが馬鹿デカい刀担いで来た。これで兄貴なの?親父とか首領(ドン)とか組長とか呼ばれてる奴じゃないの?こいつで兄貴ってどんだけなのこいつ等のボス?

 

 

「すんませんなぁ、兄ちゃん。ワシ等はこれからちょいと怨み晴らしに行くところでなぁ。全員ピリピリしとるんじゃ。勘弁してやってくれや」

 

 

あれ?この人思ったより良い人っぽいぞ?なんか怨みを晴らしに行くとかめっちゃ物騒な事言ってるけど、前世とかで会ったヤクザやマフィアの連中共とは違ってまともな常識持ってそうだわ。捕まえた敵組織の構成員をデッカい下し金で爪先から削って行くとかしなさそう。うん、このまま上手く行けば見逃して貰えそうだ。

 

 

「………む?その服装にその髪の色、そしてその顔は……もしや兄ちゃんの名前、綾辻って言わんへんか?」

 

 

え?なんでアンタ俺の名前知ってんの?俺とアンタ初対面だよな?

 

 

「確かに俺は綾辻だが?」

 

「……なら、兄ちゃんの親父さんの名前、綾辻彩人(あやと)じゃねぇですかい?」

 

「?そうだが……何故君が知っている?」

 

 

綾辻彩人、それは今世の俺の死んだ父親の名前だ。だがなんでこいつがそんな事知ってんだ?まさか親父はこいつと知り合いだったのか?

俺がそんな疑問を抱いていると、目の前の大柄なおっさんが顔を俯かせて肩を震わせながら話し出した。

 

 

「ワシ等の組長は、昔は獅子と称えられる程の力と威厳のある素晴らしい極道じゃった。しかしある日、親父は今までに無いデカい仕事の途中で、当時武偵校で尋問科(ダギュラ)の授業を受け取った綾辻彩人に逮捕され、尋問されたんじゃ」

 

親父が尋問科に入ってたのなんて俺だって初耳なんですけどぉ!?

 

 

爺さん俺が「親父は何科だったんだ?」って聞いた時探偵科って言ってたじゃん!あ、でも今思えばあの時爺さんどこか遠い目をしてたわ!つーか親父そんな所でも勉強してたの!?あそこ確かめっちゃヤバい拷問方法学んでるって噂があるんだけど!?

 

 

「尋問が終わった親父はそのまま刑務所行きじゃった。しばらくしてやっと釈放された親父を見てワシは目を疑った。何故なら親父は…あの銃で撃たれても表情一つ変えない親父が……何故か神父服を着て十字架と聖書を持ち、更には『世の中の全ては“愛”!ですよ?』なんて眩しい程の微笑みを浮かべて出て来よったんじゃあ!!

 

(なんでぇ!?)

 

 

なんで銃で撃たれても動じない化け物極道がそんな劇的ビフォーアフターしてんだよ!?それまさか親父が原因か!?親父いったいどんな尋問したの!?もしかしてマジで拷問ならってて実行したの!?

 

 

「今では親父は組を抜け、隣町の教会の神父兼孤児院の院長になって過ごしちょる!あの獅子に例えられた姿はもう欠片も残っちゃいねぇ!戻ってくれと頼んでも『私は綾辻さんのお陰でこうして“愛”を知れたのです』とか言って断られた!なら綾辻って奴に復讐しようと思ったら事故で死にやがった!だから代わりにワシ等はあの野郎の居た武偵校をぶっ潰す為に準備を整え、やっと今日それを実行する所じゃったんじゃが……まさかあの野郎の餓鬼に会えるとはのぉ」

 

(あ、ヤッベ。やな予感。逃げる準備を……)

 

シャラン♪

 

「………」

 

 

俺が全身全霊を持ってこの場から逃走を図ろうと構えた瞬間、あの忌々しいクソ板が鈴の様な音と共にクエストの発生を知らせて来た。無言で目の前に現れたクソ板に書かれている文章を読むと、俺はホルスターに仕舞っていた『S&W M19』に手を添え、懐に入れていた『音響手榴弾』と『閃光手榴弾』と書かれた紙をそれぞれ2枚ずつ取り出した。

今回、クソ板にはこう書かれていた……。

 

 

『ヤクザ共全員を全滅させ、警察に突き出せ!』

 

「親父の仇を今ここで取らせてもらうでぇぇぇぇええええ!!!野郎共!この餓鬼をぶっ潰すでぇぇぇぇえええ!!!!」

 

「「「「「ウッス!兄貴ィ!!」」」」」

 

(クソ板テメェ!!やっぱやりやがったな畜生が!!)

 

 

 

1時間後……。

 

 

 

「御協力、感謝します!」

 

「あぁ、後は君達の仕事だ。任せるよ」

 

 

俺は何人もの警察官に次々とパトカーや護送車に乗せられて行くボロボロな状態で大人しくなったヤクザ共をチラリと見てから、俺に向かって笑顔で敬礼して来る若い刑事に後の事を全て丸投…ゴホン!任せて、再び武偵校に向かって歩き始めた。

かなりの人数だったから俺の今の手持ちの銃弾は全部パーになったし、周囲の建物の壁や看板には無数の穴が空いてしまっているが、なんとか全員倒せた。もうあんなのは二度とゴメンだ。

 

俺はそう思いながら小さく溜め息を吐くと、腕時計を見て入学式までの残り時間を確認する。

 

 

(さて、入学式まで後30分程か……ギリギリ間に合いそうだな)

 

 

一時はどうなるかと思ったが、早めに家を出た甲斐があった。しかし結構倒すのに時間が掛かったなと思っていたのだが、意外に時間は掛かっていないもんなんだな。

いやぁ〜しかしなんとかなって本当に良かった。弾は狙った方向に飛ばないし、何度か転んだり躓いたり、引き金引く時にくしゃみしちまって暴発させちまったりしたから、偶々あいつ等も俺並みに射撃センスが皆無だったのは運が良かったぜ。同士討ちしてたもんな、あいつ等。

 

そんな風に自分の不幸中の幸いさにちょっとだけ感謝しながら10分程歩いていると、ポケットに入れていた携帯が鳴り始めた。着信相手を見ると、知らない番号……あ、いやコレ武偵校の電話番号だわ。でもなんでだ?もしかして警察から武偵校に連絡行ったか?

……取り敢えず出るか。

 

 

「……綾辻だ」

 

ゴラァ!綾辻ぃ!おどれ今いったいどこほっつき歩いとるんじゃあ!?

 

 

電話に出た瞬間轟いた暴力極道女教師こと蘭豹先生の怒声に、危うく俺の耳が逝かれそうになった。

つーかうるせぇ!!電話越しに大声で怒鳴るなっての!いきなりどうした!?なんで初めて電話使った昔の日本人みたいに大声で声を届けようとしてんのこの人!?

 

 

「なんだ蘭豹先生。何をそんなに怒っている?」

 

ああん!?おどれ初日から堂々と大遅刻かましよって、よくもそんな台詞が言えるのう!!もう入学式始まっとるんやぞ!!?

 

「……何?」

 

 

入学式が始まってる?何を言っているんだこの歩く暴力装置は?等々頭の中が『暴力』と言う言葉一色になって暴走したか?いやいやんな訳なかろうが。現にほら、俺の腕時計では入学式まで後30分程(・・・・)……………あれ?

 

俺は見間違いかと一度目を擦ってから改めて腕時計で時間を確認する。しかしやはりどっからどう見ても、後30分は余裕がある計算になる。つーかコレ針動いてなくね?え?待ってよ?まさか……、

 

 

(………腕時計、壊れてますやん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(嘘だろぉぉぉぉおおおおお!?)

 

 

洒落になってねーぞこの野郎!!マジでぶっ壊れてるじゃねーか!!ま、まさかさっきの乱戦でどっかにぶつけたのか!?畜生最悪だわこの野郎!初日から大遅刻になっちまったじゃねーか!!

 

 

分かったか!?分かったならとっとと来いや!!入学式の後は各教室に別れて自己紹介とかをする予定になっとって、おどれはウチの教室や!後10分以内にここに来い!もしコレに1秒でも送れたら、おどれの脳天にデッカい風穴開けたるから覚悟せぇ!!分かったな!!!

 

 

蘭豹先生はそう怒鳴ると電話を切った。それを合図に俺は東京武偵校へ向けて駆け出した。自身の頭にどでかい風穴を開けられない為に。

 

 

 

 

 

 

遠山金次side…

 

 

「綾辻の奴……等々入学式に来なかったな。なんかあったのか?」

 

 

入学式を終えた俺は、割り当てられた教室の席に座り、窓の外の桜を眺めながら、今朝から姿を見ていない綾辻の事を考えていた。

今朝俺があいつを誘おうと部屋を訪ねた時にはもう留守にしてたから、とっくにここに来ている筈なんだけど、どうやらあいつはまだ来ていないらしい。

 

 

(流石にあいつに限って道に迷ってるなんて事は無いだろうけどなぁ……)

 

 

綾辻はヒステリアモードの俺を遥かに超える射撃センスや推理力を持っている。犯人の『死』すら完璧に予告出来る程の推理力と観察眼を持ってるあいつなら、迷子になる筈無いと思うんだけどなぁ。

 

 

オラァ!席に着かんかい餓鬼共ぉ!!

 

 

しばらくすると蘭豹先生が出席簿を片手にドアが壊れるんじゃ無いかと思う程乱暴に開けて入って来た。さっきまでわいわい騒いでたクラスのみんなは蘭豹先生の怒声を聞いて慌ててそれぞれ自分の席に着席した。

……ちょっとびびった。

 

 

「入学初日から大遅刻しとるあのアホンダラ以外は全員揃っとるな?ウチが今日からお前等の担任になる蘭豹や!ウチが担任になったからには、ビシバシしごいて行くから覚悟せぇ!分かったな!?」

 

「「「「「は、はい!!」」」」」

 

 

明らかに不機嫌さ丸出しの蘭豹先生に俺達は大きな声で返事をする。てか、その大遅刻してるアホンダラってやっぱ綾辻の事か?

 

 

「さぁて、早速やけど出席番号順に自己紹介してもらうぞ。自分の名前と学科、そしてランクさえ言えば後は何言ってもええわ。じゃ、1番から始め!」

 

 

蘭豹先生の指示に従って、俺達は出席番号1番から順に自己紹介をして行った。勿論俺もしたぞ?強襲科のSランクだって言ったら驚かれたけどな。

あぁ、Sランクって言えば、このクラスには俺と綾辻以外にもSランクの子が居た。レキって名前の女子生徒で、狙撃科のSランクらしい。全く表情は変わらないし、無口なのか自己紹介も『レキです。狙撃科Sランクです』だけ言うとそのまま着席しちまった。失礼だと分かっちゃいるが、まるで人形みたいな子だな。

 

 

「よし、これでここに居る奴は全員自己紹介済ませたな。もうすぐ遅刻したアホンダラがここに来るから、それまで待機や」

 

「せんせ〜い!その大遅刻してる子って、どんな子なんですか〜?」

 

 

防弾制服を早くもフリルだらけに改造して着こなしている金髪ツーサイドアップの女の子……確か探偵科Aランクの峰理子(みねりこ)って名前だったな。その子が蘭豹先生に質問した。他のみんなも気になっていたのか、全員が面倒臭そうな表情を浮かべてる蘭豹先生に視線を向けた。

 

 

「んなもんは本人に聞けばいいやろうが。しかしまぁ、そうやなぁ……ウチが今の所1番面白いと思っとる奴とだけ言っといたるわ」

 

 

そう言って蘭豹先生はニヤリと笑みを浮かべた。綾辻の奴、結構気に入られてるんだな。だけどなんか蘭豹先生の笑みが面白い玩具を見つけたって雰囲気なんだけどあいつ大丈夫なのか?しごかれまくって死んだりしないよな?いや、まぁあいつならどんな不意打ちも推理して回避とか出来るだろうけどさ。

 

 

「遅れて済まない。少し面倒な連中に絡まれてな」

 

 

ちょっとだけ綾辻の心配をしていると、教室のドアが開いて、何時もの防弾探偵服に武偵校のワッペンを付けた綾辻が入って来た。

 

 

「お?来たな綾辻。ならさっさと全員に向かって自己紹介せぇ。自分の名前と学科、ランクだけでええからな」

 

「……綾辻行人。不本意だが、強襲科のSランクになってしまった。まぁ、よろしく頼む」

 

 

蘭豹先生の指示で、いつも通り表情が変わらない顔を俺達の方に向けて自己紹介をした綾辻は、そのまま空いている自分の席に座った。

『不本意』って態々言ってるって事は、どうやら綾辻は自分のランクに不満があるらしい。相手の『死』すら予告出来る綾辻にとって、Sランクじゃ低いって事か。

俺は席に座って不満気に深い溜め息を吐いている綾辻(単に全力疾走で来たから疲れてるだけ)を見て、苦笑いを浮かべた。

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