殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!!   作:☆桜椛★

9 / 14
第9弾 迷子猫>違法密売組織

「……違法密売組織制圧の緊急依頼?これに参加しろと?」

 

「あぁ、お前が来てくれると心強いんだけど……どうだ?今から一緒に受けないか?」

 

 

誠に不本意ながら東京武偵校に入学してから早くも3週間が経過したある日、遠山くんが『この任務に参加しないか?』と誘いながらとある資料を俺に見せて来た。

 

この武偵校では午前中の1時間目から4時間目までは普通の高校と変わらない一般授業を受け、5時間目以降に其々の科目の実習を受ける事になっている。俺の場合は科目が最悪な事に1番危険な強襲科なので、基本的に射撃や近接戦闘などの戦闘訓練を行っている。

しかしそれとは別に、この実習の時間を『任務(クエスト)』と呼ばれる民間からの依頼に使う事が出来る。任務の内容は様々で、迷子のペット探しから要人警護や犯罪組織の制圧など、子供でも出来そうな内容からこれ絶対学生がやるもんじゃねーだろとツッコミを入れてしまいそうな超危険なものまであったりする。

 

で、今回このバカ山くんが持って来たのがそれで、選りに選ってその中でもかなりヤバい任務だった。いや、最早コレは『かなり』所じゃないな。滅茶苦茶ヤベーわ。なんだよこの予想されてる敵の装備?拳銃や機関銃はまぁ有り得るとしてさ、なんで対戦車ミサイルに装甲車、戦車、挙げ句の果てには戦闘ヘリなんて物騒にも程があるもんの名前がズラリとならんでんの?

もうこれ軍隊じゃん。絶対警察や武偵がやるような任務じゃないって。しかもよく見たらこれ最低でもAランク以上の武偵しか参加出来ないヤツじゃん。確かに俺は一応Sランクだけどさ?俺未だに狙った所に弾が飛んで行かないんだぜ?何度練習しても200発に1発当たるか当たらないかって感じの確率しか無いんだぞ?それはお前も知ってんだろーが!なんで俺を誘った!?もっと他にまともなヤツが居るだろ!!お前と仲の良い強襲科の不知火亮(しらぬいりょう)ってイケメン君や武藤剛気(むとう ごうき)ってツンツン頭君誘えや!もっと言えば狙撃科Sランクのレキくんにでも頼め!

つーかそもそも俺はこれから別の任務をする予定なんだよ!お前が持って来た命の危険が有りまくりな任務じゃなくて、普通に平和で命の危険なんて更々ない超平和な任務がな!

 

と、言う訳で!

 

 

「済まないが、俺は既に他の任務を受けている。他を当たってくれ」

 

「そ、そこを何とか……」

 

 

なんか遠山くんが両手を合わせて頭を下げながら頼んで来るけど俺は知らん。これ引き受けたら絶対に死ぬヤツだからな。命を粗末にする様な行為はダメ!絶対!

 

 

「ダメなものはダメだ。こっちの方が重要だからな(主に命の危険が無い点で)」

 

「……は?あ、綾辻。その任務って……」

 

 

俺が受けた任務の書類を見た遠山くんは絶句し、信じられないものを見るかの様に俺と書類を交互に見る。まぁ、その気持ちも分からなくもない。

なんせ、俺が受けた任務は……

 

 

「……ま、迷子の猫探し?」

 

 

そう、迷子の猫探しだ!依頼が出たのは4日前。とある民家で飼われていた『みーちゃん』と言う名の三毛猫がいつまで経っても返って来ないので、ほぼ何でも屋の俺達武偵に見つけて欲しいとの事。

この任務を受けた理由は3つある。

 

1つ目は命の危険が無い事(これ重要!)

 

2つ目に、この書類にはご丁寧に猫の写真や猫の特徴、好きな食べ物などの細かい情報が多く載っているので、俺の『超推理』で簡単に居場所を特定出来るという点。

 

そして3つ目、報酬が超破格である事!これが数ある命の危険が無い又は少ない任務の中でこの任務を受けた理由だ。

 

普通この様な任務はお小遣い程度からバイト代くらいの値段しか無く、万を超える額にはならない。精々5000円から6000円程度が一般的な報酬の値段だ。

だがしかし、この任務の報酬金額は、なんと2万円!!

 

 

「(これは受けるっきゃないよね!)では俺はそろそろ任務に行く。済まないがその任務に行くなら武藤くんや不知火くん、後はレキくん辺りを誘いたまえ」

 

「あ、おい!」

 

 

俺は遠山くんにそう言って教室を後にし、ポケットから取り出した伊達眼鏡を掛けてから改めて書類を見て異能力を発動した。

 

 

(異能力『超推理』!)

 

 

さぁ、待ってろよ2万円!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ところで、この1番下にある『スーパーアクロバティックなので注意』って何?

 

 

 

 

 

 

遠山金次side…

 

 

俺は去って行く綾辻の背中を眺めながら、先程綾辻が見せてくれた任務の資料について考えていた。

 

先ず第1に、何故綾辻はあの猫探しの任務が俺の持って来た緊急依頼よりも重要だと言ったのか?

迷子の猫探しなんて任務は、武偵校ではちょっとしたお小遣い稼ぎによく受けられるありふれた任務だ。だからこそ、今回の違法密売組織の制圧任務と比べたら、どっちが重要かなんて一目瞭然だ。

なのに綾辻は猫探しの方が重要だと言った。あの任務に何かあるのか?俺からしたら報酬が破格なだけで、大した任務じゃないと思うんだけどな。

 

 

「……はぁ、仕方ない。大人しく武藤達を誘ってみるか」

 

 

どうせ綾辻の考えている事なんて理解出来ないだろうから、俺は諦めて綾辻が言った通り武藤達を誘いに行った。今度は無事OKを貰い、試しにレキも誘ったら、なんと参加してくれる事になった。もしかしてこれも綾辻は推理してたのか?……ま、まさかな。

 

 

 

 

 

 

綾辻行人side…

 

 

うおおぉぉぉぉおお!!待てやゴラァ!!ちょこまかと逃げやがって!とっとと捕まれ迷子猫ぉ!!

 

「にゃーー!!」

 

 

遠山くんと別れてから1時間!現在俺はとある裏路地を逃げ回るターゲット(迷子の三毛猫)ことみーちゃんを追っている!みーちゃん自体は異能力『超推理』で3秒も経たない内に推理して見つけたんだけど、滅茶苦茶逃げ足速えぞこの猫!?俺これでもあのクソ板の所為で結構体力あるし、この辺りの地形ある程度知ってんのに一向に捕まらねぇ!どっなんてんだ!?

 

 

(っ!しめた!確かこの先はフェンスで行き止まりの筈!)

 

 

俺が三毛猫を追って角を曲がると、俺の背よりも高い金網のフェンスが張られた道に向かって走る猫の姿が見えた。スピードを落とす気配は無いが、この道にはゴミ箱などの踏み台になる様なものは無い!

良し勝った!第9弾、完!!

 

 

「……フッ」

 

「うん?」

 

 

『あれ?なんか今この猫笑わなかった?』と俺が疑問を抱いた次の瞬間、なんと猫は更に加速して右側の壁に向かってジャンプ!右側の壁を蹴って今度は左側の壁に向かってジャンプし、更に左側の壁を蹴ってまた右の壁へとジャンプを繰り返し、やがてフェンスを越え、空中で2回転しながら10点満点の着地を……って!?

 

 

何今の!?

 

 

今普通の猫なら絶対やらない様なアクロバティックな動きでフェンス越えやがったぞあの三毛猫!?しかも審査員が居たら全員が10点満点を出しそうな見事な着地までしやがった!凄いなおい!忍者かよ!?てかあの資料の注意書きってこれの事か!!

 

 

「………」

 

「……なんだ?」

 

 

内心滅茶苦茶混乱していると、フェンスの向こうからこちらをジッと見ている三毛猫に気付いて俺も見詰め返した。すると三毛猫は一度顔を伏せ、『ドヤァ』と言う言葉が相応しい程の見事なドヤ顔で俺を見上げ……、

 

 

「………ハッ!」

 

 

俺を鼻で笑って?から踵を返して走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このクソ猫ぉぉぉぉおお!!!

 

 

上等だあのクソ猫もう許さん意地でもとっ捕まえてやる!つーかホント何なのあの三毛猫!?最早人間が猫に変身してんじゃね?ってくらい人間っぽい仕草するな!?

 

俺は金網フェンスを乗り越えると再び三毛猫を追って走り出した。三毛猫は一度こちらを振り返り、俺がフェンスを越えたのを確認すると走るスピードを上げ、また裏路地を右へ左へと逃げて行く。

 

 

「にゃーん!」

 

うおおぉぉぉぉ!!!

 

 

絶対に逃さねぇ!!

 

 

 

 

 

 

遠山金次side…

 

 

『総員、準備はいいか?』

 

 

俺の持っている無線機から、今回の任務の指揮を取っている警察の特殊部隊隊長の伊里中(いりなか)さんと言うおっさんの声が聞こえて来る。

俺達が今居るここは、とある港に建ち並ぶ倉庫の内の1つ。警察側が特定した違法密売組織のアジトだ。

この倉庫の中に商品である銃や装甲車なんかがあるらしい。今まで尻尾も出さなかったが、5日前から深夜になるとここにトラックや怪しい集団が出入りしているのを偶然発見したらしい。しかも倉庫は3つもあると来た。よく今までバレなかったな。

 

 

突入!!

 

「「「「「っ!!!」」」」」

 

 

伊里中さんの合図で武藤がドアを蹴破り、俺達武偵と特殊部隊の隊員達は倉庫の中へ突入する。他の2つの倉庫も同じタイミングで突入している筈だ。因みにレキは特殊部隊の狙撃チームに入っている。

情報では、今回の相手は本当に軍隊が持っている様な銃や装甲車、果てには戦車に戦闘ヘリなんて物まで売っている。それはつまり、交戦になるとそれ等が持ち出される可能性が高いって事だ。

だから結構死ぬ気で腹を括って中に突入したんだが……?

 

 

「なぁ、ホントにここで合ってるんだよな?」

 

「うん、間違いない筈だよ…」

 

「じゃあ何で誰も居ないんだ(・・・・・・・)?」

 

 

倉庫の中はもぬけの殻だった。人1人どころか、ある筈の武器や弾丸、兵器なんかも1つも無い。まるで最初からこの倉庫には何もなかったかの様だ。俺は無線機で隊長の伊里中さんにこの事を報告する。

 

 

「伊里中さん、倉庫の中に入りましたけど、中には誰も居ません」

 

『何!?そっちもか!?実は他の倉庫も同じ状態なんだ。狙撃チームも倉庫から逃げる様な輩は居なかったと報告している……クソ!どうなってやがる!!』

 

 

どうやら他の倉庫もここと同じだったらしい。狙撃チームにはSランクのレキも居るから、倉庫から逃げたなら何か見付けている筈だ。なら最初からここには誰も居なかったのか?

 

 

「おい金次!不知火!これ見ろよ」

 

「どうした武藤?……それって」

 

 

武藤が手に持っていたのは未使用の弾丸だった。弾種は『7.62x39mm弾』。『AK-47』とかに使われてる弾丸だ。どうやらここで武器の密売をしていたのは確からしい。

 

 

「だとすると、いったいどこに?」

 

 

うーん……全然分からん。そもそも報告では昨日の夜まで人が出入りしてたらしいが、昼間はトラック1台すら出入りしていない。寧ろ最後に入ったトラックが倉庫から出て来ていないらしいから、中に無いとおかしいんだよな。なら、いったい何処に消えたんだ?

 

 

「どうする?このままじゃ任務失敗で報酬は0だぜ?」

 

「どうするって言われても、密売組織の居場所が分からなかったらどうする事も出来ないよ」

 

 

武藤と不知火の言う通り、このまま密売組織を捕まえられなかったら報酬は0になっちまう。今日の報酬が無くなったら金欠の俺にはかなりきつい。最悪暫くの間俺の飯がもやし炒めだけになる。それだけは回避したい。

だが考えても解決策は浮かばず、取り敢えず特殊部隊の隊員達と一緒に何か手掛かりはないか探す。暫くすると狙撃チームもやって来て、一緒に手掛かりを探し始めた。

 

 

 

 

 

そして1時間後…

 

 

 

 

 

まさかの成果ゼロ!!

 

 

「なんで何も無いんだよ!?」

 

「落ち着きなよ武藤」

 

「叫んだってどうしようもないだろ?」

 

 

まさか手掛かりが全く見付からないとは思わなかった。しっかしどうするか……このままだと本当に報酬を貰えず、今日の飯がもやしオンリーになっちまう。

 

 

「はぁ……参ったなぁ」

 

「……少しよろしいですか?」

 

「ん?」

 

 

俺が頭を抱えていると、『ドラグノフ狙撃銃』を担いだレキが話し掛けて来た。

 

 

「綾辻さんに相談してみるのはどうでしょうか?」

 

「あ……」

 

 

そうだ!綾辻だ!あいつの推理力なら、ここの状況を説明すれば何か分かるかも知れない!レキから綾辻の名前が出たのにはちょっと驚いたが、ナイスアイデアだ!

 

 

「ありがとうな!レキ!早速掛けてみるよ」

 

 

俺がレキに礼を言ってから携帯を取り出すと、綾辻の携帯に電話を掛けた。

 

 

(快く引き受けてくれると良いんだが……最悪、焼肉でも奢るか?)

 

 

 

 

 

 

綾辻行人side…

 

 

ピリリリリリ♪ピリリリリリ♪ピッ!

 

「……綾辻だ」

 

『あ!綾辻か?ちょっと頼みがあるんだが……』

 

 

ポケットに入れていた携帯が鳴ったので出てみると、着信相手は遠山くんの声が聞こえて来た。『このクソ忙しい時になんの様だ?』と心の中で思いつつ、俺は物陰から『 S&W M19(・・・・・・)を持った手(・・・・・)だけを出して3発撃つ(・・・・)

 

 

「なんの用だ?今こっちは取り込み中なんだが?」

 

『実は標的の密売組織の倉庫に突入したまでは良かったんだが、肝心の構成員や武器なんかが消えてるんだ。張込みしてた刑事の話では、最後にトラックが1台入ったっきり、外には人1人出てないらしい。だがそのトラックすら無いんだ。俺達じゃどうすればいいか分からないから、お前に推理して欲しいんだ。ほら、試験の時みたいにさ』

 

 

ふむふむ成る程って思ってる間にもう『超推理』で答え出ちゃってるんだよな。倉庫の中身が空っぽになったトリックと、その違法密売組織が今何処で何をしているのかってのも全て分かった。そしてその推理結果に俺は深い深い溜め息を吐いた。

 

 

「やっぱりそうか……」

 

『え?それって、どう言う…?』

 

 

あぁ〜クッソ!そうだよなぁ……このクソ板がこんなクエスト出して来やがった時点でそんな予感がしてたんだよ。

 

 

「遠山くん。先ずその違法密売組織の現在位置だが……」

 

『ま、まさか!もう推理出来たのか!?教えてくれ!奴等は今何処にいるんだ!?』

 

「あぁ、その密売組織なんだが…………」

 

 

俺は目の前に浮かぶ忌々しいクソ板を睨み付ける。宙に浮かぶ半透明のプレートには、こう書かれていた。

 

 

『違法密売組織を制圧せよ!』

 

今、俺と銃撃戦をしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。