熱いの嫌なのでINT極振りの氷結特化にしたいと思います 作:ヴィヴィオ
私の現実世界は真っ暗な世界だ。大火事によって身体は動かず、ときおり肌に感じるのは熱くて痛いだけの毎日。そんなある日、新しく家族になった親戚のお姉ちゃんが、VRMMO『NewWorld Online』を進めてくれた。見えなくて動けない私でも、自由に動いて遊べるらしい。
「ごめんね。私にできるのはこれぐらいなんだ……でも、私もプレイしてみたけど、楽しいよ。先生から許可ももらったし、どう?」
「やって、みます……」
ゲームにログインすると、視界が変わって不思議な空間についた。目の前に青い窓が出て来て、そこに文字が書かれている。
『プレイヤーネームを決定します。どのような名前がよろしいでしょうか?』
まず名前の設定からしないといけないみたいお姉ちゃんが現実と同じ名前は危険だって言っていたし、私の名前は雪だから、スノーにしよう。ロシア語で雪はスニェークやスィニエークだけど、可愛くないしスノーの方にする。うん、これで大丈夫だと思う。
『プレイヤーネームをスノーに決定しました。次に初期装備を決定します。好きな武器をお選びください』
次に設定するのは初期装備を決めるみたいで、様々な武器の形をした半透明な物が浮かび上がってきた。片手剣、大剣、槍、メイス、杖……etc。いっぱいあって困る。正直、どれがいいのかわからない。
手に取って説明を見ながら考えると、魔法は様々な現象を起こす事が可能みたい。魔法があれば身体が燃えたり、熱くなったりしても冷たくできると思うし、魔法をメインにしようかな。熱いのは嫌いだし、冷たいのがいい。
そうなると魔法を使う人にお勧めされている杖がいいみたい。うん、杖でいこう。杖に触れてみると、手の中に木の杖が現れた。
『実際に使って確かめてください。よろしければ次の項目に進みます。初期装備の選択に戻る場合は戻るボタンを押してください』
杖を両手で持って振り下ろしてみる。身体がふらつくけれど問題ない。次に振り上げてみたけれど、こちらも大丈夫。少し重い気もするけれどある程度は動かせると思う。一応、他の武器も試してみようかな?
◇◇◇
色々な武器を試してみたけど、鉄製の武器は違和感がするのでやっぱり杖にする事にする。というか、刃物が怖い。
『初期装備は杖でよろしいでしょうか?』
「お願い、します」
『初期装備を杖に決定しました』
決定ボタンで杖を選択すると、私の手の中にあった杖が光に分解されて消えちゃった。代わりにまた青い窓が出てきた。
『続いてステータスを決定します。ステータスは【HP】【MP】【STR】【VIT】【AGI】【DEX】【INT】が存在します。【HP】はヒットポイント。体力を表し、0になると死亡扱いとなりセーブポイントに戻されます。続いてMPはマジックポイント。魔法やスキルを使うさいのコストとして扱われます』
魔法を使うにしても、どっちも大事なものだよね。
『続いて【STR】です──』
色々と教えてもらった内容は以下の通り。
【STR】は力の強さを表し、物理攻撃の攻撃力に影響します。STR値が低いと、重い武器や道具を持つことができるみたい。
【DEX】は器用さを表し、命中力や生産スキルの成功率などに影響されるらしい。
【VIT】は身体が頑丈になって攻撃全般にたいする防御力に影響するらしい。後、痛みも軽減されるらしいの。盾職の人が伸ばすパラメータらしいい。これが低いと紙装甲とよばれる。
【AGI】は敏捷性を表し、回避力と移動速度に大きな影響を及ぼすとのこと。
【INT】は知力、賢さを表し、魔法の攻撃力に影響するみたい。
私は魔法が強くなるみたいだし、全部INTにふろう。魔法の攻撃力に影響するのなら、きっとその方がいいよね。弱い魔法攻撃を撃つよりも、強い魔法攻撃を撃つほうが楽しそうだし……それに怖い火とか吹き飛ばしたり、消せたりしそうだもん。
『続いて容姿を作成します。変更できるのは髪の毛の長さ、髪型、髪色などです。身長や性別などは変更できません。これは現実に戻られた際に事故を防止するためです』
次は容姿の設定みたいだけど、身体をスキャンして自分の身長などを使うみたい。現実の体と身長、体重を変えると駄目なのは事故防止のためなら仕方ないよね。
という事は……私は130cmくらいになるのかな? よく覚えていないからわからない。それに身長よりも肌とかどうなるんだろう?
私の肌は色々と大変な事になってるから、特殊な包帯とかで包まれているらしいし。ちゃんとスキャンできたのかもわからない。
『表示します』
不安に思っていたけれど、表示されたのは綺麗な肌をした見覚えある女の子。これは雪だ。火災に巻き込まれる前の私だ。なんでちゃんとスキャンされているかはわからないけれど、嬉しくて涙が出てくる。
『こちらの状態から変更してください』
しばらくして、表示されている私の身体をしっかりと確認していくと……少し違う場所もあった。これはもしかしたら写真から復元されたのかもしれない。少し、成長する前の私みたい。そこでふと思いついた。もう会えないお母さんとお父さんの面影を入れようと思う。
◇◇◇
六時間ぐらいかけて綺麗に成長した姿ではなく、お父さんとお母さんの面影を想像して加える。ロシア人であるお母さんをイメージして白銀の髪の毛に水色の瞳、それに白い肌にする。目元や顔の形とかはもとからお父さんに似ていたからこれぐらいでいいと思う。うん、理想の自分になるように頑張って作った。ゲームの中ぐらいならいいよね。
「これで決定」
決定ボタンを押すと、体が光に包まれる。視界も暗くなって不安に思って身を瞑ってしまう。けれども、瞼の裏に光が満たされて、ゆっくりと目を開ける。
すると、そこは活気あふれるログハウスみたいな家が沢山ある村のような広場だった。思わず見とれていると、周りがだんだんと暗くなってきて、次の瞬間、松明に火が灯る。
その炎を見ていると真っ赤に燃えた世界を思い出して気持ち悪くなり、身体が震えて身体中が熱くなってきて周りをみると、背後に沢山の実のような物から水を吐き出している大きな木があって、その下は池みたいに水が溜まっている。それを見て、助かるために必死に飛び込む。
水の中に入ると手前は浅くて奥は深くなっている上に木の根が張っているのか、足を取られてそのまま前に転げ落ちてしまう。
「へぶっ」
そのまま全身が水の中に入り、口や鼻から水が入り込んできて息が苦しくなってくる。それで暴れてみるけれど、どんどん深く水の中に入っていくだけだった。
視界の隅にある緑色のゲージがどんどん減っていくのが見えて、恐怖が湧き上がってくるはずなのに外で燃やされるよりもずっと、ずっとましに思える。それにんだか水の中にいると落ち着いてくる。ああ、そうか。お母さんとお父さんを思い出すんだ。二人は火が燃え移った私を助けるために抱き着いて一緒に火を浴びながら、お父さんがお母さんと私を隣にあった川に投げ込んだ。お母さんは何度か地面に激突しながらも私を守ってくれて、それで川に落ちることができて私はなんと助かる事ができた。そのせいか、私は水の中にいるとお母さんを感じられるみたい。
だから、身をゆだねていると、目の前が真っ暗になって次の瞬間には池の外に立っていた。
「?」
不思議に思って小首を傾げるけれど、よくわからない。それよりも、お母さんを感じられる方が大事だし、やっぱり松明の火が怖い。大丈夫だとはわかっていても、怖い物は怖いの。だから、もう一ど水の中に入る。他の人も池の中に入って何かをしているし、私の行動は間違っていないと思う。
「ひゃぁっ」
水の中に足を入れると冷たく感じて心地が良いけれど、やっぱり驚く。それでも身体が水に覆われているといのは安心感が湧いてくる。だから、もっと安心感が欲しくて足が遅くてもゆっくりと進んでいく。
次第に胸の辺りまで水がくると、両手と両足を動かして進む。だけど、足が速く動かせなくなってきた。なのでそろそろ息を吸い込んで全身で潜ってみる。
一度潜ると、服が重くて身体が浮かずに水面へと移動できない。だから、身体から力を抜いてゆっくりと水中を漂う。するとまた緑色色のゲージが減っていって視界が暗転して、最初に降り立ったところに戻った。
どうやら、緑色のゲージがなくなると駄目みたい。これからの事を考えると、火事とかで燃やされた時の事を考えると、すごく、すっごく怖いから泳げるようにならないと。そうすれば今度は私がお母さんやお父さんを助けられるかもしれないし……
「ん」
決意を新たにして両手とを木の根のとろにして足をバタ足させてみる。呼吸ができる状態で練習すればきっとこっちでも泳げるはず。これだけリアルなんだし、間違いないと思う。
両足をこちょこちょとゆっくり動かしていくこと一時間。すると目の前に青いスクリーンがでてきた。
『スキル【水泳Ⅰ】を習得しました』
【水泳Ⅰ】のスキルが手に入れると、不思議と身体が動くようになった。水の抵抗や身体の重さは感じるけれど、それでも少しは泳げるようになったと思う。
なので潜ってみる。前は水面を目指して動けなかったけれど、今度は【水泳Ⅰ】のお陰でゆっくりとだけど動けるようになった。戦闘は無理だろうけれど、これなら移動くらいはできそう。それでもそのまま力尽きて元の場所に戻ることになったので、何度も繰り返す。
『スキル【潜水Ⅰ】を習得しました』
1時間ほど泳ぎの練習をしているとまたまたスキルを手に入れた。今度のスキルは潜ってられる時間が伸びるみたいなので、嬉しい。なので潜って木の周りをグルグルと移動してみる。手で木の根を掴んで移動したり、遊んでみる。
「ねえねえ、なにしてるの?」
「良かったら、私達と~」
声をかけられて水の中から顔だけをあげると、色んな人がこちらを見ていた。知らない女の人達なのですぐに水の中に顔を引っ込めて全身を沈めて逃げる。
「ありゃ」
「待って~」
しばらく追いかけられていると、苦しくなってきたけど外に出るのも怖い。すると前に回られて少しパニックになってそのまま空気が外に出ていく。
「ど、どうしよう!」
「た、助けないと!」
手を出してくるのがまた怖くなる。お父さんとお母さんから知らない人についていったり、返事をしたら駄目だと言われていたしどうしようもない──
「何をしているんだ」
──そう思っていたら、首根っこを捕まれて持ち上げられる。慌てて呼吸しながら、そちらを見ると赤い髪の毛をした年上のお姉さんがいた。
「……だ、だれ……」
「お姉ちゃんだ」
「……お姉ちゃんを名乗る……不審者……?」
じっと見詰めて聞いてみると。本当に不審者だったら助けを呼ばなきゃ。
「ち、ちがうよ! わ、わたし! いや、現実でちゃんと見れないからわからないかもしれないけどぉぉ! 約束したよね! キャラクターを作ったら待っててって言ったでしょ!」
「……?」
「流石にリアルの事をここで話すのはあれだし、とりあえずこれを承認してよ。内緒話をしよう」
何か青いスクリーンができた。
『プレイヤー・ミィからフレンド要請がありました。受託しますか?』
フレンド登録というのがよくわからない。でも、怖いからとりあえず拒否。また現れた。拒否。現れる。拒否。現れる。拒否。
「ちょっとリアルでメールを送ってキャラクターネームとか教えてるよね?」
「……ん。メール?」
「もういい。少し待ってて」
お姉ちゃんを名乗る不審者が目の前から消えると、視界に電話のマークが現れた。これは現実世界からの電話みたいで、何もしていないのに勝手に繋がった。
今、私がつけている機器はお医者さんの先生達が用意した治療用の大きな物なので、いざという時のために強制的に繋がる電話機能までちゃんとある。強制的ログアウトシステムもあるみたいで、診察の時間とかは問答無用でログアウトさせられるから、その前にその時間だけはログアウトしてくるように言われた。寝る時はどちらでもいいけれど、しっかりと寝ていないとこちらも強制的にログアウトさせるということを言われているから、一日八時間は寝ないと駄目。
『それで、私のキャラクターネームはミィだから、さっさと登録して。決してお姉ちゃんを名乗る不審者じゃないから!』
『……
『怒ってはいないから、謝らなくていいよ。女の子なんだから、これぐらいの警戒心は持った方がいいし……といっても、現実じゃなくてゲームだから、ある程度は警戒を緩めてもいいとは思うけど。リアルの事を聞いてきたり、しつこく勧誘してくるのはアウトだけど。っと、それよりも戻るから、美味しい店にお菓子を食べに行こう』
『ん、わかった』
通話が切れて、お姉ちゃんがログインして、フレンド登録を送ってくれた。今度はちゃんと登録してフレンドリストというのにお姉ちゃんの名前、ミィが記された。続いてパーティーも要請ももらったので、そちらも了承しておく。
「すまない。この子は私の妹でね。人見知りなんだ。これから約束もしているので今回は──」
「そういう事なら……」
「こちらの方こそごめんなさい……」
二人の女性にお姉ちゃんが謝ってくれている間に私はお姉ちゃんの後ろに隠れて服を掴んでおく。しばらくして、お姉ちゃんが私の手を握ってきた。
「メールみようね」
「……やり方、しらない……」
「後で説明書見て教えてあげる。とりあえず、フレンドメッセージとかのやり方を教えるね」
「うん」
「まあ、その前に移動しよう。あそこの店でいいかな?」
「どこも入ったことがないし、いいよ」
「結構時間が経ってるけど、キャラメイクに時間をかけてたのなら納得か」
「あとね、泳ぎの練習をしてたの。今度は助けられるようにって……」
「そうか」
「ふにゅ」
お姉ちゃんが頭を撫でてくれる。懐かしくて嬉しくなってきた。そんなお姉ちゃんが私の手を引きながら、この町にあるカフェ、cafeRadishというところに連れてきてくれた。
「ここは美味しいケーキが食べられると有名なお店なんだよ。ゆ……スノーも甘い物は好きか?」
「大好きだよ」
「それじゃあ、良かった」
店に入ると木で作られた雰囲気のいいお店で、なんだか童話の中にでてくるようなお店みたい。この町自体がそんな感じで、とっても楽しそう。でも、お金がないの。
「ケーキ、食べたい。でもスノーはお金がないよ」
「大丈夫。私が奢ってあげるから」
「……いいの?」
「うん。それに他にも渡す物がいっぱいあるからね。気にせず注文していいからね」
「ん、わかった」
席に案内され、椅子に座ってテーブルを叩くとメニューが表示される。私もお姉ちゃんがやった通りにすると、メニューが表示された。色々なケーキがあって、どれも美味そう。
「私はイチゴのタルトにしようかな。スノーはどうする?」
「じゃあ、フルーツタルトがいい」
「これで決定ね」
わくわくしながら待っていると、すぐに注文したケーキがきた。お姉ちゃんを見ると、頷いてくれたので恐る恐るフォークで食べていく。口の中に甘さが広がってとっても美味しい。
「もしかして、不味い?」
お姉ちゃんが不思議そうに聞いてくるけれど、よくわからない。なんでだろう?
「んん。美味しいよ」
「そ、そうなの。良かった」
ホッとしたようなお姉ちゃんを不思議に思いながら、一口食べたら美味しくてパクパク食べていく。久しぶりに食べたケーキは思わず泣いちゃいそうになる。すると、お姉ちゃんがイチゴを多めに乗せた部分を切り取ってフォークに刺し、口元へと運んくる。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
パクッと咥えると、思わず頬っぺたを膨らませてもきゅもきゅしていく。口の中に広がるイチゴと生クリームの味。それにスポンジの感じもいいと思う。
「おかわり、いる?」
「ん、欲しい」
「じゃあ、次はこっちね」
「チョコ、食べたい」
「じゃあ、沢山買ってわけよう」
「ん」
二人で沢山のケーキとドリンクを注文して食べていく。
「そういえばいい忘れていたけれど、可愛いよ。それに面影もあるし……」
「うん。頑張って前の私に近付けたの」
「よかった。それでこのゲームはどう? やっていけそうかな?」
「うん、大丈夫だよ。自由に動けて色々と見えるだけでとっても楽しいから」
「そっか……それでなんだけど、スノーにお願いがあるの?」
「お願い?」
「そう。私のアイテムを預かって欲しいの」
「え?」
「その、私のキャラは……その……」
「どうしたの? 言いづらいこと?」
「うん。このキャラは炎の魔法特化なの」
「え」
ほ、炎……火……燃える、火災……思い出してくるとガタガタと震えてくる。そうするとお姉ちゃんが隣にやってきて抱きしめて頭を撫でてくれたので、だんだんと落ち着いてきた。
「やっぱり無理よね。うん、やっぱり作り直そうかな」
「つ、作り直す?」
「そう。スノーと一緒に遊ぶには炎は使わない方がいいでしょう」
「だ、だめ!」
「え? どうして?」
「その、お姉ちゃんに迷惑かけたくないよ……ただでさえ、いっぱいかけてるのに……」
「気にしないでいいよ。これぐらい迷惑でもなんでもないし……」
「でも、良いスキルとかあるんじゃ……」
「確かに炎帝とかあるけど……スノーの方を優先したいの。大丈夫、友達も納得してくれるから」
お姉ちゃんがそう言ってくれるけれど、お姉ちゃんはこの姿で友達といっぱい冒険してきたんだよね。それで強いスキルとかを手に入れたんだと思う。そうなると、私のせいでお姉ちゃんの想い出を消したくない。
「だ、大丈夫。わ、私も何時までも火を怖がっていられないし、頑張って克服するよ。だから、消さないで……」
「だけど……」
「いいの。それに町の中なら普通に遊んでられるし、一緒に冒険ができないぐらい平気だよ」
「まあ、確かにこれからの事を考えると、火へのトラウマは克服した方がいいかもしれない。でも、無茶だけはしないでね?」
「うん、大丈夫。頑張ってみる」
「狩りは一緒にいけないかもしれないけれど、それ以外の事なら一緒にできるから困った事があったら相談してくれたらいいからね。スキルや装備の相談だってのるから」
「わかった。えっと、魔法使いに使えるスキルが欲しいの……」
「魔法ね。それじゃあ、まずスキルは消費関連から解決した方がいいかも。MPとINT、どちらも重要だけど、確かスノーはINTの特化型だよね?」
「ん。INTしかふってない」
「後でスキル屋さんに案内するとして、まずは装備を整えないと防御力が不安かな」
「お金、ないよ?」
「私が買ってあげるから、お姉ちゃんに任せなさい」
「でも……」
「それにお母さん達からお小遣いももらってるから平気だよ」
「お小遣い?」
「うん。スノーと一緒に遊びなさいって、渡されたの。えっと、スノーも私と一緒なら月額一万円までなら使っていいってことだから、課金アイテムも買えるよ」
「い、いちまんえん……しゅごい……」
「うん、凄いね。えっと、買うのはアバター用の服とか、回復アイテムや蘇生サービスとか、その辺かな」
「後で装備を見に行きましょう」
「ん」
満足するまで食べさせてもらってから、お茶を飲んでゆっくりとする。
「んーその服より、新しい服を買った方がいいか。どれがいい?」
お姉ちゃんが見せてくれたページを確認していくと、色々な服が売っている。その中で目を付けたのは白色をメインにして紺色の袖などが施された服と紺色のスカートがセットになった服。
「お姉ちゃん、これがいい」
「え!? こ、これ、セーラー服みたいなんだけど……」
「着たことがないし、これがいいの」
「わ、わかったわ。えっと購入してプレゼントを指定……よし、これでいいはず」
「あ、届いた」
メールのやり方を教えてもらいながら、メニューからプレゼントを手に入れる。それをアバター用の部分に装備する事で、外見がセーラー服になった。でも、装備名は女性用海兵隊制服となっている。
「お姉ちゃん、どう?」
「ああ、似合っているよ。ただ、幼いからもう少し成長してからの方がいいかもしれないけど……」
「いいの。着れないかもしれないし……」
「大丈夫だ。手術さえしっかりとすれば大丈夫。むこうでも着よう」
「ん。
ロシア語は少しだけ習っている。お母さんがよく使っていたからだけど。
「じゃあ、装備を見てスキルショップに行くか」
「それでもいいけど、お姉ちゃん、時間は大丈夫……?」
「時間? あ~確かにそろそろ危ないな。宿題もしないといけないし……だが、一人で大丈夫? 私は明日、学校があるし、夕方くらいまでは確実に会えないけど……」
「うん。探検するから大丈夫」
「そうか。それならクエストが出てきたら受けてみるといいよ。いろんなスキルが手に入るし、私みたいに強いスキルが手に入ったりもするから。それとわからなければメールか電話してくれればいい」
「
「ああ、それとこれだけは渡しておく」
そう言って抱えられないぐらい、沢山のヒットポイントポーションとマジックポーションを渡された。それらを全部、アイテムストレージに入れる。
「それとこれをあげる」
「アクセサリー?」
「INTを上げる髪留めだよ。私は使わなかったけれど、スノーには良い感じだろう」
そう言って私の髪の毛を前方にある左右の髪の毛を纏めて二つの塊を作り、そこにリボンを結び付けてくれた。
「それじゃあ、バイバイ、お姉ちゃん」
「またね」
お姉ちゃんが帰っていったので、ちょっと寂しくなる。だから、お母さんに包まれているような感じがする水の中で過ごす。それに【潜水】と【水泳】のスキルも上げたいし。
◇◇◇
水中を漂い、中から月の光を全身に感じていく。何度か眠ってしまい、窒息して死亡して復活地点に戻って目が覚める。それから、また水に入ってぼ~とする。
何度も窒息しても戻されるけれど、こればかりは仕方がない。明るくなって松明の炎が消えるまでずっと水の中に居る。その間、それでも【潜水】と【水泳】のスキルのレベルは結構上がったので、お姉ちゃんに言われた通りに町を探検してみようと思う。
私は水の中から顔を出して恐る恐る周りを確認してみる。太陽が昇って朝が来たことで怖い松明の炎は無くなっていた。それに人も少なかったのでほっとして外に出る。
とりあえず、人が少ないうちに走って移動する。走っているつもりでも、AGIが0な私は進む速度は凄く遅い。ノロノロしたカメさんの歩み。
やっと広場から晴れた場所にある木の根っこが放置されている場所をみつけた。そこに座ってステータスを確認してみる。たしか、ゲームではステータスを見てどう動くのがいいかと決めるらしいから。学校の人達がそう言ってたのを覚えている。
「……ステータス……」
NAME スノー
Lv 1
HP 40/40
MP 12/12
【STATUS POINT >0】
【STR 0】
【VIT 0】
【AGI 0】
【DEX 0】
【INT 100〈+30〉】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の杖〈INT+20〉】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【妖精の髪飾り〈INT+10〉】
【空欄】
【空欄】
スキル
【水泳Ⅴ】
【潜水Ⅴ】
ステータスはINTにだけ振ったから、問題ない。それにお姉ちゃんから貰った妖精の髪飾りでINTが増えている。【水泳】と【潜水】はあるけれど、水中じゃないと意味ないし、使えないけど……気にせず探検してみよう。
というわけで、まずは町の中を歩いてみる。見つけたのは武器屋さん、道具屋さん、本屋さん、巻物屋さん、宿屋さん、井戸、民家。
とりあえず、武器屋さんは装備品が売っているのが確認できた。道具屋さんはポーションとか、テントとか売っていた。本屋さんと巻物屋さんはまだ入っていないけれど、町の探索中にみつけた町の出口が気になる。
「ん~ちょっと外に行ってみようかな?」
一応、お姉ちゃんからポーションも貰ってるから、大丈夫だと思う。そんなわけで、町の外に出てみる。
町の中を歩いて木の塀が途切れている場所から外に出る。するとすぐそこは森で、お昼前の時間なのに何人かが森に入っていっている。私も森に入っていく。
「そこのお嬢さん。お嬢さんだよ?」
「ふぇ?」
「杖を持っているってことは魔法使いか、魔法使い志望の子だよね?」
「え、えっと……」
声をかけてきたのは三角帽子に黒いローブを着たまさに魔女というお婆さんだった。その人が杖を持ちながら近付いてくる。
「お嬢さんはまだ魔法を使えないだろう。どれ、私が教えてやるよ。ひっひっひ」
「ま、魔法?」
「例えばこんなのだね。【ファイアーボール】」
魔女の掌から凄く大きな炎の塊が溢れでて、私は──
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
──叫び声を上げて森へ全力で、必死に逃げた。
◇◇◇
「ふーっ、ふーっ」
途中で転んで地面にスライディングしたけれど、泣かない。炎から必死に逃げないとまた燃やされ──燃やされ──あれ?
慌てて周りを見ると、炎はどこにもない。ううん、道もない。あるのは倒れた木や色々なお花さん達。それに複数の木々。そう、森の中に居た。
森の木々が生い茂っていて、現実よりもとっても緑が多くて気持ち、空気も美味しい気がする。座り込んだ状態で胸に手をあてながら深呼吸を繰り返す。
ゆっくりと息を吸って、吐く。何度も繰り返していくうちに落ち着いてきたので、涙を拭いてから起き上がって周りを冷静に見てみていく。
「ピクニック、これはピクニックなの」
そう言い聞かせていると、まるで本当にピクニックをしているような気分になってくる。
「よ~し、私は大丈夫。頑張れ雪! じゃなかった、スノー! いけるいける!」
決意をしっかりと声に出してからゆっくりと進む。すると生い茂っている草木の隙間からガサガサと音が聞こえてくる。ビクッとしながらそちらを向いて杖を構える。少しするとそこから、可愛らしいリンゴの兎みたいなのがでてきた。
「あっ、かわいい」
「へへへ、きゅう!」
そのりんごうさぎさんは突撃してきて……私の胸に体当たりをしてくる。私はそだけで吹き飛ばされて後ろの木にぶつかって止まる。緑色のゲージが六割くらい削られた。
「……も、もしかして、モンスター、さん?」
りんごうさぎさんはそのまま回転してこっちにもう一度突撃してくる。私はすぐに杖を構えて振るうけれど、タイミングが合わなくて空を切った。その直後にもう一度お腹に体当たりされて気持ち悪くなったと思った瞬間、視界が暗転する。
◇◇◇
次の瞬間、目の前は町の中へと変化していて、後ろに振り向くと水樹と池があった。どうやら、復活地点に戻されたみたい。
「むぅ……」
なんだか悔しい。だから、もう一度森に行ってみる。町の外に出ようとするとまたあの悪い魔女さんが話しかけてこようとするので、急いで逃げて森に入る。すると森の中でりんごうさぎさんと出会った。
そのりんごうさぎさんを杖で叩いてみるも、避けられた。決して外れたわけじゃない。隣に移動されて地面を叩いたわけじゃないんだから!
どちらにしても、何度リベンジしても身体の動きが遅すぎて殺される、一撃を決めても全然ダメージが入らずに体当たりを受けて復活地点まで戻されちゃう。ポーションすら使う暇もないし、使っても意味がない。
魔法を覚えたいけどどこに行けばいいかわからない。あの危険な魔女さんのところには絶対に行きたくない。そうだ、お姉ちゃんに聞こう。
お姉ちゃんにメールを書いて送信してみる。ちゃんと送信はできたし、これで大丈夫だと思う。お姉ちゃんから返信が来るまでは暇だから、もう一度町を探索してみよう。たぶん、魔法だから本屋さんで本を読んで覚えるんだと思うし、図書館を探してみるのもいいかもしれないよね。
町を改めて探索してみたけれど、図書館は見付からなかった。なので、見つけていた本屋さんに入ってみる。中には本棚が沢山あって、面白そう。色々と読んでみたいけれど、今は魔法を覚えられる本がいい。しかなたいので、店員の悪い魔女さんと同じ恰好をしているお姉さんに勇気を出して聞いてみる。
「あの、本を読みたい、です……」
「いらっしゃい。本ですね。何をお探しですか?」
「魔法が、覚え、られるの……」
「5000Gになります」
「うぅ……ない、です。あるの、これだけ……」
初期で貰えるお金、3000をみせると、何か良いのがないか聞いてみる。
「何か買える魔法の本ってありますか?」
「このお金だと……ああ、これがあったか」
「?」
「童話の本だけど、魔法が覚えられるかもしれないよ」
「童話……」
本のタイトルは雪の妖精と氷の女王。面白そうだし、魔法が覚えられるのなら買ってみようかな?
「これで、お願いします」
「はいよ。代金は有り金全部だよ」
「うぅ……どうぞ」
「まいどあり。じゃあ、頑張って読むんだね」
買った本を開けてみるけれど、中の文字が読めない。何を書いているのかもわからない。日本語でも、英語でも、ロシア語でもないよ?
「あの、読めません……」
「そう言えば解読はできるの?」
「え? か、解読……?」
「その本は古文書だよ。書かれているのは古代語と妖精語だったかな」
「む、無理です……そんな言語、覚えてないです……」
「仕方ないね。じゃあ、手伝ってくれたら教えてあげるよ」
『古文書解読クエスト・雪の妖精と氷の女王Ⅰを受けますか? Yes/No』
Yesを選択する。するとクエストとかいうのが進んだみたい。
「じゃあ、まずは整理整頓と掃除をしてもらおうかね。そこの本を所定の位置に戻してくれるかい?」
『クエスト・整理整頓を始めますか?』
「わかり、ました」
言われる通りに一生懸命に働く。二時間くらいかけて52冊の本を直し、棚や床を掃除して綺麗にしていく。
「お、終わりました……」
「じゃあ、次はお使いだね」
『本の配達クエストを受けますか? Yes/No』
Yesを選択して次のクエストを受ける。町中での配達クエストみたいなので、頑張ってみる。配達は村で入れるところ全部みたいで、全部の荷物をアイテムストレージに仕舞いこんでから、一軒一軒回っていく。
◇◇◇
テクテク、テクテクと、指定された場所を回っていく。ゆっくり、ゆっくり、亀さんのようにゆっくりと。あ、蝶々。鳥さんもいる。小鳥さんも。綺麗で面白い。
あ、あっちに綺麗なお花さんがある花壇がある。アイリスとリコリスだったかな?
あれ、道を間違ってる。こっちかな?
こっちの道が、こっちに続いていて……あれ?
三時間後、ようやくお目的地に到着できた。ドアを叩いてみる。
「ん? 小さいお嬢さんがなんのようだい?」
「えっと、本屋さんからお届け物です」
「ああ、なるほど。随分と遅いから心配したよ」
「
「?」
「遅れてごめんなさい」
扉が開いて不思議そうにしていたおばさんが私の言葉に頷いてくれたので、アイテムストレージから本を取り出しておばさんに渡してお金をもらう。同時に遅れた事を謝る。
「いいよ。無事に到着したんだからね。次も頑張るんだよ」
「
「しっかりと持って帰るんだよ」
「はい。頑張ります」
アイテムストレージにお金を入れてから本屋に戻る。何故か、帰りも一時間もかかっちゃった。
「……三十分もかからないお使いに四時間以上もかかるなんて……随分とのんびりなのね」
「えへへ~」
笑って誤魔化していると、店員のお姉さんはそう言った。一応、個別のクエスト扱いなので、達成評価がでた。もちろん、最低ランクから数えた方がはやいレベルだった。タイムオーバーになっていたのが原因だね。
「じゃあ、次のお使いね。場所はこっちね」
「は~い」
「十分ぐらいで到着できると思うからね」
「任せて!」
本を受け取ってから頑張ってお届けに行く。本屋さんに戻ってきたのは出て行ってから二時間後だった。このタイミングでお姉ちゃんから連絡がきた。
『魔法の習得は町の出口にいる魔女から教えてもらえる』
『あの人やだ。炎を使うもん』
『あ~どんな魔法か、最初に見せてくれる時だね。確か、火属性魔法から順番にやっていたから……』
『無理。絶対に無理だよ~』
『それならスキルショップで買うか、他のクエストで手に入れるか、どちらかしかないよ』
『じゃあ、このままお金を貯めて買ってみるね』
『買ってあげようか?』
『大丈夫。自分でやってみるから。
今日はもう暗くなってきたから、水樹の池がある広場に戻って水の中に入る。何れは解決しないといけないけれど、火は怖いし、水の中は冷たくて気持ちいいからこの中で過ごす。それに水中で漂うのは結構好き。
◇◇◇
「終わり、ました」
五日後、全部のお使いが終わった。ようやく終わった。六時間ぐらいで終わるはずのクエストが足の遅さも含めて、いっぱい時間がかかっちゃった。
「ありがとう。お疲れ様」
『本の配達クエストを達成しました。次のクエスト、古文書解読クエスト・雪の妖精と氷の女王Ⅱへと進みます。受領しますか? Yes/No』
『スキル・のんびりな日常を入手しました』
お使いクエストが達成そのせいか、新しいスキルを手に入れてしまった。とりあえず、確認してみる。
スキル【のんびりな日常】
このスキルの所有者はAGIに関係なく視界がゆっくりとした速度で流れる。一分間、発動範囲から動かなければHPとMPの回復速度を30%増加させる。
このスキルの所有者はAGIが-50%される。
習得条件
レベル1の状態で一つのお使いクエストを連続で10倍以上の時間をかけて5つクリアする。
ゆっくり、のんびり過ごしていたら手に入ったみたい。レベル1で過ごしてたからみたい。このスキルは私にとってメリットしかない。私のAGIは驚きの0だから、-50%されても痛くも痒くもないのだよ、アッハッハッハ!
ちょっと悲しくなってきた。これってもう、AGIは完全に諦めた方がいいってことだよね。まあ、のんびり行ってみよう。
「それじゃあ、報酬として解読に必要な知識を教えてくれる場所を教えるね」
「やった」
「この場所に研究者のお爺さんが住んでいるから……」
店員のお姉さんから教えてもらったので、さっそく行ってみる。
お爺さんの家に到着したけれど、ここは今まで入れない家だ。実際にドアノブを回しても扉は開かない。なので、試しにノックしてみると、反応があった。どうやら、クエストを受けていないと返事もしれくれないみたい。
「誰だ?」
「あの、古代語と妖精語を教えてくれるって聞きました……」
「ああ、話は聞いているよ。家の中にお入り」
「は、はい」
扉の鍵が開く音が聞こえてきたので、ゆっくりとドアノブを回して中に入っていく。部屋の中には沢山の本があり、とでもごちゃごちゃしている。
「さて、古代語と妖精語を勉強したいのだったね? 厳しく辛い道のりだが、頑張れるかな?」
「あ、やっぱり勉強するんじゃなくて解読だけしてくれたら……」
「古代語と妖精語を勉強したいのだったね? 厳しく辛い道のりだが、頑張れるかな?」
む、無限ループ! そっか。ゲームだから会話が変になるのは仕方がないところもあるのかも。うん、勉強しよう。それにここで勉強すれば雪の妖精と氷の女王以外の童話だって読めるようになるかもしれないし、あれば便利だもんね。
「お願いします。勉強したいです」
「ふむ。新しい学問の探究者は歓迎だ。だが、君がどれだけ根性があるのかわからない。そこでこの部屋とそちらの部屋を片付け、整理整頓してくれ」
「ふ、二つの部屋ですか?」
今居る部屋と隣の部屋もすごく本が置かれている。とてもじゃないけれど、数が多すぎて本屋さんよりも大変な事になるのが明白だよ。
「この部屋は私が使うが、そちらの部屋は君が使っていい。本の持ちだしは厳禁だが、与える部屋で好きに読むのは構わない。私が欲しい本を持ってきてくれるだけで後は自由にしていいからね」
読みたい放題なら、まあいいかな。
「が、頑張ります」
「うむ。期待している」
ここでも整理整頓を手伝う事になった。なので、まずは一度全てをアイテムストレージに仕舞いこむ。好きにしていいって言われたから、アイテムストレージに入れるのは大丈夫だと思う。アイテムストレージの中でソート機能を使い、ジャンル別にする。その次に名前順に整頓していく。
その間に梯子を用意して上の方から拭き掃除をしていく。埃を落として綺麗にしていたら、美味しいアップルティーとアップルパイを食べさせてもらえた。パイはサクサクでリンゴの甘さと酸味があってよかった。ただ、アップルティーにはお砂糖五つぐらいいれちゃった。
「ただいま~」
「あ、店員さん」
「ここは私の家なんだよ」
「そうなんですね……」
「で、この子に解読方法を教えてあげてね」
「うむ。わかっておる。見事、部屋を綺麗にしてくれたから教えてしんぜよう」
「やった」
思わずガッツポーズをしちゃう。でも四時間も片付けていたんだから仕方がないよね? もうちょっと速く動けたり、力があったりしたら時間はかからないんだろうけど、非力な私じゃ仕方がない。
「方法は二つある。一つは簡単にスキルを覚えられるスキルスクロールで覚えられる方法。二つ目は難しいが、勉強して覚える方法じゃ。勉強して覚える方法も難易度別に二つある。どれがよいかの?」
「……時間はいっぱいあるから、勉強する方でお願いします」
もう勉強するって決めたから、難しい方でいこう。勉強するのは懐かしいし、面白そうな本がいっぱい整理する途中でみつけたもん。それを読むのに必要な言語はしっかりと覚えておいたほうがいいと思う。だから頑張る。
「うむ。それではしっかりと教えようかの」
お爺さんの勉強はとってもしんどかった。間違ったら容赦なく叩かれるし、参考書がいっぱいあって色々と覚える必要があるし、色んな言語があった。とりあえず、私が受けているクエストは古代語と妖精語をなので、この二つを必死に覚える。
◇◇◇
11日が過ぎてちゃんと覚えることができた。お姉ちゃんとフレンドメッセージをする以外はログアウトに4時間。ゲームで寝る時間は2時間。それ以外の18時間は常に勉強した。新しい事を覚えるのがとっても楽しかったから頑張った。寝る時はちゃんと水の中で寝たけれど、何故かフラフラになったりもした。でも、
覚えた妖精語と古代語で雪の妖精と氷の女王の本を解読していたら、何故かミニゲームみたいなパズルが表示された。こちらが簡単に解読できるシステムらしい。けど、こんなのに頼るのは面白くないから普通に解読して挑んだ。だって、パズルとか苦手だし今更だから。
「どうじゃ?」
「解読、できました」
全部読めたので、お爺さんと答え合わせをする。この童話の内容は妖精の世界で季節を巡る戦いがあり、春の妖精達が同盟を組んで冬の女王を封印した。
勝利した陣営の季節が延々と続き、冬に属していた妖精達は辛く苦しい立場となった。そのために封印された冬の女王を解放しようと戦いを挑む。
それに気付いた春の妖精達は冬の女王を封印された状態で別の世界へと放逐した。それによって冬の妖精の一人である雪の妖精が愛する冬の女王を解き放つために妖精界から出て冒険の旅をするというお話。
しかし、異世界にやってきた雪の妖精は力の大半を失い、旅の途中で志半ばに倒れてしまい、水樹がある町の暗き深い水の場所で眠りについている。
「間違っていないようじゃ」
「よかった……」
『古文書解読クエスト・雪の妖精と氷の女王を完了しました。スキル【古代語】と【妖精語】を習得しました』
「楽しかったよ。また、何かあればまた来るといい」
「
お爺さんの家から出て、水樹の池に戻って水の中で考える。町にある深い暗き水の場所というのがわからない。町にあるって書いてあるから、きっと町の中の何処かにあるはず。怪しいのは水樹の池だから、改めて詳しく探してみようかな。
しばらく 水樹に抱き着いてみるけど、何も無いので水の中を探す。すると木の幹に妖精語で文字が書かれている場所が見つかった。その言葉をなぞるけれど何もでてこない。とりあえず、覚えておこう。
さて、町の中でここ以外で暗くて深い水の場所。例えば暗い場所ならcafeRadishなどの冷蔵庫や冷凍庫とか。ここなら水もあってもおかしくない。そういえば、お爺さんの家で参考書を探している時に色々な本を読んだけれど、スキルの習得方法が書かれている古代の本とかもあった。このクエストが終わったらいってみようかな?
「まあ、その前に今のクエストなんだけど……」
わからないのでお姉ちゃんに聞いてみよう。
『町の中で水に関係して暗くて深い場所ってどこかわかる?』
『水に関係するということなら井戸だな。確か、町の中に三つほど井戸があったはずだが、その井戸の一つが枯れていて、夜な夜な泣き声が聞こえるってのもあったよ。ただ、なにもなかったらしい。私も行ってみたがなかった。何かのクエストが進行しているのならいけるかもしれない』
『
『気をつけてね』
『うん』
さて、お姉ちゃんから情報をもらったので井戸を回ってみる。どれが枯れた井戸かわからないから、全部まわる。その内の一つは入れなかったし、なにもなかった。次の一つは看板があって、毒物によって汚染されているので使用禁止という立て札があった。でも、入れたのでちょっと飛び込んでみた。
そのまま水の中にドボンと入ると、底に足がついてヘドロで埋まった。だんだんと身体が痺れてどんどんHPが溶けていく。死ぬまでの間に壁とかを探すけれど、特に何もみつからない。数秒後には死亡したから、またチャレンジしてみようと思う。
最後の井戸は完全に枯れていたのか、普通に降りられた。飛び降りたら落下ダメージで即死したけれど、取り付けられている滑車と古いロープを使って降りたら、無事に到着できた。下は乾いていたけれど、少し進むと行き止まりだった。モンスターも出ない。
「ここも外れ……?」
仕方ないので、もう一度雪の妖精と冬の女王の本を取り出して読み直してみる。解読がどこかで間違っていた可能性もある。しばらく降り注いでくる太陽の光で静かに読書をしていると、何かの声が聞こえてきた。確かにすすり泣くようなその声は反響して井戸の中、全てからしている。
しかし、それだけだった。何かがあるかと思ったけれど何も起きない。水があって深くて暗い場所なら、ここで間違いないと思うんだけどね。お姉ちゃんもそう言っていたし、
「ここまでは他の人も来ているみたいだけど、これ以降は進まない。どうしてだろう?」
不思議に思いながら、周りを見ながら考えてみる。乾いた地面と乾いた壁。井戸としてはもう完全に死んでいる。それってつまり、水がないってことで……あっ、もしかして水が足りないのかも。それなら何も起きないというのもわかる。
そうなると水を確保しないといけない。水を用意するには水の魔法か、桶に入れて運ぶか、それとも掘るか。どれも無理だから、別の方法を考えないといけない。
「水、水、水……あ、あれがいいかも」
水樹の実っていっぱい水を出していたし、とってきてもいいと思う。それに関係ないとも思えないしね。そんなわけで、ロープを一生懸命に登って、何度も失敗しながら外にでる。それからテクテクと歩いて水樹の下へと戻る。
戻ったら、木登りをしていく。非力だからすぐに滑って落ちちゃうけれど諦めない。足や手をかける場所を覚えてしっかりと時間をかけて登っていく。
登れば水を出している大きな実があるので、それを抱きかかえて引っ張ってみる。全身がびしょ濡れになったけれど抜けない。いっぱい頑張っても抜けないので回してみる。それでも駄目だった。これはもう仕方がないので、抱きしめたままジャンプする。
足場がなくなり、私の身体が落ちていく。体重と落ちる力も合わさって水樹の実はしっかりと取れ……なかった。私の体重が軽いからか、ぶら下がるような状態になっちゃった。このままぶらぶらしていてもいいけれど、取れないと意味がないからクルクルと身体を回しながら景色を見ることにする。
何人かの男の人が下から覗いてくるけれど何をしているのかはわからないし、何故かしばらくすると消えちゃった。そんなことよりも周りをしっかりと見ていると……遠くの森の中に泉みたいなのが見えた。今度行ってみたいかも。
そんなことをしていると、茎が切れて身体が落下していく。慌てて下の人達が退いていくので、ぶつかる事はなかった。そのまま水の中に入って、水樹の実をアイテムストレージに仕舞いこんでからまた木に登っていく。声をかけられそうになったらコールボタンを見せれば引いてくれた。
繰り返して水樹の実をいっぱい集める。十個ほど取ると、何故か取れなくなって青いスクリーンが現れた。それによると、取れるのは一日10個までみたい。これ以上取れないのは仕方がない。他の人も取れないみたいだし。
「お嬢ちゃん、水樹の実が欲しいのか?」
「こら、その前に注意しないといけないでしょう」
赤い鎧を着た大楯の男性とゴーグルをつけた水色の髪をした女性が話しかけてきた。男の人だけなら危ないかもしれないけれど、女の人も居るから、たぶん大丈夫?
「注意? 何か駄目な事をしていた?」
「えっとね、木に登って飛び降りることよ。まあ、それ自体はゲームだからそこまでは悪くはないんだけど、あなたの服装が問題なの。スカートだと色々と見えちゃうからね?」
「あ」
それで男の人が何を見ていたのか、わかった。変態不審者さんだったみたい。
「ずっと見てた奴等はコールしておいたけれど、油断しちゃ駄目よ?」
「
「え?」
「……あ、ありがとうという意味です」
「もしかして、外国の人なの?」
「それかハーフか?」
「ハーフが正解です」
「なるほどね~」
「それで、いくつ欲しいんだ?」
「いっぱい欲しいの。どれくらい使うかはわからないから……でも、渡せるお金も物もないのです」
「どうせ余ってるし、
「私のもいいわよ。だから、もう危ない事はしないでね?」
「でも……」
流石に信じられない。お父さんやお母さんも美味しい話には裏があるって言ってたもん。ドラマで借金をさせられたり、大変な要求をされたりすることだってあるって知ってるもん。
「
「新しい使い道がわかるだけでも色々と使えるからな」
水樹の実を貰う代わりに使い方を教えるってことかな。確かにそれならいいかもしれないけれど……いや、やっぱり駄目かな。
「えっと、秘密。まだわからないもん。あくまでも実験しているだけだから……」
「そっか~。それじゃあ、わかったら教えてくれる?」
「ん~それならいいよ。でも、何にも使えなくて怒らないでね?」
「大丈夫だ。どうせ破棄するか、安値で売るしかないようなアイテムだしな」
「というわけで、貴女が可愛いからいっぱいあげる。倉庫の肥やしになってたから良かった良かった」
「そういうことなら、貰うね」
両手から溢れるくらい水樹の実を何度かにわけて貰い、全部アイテムストレージに入れさせてもらった。
「それじゃあ、フレンド登録でもするか?」
「それはいいわね」
「えっと、
「だが、連絡手段がないぞ」
「そうね。連絡がつかないと大変よね。私もまだお店を持ってないし……それにアレよ。いざとなったら消したらいいだけだから」
「う~わかった。お姉さんなら、お姉ちゃんも大丈夫だって言うと思うし……」
「あら、振られたわねクロム」
「まあ仕方がないさ。それに身持ちがしっかりしていいじゃないか」
「はい。登録よろしく」
「ん」
『プレイヤー・イズからフレンド登録要請が届きました。フレンド登録しますか?』
フレンド登録が飛んできたので、決定ボタンを押す。フレンドリストにあるお姉ちゃん以外の名前が増えた。一応、二人目の友達になるのかな? お姉ちゃんを別にしたら一人目だけど。
「はい、登録完了。スノーちゃんね。私はイズ。生産職をしているの。こっちがクロム。よろしくね」
「クロムだ。まあ、何かあったら言ってくれ。これでも結構強いから、多少の事は答えられる」
「適当に使っていいからね。初心者には優しくしなきゃ」
「服、違うのによくわかったね」
「だって、持ってる杖が初心者用の物だもの。それにその服は課金で売っているアバター用の装備だもの、わかるわよ」
「な、なるほど……えっと、私の名前は……スノー。よろしく、お願いします……?」
「よろしく」
「よろしく~」
「あの、それじゃあ……」
「早く試したいのね。わかるわ」
「だな。まあ、また欲しければ言ってくれ」
「
二人と軽くお礼を言ってから、すぐに枯れた井戸に向かう。だってできる限り早く実験したいもの。
◇◇◇
枯れた井戸に移動してロープを使って降りる。相変わらず、井戸の底や壁は乾燥していて水気は一切ない。同時にイベントも起こらない。
だから、アイテムストレージから水樹の実を取り出してみるけれど、残念ながらこれだけでも何も起こらないみたい。それに水樹の実から水なんて流れてこないので、わしの考えていた事とは違うみのかもしれない。
「まだ焦る時じゃない……次は潰してみる」
続いて座り込んでから、水樹の実を地面に両手で持って叩きつけてみる。一度じゃ壊れないくらい水樹の実はヒットポイントがあった。
何度も水樹の実を地面に叩き付けていると、ヒットポイントがなくなってようやく割れて、中身を溢れ出させる。それは実の中に蓄えられていた水のようで、すぐに地面へと吸収されていく。
残ったのは実と種だけ。これでもやはり、何も起こらない。後に残った実と種をどうするから悩むけれど、そういえばこの頃ご飯を食べていない。お姉ちゃんに奢ってもらったケーキと差し入れにもらったお菓子くらい。
「食べてみようかな……」
皮の内側にある果肉を手でむしって食べようとしたけれど、問題があるから別の水樹の実を何度も叩き付けて壊す。それから中の水で手を洗ってから食べる。
「ん~びみょう……」
思わず口に出るくらいには美味しくなかった。水っぽいだけで味がほとんどしない。次の水樹の実を取り出して、かぶりついてみる。すると水樹の実が持つヒットポイントゲージが減少した。食べてもダメージが与えられるみたいだから、叩き付けるよりも食べた方が楽かもしれない。
「いただきます」
水樹の実を食べながら考える。何個かの水樹の実だけじゃ水がすぐに吸収されて量が全然足りない。結果がどうであれ、最低でも井戸の底を沈めるぐらいの量は必要だと思う。ここまでしないと何か有るかなんてわからないもの。
次はどうしたらいいのかわからないけれど、ここは一度お爺さんのところに戻ってみよう。警察の人も現場百回って言ってたし。あれ、これは関係ないかも。
とりあえず、お爺さんの所にある本で水樹や井戸に関する情報を調べてみよう。それに聞き込みもした方がいいだろうしね。
そうとなれば戻って出ないといけない。ロープを登るのは大変だけど、木登りした時みたいに楽しいから……ん、木登り?
「あっ、まだ試していない事があった」
水樹は実がなっている状態で水が出ている。この木に実が実っている状態だからと考えたら、水の量が少ないのも納得できる。だから、解決方法としてここに水樹を植えるのはありだと思う。
うん、試してみよう。種は消えずにいっぱいあるし、大丈夫。というわけで、地面を両手で掘って種を植えてみる。この段階では何も起こらない。続いて水樹の実を齧って水を種に与えてみる。
「あ……」
地面に飢えた種は水を染み込ませることで芽が出てきた。その芽はどんどん成長しているので、水樹の実を沢山齧って水を与えていくと……枯れた。灰色になってしおしおとなっていき、最後は光の粒子となって消えちゃった。
「なんで、どうして……」
オロオロしながら周りを見てもわからない。ただ、MPが全てなくなっていた。もしかして、MPが足りないから駄目だったのかもしれない。どちらにしても、これで前進した事には変わりはないから、良かった。
「チャレンジあるのみだよね」
もう一度埋めて水樹の実から水を与えながら、お姉ちゃんから貰ったマジックポーションを使ってMPを回復しつつ水樹の芽を成長させていく。
水樹の芽が成長していくにつれてMPが減っていく速度が格段に上昇して、回復が追いつかなくなっていく。それに昼から夜に変わると、当然のように枯れていってしまう。
どうやら、私のMPでは全然たりないみたい。もしくは他に水樹を成長させる方法があるのかもしれない。やっぱり、お爺さんの所で調べるのと、聞き込みが必要かも。まあ、とりあえず明日だね。
◇◇◇
次の日、水の中で眠った私はお爺さんの家に戻り、整理整頓した部屋の本棚を調べていく。お爺さんに聞いても、水樹に関する本は何処かにあったかもしれないと、教えてくれるだけだった。知りたければ自分で探せという感じみたい。
なので、私は勝手に本を探していく。とりあえず、植物に関する事から調べてみるけれど、水樹の事は水の出る不思議な木としか載っていない。次に村の歴史と書かれている本を読んでいく。
それによると、この町は水に困らない水樹があった場所に作られている事がわかった。大事なのはこの町ができたから水樹ができたのではなく、水樹があったから町が出来たという事。自分達で生み出したわけではないのなら、新しく水樹を生み出す実験とかもしているはず。だって、枯れてしまったら大変だから、予備は作るか探すかをするはずだしね。それに調べるめどとして古い物から探せばいいというのもわかった。
一時間後、歴史から調べて町が出来る前の資料を発見した。古代語で書かれていたので、解読して調べていくとこの古文書は水樹を人工的に量産するための研究資料で、試行錯誤された内容が書かれている。それも大事な所は暗号文なので、解読に更に時間がかかる。暗号文の方はパズルゲームが用意されていたけれど、実際に解読の方を頑張ってみる。
判明した事は三つ。水樹の成長にはMPと水、それに月の光か太陽の光が必要だということ。どちらかの光を浴びて成長すると、もう片方の光を浴びて成長する事ができないみたい。太陽の光で育った水樹の芽は月の光で枯れる。その逆も同じ。だから、水樹を育てる場合は大量のMPを注ぎ込んで一気に成長させるか、どちらかしか光の届かない場所で育てるしかない。それこそ、急速に成長させるような魔法か何かが必要になる。
「お姉ちゃんなら知っているかな?」
お姉ちゃんにフレンドメッセージを送って、聞いてみる。やっぱりすぐに返事がきた。今、学校のはずなんだけど……
『植物を急速に成長させる薬はある。採取する時とかに使うからね。まあ、コストパフォーマンスが悪いから、基本的に生産職の人しか使わないけれど』
『どこにあるの?』
『道具屋で売っているかな』
『おかね、ない……』
『所持金はいくらなんだ』
『ぜ、ぜろ?』
『……よし、倉庫に余っているいらない奴をあげる』
『でも……』
『それなら、何か言いスキルの情報があったりしないか?』
『私が持ってるスキルは【水泳】【潜水】【古代語】【妖精語】【のんびりびより】かな? 効果は……』
お姉ちゃんに説明していくと、不思議がられた。
『明らかに普通のプレイスタイルではないけど……古代語は少し、欲しいかも。遺跡とか、よくあるだろうし、【炎帝】を手に入れた場所にもわからない文字があったし……』
『じゃあ、私が教えるね』
『お願い。その代わり、授業料を渡すよ。他に欲しい物はないか?』
『欲しい物……あ、大きな鏡かレンズが欲しいです』
『流石にないから、生産職の人に作ってもらうしかないな』
『生産職なら、フレンド登録した人がいるよ』
『そうなの?』
『えっとね……』
お姉ちゃんにイズさんの事を説明していく。するとお姉ちゃんにも怒られちゃった。でも、仕方がないよね。
『とりあえず、お金は私が支払うから、依頼しておくといいかな。他には何かある?』
『えっと、MPが欲しいかな? 育てるのが、沢山MPがいるみたいだから……』
『なるほど……それなら私のMPも渡せるかもしれない。学校が終わったらログインするから、少し待っていてくれ。だいたい午後四時くらいになるかな』
『
『うん、またね』
お姉ちゃんの次はイズさんにメッセージを送ってみる。イズさんの方もすぐに返信が帰ってきた。
『どうしたの?』
『依頼したい物があるんです』
『依頼ね。何かしら?』
『光を集めるレンズって作れますか?』
『できるわよ~』
『それならお願いしたいです』
『ん~大きさが知りたいわね』
『それなら、今から会えますか?』
『オッケー。どこに行けばいい?』
『えっと……』
イズさんに場所を伝えて枯れた井戸で足をぶらぶらさせながら待つ。少しするとイズさんがやってきてくれた。
「やっほー。昨日ぶりね」
「はい」
「それで依頼というのは?」
「この井戸を覆うレンズが欲しいんです」
「どういうこと?」
「太陽の光か月の光を集めないといけないんです」
「水樹の実に関係すること?」
「です。どうやら、水樹の種から水樹を育てるのには魔力と月の光か太陽の光が必要みたいなんです」
「なるほど、それで井戸の蓋をレンズにすることで効率的に光を収束させて集めるのね」
「テレビで見ました。作れますか?」
「もちろんよ! お姉さんに任せなさい!」
良かった。これでどうにかできそう。イズさんにも感謝しなきゃ。
「複数枚、用意するとして大きさから考えて値段は……これぐらい?」
「お金は後でいいですか? お姉ちゃんが支払ってくれるので……」
「そうねぇ……あ、お金はいいわ。変わりに実験が成功して水樹が育ったら、その水樹を伐採させてくれないかしら?」
「え?」
「もちろん、スノーちゃんが満足したらでいいし、もう一本の水樹を育ててもいいから。私は水樹から手に入るかもしれない枝とかで杖を作ったりしたらどうなるか、気になるのよ」
そっか。生産職の人からしたら、これって素材を作るのと変わらない行為なんだ。そう考えると納得できるかも。水樹で作った杖……私も欲しいかも。
「あの、それって私に作ってもらえたり……」
「試作品なら
「あの、もうわかっているんじゃ……」
「まあ、それはそうだけれど、発見したのはあくまでもスノーちゃんが頑張って努力した結果だからね。だから、その辺りは気にしなくていいわよ。それに悪いと思うのなら、私の店で装備を買ってくれるだけでも十分だから」
「わかりました。
「ロシア語ね。こちらこそ、すぱしーばよ。予想通りなら、水属性に特化した装備になるでしょうし、売れるわよ」
「なるほど。まあ、成功するかわからないけれど、それでもいいなら作ってきてほしい、です」
「うん、任せて。すぐに作ってくるわ。どうせ鏡の素材なんて武器には使えないから余ってるしね」
「お願いします」
「任されたわ。できたら電話をするわね」
それから、イズさんと別れて私はお爺さんの所に戻って本を読む。まだまだ読みたい本はいっぱいある。特にスキルを得られる情報も隠されているみたいだし、冷たいスキルを探していくのはいいかもしれない。
例えば解読したこの【水魔法】から派生する【氷魔法】とかに興味が引かれる。習得方法は寒い場所で水魔法を使い続けるという簡単なような、難しいような内容。そもそも寒い場所がこの町にないから、難しいと思うの。
まあ、私は覚えられる方法を思い付いたから、水魔法を取れたらためしてみようかな。楽しみ。うん、とっても楽しみ。