熱いの嫌なのでINT極振りの氷結特化にしたいと思います   作:ヴィヴィオ

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ラスボスはメイプルですが、基本的に勝てません。いや、最初は勝てますが、ある程度すればほぼ勝てません。スノーの勝ち筋は凍結による行動を封じ、粉砕する事。でも、暴虐とかあるし、機械神モードは広範囲殲滅をしてくるのでHPが塵なスノーちゃんだとお察しです。ぶっちゃけ、スノーは喰らったら終わりの弾幕ゲームとシューティングゲームを合わせた感じになるのにメイプルは食らってもそれなりのダメージを受けるけど回復されるし、確定で耐えられるし……地獄かな? 流石はラスボス


月の水樹とスノー

 

 

 

 

『ログインしたけれど、何処に行けばいい?』

 

 お爺さんの家に置かれている本を解読していると、お姉ちゃんからフレンドメッセージが届いた。いつの間にか数時間も経っていたみたい。まあ、読んでいたのが、古代語で書かれたアリスの童話だったから仕方がないかも。

 

『水樹の所に行くから、待っていてくれる?』

『わかった。それじゃあ、待ってるから、気をつけてきてね』

 

 お姉ちゃんとのやり取りをしながら、本をあった場所に片付ける。ちゃんとお片付けはしないと駄目だからね。その後、お爺さんの家を出て水樹がある広場に向けて一生懸命に走っていく。

 

 パタパタと頑張って走るけれど、やっぱり移動する速度は凄く遅い。少し、AGIが欲しくなってきちゃう。

 

「スノー」

「……お姉ちゃん……」

 

 水樹の広場に到着すると白と青色の服を着たお姉ちゃんがキョロキョロして待っていてくれたみたいで、すぐに私の事に気付いてこちらにやってきてくれた。それで抱き着こうとして、すぐに止めてしまった。だから、私から抱き着いてみる。するとお姉ちゃんは優しく頭を撫でてくれるので、思わず目を瞑ってしまう。

 

「っと、こうしているのはまずいな。何処に行けばいい?」

「えっと、あっち」

 

 指差した方向を見たお姉ちゃんは私の前でしゃがみ込んで背中を見せてくる。

 

「おんぶしていくから、乗って」

「疲れてないよ?」

「こっちの方が歩く速度が速いからな」

「ん、わかった」

 

 お姉ちゃんの背中に乗ると、すぐに立ち上がって移動していく。何故か周りを気にしているみたいでキョロキョロしている。どうしたんだろう? 

 

「それで必要な物は買えたのか?」

「今、作ってもらってるよ。どうなってるか聞いてみるね」

「ああ、それと値段も聞いてくれ」

「あ、代金は要らないって。その代わり、やってることで素材が手に入ったらそれが欲しいって」

「それは……騙されてない? 大丈夫?」

「うん、たぶん大丈夫だよ? その事も注意されたし、取れた素材で杖を作ってくれるんだって……」

「まあ、私も会って話してから判断するか。それで、その人はこっちに居るのかな?」

「あ」

「ん?」

「聞いてなかった。今、向かっている場所は実験をする場所だし、道具が出来ているかも聞いてないや」

「スノーはちょっとぬけているな」

Извините(いずヴぃにーちぇ)。すぐに確認するね」

「ああ、頼む」

 

 なんだか、こっちのお姉ちゃんは凄くしっかりとしている気がする。あ、はやく連絡をしなきゃ。えっと、メニューからフレンドを選択。表示されたリストからイズさんを選んでメッセージを送るっていうボタンを押して、メッセージを書き込んで送信すればよしっと。

 

『スノーです。道具はできましたか?』

『ん~できてるわよ。ただ、最適化するのにはもうちょっと時間が欲しいの。ただ、実験するぐらいの精度は保証するわ。どうする?』

『それなら、実験したいです。精度の高いのを作って失敗したらいやですから……』

『それもそうね。それじゃあ、持っていくから、例の枯れ井戸でいいかしら?』

『そこでお願いします。お姉ちゃんと待ってますから……』

『お姉さんも居るのね。わかったわ、すぐに行くわ』

『待ってます』

 

 連絡を終えたので、お姉ちゃんにその事を話す。

 

「井戸の所で待ち合わせしたから、このまま行ってくれる?」

「わかった」

 

 お姉ちゃんの足だと、すぐに枯れ井戸の場所に到着しちゃった。私の十倍は速く移動できてる。本当に凄い。

 

「さて、ここでどうするんだ? 私は何も起こらなくて諦めたが……」

「えっとね……水をいっぱいにするつもりなの」

「水か。それなら、魔法か何かを使わないといけないな。そのための道具か? だが、植物の成長促進薬なんて物を欲しがったんだから、もしかして水樹を育てるのか?」

「流石はお姉ちゃん。正解だよ」

「アレは使い道がわかっていないものだから、オブジェか水泳や潜水を安全に手に入れるためのものだと皆で話し合って判断していたが……」

「えっと、駄目だった?」

「そんな事はないよ。よく考えている。だが、これだけは覚悟してくれ。失敗する可能性が高いんだ。何回か育成にチャレンジしたプレイヤーもいたが、全員が失敗している」

「え? そうなの?」

「ああ。だから失敗する可能性もあるんだ。なんでも、すぐに枯れてしまうらしい」

 

 ひょっとしたら、本の育成記録を見ていないのかも。それだったらわからないのも無理がないかも? 

 

「こんばんは~」

「あ、イズさん」

「ふむ、貴女がスノーに依頼された人だな」

「ええ、そうよ。貴女は……確か、ミィだったかしら?」

「私の名前を知っているのか?」

「ええ、強い炎使いが居るって聞いたわ」

「そうか。改めて自己紹介しよう。私はミィ。スノーの姉だ」

「私はイズ。よろしくね~」

「それで、今回の代金だが、詳しく教えてくれ」

「まあ、妹さんの事なら心配になるわね。いいわよ。まずは……」

 

 お姉ちゃん達が話している間に私は井戸に降りて準備しようかな。

 

「お姉ちゃん、イズさん。準備してるから、お話が終わったら教えてね」

「ああ、わかった」

「ええ、任せて」

「スノー、これが植物成長促進薬だ。それとMPポーションの追加だ」

Спасибо(すぱしーば)

 

 お姉ちゃんからアイテムを受け取り、それを仕舞う。それからロープを掴んで滑り降りるようにして下に行く。やはり泣き声のような物が聞こえてくる。そんな枯れ井戸の底に水樹の種を飢えて、周りにいっぱいの水樹の実を置く。

 

「スノー、こっちの話は終わった。それでどうするんだ?」

「月の光が出たら、イズさんに頼んだ道具で井戸に蓋をして欲しいの」

「月の光を集めるのね。わかったわ。それなら、ちょっと配置をしましょう」

「手伝おう」

「お願いするわ」

 

 お姉ちゃん達が用意してくれている間に私も種を掘り返して、位置を光がきやすそうな場所に変えていく。何度も位置を変えていくと、結構な時間が経ったみたいで、月の光が降りてきた。

 

「スノー眩しくないか?」

「大丈夫」

「もっと強くできるわよ~」

「一応、これぐらいでいいよ。それじゃあ、始めるね~」

「頑張れ」

「頑張ってね~」

「ん」

 

 水樹の種を植えたところに水樹の実を割って水を染み込ませる。噛んで中身を取り出し、後は捨てる。今回は食べない。水を吸い込んだ地面から水樹の芽が出てくる。そこに月の光が降り注いでいく。するとどんどん芽が成長していき、ある程度で止まる。

 

「あっ」

「どうした?」

「MPが吸われてく」

「ここからが本番ね」

 

 MPが急激に吸われていくと、止まっていた場所からすくすくと成長していく。私もMPは一瞬でなくなってすぐに止まるので、マジックポーションを飲んで回復して与えていく。それと植物成長促進薬も使う。

 

「あぅ、枯れちゃった……」

 

 しかし、明らかにMPが足らなかったようで、すぐに消えてしまった。私のMPは12だから仕方がないけれど、これは無理っぽい。

 

「大丈夫か?」

「駄目だったよ……」

「原因は?」

「MPが足りないの」

「そうか……それなら、私も協力しよう」

「いいの?」

「そもそもクエストは出ているのか?」

「出てない、かな?」

 

 現在受けているクエストを表示させるけれど、ない。雪の妖精と冬の女王だってまだ受けていない。そもそも、あくまでも古文書を解読しただけだから。

 

「なら、何人かでやっても大丈夫だろう」

「そうね。私も手伝うわ」

Спасибо(すぱしーば)

 

 今度は三人で井戸に入る。入ってくる時に蓋の調整が大変だったので、イズさんが縄の梯子を持って来てくれたのでなんとかなった。空中で身体を維持しながら、しっかりと嵌めないといけないから、大変なの。

 

「登山で使う梯子があって良かったわ」

「確かに色々とあった方が便利だからな。スノー用のも今度買うか」

「それなら是非当店でお願いします♪」

「まあ、いいだろう」

「やった。これでお店に一歩近づくわ!」

「勝手に決まっていくの……」

「あら、駄目?」

「別にいいよ。冷たい色がいいから、それさえ守ってくれればなんでもいい」

「あら、暖かい色とかも似合いそうだけど」

「嫌ッ!」

「それは駄目だ。すまないが、白か水色、青系で頼む」

「そうなると特注品になるけれど、わかったわ」

 

 お姉ちゃんの赤色はまだ我慢できる。お姉ちゃんだから、なんとか……でも、それ以外は肌に触れるのは絶対に嫌だ。特に赤色は肌が焼けるように感じちゃう。

 

「さて、三人で初めてみよう。これで無理なら方法を考えないといけない」

「そうね。やりましょう」

「ん」

 

 先程と同じ手順で実験を開始する。水樹の芽はしっかりと成長していき、私達三人のMPを大量に吸い取っていく。マジックポーションを大量に使っていると水樹の芽は木になり3メートルぐらいの所で成長が止まってしまった。

 

「よし、一応は成功だな」

「そうね。切り倒して品質を確認してみましょう。いいわよね?」

「どうぞ」

 

 イズさんが斧を取り出して、木を切る。切った木は木材へと変わって、残りは光の粒子となって消えてしまった。

 

「どうだ?」

「水樹の若木とは出るわね。品質は低品質よ」

「使えるの?」

「ええ、これでも使えるわ。多分だけど、初心者から中級者の水の杖としては充分でしょうね」

「トッププレイヤーには難しいか」

「そうね。というか、説明文に様々な魔力が混じり合った低品質品って書かれているから、高品質にするのには一人でやらないといけないんじゃないかしら?」

「一人か。無理だろう」

 

 確かに凄い量のMPが必要になるから、無理かな? 

 

「目算だが、最低で一万くらいは必要なようだしな」

「そうね……そんなの、一人で賄える量じゃないわ」

「いっぱい使っちゃったもん……ね……」

「スノー?」

「どうした?」

「あのね、あのね。いい事、思い付いたの。でもね……」

「言ってみろ」

「そうよ。ここまで来たらお姉さん、頑張るから」

「じゃあ──」

 

 二人にお願いして、沢山の物を買ってきてもらった。とっても高い買い物だったけれど、お姉ちゃんは快く引き受けてくれた。私のお小遣いからも使うらしいけれど、もちろん、よろしくお願いした。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 次の日の夜。リベンジを行う。まず初めに水樹の種を植えて実を敷き詰める。次に大量のマジックポーションを敷き詰める。蓋を外すと自分のMPが減っていればそのままこちらを回復されて消えちゃう。けれど、満タンの状態で蓋だけを取ると中身を捨てる事ができて、一定時間はそこに留まる。

 この事を利用してマジックポーションと植物成長促進薬で枯れ井戸の中身を全て満たすだけ。私も一緒に埋められるけれど、潜水の効果で40分は息が続くので問題なし。

 

『こっちはオッケーよ』

『頑張れ!』

「ん」

 

 水樹の実から水を引き出し、芽を成長させる。月の光は最大級に収束され、マジックポーションなどの瓶を透き通り、反射しながら芽へ当たっていく。壁はイズさんがコーティングして一時的に鏡のようにしてくれているので、そのまま光に包まれる。

 そして、私は手に持った小型のハンマーでマジックポーションなどを適当に叩き割る。ガラスの割れる音が響き、大量のマジックポーションと植物成長促進薬を受けた水樹の芽はすぐに木となり、その枝がどんどん瓶を自ら割っていく。

 

「おおきくな~れ、おおきくな~れ」

 

 アイテムストレージからどんどん追加のマジックポーションを数百単位で取り出し、全てを割る。私の身体はどんどん成長していく水樹によって上へと運ばれたり、押しつぶされそうになるけど、どうにか逃げる。

 次第に天井の蓋まで近付き、私はそのまま蓋と水樹に弾かれて空へと上がっていく。下には地上6メートル、地下20メートルを超える大きな水樹ができました。蓋を弾く時に私の身体も貫かれたけれど、問題なし! 

 

「どうやら成功みたいだな」

「お大臣様のような力技よね。ところで課金アイテムで賄ったみたいだけれど、何千円分を用意したの?」

「三万だな。正直、かなり痛い」

「マジックポーションで三万円ね……痛いわね」

「い、妹のためだ。二万円、結構痛いけど……」

「でしょうね」

 

 貫かれた私のヒットポイントは減っているけれど、ヒットポイントポーションで回復しているので大丈夫。空から見ると、いっぱいの人がこちらを見ているけれど、気にせずに次の行動を起るのを見る。

 水樹は大樹となって無数の枝から葉を生み出し、続いて実を作る。その実は沢山の水を溢れ出させる……なんてことはなかった。ただ、私の目の前に青いスクリーンが現れただけだ。

 

 

『シークレットクエスト・月水樹の育樹を達成しました。続いて水樹の伐採か、水樹の実の採取クエストが進行します。どちらのクエストを進行させるか、止めるかを選択してください』

『スキル【育樹】を習得しました』

 

 もちろん、止める選択はしない。イズさんから考えたら伐採の方なんだけど、どうすればいいか二人に聞いてみる。

 

『月水樹の伐採か採取ってクエストが出たのだけれど、どうすればいい?』

『好きにしていいぞ』

『好きにしていいわよ。私は枝を貰ってるしね』

Спасибо(すぱしーば)

 

 じゃあ、ここは実を選択しよう。実のクエストを選択すると、新しいクエストが始まった。

 

『クエスト・月の力を秘めし水樹を開始します。月水樹の実を太陽が登るまでに一つ収穫してください。なお、モンスターが水樹の実を狙ってくる場合もあります』

 

 どうやら、一つの実を収穫したらいいみたいだけれど、周りにポコポコ産まれてきている。試しに一つ、触れてみると【水樹の実 品質:中級】と表示された。他のも触れてみるとだいたい同じ。

 

「もしかして、上の方がいいのかもしれない」

 

 とりあえず、時間いっぱい登ってみる。AGIがないから怖いけれど、頑張る。それに元々すでに高い位置にいるので時間の短縮ができる。登り始めるとすぐに【登攀】のスキルを手に入れた。井戸の底から何度も登っていたからかもしれない。

 

「うんしょ、うんしょ」

 

 登る事四十分。ふと外を見ると町の外にワイバーンやグリフォンみたいな飛行系のモンスターが集まっているけれど、町の中には何故か入ってこない。気にせずに登ろう。下を見れば他の人達がどんどん登ってきている。それに水樹のヒットポイントゲージも減ってきているみたいで、あまり時間はない。

 

『スノー、いいか、絶対に下を見るな』

『お姉ちゃん?』

『いいな、絶対だ。そのまま何においても上を目指してくれ。いいな? もし、見たら、物凄く怒るし、嫌いになるかもしれない』

『う、うん。絶対に見ないよ』

『いい子だ。頑張れ』

『が、頑張る』

 

 お姉ちゃんに言われた通り、下を見ないで上へ上へと目指していく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「で、連絡したの」

「ああ、これで遠慮なく……邪魔ができる」

「あはは、そうね。付き合うわ」

 

 イズと二人で登って近くの実を取る程度は認めよう。どうやら、一人一つまでのクエストみたいだからな。だが、上を目指す奴等や、切り倒そうとする奴は駄目だ。これは私達が作った水樹であり、スノーの努力の結晶と私達のお金が使われている。

 

「【炎帝】」

「爆弾」

 

 例え攻撃は効かなくても、ノックバックは与えられる。なので、炎帝を使ってから火力を上げる【連続魔法】のスキルでノックバックの効果を持つ奴で迎撃していく。

 

「これは私達が作った水樹だ。許可がない者に渡さん」

「そうよ。取るならお金を払いなさい!」

 

 邪魔する奴は片っ端からコールしてやるし、潰してやる。それに友達にも協力を要請して妨害していく。ちゃんと許可を取ってきた者達には一部は取らせてやる。

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 手が痛くなってきたけれど、どうにか水樹の頂上に到着した。そこには木々の中に埋め込まれた多きな実のような丸い結晶体があった。多分、あれが一番大きな実だと思う。これにしよう。

 

「ん~!」

 

 周りの木々の隙間を小さな身体を入れて進む。結晶に触れて取ろうとしても取れない。表示されている情報からして、これが月水樹の結晶みたい。分類的には実みたいだけど、ヒットポイントゲージもある。

 とりあえず、周りの木々を登って色々な所から支えられている枝の部分を見てみる。こちらにもヒットポイントゲージがあって物凄く太い。私の三倍くらいの直径がある。

 魔法も使えないし、杖やハンマーで殴ってみる。取れない。実も同じ。ダメージを一切与えられない。さて、どうしようか。太陽が登るまで時間がない。

 

「あ、食べればいいんだ」

 

 水樹の実だって噛めばダメージが入った。多分、これも同じだろう。なので、結晶の実にかじりつく。支えている枝っぽい木のような何かの方にかじっても時間が足りないはず。だから、実を直接食べる。

 実は濃厚などろりとした味がしたけれど、食べられて飲めるだけましなので我慢する。あと、触れているとひんやりしていて気持ちいからよしとする。

 表面を食べて穴を開けたら、中に入って中央部分を食べていく。女の子として駄目な恰好をしているけれど、仕方ない。とういうか、暗くて冷たくて気持ちがいい。

 四分の一くらい食べると、実から大量の水が流れて外に押し流されそうになるけれど、潜水と水泳を使って突き進む。食べ方を工夫して凹凸を作ればそこに足をつけて水からも逃れられるから問題なし。

 

 中心部まで進むと、急にひろい空間に到着し、そこから沢山の金色の液体が溢れてくる。しばらく必死に果実の壁にすがりついていると、ある程度の勢いが収まった。

 試しに空いた穴から中を覗くと、金色の液体で満たされた中心部に種みたいな物があった。それにその多きな種みたいな物から金色の液体が溢れだしているのが見てわかる。

 このままじゃまずい気がするので突き進む。すると、凄い勢いでヒットポイントゲージが減っていく。メニューを操作してヒットポイントをポーションで回復させながら、泳いで近付いてパクリと果実に噛みつく。

 

『スキル【水中適応】と【魔力体質】を習得しました』

 

 何の考えもせず、気にせず食べる。口の中には蜂蜜で漬けた林檎のような感じがして凄く美味しい。とても美味しくて夢中になって食べるとすぐになくなってしまった。それだけで我慢できずに周りの液体を飲み込んで、外の果肉も全部食べていく。

 

「あれ?」

 

 全部食べようとすると、いつの間にか気がついたら水樹が光の粒子となって消滅していく。

 

『クエスト・月の力を秘めし水樹を攻略しました。所要時間・六時間。スキル【月の水樹】、【禁断の叡智】を習得しました』

 

 高い位置に居た私は当然のように空へと放り出された。それはつまり、そのまま落ちていくことを意味している。

 

「やぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 思わず下を見そうになるけれど、お姉ちゃんの言葉を思い出して必死に目を瞑る。怖いけれど、この世界はゲーム。だから、死ぬ事はない。ちょっと痛いだけ。大丈夫、大丈夫だから、平気。あの時に比べたらましだもの。例え下から爆発音がしても平気。平気だもん! 

 

「間に合った~!」

 

 そう思っていたら、途中で衝撃がきて誰かに抱き留められるような感触がして目を開ける。そこにはお姉ちゃんが私を抱きしめてくれていた。

 

「お、お姉ちゃん……?」

「スノー、大丈夫? 怪我はない? どこかおかしくはない?」

「だ、大丈夫だよ……ちょっと熱いくらいで、言われた通り、下を見ないようにしたから……」

「そう、それは良かった~。あと後ろは見たら駄目だからね。熱いのはごめん。スノーを助けるためにフレアアクセルを使っちゃったからね」

 

 地面をこっそりと見たら、黒くなっていた。怖いので考えないようにする。

 

「それで、どうなったの?」

 

 お姉ちゃんが私を運びながら聞いてくるので、答えていく。

 

「うん。美味しかったよ」

「え? 美味しかったの?」

「うん。一番上の木の中に変な実があったの。外せなかったから、食べたんだよ」

「果物なんだから、確かに食べるのはありかも?」

「あ、Извините(いずヴぃにーちぇ)。お姉ちゃんの分、とってこれなかった……」

「私は自分で作ればいいから、大丈夫。それに私が取るなら太陽の光で育てた水樹の方がいいだろうし、気にしなくていいよ」

「ん、わかった」

「それよりも、何か新しいスキルでも手に入れたんじゃないか?」

「えっと、【育樹】と【登攀】は覚えているけれど、他は何か取れているかわからないから、確認してみるね」

「いや、確認は後でいいよ。もう明け方だから、眠いでしょ? 正直、私は眠い」

「あ……そうだよね。Извините(いずヴぃにーちぇ)。お姉ちゃん、明日も学校があるもんね……」

「まあ、大丈夫。なんとかする。さて、イズにこちらは大丈夫だからログアウトするように伝えてあるから、私達も寝ようか」

「ん。それじゃあ、水の中に……」

「却下。普通に宿で寝るからね。というか、そんなところで寝ちゃ駄目」

「水の中が安心できるのに……」

「……一緒に寝ようか」

「いいの? 迷惑じゃない?」

「大丈夫だ。なに、ログインしたままで寝ても問題ない……たぶん」

 

 髪の毛とか、大変な事になってそうだけど、いいのかな? でも、お姉ちゃんと一緒にも寝たい。一人で寝るのは寂しいし、また気付いたら火の海とかだったら怖いもん。

 

「あ、タイマーだけはセットしておいて。起きられるかわからないし」

「ん、わかった。Спасибо(すぱしーば)

「可愛い妹のためだから、これぐらいはするよ。まあ、毎日とはいかないかもしれないけれど……」

「たまに一緒に寝てくれるだけでも嬉しいよ」

「なら、休日はこっちで寝てもいいかも……一応、お母さん達と相談してみるか」

「ん」

 

 宿屋さんに到着して、お姉ちゃんが取ってくれた部屋に入る。少し広めのベッドだけど、そこに二人で一緒に入る。私はお姉ちゃんに抱き着くと、お姉ちゃんも抱きしめてくれた。

 

「スノーは……雪は抱き枕になってね」

「ん、お姉ちゃんも、抱き枕……」

「それで安眠できるなら、何時でもいいからね。っと、本当に寝ないとまずい。おやすみ」

Спокойной ночи(スパコィナイノーチェ)

 

 お姉ちゃんの胸に顔を埋めながら、瞼を閉じるとすぐに眠くなってきて、うとうとしてくる。そのまま眠気に任せて眠っていく。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 真っ暗な暗闇のような、宇宙空間のような場所。そこには巨大な円形が浮かぶように存在しており、円の中心には青色の卵のような物にいクリスタルみたいな物が複数突き立てられているオブジェ。円形の下には青い惑星が存在し、それこそはVRMMO《New World Online》の世界だ。

 このような不思議な空間にマスコットキャラクターのよう見た目をした摩訶不思議な存在、人々から運営や管理者と呼ばれる者達が働いている。その一人はその足元。青空が描かれている円形の真上を浮遊型の足場を回転させながら、その世界に存在する他のメンバーへと慌てた声を投げた。

 

「なあ、月の水樹ってどうやって作るんだっけ?」

「夜に月の光を浴びせて、魔法か布で隔離しながら延々と魔力を与え続ける。それもモンスターに襲われながら」

「確か、夜か昼限定のモンスターが現れるフィールドに指定してたよな?」

「してたな。それがどうした?」

「町中でやられて攻略されてんぞ」

「はぁっ!? ねぇよ、ありえねぇよ! アレはグリフォンとかワイバーン、サンダーバードやファイヤーバードとかが押し寄せてくる悪意塗れのクエストだぞ! ましてや作る事すら難しいはずだ!」

「いや、でもよ、これ……」

「え、うそぉっ!?」

「マジだ。お邪魔虫のモンスターは町の結界で入れず、なにもできなかったみたいだ」

「あ、本当だ。せっかくのグリフォンたちが意味をなしてねえ。だが、現状だと最悪な果実を突破する事は……」

「食べられたぞ」

「……ログを表示しろ!」

「えっと、クエスト攻略者はスノー。レベルは1。町から出たのは数回。どれもうさぎとか雑魚に殺されてるな」

「典型的な観光プレイヤーか? というか、ステータスはINTの極ぶりで、魔法スキルを習得してないのか。なんで教えてくれる魔女から逃げてるんだ? 強制的に町の出入口で話してスキルが貰えるよう、プログラムしてあるだろう」

「確認してみたら、火や炎にトラウマがあるせいで、魔女が最初に見せるファイヤーボールを見て、逃げてるな」

「あ~仕様変更の項目に入れておけ。どの魔法が見たいかをプレイヤーに選ばせればいいだろう」

「りょ~かい」

 

 スノーのログを見ていくと、水樹の場所で何度も死んでいる姿やログイン時間が異常に長い事に気付いていく。

 

「ログイン時間の警告が出ても無視してるのか? 強制ログアウトが働いてないのはなんでだ?」

「この子、病院からログインしている特別枠だ。制限は病気によって解除されてるから、この子のプレイ時間は問題ない。管理は全て医師が担当しているはずだ」

「あ~ターミナルケアとか、そんなんか。可哀想に……」

「まあ、ここは触れないようにして、彼女のデータは使わせてもらおう。トラウマに関する事の方が問題だ」

「といっても、グラフィックを変えるぐらいしかできないぞ。炎や火を外すわけにもいかないし、せめて町中をランタンに変えるぐらいか?」

「一人のためにそこまでは残念ながらできない。ただ、ダンジョンとかでどうしても通らないといけない場所に関しては別のルートを作るか、スキップできるようにするか、検討しておこう」

「まあ、そっちはいいじゃねえか。それよりも問題は禁断の果実が喰われた事だ」

「月はなんだっけ?」

「MPや知力関係だな。太陽はHPや力関係。MPだけならそこまで問題はないが……」

「果実は禁断の叡智だっけか」

「INTが2倍になる奴だな。絶対防御とは逆の」

「でも、現状のプレイヤーレベルだったら、破壊不可能なほどの防御力をさせていたはずだぞ。ペインでも壊せないレベルだ。時間切れになるしな」

「いや、ペインなら枝を切断できるだろう」

「どっちにしろ、レベル1では不可能だ。で、食べたのか」

「食べたんだな……」

「果実だし、おかしくはないんだよなあ。見た目的には見えないけど」

「だが、果実の皮を突破しても蓄えられた月の魔力が高濃度で水中のような場所を形成している。呼吸ができずに死ぬだろう。ましてや過剰な魔力によってダメージを受けるはずだ」

「この子、常日頃から水中で寝たりしているんだよなあ……」

「【水泳】と【潜水】はもちろん、途中で【水中適応】まで覚えてしまったんだよ」

 

【水中適応】は窒息ダメージが入らなくなり、水中を自由自在に動き回れるスキルだ。【水泳】と【潜水】の二つのスキルを持っていて、長時間水に浸かっており、何度も死亡しないと手に入らないスキルとなっている。

 

「あれって確か、最低でも水中で100回以上死なないと駄目だよな?」

「そうだよ」

「どんだけ火が怖いんだよ!」

「だから、トラウマなんだろ」

「まあいいか。で、噛みつき攻撃で禁断の果実を喰われ、周りの高濃度魔力も飲まれたと。これって確か、【月の水樹】を手に入れる条件を達成しているよな?」

 

【月の水樹】は【月の魔力】と【水樹生成】を得られる。【月の魔力】はMPを固定値で増やし、月の光や水樹から得られたMPを別枠貯蓄できる上に月が出ている間はどんどん回復していく。【水樹生成】は何処であろうと水樹を生み出し、攻撃などに使える。水樹の特性を持つために水を出したりはもちろん、相手に突き刺せばMPを吸収したりもできるし、壁にだってなる。ただし、肌からしか生み出せないし、成長させるには時間がかかる。

 

「している。それに【魔力体質】まで手に入れている」

「アレは確か、魔力に長時間触れているとなるんだったか。HPが増えなくなって、MPが跳ね上がる奴だったな」

「こいつHPないから元から関係ねーかもな」

「まだましだな。水魔法を取られても、HPが低いからどうとでもなる。これが太陽の方なら終わってたが」

「HPが馬鹿みたいにある火力特化の完成だもんな」

「これらは問題ないだろう。噛みつきが防御無視に関しては後々のアップデートで修正しよう。そこまで急ぐこともないだろう」

「最終手段として防御無視の噛みつきは残したい。だから、このままでいいだろう」

「わかった。とりあえず、様子見にしよう。むしろ、一番の問題は町中で水樹が作れた事だ。こちらに関してはどうなっている?」

「普通は月の光か太陽の光が必要で、町中に降り注ぐ量じゃ足りないはずだ」

「何をしでかしやがった?」

 

 ログを表示して、スクリーンで確認していく。

 

「あ~レンズか。銀系のメッキで再現しているな。よくやるよ」

「レンズを沢山設置して大量の月光を広範囲から集めて、一ヶ所に収束しているのか。だが、この方法ではMPが足りん」

「確かに一度は失敗しているな」

「二回目は……何考えてんの」

「マジックポーションと植物成長促進薬の大量投下か」

「井戸という限定された空間では確かに溜まる。水樹の育成も問題ない」

「効率よく光を集め、マジックポーションと成長促進薬で急激に成長させたというわけか。蓋をすれば太陽の光も月の光も選んで遮断できる。よく考えているな」

「真面目に解読して、準備と考査を重ねてやってるなぁ……文句言えねえ」

「古文書と妖精語をしっかりと覚えて……待て、この子が読んでいるのは雪の妖精と冬の女王だったな。あの枯れ井戸って」

「クエストの開始場所だな。トリガーは使えない井戸に水を満たす事」

「むしろ、こっちを狙ってるだけで、水樹は手段だろうな」

「雪の妖精と冬の女王ってとれる?」

「無理だろ。これ、俺達が殺しに行っているダンジョンだぞ。その最奥で雪の妖精とガチ戦闘して勝利しないといけない。吹雪で継続ダメージを受けながら視界を塞がれ、何処から飛んでくるかもわからない攻撃を雪が降り積もって動けないような場所で戦うんだ。絶対に無理」

「冬の女王は?」

「あっちは七曜のダンジョンを全てクリアしないと無理だから、現在実装されてない。せいぜい雪の妖精と戦えるぐらいだ。それこそ魔法を無効にでもしない限り……」

「知ってるか、【月の水樹】は触れた物のMPを吸収するんだ」

「フラグだな」

「フラグだったな」

「だ、大丈夫。トラップと道程のモンスターが殺してくれる! 連鎖するデストラップをクリアする事など、それこそノーダメージにされない限りは平気だ!」

「まあ、こう言っているし、いいだろう。それよりも水樹に関する修正だ。果実を量産されるのは困る。ゲームバランスの崩壊が起こる」

「かと言って、ここで修正するのはまずい。プレイヤーの努力の結晶だ」

「そもそも、これって量産できるのか?」

「え? できるだろ。同じ方法を使えば……」

「それってつまり、課金アイテムを大量に使うってことだよな」

「そうだな」

「美味しいよな」

「美味しいな」

「うんうん」

「問題は果実だ」

「上空に関して町の結界を解除しようぜ。それで解決だ。ようは水樹に果実が生まれるほど成長させたら、そこ限定でモンスターが入れたらいいんだ。理由は……水樹に結界の一部を突き破られたからってことにしよう。これなら、今回の衝撃で脆くなったことにもできる。結界に限界値が設定できていれば襲撃イベントを起こす理由にもなる」

「なるほど。それでいこう。グリフォンとかがくればいい難易度だろうしな」

「ただ、これってダンジョンにならないかな?」

「ダンジョンなら、ユニーク装備を設定しなきゃいけないが、必要ないだろう。あくまでも水樹の実を食べにくるだけだ」

「それもそうだな。じゃ、監視対象にしておくか」

 

 もっとやばいプレイヤー(ラスボス)が現れる事を俺達はまだ誰も知らない。なんてな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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