神の炎剣を拾った少年 ~精霊の少女は未来に降り立つ~ 作:ごぼう大臣
「ふぅー……くたびれた」
リオン一行が村に着いてから二時間ほどして、短い日が沈んで辺りが暗くなった頃。
貸し与えられた一軒家に踏みいると、ミィナは長い息を吐いてローブを脱ぎ、目の前の椅子にかける。毛皮も脱いで白いレースに黒のシンプルなエプロンドレスという格好になると、ずいぶん身軽に見えた。襟の紺色のリボンが、おしゃれというより凛とした佇まいを際立たせる。
「すみませんミィナさん。なんだか話し合いを任せてしまってばかりで」
「構わないわよ。私が勝手に割って入ったんだし」
リオンは恐縮しながら、家の隅へと荷物を置く。その横にニールが「悪ぃ、ちょっと詰めてくれ」などと言いながら自分の荷物、そして脱いだ鎧を無造作に積んでいく。
リオンは苦笑したが、咎めはしなかった。元より部屋の区切りなどない、大部屋が一つだけの簡素な家だ。中央のテーブルと椅子、それぞれの壁際にある囲炉裏と藁積み、そして窓を除けば、およそ倉庫と同じようなものだ。
「ねえミイナ、そういえば何の話してたの? あの黒ローブの人と」
レヴィは座らずに、テーブルにもたれかかって問いかけた。よほどマントが気に入っているのか、屋内にいても着たままだ。
「マルクのこと?」
「そうそう。あの後みんなで村長さんのところ行ったけどさぁ、結局よく分かんなかったんだもん」
「あー……」
やれやれと笑うレヴィに、ミィナたちは苦笑する。視線を交わしながら、彼らは村長宅での出来事を思い出していた。
村でひときわ大きな屋敷に連れて行かれ、村長を名乗る老人と対面したはいいが、そこからが大変だった。
なにしろその老人、どういう訳か挨拶をしても『私が村長です』とひたすら言うばかりだったのだ。それはちょうど、最初に出会った『エルノア村にようこそ』としかしゃべらなかった村人にこれまたそっくりであった。
結局マルクが「この方々は○○さんのいた家に泊まります。単なるよそ者と間違えないでくださいよ」と話を取りまとめ、今いる家に通されたのだった。振り返れば面会のためだけに案内してもらったような、ほとんど意味のない時間であった。
仕方ないので、ミィナとリオンの二人で大体のいきさつを伝える。マルクがなんとなく怪しいこと、収容所のことなど……。それも用心して寄り集まり、できるだけ小声で。
「ふーん……」
全てを聞き終えると、囲炉裏を焚いていたニールが低くうなり、つぶやく。
「まぁ俺らも、あの怖がり方を見て思ったけどよ。やっぱし尋常じゃねえよな、それも村中が」
「それに歓迎されてない風でしたよね……。やっぱりあのマルクって人が何かやってるのか……」
「けど、マルクってまだ若いよ? リオンと同じくらい。そんな村中をどうこうするような真似できるかなぁ?」
考え込む三人にレヴィが口を挟む。するとミィナがはっきりと答えた。
「それについては、ちゃんと根拠があるわ」
「どんな?」
「まず、盗賊が近くで増えだしたのは最近。これは前もって聞いていた通りね」
「うんうん」
レヴィが身を乗りだし、他の二人も素早く耳を傾ける。ミィナは続けた。
「二つ目……マルクが収容所のことで、『他に建てる場所がなかった』と言ったでしょう。つまり収容所は村の形が出来上がった後、最近できたって事よ」
「でも、この村ってわりと昔からありますよ? もしかしたら以前からあの場所にあったんじゃ……」
「あんな崖の真下にあるもの、時間があれば普通は移設するわよ。急ごしらえの可能性が高いわ」
「……なるほど……」
ミィナの返答にリオンは神妙な顔をして納得する。すると今度はニールが尋ねた。
「けどよ、何か起こったのが最近だとして、若い奴が犯人とは限らねーんじゃねえか? 悪い爺さん婆さんが急にトチ狂って、マルクを操ったりしてるかもしれないぜ」
「んー、それは……」
ミィナはしばし考え込む。そして顔をスッと上げると、こう返した。
「いえ、それはないと思うわ」
「なんでだよ?」
「ここに来る前、なんだか変な村長さんの家に行ったでしょ?」
「ああ、あの『私が村長です』ばっかり言ってた爺さんな」
「もしマルクの背後に黒幕がいるなら、勝手にあのおかしな村長に会わせるとは思えないの。何か理由をつけて、さっさと私たちをこの家に押し込んで、それから黒幕に報告した方が賢いわ。それをしなかったのは、多分マルクが主犯で……村長に私たちを会わせて、かつ下手に手出ししないようにさせられるのが、彼くらいしかいないからよ」
ミィナの推理を、向かいにいるリオンは特に食い入るように聞いていた。ニールやレヴィはというと、途中で理解が追いつかなくなったのか、テーブルや椅子にもたれてボンヤリとしている。
「ええとつまり……マルクが怪しいって事ね?」
「そう、そういう事」
「だったらさ、見張ったりしなくて大丈夫なの? 今だって何してるか分かんないじゃん」
眠い目をこすりながら問いかけるレヴィ。しかし、ミィナは「その点は抜かりないわ」と言って、ドレスのポケットから小さな瓶を取り出した。
魔力回復薬の小瓶より少し大きい、手のひらにギリギリ収まる程度の瓶。ただしその中身は液状の薬とは違い、なにやら黒い砂利のようなものが無数に詰まっている。
「ひあぁっ!!」
すると突然、その瓶を見たリオンが椅子から転がり落ちるようにして飛びのいた。ガタンと椅子が倒れる音が響き、リオンは腰が抜けたのか床に尻をつけたまま起き上がれずにいる。
「ど、どったの? リオン」
「あ、あれ、あの瓶……」
目を丸くするレヴィに、リオンは口をパクパクさせながら瓶を指さす。レヴィが怪訝な顔をして瓶を凝視すると、黒い砂利だと思っていたものはざわざわと蠢き、瓶の内側を何匹にも分かれて這い回りだした。
レヴィはその正体に気づくと、微かに眉をひそめる。
「それって……虫?」
「あー……それか」
「ピンポーン。蜘蛛よ、名付けて追跡蜘蛛。魔法使い用のね」
「だ、出すなら言ってくださいっ! ビックリするじゃないですか!!」
レヴィがつぶやき、ニールが合点すると、ミィナはどこか嬉しそうに瓶を振るった。いまだに腰が引けたままのリオンを無視して、彼女は上機嫌で語りだす。
「これはちょっとしか流通してない特殊な蜘蛛でね。人にくっつけると、その人の居場所が分かるのよ。せいぜい一人か二人までだけど」
「へぇー、便利なものあるんだね」
「少なくとも、この村の中くらいの距離なら捕捉できるわ。任せといて」
レヴィが感嘆の声をあげると、ミィナは自慢げに胸を張る。そんな中、ようやく立ち直ったリオンが心なしかミィナから遠ざかって座り、こう尋ねる。
「でも……いつの間に付けたんですか? そんなもの」
「村長の家に行く前に、早く行きましょうって言ってマルクの背中を押したでしょ? あの時よ」
「……あ!」
記憶を探ったリオンはすぐに手を打つ。確かに機嫌をそこねたマルクを急かして、触れた時があった。あの時点で蜘蛛はくっついていたのだ。
「そんなに前もって……」
「よく分かんねえけど、要は心配いらないってこったな?」
「すごいねーミィナ。賢い上に手抜かりなし」
「……ふふん」
誉められたミィナが、頬を緩ませてわざとらしく髪をかきあげる。彼女にとっては珍しい、舞い上がったしぐさだった。
ところが、その表情は一秒ほどで消え、ミィナは何やら素の顔で「あ」と声を漏らす。他の三人の視線が一斉に戸惑ったそれに変わる。
「おいどうした?」
「……やばい、来るわ」
「来るって何が?」
「マルクが来るのよ!」
ミィナは焦った口調で答えて瓶を懐にしまうと、音を立てて椅子に腰を下ろした。「なに浮かれてんのよ私のバカ……」などど彼女が独り言を言った直後、家のドアが軽くノックされる。
「はい」
「失礼します。食事をお持ちしました」
そう言って、ドアが開けられる。そこには木製の器に盛られた料理の盆を持つ男たちと、それを従えるように立つマルクがいた。
「大したものはありませんが、どうぞお食べください」
「あ、わざわざありがとうございます」
マルクが手で合図をすると、男たちがテーブルに料理を並べていく。ふやかした雑穀に白菜の酢漬け、塩漬け肉の切り身が二切れほどに、薄い豆のスープ。
お世辞にも豊かな食事とはいえないが、リオンは頭を下げて礼を言った。
「ありがたくいただかせてもらいます」
「気にしないでください。春や夏ならもう少しマシなものを出せたんですが……冬には家畜の餌さえ惜しんで、つぶして腐らせる始末で……」
「はぁ……どこも似たようなものですね……」
リオンにはさほど警戒心を抱いてないのか、マルクはよく口を回らせる。そこでふと目つきを鋭くすると、マルクはこんな事を問う。
「……ところで、旅の途中と聞きましたが、どのような旅なんです? ぶしつけな事を言うようですが、冬に小さな子供まで連れてというのは珍しいですね」
「ムッ……!」
「あっ、それは……」
その問いにリオンはついうろたえてしまう。他人に子供扱いされたレヴィが頬を膨らませるが、マルクはリオンから目を離さない。
「……んん……」
答えようとするが、どうしても言葉に詰まるリオン。神器を探す旅、と言えばレヴィに詮索がいくかもしれないし、かといってとっさに上手いごまかしが出来るほど、彼は頭の回るタイプではなかった。
マルクはまだ目を離さない。執拗とも言えるほど、座っているリオンを陰険な目で見下ろす。その態度は、他の者が口を挟むのを言外に拒否しているようだった。
しかしそんな時、空気を読まない軽い口調で、ニールが言った。
「いや別に、怪しいモンじゃないぜ? 証拠見せてやろうか」
ギルドの身分証明書を出そうとしたのだろう。ニールは荷物の方へと立ち上がりかける。が、マルクはそれを手で制し、渋々といった様子で口を開く。
「ああいえいえ、そこまでしていただかなくて結構……。少し気になったのですが、個人の事情というのがありますからね」
型通りの断り文句を述べてから、マルクは部屋の隅に目を落とすと、表情を曇らせてこんな事を語りだした。
「実際のところ、素性などにこだわってもあまり意味はないのです。内心で悪だくみする輩もたくさんいますから」
「そんな、たくさんだなんて……」
「いるんですよ。戦争に負けて以来、何度も見るようになりました……。この狭い村の中でさえ」
遠慮がちに口を挟むリオンの言葉をさえぎり、マルクは話し続ける。やがて、伏せていた視線はリオンたちの方へと向いた。
「王の権威は落ち、国は領地ごとに分かれてバラバラになってしまった……。今では、冒険者ギルドなんて
リオンたちが冒険者だと見透かしていたのだろうか。マルクは顔をゆがめ、当てつけのように言った。レヴィは不満げに口を開きかけたが、リオンに目で止められる。
「……ああ失礼。長話をしてしまいましたね。何かあればお呼びください。それではごゆっくり」
マルクはぺかりと作り笑いを浮かべると、村人たちと共に家を出ていった。扉が閉まりしばらくして、残された料理を前にリオンたちは顔を見合わせる。
「なぁにアレ……ボクら別に悪い事してないのに」
「きっと色々あるんだよ……。そう言わないであげな」
すねたような声をあげるレヴィを、リオンがたしなめる。しかし、そこにニールがいら立ちの混じったセリフを吐いた。
「そんな同情するこたぁねえよ。あの怪しさ満点の態度、どっちが胡乱だか」
「っ……」
ニールの言葉にリオンが唇をかむ。確かに同情している場合ではないのだが、それでも納得いかずにリオンは身を乗りだした。
「それとこれとは話が別です! どんな人でも、その人なりの大変さが……」
「やめなさい、二人とも」
食ってかかるリオンを、ミィナが冷静な声で止める。他の三人の視線が集まると、ミィナはひじを立てて両手を組み、三人の目を見据えながら言った。
「最初に言ったでしょう? 『私たちにまで危害が及ぶようならなるべく対処する』。ここで言い争って何になるの」
「…………」
「む……」
ミィナに念をおされ、二人は押し黙る。その後、ミィナはため息をついて椅子にもたれかかると、目の前の料理に目を落とした。
「……とはいえ、すでに危害は加えられているかもしれないけど」
「へ?」
ミィナがつぶやくと、聞きつけたレヴィが首をかしげる。振り向いたミィナは、料理を指さしてこう言った。
「ちょっと食べるの待ってもらえる? 考えなきゃいけない事があるわ」
「えー、俺腹へってんだけど……」
「いいから、待ってってば。つまみ食いもなしよ」
ぼやくニールをきつい顔で制し、ミィナは仲間たちの顔を見渡す。するとレヴィが思い立ったように挙手をした。
「はいはい! そうだ思い出した!」
「レヴィちゃん気づいた?」
ひらめいたと言いたげなレヴィの顔を一瞬ほほえましそうに見つめ、ミィナは尋ねる。レヴィは胸の前で両手を組むと、うんうんと頷きながら言った。
「またお祈り忘れるところだった。言われなきゃ気づかなかったよ」
「違う違う、そうじゃない。お祈りも大事だけどそうじゃない」
「えー?」
ミィナはずっこけそうになりながら手を振って否定する。その様子を横目に見ながら、リオンは料理を見つめながらジッと考えをめぐらせていた。
(そういえば、マルクはつぶした家畜を腐らせるとか言ってたっけ……。腐ったのを食べたらお腹を壊す……。もし食べた、ら……食べたら……)
そしてはたと気づき、顔を上げると慌てた口調でつぶやく。
「まさか、食事に何か仕込んでるとか……?」
「そう、そこよ。心配なのはそこ」
リオンの言葉に、ミィナがパチリと指を鳴らす。神妙な顔で話す彼女に、ニールがかったるそうに問う。
「仕込むって……毒薬とかか?」
「うーん、さすがに村の真ん中で殺しはやらないと思うけど……例えばほら、眠り薬とか」
「眠りグスリでぐっすり~、ってか」
「……ニール、試しに食べてみれば? いざって時は身代わりにして逃げてあげるから」
「ミィナさん、物騒なことを言わないでください……」
ニールのダジャレに、底冷えするような笑みを浮かべるミィナ。それをなんとかなだめてから、リオンはテーブルを振り返った。
「……しかし、そうなるとこの料理はどうしましょうか」
「食べないのが無難でしょうね。どのように仕込んであるかは分からないし」
「それはそうですけど……」
リオンとミィナは真面目な顔に戻り、話し合いを続ける。しかしやはりというか、ニールとレヴィは未練たらしげに二人で不満をこぼす。
「えー? 食えねーのかよ、ここまで来て」
「ボクもお腹すいたよー。本当にダメなの?」
「ごめんねレヴィちゃん。精霊なら平気かもしれないけど、場合が場合だから。ガマンして」
「っておい、俺にはなぐさめの言葉は無しかよ!」
「うっさいわね。お兄さんなんだからガマンしなさいよ」
「なにをー、母ちゃんかお前は!」
言い争いを始めるミィナとニール。レヴィはそんな二人をよそにいまだ料理を見つめてテーブルの隅を引っかき、リオンは苦笑いをしながら傍観する。
しかし、ミィナがつぶやいたある一言で、リオンはハッと表情を変えた。
「とにかく……罠だとしても、これが最初で最後でしょう。向こうも余計に念を入れて騒ぎになるのは避けたいでしょうし」
「……!」
その言葉を聞いて、リオンはあわててミィナに向けて叫ぶ。
「ミィナさんっ!」
「な、何?」
その声が意外なほど大きかったのだろう。彼女は戸惑った声をあげ、レヴィとニールも反射的にリオンを見る。しかし、リオンはそれを気にしてはいられなかった。彼にとっては避けられない質問だ。
「……それって、お互いが手を出さなければ、やり過ごせるかもしれない……って事ですよね?」
「……まぁ、そうなるわね」
ミィナは短く答え、それ以上は何も言わない。ニールも言い争っていた口を閉じ、成り行きを見守る。
リオンの言わんとするところは大体伝わっていた。彼は改めてそれを言葉にする。
「『危害が及ぶようならなるべく対処する』……あらかじめそう決めました。なら、僕らはこのまま村を無事に出る事だけ考える……という事ですか?」
「…………」
「あの盗賊たちは……放っておくんですか?」
リオンが重たい口調で言う。ミィナは額に指を当て、深く考え込んだ。もし、考えた通りにマルク側が手荒な真似をしないのであれば、わざわざ盗賊たちの問題に首を突っ込む必要はない。我が身の安全だけ考えるのなら、見ない振りをするのが得策だ。
ましてや、無理して盗賊たちを助ける義理がある訳でもない。相手が危険、もとい得体の知れない輩ならなおさらだ。
三十秒ほど長考して、ミィナはふと、こう切り出した。
「リオン君は……どうしたい?」
「え?」
突然の質問にリオンは言葉に詰まる。しかしミィナのまっすぐ見つめる視線に、どうにか落ち着きを取り戻した。
損得を抜きにして、正直なところを言えばいい。そう思って、彼は口を開く。
「僕は……助けたい。人を見捨てるのは、正当防衛とも刑罰とも別なはずです」
それを聞くと、ミィナは他の二人へ視線を向けた。目が合ったニールは一瞬宙をにらみ、肩をすくめる。
「……俺はまあ、行ってもいいぜ。あのマルクって奴、なんか気にいらねーし」
「ボクも助けに行きたい。見捨てたら多分死んじゃうんでしょ?」
レヴィも顔をあげ、背筋をのばしてそう述べる。少なくとも個人の意思としては、全員が盗賊を助けたいという事だ。リスクは当然あるが、それでも。
ミィナは長い息を吐く。
「……アイツは今は村長のところに居る。何かをするとしたら……多分夜ね」
「だとしたら……」
リオンの相づちに一つうなずき、ミィナは気を入れ直したかのように指示を飛ばしだした。
「……よし、なら準備をしておきましょう。レヴィちゃん、リオン君。もったいないけど、食べ物を囲炉裏にくべて燃やして、食べたように見せかけて。それとニールは……特に何もしなくていいわ。私が蜘蛛でマルクを追っておくから、とりあえず寝たふりをしておいて」
「は、はいっ」
「オッケー」
「……なんかバカにしてねーか……? まあいいや」
その張り切りように、リオンは少しだけ心配になる。そして作業の合間に、チラリと水を向けてみた。
「……ミィナさん、本当に色々、すみません……」
そう言うと、振り返ったミィナはちょうど蜘蛛を見せびらかした時のような得意気な笑みを浮かべると、きっぱりと言った。
「命拾いした身が、他人を見捨てるっていうのも冷たいしね……。礼ならみんなに言いなさい。あと謝らなくていい」
それを聞いて、リオンはいつかの雪山での一件を思い出す。彼の中に、仲間への感謝と、ある種の自信が満ちていく。曲がりなりにも自分の意志が仲間を動かし、こうして助け合えるのだと。
「レヴィ、よろしく頼むよ」
「うんっ!」
相棒に声をかけると、その少女は元気よく、頼もしい返事をくれた。