神の炎剣を拾った少年 ~精霊の少女は未来に降り立つ~ 作:ごぼう大臣
『ねーまだ着かないの? もう同じ景色ばかりで飽きたよー』
「我慢して。もうすぐ街につくからさ」
腰に差した神剣、レヴィが退屈そうに愚痴をこぼすのを、リオンは慣れた口調でなだめる。鞘に収まったままでどうやって外を見るのだろうという疑問は三回目あたりでどうでもよくなっていた。
山を下ると、麓からは森の中を縫うような細長い道が何キロも続く。リオン、ニール、ミィナ、そしてレヴィも入れれば四人になる一行は、降ったばかりの雪が厚く積もった道をかき分けるようにして進んでいた。
「ったく、一人ぐらい道をつくってくれる奴はいなかったのかよ?」
シロガネグマの白銀の毛皮をかつぎ、雪に足をとられてよろめきながらニールは文句をいう。先頭の彼は足を踏み出す度にズボズボと新雪を踏み抜いていく。そんな彼に対して、後ろを歩いていたミィナは冷静な口調で言う。
「仕方ないわよ。こんな時期に山に行こうなんて人、そんなにいないでしょうし」
そう言って、シロガネグマの首が入った袋をぷらぷらと揺らす。セリフだけならそこまで不満は感じていないように聞こえるが、しかし彼女とて雪に苦戦しているのは事実だった。ニールが道をつくっているとはいえ進路がいきなり綺麗にできるはずもない。除けきれなかった雪をもろにかぶっていたミィナは、その足が膝上あたりまで埋まり、いかにも歩きにくそうだった。
「ミィナ、大丈夫か? なんなら少し休もうぜ」
「そりゃ……アンタが休みたいだけでしょっ……!」
「いやぁバレたかー」
「ふふ……」
前方で軽口を叩きあう二人を見ながら、リオンはこっそりと笑みをもらした。やはり冬とはいえ麓を抜けるとずいぶん暖かく感じる。空を見上げると澄みきった青空が広がり、リオンも精神に余裕ができてきたのを感じていた。
『ねぇ、リオン』
「ん?」
雲を眺めてぼんやりとしていた彼に、不意にレヴィが声をかける。心なしか企みを持ちかけるような、イタズラっぽい声だった。
「どうかしたの?」
『大変だったらさ、またボクを使いなよ。こんな雪道、あっという間にまっさらにしてあげるから』
「…………」
レヴィの誘いに、リオンは答えにくそうに地面へと目を落とす。せいぜい膝程度の深さの雪。
確かに、レヴィこと神剣"レヴィトポロミス"の力を使えば、こんなものは訳なく融かせるだろう。リオンは山中で見たあの炎を鮮明に覚えている。神剣を一度振るうだけで、自分の身長以上の雪の塊を一瞬で融解させたのだ。
少し考え、彼は首を横に振る。
「……いや、気持ちだけでいいよ。もし周りの木まで燃えちゃったら大変だ」
『えー、いいじゃん少しくらい。せっかく山からずっと着いてきてあげてるのにー』
「ごめんごめん。そのかわり、街についたら色んなものを見せてあげるから」
『ぶぅー……』
むくれるレヴィに苦笑いしながら、リオンはまた足を踏み出す。すると、足元が急にずるりと滑った。あわてて前屈みになって膝を支えると、自身の体が急に重たくなる。
「くっ……」
『ちょっと、大丈夫?』
「あ、大丈夫だよ……平気」
声をかけてくるレヴィに小さく答えながら、リオンはゆっくりと体勢を直す。膝がかすかに震えているのが分かり、彼は唇を噛む。
いざ意識してみると、リオンの体はひどく疲弊していた。むろん単純な疲れもあるが、彼にはもう一つ思い当たる、重大な要因があった。
山で剣を振るったすぐ後のこと。鞘にしまい、歩き出そうとした瞬間に、急に視界が揺れ、その場に崩れ落ちそうになったのだ。なんとか平静をよそおったが、その感覚はまさに、魔力が枯渇した時のそれだった。
神々が使っていた神器……大した才人でもないリオンが扱うには、やはりリスクがあるのだろう。今でも、気を抜けば倒れてしまいそうな危うさがあった。
『それにしても、人間ってもろいねー。ボクがいたから良いけど、寒さや大雪でこれほど難儀するなんて』
「はは……面目ない」
リオンはおもて向き相づちを打ちながら、内心レヴィに微かな警戒心を抱いていた。もちろん、住んでいた世界も時代も違い、なにより人間でもないので当然ではあるのだが。
それでも、レヴィの言葉の端々からは、まるで「自分だけがいれば何でもできる、してやれる」とでもいうような、無邪気な傲慢さがほの見えた。リオンは口にこそ出さなかったが、笑みの中に困ったような色をたたえていた。
「リオンくーん!」
「何やってんだ、早く来いよー!」
「あっ、はーい!」
上の空でいたところで、ミィナとニールの呼ぶ声が聞こえる。いつの間にか、二人は一本道のはるか遠くまで進んでしまっていた。
リオンはあわてて二人に向かって走り出す。その先には、今まで左右に広がっていた雪化粧つきの並木とは違う、木の三倍ほどの高さがある人工的な石壁が、何かを囲うようにそびえ立っていた。
――
はるか高く、見下ろしてふさいでくるような石壁。リオンたちの真正面には、締めるのに何人も必要そうな巨大な鉄扉が開け放たれ、両脇に槍を構えて鎧を着こんだ兵隊が五人ほど立っている。城壁に囲まれた都市の入り口である。
「じゃ、まずは兵隊の方々にあいさつでも……」
「ちょっと待ちなさいニール」
「ぐえっ」
大股でご機嫌に歩き出したニールの襟首を、ミィナが素早くつかむ。そして仲間内に聞こえる程度の大きさの声で、こう言った。
「その前に気にする事があるでしょう」
「なんだよ、お前のバストの話か?」
「バカ。レヴィちゃんの事よ」
ミィナが言い放つと、リオンの顔色が変わる。同時にニールとミィナも表情を引き締めたところで、レヴィがのんきに尋ねた。
『ね、リオン。あの槍もった人たち誰なの?』
「ああ……街の見張りの人だよ。出入りする人の持ち物とかを検査するんだ」
説明するリオンの声色は穏やかではない。それもそのはず。自分たちが持っている"神剣"は、本来なら公権力に管理されるべき貴重な神器の一つだ。
一介の冒険者の自分が、そんな代物と契約したとなれば、どんな騒ぎになるだろう。もともと身分も低いため、扱いもろくな想像が浮かばない。拘束、監禁、尋問、人体実験……。冷や汗がみるみる浮かんでくる。
「……どうしましょうか」
リオンが弱った顔を見せると、ミィナは素早くかがみ、ひそひそ声でこう言った。
「とりあえず今は隠しておきましょう。契約ってのがどんなものかまだ分からないし……なにより、現代をまるで知らないレヴィちゃんを刺激するのはマズいわ」
「だからどうすんだよ。街は目の前だぜ?」
ニールが頭をかきながら言ったのを受けて、ミィナがしばし考え込む。足元の雪と鞘の中のレヴィを交互に見つめ、そしてニールへと視線を向けた。
「仕方ないわね……ちょっと賭けになるけど、ニール」
「お?」
――
「やあやあ見張りの皆さーん! 今日も寒い中で突っ立ってお疲れさんっスねー!」
「……ん?」
暇そうに見張りをしていた兵隊たちの前に、やたらとやかましくはしゃぎながらニールが駆け寄ってくる。シロガネグマの毛皮をまるでコートのごとくかぶったその男に、兵隊の一人が槍を突きつける。
「待て! 貴様は何者だ!?」
「え、見た事ないっすかー? この眉目秀麗の……」
「いいから答えろ!」
槍を喉元に向けられたニールは懐をごそごそと探ると、筒状に巻かれた一枚の紙を取り出した。
「ギルドの身分証明書でーす。そいつを見ていただければ、俺らの身元が分かりますよーええ」
「ふん……なるほど。ニール・フォスター。たしかに冒険者ギルドの印だ」
「俺"ら"ってことは、まだ連れがいるのか?」
「あっ、ええ。いるにはいるんですがー、今ちょっと……」
兵隊の問いに少々うろたえながら、ニールは背後をちらりと見る。その先には、リオンとミィナが顔を見合わせて話し込んでいた。
「ちょっと何だ? 検査は街に入る全員が対象だ。さっさと連れてこい」
「いやぁそれがそのー、今は少しばかりちょっとですねー……」
「だから、ちょっと何だ!?」
両手を上げてごまかそうとするニールに、兵隊の一人がいら立ちはじめる。その時、リオンとミィナのそばから火の玉のようなものが一直線に脇の森の中へ飛んでいくのを、彼らの方を見ていた兵隊がとらえた。
「おい、今の見たか?」
「は? 何が」
「いや、さっき火の玉みたいな……」
「あーあーあーすいませんねー! すぐあいつらお呼びしますから。おーい、リオン、ミィナ! はやくー!!」
いぶかしむ兵隊たちの前でまたもや騒ぎ立て、わざとらしい程の大声でニールは仲間を呼びつける。呼ばれた二人は何食わぬ顔で門前へと走り、素早く証明書を見せる。
「ミィナ・ルコットです。女、17歳。冒険者ギルド所属」
「リ、リオン・エルベルタです! 男、15歳。同じく……」
「お、おう。確かに」
詰め寄るような一方的な自己紹介に、兵隊たちは戸惑いながらも応じる。するとそれが終わるなり、三人は何も言われない内から自らの荷物を降ろし、兵隊たちの前に次々と広げはじめた。
「こら、まだ何も命じていないぞ?」
「早い方がいいでしょう。さあ、どうぞ」
「俺ら誓って変なものは持っておりませんのでー」
ミィナがすげなく言い返し、持ち物の山を前に両手を広げる。テント、ランプ、食糧、飲み水、ナイフ、スコップ、毛布……。金欠ながらも否応なしにかさんでしまうそれらを、兵隊たちは一つ一つ手に取り、観察する。
リオンはごくりと唾を飲み、何事もないようにと祈る。あとは、レヴィの存在に勘づかなければ……。
彼が、そう思っていた矢先。
パキィ、と木の枝を折る高い音が響いた。リオンたちの肩がびくんとはね上がり、兵隊たちが視線を動かす。
「……木の枝だよな。今の」
「ああ。やけに大きかったが」
「やったっ多分ー、雪の重みで折れたんじゃないっすかねーええ」
「昨夜はこちらでも
「め、珍しいことではありませんよ。さあ早く早く検査の方を」
「……ああ」
早口に話すニールとリオン、そして淡々とした口調で検査を促すミィナ。兵隊たちはそんな彼らに戸惑いつつも、止まっていた手を再び動かす。
その直後、木の陰から顔を出して枝を掲げるレヴィを、リオンが手振りで引っ込ませていたのだが、荷物に注目していた兵隊たちは気づいていないようだった。
そしてついに、兵隊の手がリオンの剣に伸びる。レヴィが宿っていない鋼の剣を差し出しながら、リオンはごくりと唾を飲んだ。
この剣と、あとはレヴィの存在を怪しまれなければ、街に入れてもらえる。そう思って、つとめて無口になる。
しかし、そこで今度は。
「のわーっ!」
すっとんきょうな悲鳴とともに、木々の中から何やらドサドサと、雪が崩れ落ちるような音がこだまする。リオンたちの体が硬直し、兵隊たちの眉がぴくりと動く。
「……人の声だよな。今の」
「ああ、子供の声だったが」
「いえいえいえ! あれは鹿の鳴き声ですよー。雪にはまった時なんか、あんな悲鳴をあげるんす」
「鹿ぁ? あんなの聞いたことないぞ」
「そういえば、最近はよその地方の鹿が繁殖しているそうですよ」
「ぼ、僕は聞いた覚えがありますよ? 故郷で!」
「……へぇ」
かたくなに鹿だと主張する彼らをいぶかしみつつも、兵隊たちは止まっていた手を再び動かす。
その直後に、赤い髪と服を雪まみれにしたレヴィが木の陰から顔を出していた。発見したミィナが口に人差し指を当てて奥へと引っ込ませたのだが、兵隊たちは気づいていないようだった。
ところが、リオンたちがホッとしたのもつかの間。
「ふぇっくしょーーーん!!」
森の中から甲高い声があがる。兵隊たちの目つきが揃ってするどくなった。
「……今の、くしゃみか?」
「ああ、間違いなく子供の声だったが」
兵隊たちがまた顔を見合わせる。リオンたちは不安げに一瞬だけ視線を交わしたが、ニールが勢いよく進み出て、叫ぶように言った。
「いやーあれはアレです! その、ほら! 狐っすよーキ・ツ・ネ!!」
「狐ぇ? あんなの聞いたこと……」
兵隊たちは疑わしげにニールを見るが、そこで他の二人が畳みかけるようにして喋りだした。
「ほ、本当ですよ! まれに人間みたいな声を出すって、聞いたことあります! はい!」
「寒波などで本当に寒くなる時に、あんなくしゃみをするそうですよ」
「そ、そうそうそう!! だから地元だと、狐のくしゃみは皆嫌いなんすよー。『フキツね~』って」
「…………」
兵隊たちは次第にどうでもよくなってきたのか、その後は淡々と荷物を確かめた。その後ろで、鼻を垂らしながら小さな雪ダルマをつくっているレヴィの姿が、チラチラと見え隠れしていた。
――
……それから十分ほど後、リオンたちはこっそりと戻ったレヴィも含め、めでたく街の門を抜けた。
街の名前が書かれた立て看板の先には、石と木で造られた地味な雰囲気の家々がいくつも立ち並び、その隙間を縫うような細い石畳の街道が雪に半ば埋もれている。その中でスカーフと手袋を着けた婦人が雪をかき、貧相なシャツを重ね着した子供が薪を背負って駆け回っている。
そんな市民たちの間をすり抜けて雪をかき分けながら、リオンは口を開いた。
「でも良かったですよね。怪しまれないで」
「誰かさんがバカ騒ぎで気をそらしてくれたおかげね」
「お前は一言多いんだっつーの……」
ミィナが肩をすくめる隣で、ニールがぼやく。リオンがそれを苦笑しつつ眺めていると、腰に差した剣からエコーがかった声で、レヴィがこう言った。
『ねぇ、ここって何て場所?』
「あれ、言ってなかったっけ?」
「向こうに書いてあったろ。"白雪の街・エノーラ"って」
ニールが門の方角を指さした。しかし、レヴィは何故か困ったように「む~……」と唸っている。
「レヴィちゃん、どうかした?」
ミィナが前かがみになり問いかける。するとレヴィはいかにも参ったような口調で言った。
「……まずい。ボク、人間の言葉が分かんないみたい」
「ええ?」
レヴィのもらした言葉に、リオンが眉をくねらせる。そこでニールが口を挟んだ。
「いやいや待てよ。今げんに会話してんじゃん」
『あのね、口に出す言葉には、
「……んん?」
いまいち納得いかない様子でニールは首をかしげる。すると今度はリオンが話しだした。
「じゃ、もしかしてレヴィは天上の言葉をしゃべってるの!?」
『聞いてみる? あんまり難しい言葉はボクも分かんないけど』
「聞きたい聞きたい! 喋ってみせて! お願い!」
『んー、そんなに言うなら……』
リオンは腰に差した剣に向けて体をひねりながら、目を輝かせる。周りをうかがうニールとミィナを尻目に、レヴィはスゥッと息を吸うような音に続けて、言葉を発しだす。
『≒¶‰√%′″◇п´・|、♀£×∞ヵ♭≪⊥∃∧*■≧★《]……』
「え、な、なんて?」
「おお、流石は伝説の世界の言語! さっぱり分かんない!」
『今のはね、"寝ぼけてさわったミィナのお腹がちょっとプヨプヨしてた"って言ったの』
「なんでわざわざそれを言うかしらね……」
無邪気な調子で訳すレヴィに、ミィナが額を押さえてうなだれる。その様子に気づいたのか、レヴィはあわてて言い繕った。
『だ、大丈夫だって! おっぱいはポヨポヨしてるから!』
「うれしくないわよっ!」
『∈∪△♀∞★◎♀∽Å〓¶♪……』
「そこで天上語を喋るなーっ!! ええい、セクハラするのはこの口……どの口? あれ、どこが口?」
「え、剣の中にいるんでなんとも……」
冷静さを失って剣に詰め寄るミィナへ、リオンは生返事を返す。その時、間近にいるミィナへ向けて、大きな声が響いた。
『へっくしょ!』
「きゃっ!?」
「今のは何て言ったんだ?」
『や、これはただのくしゃみ……』
ニールの問いかけに、どこからか鼻をすするような音を出しながらレヴィは答える。すると、リオンがふとこう聞いた。
「そういえば炎の加護なんてくれた割に、くしゃみなんてするんだね。昨日は平気そうだったのに」
『うーん、あの雪のせいかなぁ。今まで手でさわったりした記憶がないんだよねー。天上とは勝手が違う……のかなぁ、よく覚えてないけど』
その声は、遊んだ後悔よりも雪への新鮮さの方が強くにじみ出ていた。谷底まで落ちてくる雪や、剣に宿った状態で触れる雪は知っていても、精霊の姿で雪まみれになるのは初めてだったのだろう。精霊といっても、慣れない刺激の直後は弱いのかもしれない。
そう思ったリオンは、レヴィにこう語りかけた。
「これから初めてのものをたくさん見られるよ。なんたってものすごく久々だもん」
『おおー楽しみ! ねね、早くしないと夜になっちゃうよ』
「あわてないの。まだ午前中なんだから」
いかにも興味津々な声ではしゃぐレヴィに、リオンは穏やかな目でうなずく。しかし彼が顔を上げると、ぼんやりとした目で見つめてる仲間たちと目があった。
「……どうしたんですか。二人とも」
「なぁリオン。まさかこのまま街を案内するつもりだったり……するのか?」
「できれば、早いうちに休んでおきたいのだけれど……」
「あっ」
二人の遠慮がちなセリフに、リオンはしまった、という表情で声をもらす。
思えば、レヴィ以外の全員が冬山で徹夜をした身なのだ。ニールとミィナは"炎の加護"がない分、寒さにもあてられている。体力のないミィナなどは、特に消耗しているはずだ。
「すいません。あまり退屈そうだったから、街の案内をするって約束しちゃて……」
リオンが気まずそうにそう述べる。『このまま帰っちゃうの?』と言いつつ、レヴィも少しはしおらしい口ぶりになった。
その時、ミィナがため息をついてこう切り出す。
「あー、まあいいわ。とりあえず話は後にしましょう。どのみち行く場所はあるし」
「え、どっか行くのか?」
ボケっとした顔で振り向くニールに、彼女はずいっとある建物を指さした。
「アレよアレ。思い出した?」
「あー……」
ニールが思い出したようにうなずく。リオンも振り向いたその先には、街中でもひときわ目立つ、何十人も集まりそうな広い建物があった。
入り口のすぐ上には分厚そうな金色の板金ががはめ込まれ、そこには精巧な字でこう彫られていた。
"アグラナ領 冒険者ギルド・エノーラ支部"