倫理観等はすでに消えかけていますが元気です。   作:藤猫

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ロックス海賊団の二次創作を見かけて、バレットさんのもあるかと探すと、一件もヒットせず。
悲しいので書きました。
話しのノリが、他と一緒に感じるかもしれませんが、作者の趣味です。似た様なのですいません。


後輩との腐れ縁

突然のことでありますが、自分はどうも死んだらしい。

そう、死んだのだ。

なら、この死んだということまで自覚できている自意識と呼べるものは何なのかと言われると、簡潔な話現在生きているためだ。

どういうことだと疑問に思われるだろう。

まあ、簡単な話、自分はどうも転生と呼ばれることをしてしまったらしい。

まあ、まったく嬉しくはない。なんといっても。

 

「おいいいいいいい!!そこの五番!右足をもう少しずらせ!地雷が埋まってるから!」

「ぎゃああああああああ!」

 

遠くでも、近くでも鳴り響く爆発音に銃弾の音。吹き付ける風には炎の熱と血と何かの焼ける臭い。そうして、誰かの断末魔。

拝啓、現状そう言えるのか分かりませんが、父さん、母さん。

転生先の絶賛戦争中の国にて娘は元気にとはいきませんが生きております。

 

 

 

何か事故って死んだと思ったらどっかのスラム街でまったく知らない容姿の幼児になっとりましたまる。

見た瞬間、書いた人間の精神を疑ってしまう様な文章だが事実なのだから泣ける話だ。

今の所、死ぬ前の名前がすこーんと抜けてしまったため、服に縫い付けられていたメランと名乗っている彼女はため息を吐きたくなる。

どうも、どこぞのスラム街にいるらしいことを自覚し、次に明らかに目線が低すぎることに気づいた。丁度、近くにはうってつけの通りの水溜り。

覗いてみると、そこには深い青色の髪をした幼女がいた。

それに数秒放心した。

考えてみてほしい。

幼女になっているのだ。そりゃあ、記憶は曖昧でも幼女であったことはある。ワンチャン某名探偵かと現実逃避も出来ただろうが、容姿までがらりと変わっているのだ。

ザンバラ髪の深い青の髪に、色味の強い金の瞳。どこか険のある顔立ちは、自分の記憶の顔とは全く違っていた。

そうして思い出すのは、自分に迫る車のライト。

 

(・・・・転生しとる!)

 

それが、メランの記憶の最初であった。

 

 

メランはそのまま世界に順応した。というよりも、順応せざるをえなかったのだ。なんといっても国自体がめちゃくちゃに荒れているのだ。

どうして自分が転生してるんだとか、この躰の持ち主はなんて思考をしていられるほど余裕などなかった。

保護者もいないらしく日々の食事にも困り、残飯をあさる日々だ。

それでも、メランはなんとか生き残ることが出来た。世界でも有数の平和な国で、警戒心も無いことで有名な国民性を有しても何とかなったのは偏に転生してから異様に勘が鋭くなっていたからだ。

死の気配、とでもいうのだろうか。

自分の敵、事故、毒、そういった何かへの勘が異様に鋭くなった。スラムで生きていく上でこの力は本当にありがたかった。

 

(・・・・何とか、大人になるまでは生き延びて。この島から出なくちゃな。)

 

そんなことを考えていた矢先、スラムの端の酒場でグランドラインの単語を聞いたのだ。

それで全てを察したのだ、あ、ワンピースですかと。

 

ワンピース、もちろん女の子の大好きな衣装のことではない。

日本にいれば一度は見たことがあるだろう、大人気漫画だ。

それを知れば精神的なパンチがやって来る。

 

(・・・・あの、一見大冒険だぜ的でありながら、天竜人やら海軍の不正やら奴隷やら海賊やら厳しすぎる自然のはびこるめちゃくちゃハードな世界を生きていけと?)

 

無理くね、つんでね?

夢であってくれよと思いながら、残念なことにそれは無慈悲なまでに現実であった。

 

 

(・・・なんてことも考えてたけど。)

 

絶望的な生存率でありそうなそれでも自殺だってすることも出来ずにメランは結局のところ生きている。

メランの生きる国の名はガルツバーグと言い、ガチガチの軍事国家だ。そんな国の軍隊ガルツフォースに彼女は拾われた。

いたいけな幼女を軍隊に入れるとはどういう了見だと訴えたいが所詮は子どもだ。従うという選択肢以外は存在しなかった。

それでも、軍にいればギリギリとはいえ三食は食事が出来た。何よりも、メランは戦場を生き抜く上ではひどく優秀だった。

なんといっても、死というものへの異常な勘は確かに重宝した。

打ち込まれる銃弾の位置、歩く地面に埋まった地雷原を避け、爆弾の爆発する瞬間を見定める。彼女の所属する部隊の生き残る確率というのはまさしく奇跡的と言えた。

死に色があるのなら、戦場とはその色で塗り潰された下手くそな絵だ。

メランは、その絵の塗り残された微かな空白を歩いた。

彼女は死を知っている。断絶を、終わることを、空白を、消滅を、知っている。

それを知っているのか、知らないのか。

この世界では、それはひどく重要であったらしい。

 

(・・・・たぶん、これが見聞色なんだろうなあ。)

 

記憶の上では、覇気にはなんだか多くの型みたいなものがあった。

 

(見聞色って確か、動物の声が聞けたりとか気配に敏感になるとかそんなんだったような。)

 

ならば自分は、死というものに対して敏感になっているのだろうか。

 

(まあ、分からんのだけど。)

 

今日も今日とて、戦場で人を殺し、それでも何とか自分がリーダーのような扱いを受けている小隊を率いて基地に戻る。

海軍で下手をすれば四皇だとか億超えの賞金首に遭うことと、現状のように少なくとも目立った覇気使いやら能力者に会うことのない戦場はどちらがましなのだろうか。そんな益体もないことを考える。

斬り込みの少年兵たちは行くときに比べて明らかに減っている。

それに、慣れてしまった自分がいる。それを、まあそうだろうと受け入れている自分がいる。

一応は上に当たる大人に戦況を報告し、配給の食事を全員分貰った。

 

「おーい、飯貰って来たぞ。」

 

それにくたくたになった子供たちが歓声を上げて群がった。メランは、きっちりと贔屓なく少年たちに食料を分けていく。そうして、最後に残ったのは自分の取り分と、そうしてもう一人分。

少年たちの物欲しそうな目を振り切って、彼女は一人で集団から離れた少年の元に歩いた。

 

「キュウ、ほい、今日のご飯。」

 

メランがそういって食事を差し出すと、その少年は無言でそれをひったくり食べ始めた。

 

(どうしたもんかなあ。)

 

目の前の坊主頭の眼光の鋭い少年は、メランの悩みの種だった。

 

 

メランは殺すことにも殺されることにもほとほと慣れてしまった。

なんの戸惑いも迷いも無く、自分が死ぬとなれば躊躇なく相手を殺せるようになった。

それは、ある意味で人間の防衛反応なのか、いっそのこと精神的に壊れているのか。元より、一度味わった死というもののせいか確かにメランは少々倫理観と言うものをどこぞに落としてきたような自覚はあった。

けれど、どうしても頭の奥にこびり付いた日本での常識、良心と言えるものを手放せなかった。

この世界も、状況も間違っているのだと、昔の当たり前が叫んでも生きていくためにはそれを受け入れるほかなかった。それでも、なお、彼女は偽善的と言える振る舞いを止められなかった。

彼女は、戦場では他人が生き残るために振る舞った。リーダーのような役目を与えられても平等に振る舞った。自分の仲間になった少年たちのこれからを考えてそっと教育のようなことを施した。

それを鼻につくと、無意味だという存在もいる。事実、彼女の真っ当さ、戦場では清廉とも言える善性は嫌われることも多々あった。メラン自身、その勘の鋭さで成功させた作戦も多く、勲章を幾つか貰っていたのが拍車をかけていた。けれど、その在り方を捨てきれなかった。

それを捨てるということは、メランと名乗る自分自身を捨てることと同様であった。

何よりも、平和な世界で生きた自分には、子どもが当たり前のように死んでいくことがどうしても耐えられなかったのだ。

見捨てることが出来なかった。

自分が生きるために足掻いて敵兵を殺しながら、そのくせそれに抵抗したいと考えてしまう自己矛盾から目を逸らして。

 

「あと、これもやる。」

「・・・なんだよ。」

「今日誰よりも活躍してたしね。君のおかげで今日も生き延びたわけだし。あれだよ、ご褒美みたいなもんさ。」

 

リーダーに特別に付け加えられたソーセージを九番のパンの上に置いた。彼はそれに不審そうな目をしても結局のところそのソーセージに齧り付いた。

最近部隊に入って来た九番の少年、最年少に当たる彼は年の割には殺伐としている。いや、部隊に入っている奴らは基本的に殺伐としているのだが。

それでも入って来た九番はびっくりするほど愛想も無く、無口な少年だった。軍隊とは良くも悪くも団体行動だ。

九番はそういったものに壊滅的に合っていなかったが、それでもその少年は驚くほどに強かった。天性と言える戦いのセンスは、メランの知る軍の人間の中で誰よりも際立ったものだった。際立った強さに反発する少年兵も少なくない。同部隊でも九番はひどく悪目立ちしている。

それも仕方のない話だ。

戦場で武勲を上げるとメダルを与えられる。これは軍隊の中での待遇に関係があり、誰もが欲しがるものだ。そんな中、強い新人なんてものは目の上のたん瘤に等しいだろう。

今はメランが何かと間に入っているものの、どうなることか。

彼女は余計なお世話であるかもしれないと分かっていながらそんな心配をするのだ。

 

 

 

九番、部隊に所属する少年兵はすべからく呼ばれる名であるバレットとするが、彼にとってその少女は全てにとってひどく特異であった。

戦場では奪うことが常であった。

生きるために他人の命を奪い、飢えをしのぐために他の食料を奪う。

強く在ればどんなことも自由になる。

バレットは、何も持たぬ子どもであった。部隊にいる子どもがそうであるように、個を特定する名さえも持たぬ少年であった。唯一与えられる武器でさえも、自分だけの物でもない。

そんな中、彼は二の番号を与えられた少女に会った。

その少女は不可解で在り、不可思議であり、そうしてバレット自身が一度としてであったことのない思考を持っていた。

彼女は、当たり前のように他に己の物を与える人であった。

それは食事であったり、物資であったり、色々なものだ。

彼女はバレットの憧れるメダル持ちでありながら弱かった。ただ、逃げることにしか才のない腰抜け。

それでも彼女は与える、バレットが欲しいと思うものを何の戸惑いも無く与える。

それは、彼にとって自分の願いを踏みにじられるような、苛立つような。そのくせ、自分に微笑みかけ、その武勲を褒める、その手を。

それは、バレットの知らぬ感情だ。それは、彼にとって理解できぬ存在だ。

彼女は、誰とも違った。

戦場で生きる、自分と同じ何も持たぬその人は何かを持っていた。それが何かなんて分かりはしなかったが、それでも確かに彼女は何かに満ちていた。

二番はニコニコと笑いながら、バレットに言うのだ。

お前さんほどならメダルも容易く貰えるだろうね。

二番に何か得があるわけではない。けれど、彼女はその事実を我がことのように喜んだ。彼女は自分の功績さえも他人に差し出す。元よりさほど強いわけではなく、誰かのサポートに回ることが多かったというのもあるだろう。

彼女曰く、自分は回避しただけで戦ったのは他人だからとそう言うのだ。

自分よりも弱く、けれどバレットの欲するものを持ち、そのくせ得た物を何の躊躇いも無く放り捨てる存在。

その女は、その女だけはバレットにとってどうすればいいのか分からない存在だった。

 

ある時、バレットはある作戦でメダルを渡される直前にまで行ったことがあった。丁度、その時彼女は離れた場所で違う作戦に身を置いていた。

バレットと隊の人間との緩衝材であったメランがいなかったこと。

その全てが原因であったのだろう。

バレットは隊の少年兵たちに襲撃された。

いくらバレットが戦いの天才であっても、不意打ちにされたそれに耐えきるには彼は幼過ぎた。何よりも、さすがに味方からの同士討ちがされるなんてことを想像だってしていなかったのだ。

薄れていく意識の中で、聞こえたのは一つの憎悪に満ちた叫び声だった。

 

「強すぎるんだよお前は・・・!バケモノめ・・・!」

 

瀕死の重傷とも言えるそれを負ってなお、彼は生き残った。理由は単純で、メランが彼を助けたためだ。

作戦からの帰還時にボロボロの彼を見つけたメランは死ぬ覚悟でバレットを基地に連れ帰ったらしい。

そうして、バレットの功績を主張し、尚且つメダル持ちの権利をフルで活用して瀕死のバレットの治療に当たった。

メランは、彼女はバレットにとって不可解であった、不可思議であった。

彼女は目を覚ましたバレットに、泣きながら、安堵したように微笑んでいた。

バレットは、一度だって彼女に何かをした覚えはない。何かをもたらした覚えはない。

けれど、メランはいつだって惜しみなくバレットを助けた。

 

「隊長に許可は貰ってるから傷がある程度治るまで休んでろって。にしても君がねえ。どんな奴に負けたの?会議にかけたいからあとで報告してね。」

 

バレットは、その女に何と声を掛ければいいのか分からなかった。

意識を失う前は、確かに怒りがあった。悲しみがあった。吹き荒れる様な激情と言うものを抱えていたというのに、自分のために安堵しながら泣く女に少し驚いてしまったのだ。

休んでいいなんて言われたことは一度だってなかったし、どうして目の前の女がここまで自分にするのかもわからなかった。

だからこそ、そんなものがすんと思わず引っ込んでしまった。

ただ、たった一つ言えるのは、女の目は誰のものとも違った。

バケモノと、自分を罵る声を覚えている。自分を見る目を、覚えている。

その女の目は、戦場で見たどんな誰よりも甘い目だった。メランは元より、部隊の中では浮いていた。

バレットには理解できなかったが、彼女の纏う空気はあんまりにも優しすぎたのだろう。

平穏な国で生きた彼女は、その匂いと言えるものを消し切れなかった。

彼女の瞳が、恐怖に染まったことはない。彼女の目は、いつだってバレットを映しても恐れることも、拒絶することも無い。

その眼は、バレットの知らぬものに満ちていた。

自分の為だけでいい。

自分の勝利の為だけに他人を使い、全てを足蹴にして武勲を上げ続けた。

バレットを裏切った少年たちも一網打尽にし、メダルを略奪した。

それでも彼女はバレットを恐れることも、忌避することも無かった。

 

「見ろ。」

 

戦況は一時的に落ち着き、基地に帰って来たメランにバレットは自慢げに血の飛び散ったメダルを見せた。

それにメランは初めて浮かべる表情をした。

驚き、そうして揺らぐような動揺が手に取るように分かった。

いつも穏やかで、そうしてバレットとは全く違う女。何が違うかも分からない、けれどその女の何かを揺るがせたことに薄暗い喜びを覚えた。

見たいとずっと思っていた。

女が、戦場でよく見る様に、恐れ、叫び、慄くさまを。

 

「俺をはめた奴らが持っていたものだ。」

「殺したのかい?」

 

けれど、メランの声は思っていた以上に平坦で、静かであった。

もっと違う反応を求めていたというのに返ってきたそれにバレットは先ほどの薄暗い喜びが霧散していくことに気づく。

 

「ああ、文句は言えないだろう。」

 

淡々とそう返せば、メランは肩をすくめてそうだなと頷いた。非難の声一つは予想していたがメランの返事はその程度であった。

彼女は自分のことを窺うバレットに気づいたのか、苦笑する。

 

「別に君のことを責めようとは思ってないさ。」

「俺はそんなこと気にしてない!」

 

ぴしゃりとそう言ってもメランは特別な感慨を見せることなく上の空で頷いた。

 

「まあ、仕方がないなあ。彼らが生きていたのは君の圧倒的な強さがあってこそだ。守られている自覚も無く思い上がってなあ。」

 

それについてバレットはそうだろうと同意した。けれど、その言葉はメランという女にはあまりにも不釣り合いなように感じた。

バレットの所業によって彼女の小部隊は自分たち以外にいなくなってしまった。

恨み言の一つを、罵声のそれを、貰うものだと思っていた。けれど、彼女はそれを粛々と受け取った。

未だ十にもならない少年は、その自分よりも少しだけ年が上の彼女を前にほとほと困り果てていた。そんな時、メランはふとバレットに視線を向けた。彼女は何故か、バレットの顔を見て彼と同じようにひどく困り果てた顔をした。

何故、今更そんな顔をするのか分からない。彼女は自分の胸についていたメダルを取り、そうしてバレットに手渡した。

 

「上げるよ。」

 

予想だにしない行動にバレットはじっとメダルを見つめた。

メダルを差し出された時、頭の中にいくつもの感情が駆け巡った。施しを受けた様な憤り、自分が欲するものをぞんざいに扱われたような怒り、メダルという憧れを欲する気持ち。

けれど、それ以上にあったのは、目の前の女への無理解であった。

どうしてだ?

そのメダルには、確かに価値がある。功績をなしたという証であり、ある程度の権利が与えられるそれ。

だというのに、女は、それをあっさりとバレットに渡して見せた。

ずっとその女が分からなかった。けれど、その瞬間、目の前の女が自分とは全く違う生き物であるとまざまざと理解できた。

メランは受け取らないバレットの手を取り、そっとメダルを置いた。そうして、その場を後にした。

バレットは、そのメダルを握りしめたまま、茫然と立ちすくんだ。

 

 

胸が大きくなる年齢ってどれぐらいなんだろうか。

メランの目下の気になることとはそれである。

彼女は、幼女の躰で目覚めた頃に五、六歳ほどであったことを鑑みて十六ほどになるだろう。

年頃と言える年齢の彼女はじっと自分の胸を見る。

 

(・・・・平らだ、平野だ。)

 

思い出してほしい、ワンピースの女性の特徴を。

そうだ、巨乳だ。巨乳なのだ。けれど、メランの胸は未だに実る兆しはない。

別段、そこまで気にしてはいない、はずだ。

ただ、大きくなる前提で考えていたうえで中々にそれが来ないことに違和感を覚えてしまう。前世では、確か胸がないわけではなかったがあるわけではない感じだったはずだ。といっても、そんな記憶も遠くにある。というか、ここまで巨乳であることに執着しているのならいっそのこと貧乳であった気もしてきている。

というか、この頃自分の性別が女であったことも曖昧である。女であることに違和感がないのだが。

 

(うーん、でも巨乳で下手にスタイル良いと上の人に御呼ばれされてあっー!みたいなこともあるしこのままでいいのか?)

 

そう言った経緯で前線を離れて悠々自適に過ごしているお姉さま方もいるらしいが。

 

(まあ、戦場で人殺しまくって生き延びるのと、貞操と引き換えにおじさんたちに侍るのって言ったら侍る方がましなのか?)

 

人を殺した。殺して、殺して、殺して、誰かの尊厳を踏み続けてここにいる。

それによって生きて、食事をしている。

血の匂いに慣れた、腹から漏れ出た臓器の色にも慣れた、断末魔にも慣れた、誰かの不幸にも慣れた、不条理にも慣れた。

人を殺すのにだって慣れた。

そんな自分が、倫理観もくそもない二択について考えるだけ不毛だろう。

思い直して、メランはぼうっと基地の廊下を歩く。

そこで向かい側にメランの身の丈以上ある青年が歩いてくるのが見えた。

自分よりもずっと大柄な眼光の鋭い少年、バレット。正直な話、老け過ぎて青年にさえ見えるが、そうはいっても自分よりも年下なのだ。ならば、少年と言って差し支えがないだろう。

 

「おいっす、バレット。」

「ん。」

 

お世辞にも愛想のある返事ではないが、それでも返って来るだけましである。

常勝無敗のバレットに媚を売ろうとする人間は多いが愛想のなさと、そして恐ろしさに諦めていく。

それに加えてバレットの戦い方は結果は良いものの巻き込まれて死ぬ兵士も多いためお世辞にも好かれていない。

強いて言うなら、彼のおかげで出世したダグラス――現在は将軍だ――だけは仲がいいようだが。

 

(おかげで私ぐらいしか組める人間もいないし。)

 

回避能力に極振りしているといっていいメランぐらいしか組めない。戦いに極振りされているバレットのおかげでメランは航海技術などのもろもろについてをマスターさせられている。それについては感謝してほしいものだというのがメランの主張だ。

 

(一時はめっちゃ嫌われてたけど。)

 

数年前、メランの小隊がバレットによって全滅した日。

そのことについてメランは別段何かを思っていない。確かに、自分でも昔の価値観を捨てられていない感覚はある。

子どもが、自分も現在は子どもであるが、腹を空かせていれば何かしらやりたくなるし、出来るだけ死んでほしくはない。

それと同時に、倫理観がかっとんでいる自覚だってある。死んでしまったものはしょうがない。

だからこそ、メランはそれについて仕方がないと割り切った。

 

(・・・・バレットに守られてるって自覚はなかったんだろうなあ。)

 

昔は周りの人間のことを考えて戦っていたバレットに守られていたとメランは思っている。自分の安寧の理由を考えず、手柄に嫉妬した彼らは元よりメランが気にしていてもいつか死んだだろう。

バレットが血に濡れたメダルを差し出した時、動揺しなかったといえば嘘になる。けれど、その時のバレットの顔があんまりにも子どもの様であったから。

誰よりも強く見えた人の、幼い事実を見せつけられたせいかそれもどこかに行ってしまった。次にやってきたのは申し訳なさだ。

そんな子どもを、そんな顔をしている子どもがこんな場所にいるということへの罪悪感だ。バレットに殺された少年たちへの罪悪感だ。

もちろん、そんなことをメランが考えても仕方がない。どうしようも出来ない、それでも捨てきれなかった当たり前がメランを責める。

メランはバレットにメダルを渡した。

ずっと欲しがっていたということを思い出し、慰めの意味もあった。そうして、何となく持っていることが嫌になったというのもある。

自分が結局のところ、彼を助けず、利用し続ける大人であるという象徴だったせいだろうか。

欲しければ、持っていればいいと、そんな投げやりな考えを持っていたというのもある。

バレットはその後、メランを無視し続けた。

けれど、ある日を境にそんなこともなくなった。

 

(・・・なんでかな、理由は。)

「おい。」

 

そこまで考えて、思考をバレットの声で遮られる。視線を向けると、バレットはくいっと頭をひねってついて来いとメランに示した。彼女は珍しいこともあるものだとそれに従って歩き出した。

着いた先は、基地でもひと気のない倉庫だ。バレットは無言でそこに立ち止まっている。メランは、どうしたどうしたとバレットを見上げた。

 

「どったのさ。」

「・・・・次で、最後だ。」

「ああ、そうだね。ようやくこの国も落ち着くな。」

 

話題は次の戦争のことだ。それでようやく戦争の決着がつく。バレットのおかげで自国の勝利には疑いなどなかった。

 

「ダグラス将軍に、軍の上層部に迎え入れると言われた。」

「よかったじゃんか!いやまあ、お前さんの戦歴を考えれば当然だな。」

 

この戦争においてバレットの上げた功績は数知れずだ。上層部入りは当然だろう。というよりも遅いとさえ言えた。

けれど、仕方がない。軍の上層部が前線に出ることなどないし、バレットは前線で戦うからこそ価値がある。

 

(・・・・なら、後は大丈夫、なのかな?)

 

メランは、戦争が終わり後処理でバタバタしている隙に国を出る計画を立てていた。

数年前からこつこつと準備を進めていた。

壊れ、廃棄されるはずだった小型の船を密かに回収し、必死にこつこつと直した。食料などもすでに運び込んでいる。

メランの住む国はあまり外の情報が入ってこない。というか、海軍の庇護に入る様な加盟国なのかも怪しい。

戦争ばかりしているせいで旨味がないと海賊も立ち寄らない。武器商人は立ち寄っているようだがメランは会える立場にもない。

メランにとっては今の時代が何処に当たるかは是非とも知っておきたいところだった。

ルフィたちが何処にいるかによって原作知識、つまりはどこら辺が危険かを測る重要な情報なのだ。

といっても、この国で外の世界について知ろうとすると国外逃亡を疑われるためあまり聞き込みも上手くいかなかった。

それでも一応は船を出す先は決めている。

フーシャ村だ。

ワンピース世界でも一番に平和な東の海であり、なおかつ主人公の故郷だ。近くに信用のおけない貴族の住む町があるのは心配であるが焼き払われる危険はダントツに低いだろう。

運がよければ、まだ危険の少ない主人公を目撃できるかもしれない。危険だと分かっているが、そこら辺のミーハーな部分は残っていたりする。

 

(こいつにも居場所が出来るのか。)

 

唯一、一つだけ、心残りがあった。

誰よりも強い、寂しい子ども。あの日、裏切られて、確かに傷ついていた強者の子ども。

島を出るということは彼を置いて行くことと同義だ。自分以外にろくに会話もしなければ、関わったことも無い。

独りにすることを、心残りとした。

けれど、どうやらそれはとっくに大人になっていて、居場所もちゃんと出来るようだ。

 

(まあ、私がそんなことを気にするのはおこがましいのかね。つって、ダグラス将軍なあ。)

 

バレットは何だかんだと贔屓してくれるため懐いているようだが、メランはあまり好きではなかった。

ダグラス将軍はいかつい顔をした、野心家と言う印象の壮年の男だ。

正直な話、悪人顔であるがこの世界ではデフォルトに入るだろう。海軍しかり、海賊しかり荒事に関わる人間ならばそんなものだろう。

そうして、顔については殆どおまけのようなものでこの男、何の対策かは知らないが自分の管理内の基地に緊急用にと爆弾を仕掛けているのを知っているためだ。

敵に占領された時用にと言っているが、それ以上の思惑はあるのだろう。

それを知らされる程度に信用されていることには喜べばいいのか。

 

(まあ、やり手な人だし。バレットの利用価値、て言い方はやだけど分かってるだろうから悪いようにはしないだろう。)

 

メランもダグラス将軍の配下としてそこそこの功績もなしているし、気に入られてはいるのだが。一応、危機回避能力だけは買われている。

といっても、戦争だらけの国で善き人などが出世できる筈もないが。

肩の荷が下りたような気分でほっと息を吐く。

 

「お前は?」

「うん?」

「お前にはそう言った話は出てないのか?」

「とっくべつ、聞いてないかなあ。」

 

元より、これが終われば去る身だ。あまり気にすることではない。

 

「・・・・俺が。」

「うん?」

「ダグラス隊長に、言ってやってもいいぞ。」

 

メランの動きが止まる。

 

「・・・・なんだ、その顔。」

「だ、おま、だってさあ!」

 

メランは両手で口元を覆い、目をキラキラさせながらバレットを見ていた。

メランは、非常に感動していた。

あの、あの、人と滅多に関わらない、一匹狼状態のバレットが。どんな理由かは知らないが自分を気遣っているのだ。

なんというか、我が子の成長に感動する親の心境であった。

それはにっこにこと笑いながらメランはバレットの背を叩いた。

 

「お前なあ、んなこと気にしなくていいんだって!」

「いいのか?」

「いいよ!私としてはお前さんがそんなこと気遣ってくれたってだけ十分だしな。まあ、私はそういう役着きはたぶん性に合わないだろうし。あんまり勝手なことしてお前さんの印象が悪くなってもなんだしなあ。でも、ありがとな。」

「お前は。」

 

ニコニコ笑って断ったメランに、バレットはやっぱりどこか困った顔をする。その表情の意味をメランは察せられない。といっても、どうしたと聞いても応えることも無いのだから諦めている。

メランはそのまま気にすることなくバレットへ祝いの言葉を続けた。

 

 

 

「ええっと、将軍。それは、その。」

「バレットへの総攻撃を始めると言った。」

 

戦いが終結し、さあ後処理だと意気込んだメランにダグラス将軍はそう言い放った。メランは後方にてダグラス将軍の側に護衛の任についていた。

彼女の役目は狙撃手であり、その危険への勘を買われて護衛として存在していた。事実、その危機を救ったことは数知れず。

 

頭の中ではぐるぐると焦りが駆け巡るが、戦場生活で鍛えられた胆力はメランのポーカーフェイスを崩さなかった。

 

「あれの強さはいつかおれの地位を危ぶめるだろう。お前から漏れる可能性もあったため伝えていなかったがな。」

「・・・私も処分されるということでしょうか?」

「いや、お前は使えるからな。まだ使ってやる。ただ、一つだけ条件がある。」

 

バレットを殺せ。

 

簡潔なそれ。バレットと多くの戦況を越え、仲のよかったメランゆえに命じられたそれ。彼女はゆるりと微笑んだ。

 

「了解しました。」

 

 

(って、するわけないけどね!?)

 

メランは命じられた通り、バレットのいる、前線へと一応向かっている。

国とバレット、どちらが勝つかと言えば分かるだろう。バレットはきっと負ける。流石の常勝無敗と言えど、国とでは勝てる見込みはない。

逃げてしまえばいい。

頭の中でそう囁く声がする。そうだ、今はチャンスなのだ。

何と言っても国の全てがバレットへ向かっている。敵国だって敗戦しているのだ。今が何よりも隙がある。

船に今のうちに乗れば。

逃げてしまえばいい。こんな国、こんな場所、こんな、くそったれな世界。

残酷で、優しさのカケラだってない世界。

見なかったことにすればいい。知らないふりをすればいい。

慣れたとしても、人を殺すことには嫌気がさしていた。好きだったわけではない。

責任なんて放り出して、まだましな場所に逃げてしまえばいいと、そう囁く自分がいる。

誰に責められる謂れも無い。誰も助けてはくれなかったのに。

 

(それでもさあ、それでも!)

 

メランは、そんな声を振り切ってバレットの元に向かう。彼をどうにか救うため、国と戦うことを決意する。

 

結局の話、メランにとって一番に情があったのはバレットであった。

何故かと言われれば、積み重ねと言えたし、それと同時に彼が未だに寂しい子どもであると知ってしまっている。

あの日、バレットが同期たちに裏切られたあの日。

目を覚ました強者の子どもの、拙い表情を覚えている。途方に暮れた、悲しさを含んだ瞳を覚えている。

自分と同じ小隊の子どもたちを大事にしたかったのは事実だ。そして、彼らが死んだ理由にも納得してしまっていた。だからこそ、せめて、生き残った、その少年の事だけは大事にしたかった。その少年を、特別に大事に思っていた。その少年にだけは、幸せになってほしかった。

そうだ、そんなものだ。

メランと言う人間の中で、とっくのとうに天秤は振り切れてしまっている。

あの日、死んでいった子供たちよりも、裏切りに失望と寂しさを抱えた子どもをメランは選んでしまったのだ。

この世界は残酷だ。きっと、自分たちが生きている箱庭と同様に、それ以上にこの世界はすべからく当たり前のように生きていた人が唐突に死んでしまう様な場所だ。

それを知っている。

そんな世界だからこそ、せめて情を持ったたった一人に幸せになってほしかった。

それがどうだ、バレットが信じた男は彼を裏切った。

止めてくれ。これ以上、あの子を傷つけないでほしかった。

ただ、ただ、強かっただけの子ども。

何が悪かった、何がダメだった?あの子は唯、生きたかっただけじゃないか。

自由になるんだ、自由な生活というものをおくるんだ。それは、どんなものだろう。

自由という単語を本当の意味で理解していない、夢を見る、幼い顔を思い出す。

メランは走った。

もしも、もしも、勝てなかったとして。バレットが死んでしまっていたとしても。それでもメランは、せめて自分だけは味方でありたい。

そうでもしなければ、メランは前世で生きた自分と言う在り方を失うだろう。人が死ぬ地獄で、人の命が軽いその国で、バレットに注ぐ幸福であってほしいという祈りだけがメランという存在になってしまった彼女がたった一つだけ持ち続けることが出来た、引きずり続けた、当たり前だった。自分が何者か忘れない、唯一のよすがだった。

 

(・・・そうだ、お前のために死んでやろうじゃないか。)

 

どうせ、一度は死んだ身だ。なら、めちゃくちゃに、無意味に、好き勝手に生きてやろうじゃないか。

冷静なんて欠片だってない頭で、必死に急ぐ。

 

「バレット・・・・!」

 

せめて、せめて、一人ぐらい、あの寂しく強い子どもの味方に最期までありたかった。あの子どもを、守ってやりたかった。

 

 

 

その女は、いつだってバレットに何も求めなかった。

自分の生の中に当たり前のように存在していた女は、何故かバレットというものに何も求めなかった。

大抵の人間は、バレットを恐れる。その強さを厭う。

慕っていたダグラス将軍とて、彼が強いゆえに特別扱いした。それに何かを思ったことはなかった。

彼の世界とは、強さこそが正義だった。戦いに勝つ、それによって彼は自由に、思うままに振る舞える。

けれど、その女だけはバレットが強く在ろうと、弱く在ろうと変わらなかった。

軍隊に入った時から、今に至るまで女の態度は特別変わったことはない。

バレットが死にかけた、あの裏切りの時でさえ見捨てることなく彼を拾い上げた。そうだ、見捨ててもよかった。大抵の人間は、そんな状態の少年兵を救うことはないだろう。

けれど、メランは違った。

押し付けられたメダルを捨てることさえ出来ず、メランへの言いしれぬ苛立ちはくすぶり続けた。

彼女は、本当にいつも通り接した。見かければ挨拶をし、同じ作戦の時バレットが好き勝手に暴れても文句も言わなかった。

話しかけて来ることが鬱陶しく、苛立って殴り掛かることだってあったが彼女はそれをひらりと避ける。そんなことをされても自分に寄ってくるメランに到頭根負けして、あるとき聞いたことがある。

どうしてだと。

それに彼女は苦笑した。そんな事かと笑った。

 

誰もいなくなった、誰もが死んでしまうから。せめて、独りだけ残ったお前さんのことは大事にしたいんだ。

 

大事にしたいとは何だろうか、分からなかった。それでも、その言葉はバレットに向けられるもののなかで何よりも優しかったのだと、そう思った。

大事にされているのだと、理解できた。

それ故に、バレットはメランを厭えなかった。

独りでいい、たった一人でいい。

そう思っても、ずっと変わることなく自分に接し続けるメランを厭うことは出来なかった。

メランだけは恐れなかった、彼女だけはバレットが好き勝手に暴れようと死ななかった、自分の不得意な事を補い、役に立った。

メランだけが、裏切らなかった。

独りでいい、そう足掻くのに、当たり前のようにそこにいるメランを受け入れてしまっている自分がいる。

彼女だけは、バレットに戦うこと以外を求めた。

バレットは、自分を恐れるわけでも、戦うことを求めるのでもないメランにどうすればいいのか分からなかった。

分からなかった、それゆえに、憎むこともできなかった。だから、自由に振る舞うことにした。強者らしく、自由に、好き勝手に振る舞った。

それでもメランは変わることも無く、バレットに変わらない微笑みを浮かべるのだ。

 

 

裏切られたことに、怒りが湧いた。

ああ、ああ、将軍、将軍、あんたも俺を裏切るのか。あの、くそったれたちのように。俺を恐れるだけだった、あいつらのように。

電伝虫から吐き捨てられた台詞に、バレットは茫然とする。

戦ったじゃないか、あんたの望むように、ちゃんと言われた通りにやったじゃないか。

自由な暮らしを教えてくれるんじゃなかったのか。あんたが喜んでくれた、だから、戦った。人を殺した、恐れられることだって平気だった。

銃弾の雨が降りそそぐ、数の暴力が襲ってくる。

必死にそれに応戦しながら、無意識にあの女の顔を探した。

あいつだって裏切ったのだ!きっと、きっと、自分が将軍の甘言に喜んでいたことを嗤っていたのだろう。

茫然としたその隙に、バレットは傷つき、膝をつく。

軍の人間たちがとどめを刺そうとしたその瞬間、爆発音が響き渡った。爆発音のした方向は丁度、基地の一つがある場所だ。

そうして、次の瞬間、絶叫が響き渡る。

 

「伝令!でんれえい!!敵国の伏兵あり!敵国の伏兵あり!ただちに対処せよ!」

 

それを呼び水として辺りにはパニックが広がった。

明らかな襲撃らしい爆発とその叫び声に動揺が起こり、バレットへの攻撃の手は緩んだ。そうして、反撃が始まった。

ガシャガシャの能力を解放しながら、バレットはふと思う。

伝令のその声は、馴染み深いあの女の声によく似ていた。

 

 

次に目を覚ますと、視界に知らない木目の天井が映った。

 

「起きたのか!」

 

頭上から聞こえる声に飛び上れば、そこに見慣れた女がいた。

バレットはとっさの判断で攻撃の構えを取ろうとするが、その前にメランが叫んだ。

 

「おい、ばか、止めろ!船の上で暴れんな!」

 

その言葉に自分の立っている床が微かに揺れていること、そうして微かに潮の音が聞こえることに気づいた。

バレットはメランを押しのけ、彼女の後ろにあった扉から外に飛び出る。すると、視界は青一杯に満たされた。

ざざーんと、そんな音がよりクリアに聞こえる。

 

「どういうことだ!?俺は、確か・・・・」

「説明するから落ち着け!」

 

メランはバレットの隣りに立ち、現状を話し始めた。

 

バレットはガシャガシャの実の力を使いガルツバーグを徹底的に破壊しつくした。そのために国は、国民は滅んだのだがどうも海軍に連絡がいってしまったらしくバレットは追われる身になったらしい。

 

「お前さんが破壊しつくした後の電伝虫から聞くところによるとな。んで、お前さんは暴れたおしたあと疲労と外傷でぶっ倒れたんだよ。それを回収して、手当てした。そんで用意してたこの船に乗っけて逃亡中だよ。はあ、私も追われる身だしねえ。」

「・・・・どうしてだ?」

 

思わず飛び出たそれに、メランは気まずそうに肩を竦めた。

 

「・・・・基地の幾つかを、まあ、その爆破しまして。」

「は?」

 

バレットは自分が態勢を立て直すきっかけになった爆発を思い出す。

 

「あれは、お前が?」

「まあ、ははははは・・・・」

 

空虚な笑い声をあげながら、メランは遠い目をして海を見る。

 

「まあ、あれだよ。そんなこんなで行く場所もないし。当分は二人で彷徨いでもしようや。食料は多めに積んだし。」

 

当たり前のようにそう言ったメランの言葉に、バレットは自分を裏切った、そうして殺した男のことを思い出す。

 

信じてもいいのか?

この女が、自分の味方であるのか、裏切っていて今更手のひらを返したのか。バレットには分からない話だ。

なら、ここで殺すべきじゃないのか?

信じていた、それでも裏切られた己の心が痛む。失望し、湧いた怒りがぶり返す。

バレットを裏切った男は、死んだとき何と言っただろうか。

ガシャガシャの実を使い、踏みつぶしたどこかにいたのだろうか。

そんなバレットをじっと見た後、メランは首を傾げた。

 

「お前さんは一つ聞くけど航海術、分かるの?」

「・・・基礎は。」

「だよなあ。お前さん、習ってもずっと陸で戦い三昧だったしな。私は、ある程度の医術やら食事関係の知識に、船の動かし方も出来る。」

「雑用に駆り出されてたからな。」

「うるせえよ!どうせ、どこでもやってけるけど一人だと微妙でしたよ!器用貧乏で悪かったな!」

 

威嚇をする動物の様にメランは唸った。そうして、はあとため息を吐いた。

 

「まあ、だからあれだよ。私はそういうこの海で生きてける知識がある。お前さんは強いけど、そこらへんは足りないだろう。生きていくための知識を私は提供し、君は強さを提供する。それでどうだい?」

 

その言葉は、打算に満ちているというより、自分の逃げ道のように思えたのはなぜだろうか。

思わず黙り込んだバレットに、苦笑してメランはその手を取った。

 

「ともかく今は休むべきだ。一応瀕死の傷だったんだからな?でも、その生命力には感服するよ。」

 

取られた手の引くがままに、バレットは歩き出す。招かれるがままに、船内に入っていく。

振り払えと、殺せと、裏切られた自分が喚いていた。

その、青い髪に隠れた細い首。

自分が、今、この瞬間に手をかければへし折れる。

独りでいい。一人で、強ければそれでいい。自分以外の誰かが、いつか自分から勝手に離れ、疑い、そうして裏切るから。

分かっている、バレットの人生を振り返れば納得しかない答えだ。

それでも、バレットの手は動かなかった。

その、穏やかなだけの声に言われるがままにベッドに誘われる。

 

その女は、バレットには分からない。

女は、いつだってバレットに何も求めなかった。

いまだってそうだ。

バレットの強さなんて、ひとっ欠片だって興味がないのだと分かるのに。

自分を匿い、海軍から逃げるメランはバレットに何をしたいのだろうか。

疑う心も、悉く抱えた失望も、裏切りも、消えてはいないのに。

それでも、バレットはメランを殺せないままだ。

 





引っ越しと転職のダブルパンチのストレスで書きました。
今日もがんばります。
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