遅れ馳せながら改めまして、新年あけましておめでとうございます。
今年も本作を楽しんで読んでいただけると嬉しいです!
※本作の中で今回の話が一番オリジナル展開かつツッコミ所の多いものになっていると思われます……ご注意下さい。
それでは、どうぞ!
「端的に言えばーー通信衛星アークの完全破壊だ」
「不可能だ」
滅の考えを聞き、真っ先にそれを否定したのは垓だった。
「本体である衛星が存在し、機能し続ける限りアークは何度倒しても復活する。だからこそ本体を完全破壊する必要がある。あぁ全くの正論だな。しかし、それが出来れば苦労はしない」
滅が破壊しようと言い出した通信衛星アーク。これがどうなったのか……それはヒューマギア運用実験都市計画・通信衛星アークの打ち上げプロジェクトにZAIAの一員として参加し、アークに人類の歴史をラーニングさせ人類に対する悪意を芽生えさせた原因を作った天津垓本人がこの場にいる者の中で最も理解しているといえた。
「通信衛星アークはその打ち上げ直前に人類に対する悪意を抱き始めていることが発覚し、打ち上げは急遽中止されようとしたがアークにハッキングされたヒューマギア達の反乱によって失敗。打ち上げられた衛星アークは事前に仕込まれていたプログラムによって自爆。最終的に通信衛星アークは地上へと墜落した」
「今ではデイブレイクタウンにある湖の底で水没している。だが正確な位置は不明。それに仮に衛星アークを発見できたとしても引き上げるのは容易ではない。必ずアークの妨害が入るだろう。これをどう破壊すると?」
垓は一歩垓に歩み寄る。それに怯むことなく滅は言った。
「今から通信衛星アークを探す必要はない。引き上げる必要もな」
「………何だと?」
「それ、どういう意味だ?」
何を馬鹿な、と怪訝な顔をする垓。或人が首を傾げて聞くと滅はあっけらかんと答えた。
「そのままの意味だ。通信衛星アークを探す必要はない。位置は既に特定済みだ」
「!? ど、どうやって……」
「なら引き上げる必要がねーってのはどういう訳だ?」
次に不破が聞くと滅はこう答える。
「通信衛星アークが地上に墜落し湖底に水没したのは事実だが、その状況が続いていたのはデイブレイクが発生してから数年の間の話にすぎない。墜落した通信衛星アークのシステム自体は尚も機能し続け、アークのハッキングを受けたヒューマギアも残存していた」
「そして、アークは己の支配下にあるヒューマギアを使い水面下で自身の知能の完全修復を企んだ。この際にアークは本体に至るまでのルートを、地下トンネルを一から作った。しかしアークの力を持ってしても『人類に悟られずに』という条件下ではその完成には何年もの時間を有したが既に立入禁止区域となっていたデイブレイクタウンの地下深くで年密に行われていた地下トンネルの建造は完了している」
また情報を付け加えれば、天本太陽が仮面ライダーとして現れた頃にはルート自体はまだまだ建設途中であり、アークの知能も修復途中。
ルートが完成したのは計画始動から数年後。アークの知能が完全に修復され復活したのは十二年後……ここ最近のことだ。もしも天本太陽の登場がなければ計画の完遂はもう数年早まっていただろう。
「……仮にそれが事実だとして、何故それをお前が知っている?」
滅の話を聞いた唯阿は少しの沈黙の末、核心を突く疑問をぶつけ、滅はやがて口にした。
「そんなことはお前達も既に理解している筈だ。何故知っているか……それは今話したアークの計画に最も加担していたのは他の誰でもない俺だからだ。当然地下トンネルの建造にも手を貸していた」
「っ、滅!」
「……俺はただ事実を語ったまでに過ぎん」
この場にいた誰もが薄々分かっていただろう事実。その情報の重要さとは裏腹な淡泊な話振りに、何の申し訳なさも感じさせない口振りに周りの空気を察した迅は文句ありげに声を上げる。
「俺を殴って気が済むなら好きにしろ。俺を破壊するというのなら……それはアークを滅ぼした後にしてもらおう」
しかし、滅は変わらない調子で話を続け、作戦について明かし始めた。
───────────────────────
「ーー衛星アークの破壊、か」
ZAIAエンタープライズジャパン。
その屋内にある一室、サウザー課に割り当てられた寒々しい電気室の一角にて私は考えていた。自分がこれからするべきことは何かを。
「ふっ、まさかアークに悪意を抱かせた私がそんな作戦に手を貸すことになるとは………奇妙な廻り合わせもあったものだ。さうざーもそう思うだろ?」
『ワンワン!』
テーブルの上に座るさうざーにそう声を掛けた私は滅から聞かされた計画「衛星アーク破壊作戦」の概要を今一度思い返す。あぁ、改めて考えてみれば考える程に馬鹿らしく思えて仕方ない計画だ。仮にもヒューマギアが立案したとは思えない程に欠陥だらけ。
だが、進化を続けるアーク相手に太陽君を失い碌な対処方がない現状を鑑みれば欠陥のない作戦など立てようがないことは理解できる。ならばこれが我々にとって最善だということも。
(ヒューマギアの、しかも一度は友を瀕死に追い込んだ相手の計画という点がとても癪に障るが……)
今は私個人の身勝手な感情を優先すべき時ではない。掻き乱していい状況でもない。
「………太陽君」
私は部屋の隅に置かれたガラスケース、その中にある台座に飾られている黄緑色のプログライズキーが装填されたショットライザーの前へと向かい見つめながら友の名を呟く。
(君は私にとって最上の友だ。それは疑いようのない事実だろう。だがそれ以前にーー)
このショットライザーは厳密にはエイムズショットライザーではない。プロトショットライザーとでも言うべき代物。そう、何を隠そうコレは十二年前に彼が、仮面ライダーバルデルが実際に使っていたショットライザーそのものだった。それを何故私が持っているかといえば十二年前のあの決戦の後、太陽君を助ける際に破損したショットライザーも共に回収したから。理由なんて態々説明するまでもないだろう?
「君は私にとって、憧れそのものだった」
甘えず、頼らず、己自身の力だけでやり遂げる。
自身にとっての
これは余談になるが、プロトショットライザーはあくまでテスト段階の品であり、戦闘データ収集の為に完成品のエイムズショットライザーにはない機能が二つあった。一つは変身後の変身者の細かな動きや発揮されたスペックなどをデータとして記憶するメモリ機能。最後の一つは監視目的として変身後に形成された複眼部分に複数内蔵された超小型カメラ。カメラに映った映像をこちらの機器と連動しており、この機能を利用すればリアルタイムかつ遠隔で戦闘を見ることも可能だ。
「……………」
ガラスケースを開け、ショットライザーに触れながら私はここであったとある出来事を想い出していた。
△▲△
飛電或人、太陽君、私の三人による共闘後。
私は飛電インテリジェンスの社長を辞任。飛電或人を次期社長に指名した後に本社から来た与多垣さんから社長解任と伝えられ、サウザー課の課長に就任することになった。
『……課長……私が課長……』
就任当初の私は暫く落ち込んではいたが、どこから話を聞きつけたのかは不明だが太陽君からの励ましのメールを受け復活した私はサウザー課に太陽君を招待した。
『どうですか? 太陽君! サウザー課に来た感想は!』
『ワン!』
『俺、絵に描いたような左遷先初めて見ましたよ……』
サウザー課を見た太陽君は最初私とさうざーに憐憫の眼差しを向けていたが私をじっと見てから「……まぁ天津さんのやったこと考えりゃこれでもまだ全然優しいつうか、十分に温情ある気がすんな」と呟き私の隣に居たさうざーを抱き上げて「お互いこんな友達持って苦労すんなぁ〜」とよしよし頭を撫でながら笑った。
『これを見てください、太陽君』
それから暫くサウザー課の説明をしてから私は彼に室内の中央、一番目立つ位置に飾っていたショットライザーと装填されたプログライズキーを胸を張って見せた。
『このショットライザー……もしかして……』
『えぇ、ご明察の通り、十二年前に君が使っていたショットライザーとプログライズキーですよ』
『………前々から妙だとは思ってたんだ。天津さんが新しくくれたショットライザーもプログライズキーも新品みたいに綺麗だし。変身した後の力も前より強くなってる気がしてたしさ』
ショットライザーとプログライズキーを見た太陽君は以前から抱えていた疑問が解消されたらしく納得の表情を浮かべる。
『天津さん、これ触っても大丈夫?』
『勿論、どうぞ』
続けて私に許可を取ってからショットライザーとそこに装填されたプログライズキーに触れると、
『……ありがとうな』
穏やかな笑みと共にそう零した。
『天津さん、俺は俺にできることをやります! だから天津さんも! みんなも!』
そんな彼のように私はショットライザーに触れ、太陽君の残した言葉を思い起こし、
「………えぇ、やってみせますよ。私は君の友なのですから」
ーー改めて決心した。
△▲△
衛星アーク破壊作戦の詳細な説明から数時間後。
現時刻0:30。
「……………」
アークのインフラ攻撃を受けて破壊された都心の発電所。凄惨な光景が色濃く残るその現場の付近にて俺は立ち尽くしていた。
アークの攻撃を確認したAIMSと仮面ライダー達が動き出し現場に到着するまでの時間は極めて迅速だった。だがそれでも間に合わず、救えなかった命は数知れず存在する。それだけ今のアークは神出鬼没かつ危険過ぎた。
(………俺は)
立入禁止のテープをくぐり、足元に転がっていた手の平サイズの瓦礫の破片を俺はふと持ち上げた。その裏側には誰のものか……人間の赤い血がべたりと付着していて、これを見て俺は思考する。アークが復活したのは何故か。こんな光景が生まれたのは何故か。答えは容易に導き出せた。
それは今までアークの意思に無心に従い、それを正しいと信じて疑わなかった俺自身のせいだと。仮にもっと早い段階で俺がアークと袂を分かっていれば……人類にとっても、ヒューマギアにとっても、今ほど絶望的な状態になっていなかったのは間違いない。
しかし、そんなことは考えるだけ無駄だと、たらればだと、俺は思考を切り替える。
「ーー来たな、天津垓」
今すべきことは過去を振り返る事でもなければ、悔いる事でもない。今ある脅威にどう立ち向かうか。どう行動するか。その結論を胸に俺は感知した足音に名前を口にして振り返る。
「……まさか、貴様の方から私を呼び出すとは。夢にも思っていなかった」
そこには俺の予想通りの人物、天津垓が立っており、その腰にはサウザンドライバーが装着されていた。言外にこちらを信用していないことを示す天津垓はテープの先に居る俺を見据えながら口を開く。
「用件は何だ? ……先に言わせてもらうが、どんな内容であれ私は貴様に協力する気はない。あぁ、破壊されたいというのなら話は別だがな?」
「天津垓、お前に覚悟はあるか?」
「………何?」
俺は手に持った瓦礫の破片を元あった場所に置き、覚悟を問うた。怪訝な顔をする天津垓に構わず俺は続ける。
「アークと袂を分かったが俺は未だに人類が滅亡すべきかどうか、結論を出せないままでいる。ただ嘗てと違い、今なら思える。人間もこの世界も捨てたものじゃないと」
「そんな人間が、世界が、今滅亡の危機に陥っているのは……
天津垓は俺の言葉に真っ暗な空を見上げた。
「私はアークに悪意を学習させた。そのせいで多くの人々が死んだ。何より天本太陽という私にとって無二の友である人間の人生を滅茶苦茶にしてしまった……一生を掛けたとしても到底償える罪ではないだろう」
「だが私はそれでも彼の、太陽君の友として相応しい人間でありたい。そう思ってしまった。だからこそ私は償い続けることに決めた。たとえこの身が朽ち果てようとも……私はーー」
そして、己の胸の内を語った天津垓はーー立入禁止のテープをくぐり俺と向かい合った。
───────────────────────
「ーーアーク、貴様の相手は俺達だ」
「ーー人々の未来の為、貴様を止める」
横並びに立つ仮面ライダー達は歩を止め、そこからたったの二人だけが前に歩み出る。
【ゼツメツ! Evolution!】
『ポイズン!』
『ブレイクホーン!』
その二人、滅と垓はプログライズキーを起動し同時に吼える。
「「ーー変身ッ!!」」
【フォースライズ!】
【パーフェクトライズ!】
アークの本体である通信衛星アーク。それを破壊するまでアークを足止めして時間を稼ぐ。謂わば最も危険に近く死亡確率の高い役を受け持ったのがこの二人だった。
『スティングスコーピオン!』
【Break Down.】
『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.』
【Presented by ZAIA.】
同時変身を果たした二人は武器を構え、
「行け」
「任せましたよ」
滅は後ろを一瞥して、垓は振り返ることなく、仲間達に短い言葉を残す。
「……滅……天津さん……」
そんな二人の背中を見た或人は思わず手を伸ばし何か言葉を掛けようとした。だが思ったように言葉は出ず、或人は迷いを振り払うように首を振って仲間達に告げる。
「みんな、行こう……!」
或人の言葉に皆はこの場を二人に任せて衛星のある地下トンネルを目指して橋の下に向かっていく。その歩みにはもう迷いは、何より澱みはない。
「……………」
これに対してアークは一切妨害することなくただ見過ごす。それを見て滅は疑問を抱いた。
「何故止めようとしない?」
「無論、その必要がないからだ」
アークはそれに答え、かかって来いとばかりに両腕を広げる。
「既に手は打った。それに奴等の後を追うのは……お前達の息の根を止めてからでも遅くはないだろう」
「……やれるものならやってみろ、行くぞ!」
「私に指図するな。はあああああっ!」
そうして、二人はアークへと果敢に挑み掛かった。
───────────────────────
通信衛星アークまでのルートを先行したのは或人と諌の二人だった。何故なら二人はそのルートに入る直前までの道のりを既に通ったことがあったから。
或人はバスガイド型ヒューマギアのアンナと共にデイブレイクの真実を突き止める為に。
諌はデイブレイクが起きた当時飛電インテリジェンスの社員として働いていた父の息子である郷という少年と共にデイブレイクの真相を探る為に。
「まさか、またここに来ることになるとはな……」
「……この先が……」
あの時の二人には知る由もなかったことだが、当時の二人はデイブレイクの真実に、原因である諸悪の根源に確かに近付いていたのだ。
「データによれば道は……あった!」
そして、嘗て来たその場所に再びやって来た或人と諌は懐かしく思いながらも辺りを見渡し、滅からデータを受け取った迅は床にカモフラージュされていた扉を発見した。瓦礫が転がり、薄暗い場所ということもあって一見して分からないような位置にあったその扉は周りのコンクリートの床と色まで同じ鉄製のドアだった。
「重っ……!? ちょっと誰か! あーゴリラ手伝って!」
「誰がゴリラだ! ったく……仕方ねぇな」
鉄製のドアには床に偽装する関係上か鍵穴もなければカードキーをスキャンするような機器も付いてなく、何のセキュリティーもない。その代わりと言ってか扉自体の重量が尋常じゃなく迅一人では開けられなかった。何故ならこの扉は滅が仮面ライダーに変身し、変身後の腕力で開く想定で作られていたからだ。
「ぬっ、うおおおおお!!」
しかし、この問題は諌の手助けがあってあっさり解決。迅は扉を開けた……どころか勢い余って扉を壊した諌を見て小声で「え、力強ぉ…」と呟き半ばドン引き気味に後退り「感謝しろよ!」と諌はキレて、一行は扉の先の隠し通路に入っていく。
隠し通路の中は更に薄暗く、ヒューマギア達の通行のみを考えて設計されている為に照明の類が一切なければ当然衛星まで親切に案内してくれるような看板もない。また別れ道もいくつか見られた。だが迅、雷、亡、の三人のメモリーには滅からのデータがあるため道に迷う心配はなく、一行は先頭を行く迅についていく形で衛星までの最短ルートを進んでいきーーその道中、通路に入って僅か数分が経過した辺りでその場にいた全員が周囲から聞こえて来た音に気付き足を止め、振り返った。
すると先程通って来た道の奥と今自分達が立っている道の左右に空いている通路からぞろぞろと動く人影。アークによって生成されたであろうマギア達が大量にいるのが見えた。
「アークの野郎、馬鹿みてぇな数用意しやがって……!」
『ドードー!』
「落ち着いてください、雷。こうなるのは予測通りだったでしょう」
『ジャパニーズウルフ!』
「あぁ、やるぞ」
『ダッシュ!』
思わず悪態をつきながら雷は右の通路に移動、亡は左の通路に移動、唯阿は今来た中央の道に移動、それぞれがそれぞれの道を立ち塞ぐ様にしながら三人はプログライズキーを起動した。
『これはあくまで予測だが、通信衛星アークの設置場所までの道中にアークが何かしらの罠を張っている可能性は大いにある。自分の唯一の弱点が衛星本体だということはアーク自身が最もよく理解している筈だ……ならば道中での待ち伏せや、最悪の場合、俺のメモリにある通路までのルートそのものが塞がれていることすら考えられる』
「ここは私達が引き受ける。お前達は急いで衛星アークの元に向かえ!」
「心配は無用です。マギア達を掃討した後にすぐ駆けつけますから」
「我儘を言えば、アークは俺が直々にぶっ壊してやりたかったんだが……仕方ねぇ。美味しいところはお前等にくれてやるよ!」
三人の台詞を聞いた迅は頷く。
「……あぁ、任せたよ。二人とも先を急ごう!」
「刃さん、亡、兄貴……気をつけて!」
「お前等、死ぬんじゃねーぞ」
そうして迅、或人、不破の三人は地下トンネルまでの道を全速力で駆けていく。
「………お前達もな」
【オーソライズ!】
遠のいていく仲間の背を一瞥した唯阿はそう呟きふっと微笑んでプログライズキーをショットライザーに、雷と亡もそれに続いてプログライズキーをフォースライザーに装填した。
【Kamen Rider. Kamen Rider】
残った三人は向かってくるマギア達を正視しながら声を上げた。
「「「ーー変身っ!」」」
───────────────────────
仲間達の覚悟を見届け進んだ長い長い地下トンネルの先。
「ーー………あれが………」
無機質な灯りに照らされた高く広い場所。
通信衛星アークが格納されている不気味過ぎるほどに静かな終着点。
そこに辿り着いた或人は自分の目の前に映る巨大な物体を見上げ思わず呟いた。
或人達が地下トンネルを抜けて入った空間。その最奥に鎮座しているアークの中央部分に見えるコアはまるで巨大な目玉のようであり、アークが確かに機能していることを示すようにコアは禍々しく美しい、そんな赤い輝きを発し続けていた。
「まさか本当にあるとはな……なら、肝心の衛星は見つかったんだ。さっさとブッ壊すぞ」
滅から作戦を聞かされた時は半信半疑だった諌は実物を見て驚きながらも即座にプログライズキーを構える。
「あぁ、やろう。滅の計画通りなら難しく考える必要はない。あのコア目掛けて僕達が一斉に必殺技を叩き込めばーー」
ーー衛星アークの機能は止まる。
諌の意見に頷いた迅もそう言って変身しようとプログライズキーを手に取り、或人も続いてそうしようとした、その時だった。
最初に、何処からか拍手の音がした。
「ーーようこそお越し下さいました、或人社長」
「…………えっ?」
次にこの場所で聞こえる筈のない声が或人の耳に届いた。声のした方に目を遣れば鎮座する通信衛星アークの横手から……よく知る秘書が姿を現すのが見えた。呆気に取られて或人は声を出す。
瞬間、或人の脳内に大量の疑問が湧き、
「イズ? え、なんで……ーーいや、違う!」
冷静に考えた或人はありえないと頭を横に振り、プログライズキーを手に持ちながら秘書によく似た姿をした何かを睨みながら断言する。
「イズじゃない……お前は誰だ?」
「……ちぇっ。流石は或人社長。この程度じゃ騙されないか。ま、場所が場所だものね」
或人の反応に面白くなさそうに唇を尖らせたソレは自分の髪にすっと触れると髪色をイズのものから本来の赤いものへと瞬時に切り替える。
「……ゼロワン。あれはアズ……滅の話にも出てた、アークの使者を自称するヒューマギアだ」
「! あれが………」
「つまりは……敵って訳だな」
謎の存在を前に迅がそう告げ、三人は油断なく敵を見据えた。
「ーーほーんと、あなた達ってば驚くほどに滑稽よね」
三人を見下ろしながらアズは呟いた。
その目はここまで来た三人を、仮面ライダーを軽蔑するようなものだった。
「少しは疑問に思わなかった? 例えば、ここに来るまでに通って来た地下トンネルで待ち伏せが一つも無かったこと。こうしてアーク様の前まで順調に来られたこと。他にもたくさん疑問の余地はあった筈だけど………」
「アーク様の予測通りここまで来て、ホントに愚か」
通信衛星アークを整備するために横に置かれた移動式階段を登り、アークのコア付近に近付いたアズはそのコアを愛おしそうに撫で、
【ゼロワンドライバー!】
ーー仮面ライダー達へと向き直ると同時にソレを取り出し装着した。
ソレはアークがゼロワンドライバーを直接奪った時、同時に奪ったゼロワンのデータを使って使用資格などの一部システムを改変し再構築されたゼロワンドライバーの複製品。
「これは、私の中の悪意」
『アークゼロワン!』
【オーソライズ!】
アズの言葉に感情に呼応するように背後の通信衛星アークのコアが輝きを放ち、その手に白いプログライズキー、アークゼロワンプログライズキーが生み出され、起動。最後にプログライズキーを認証し、
「仮面ライダーは私が滅ぼす……変身」
【プログライズ!】
仮面ライダー達への宣戦布告と共にゼロワンドライバーに装填された。
【Final Conclusion!】
【アーク!ライジングホッパー! 】
【A jump to the sky to gain hatred.】
アークゼロワン。
それが或人達、仮面ライダーに立ち塞がる最後の敵、悪意の化身の名だった。
「アーク様の意思のままに」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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仮面ライダーゼロワン!
第32話 オレとキミの夢の証