は?儂がメス堕ちなんぞするわけないじゃろ?~TS転生ロリババアのメス堕ちカウントダウン~ 作:ざっはとるて。
「そうじゃ、川に行こう」
「えっ?」
茹だるような暑さもなく、おニューの水着など手に入れようがないため披露すべき何物かがあるわけでもないそんな森のど真ん中で呟かれた一言は、ずばり朝食での一幕がその端を発していたのだった。
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----食材が、無い。
その日、儂が直面した事態とは当にそれじゃった。
儂の体は元々が妖狐であることに加え永い時間を生きすぎて体のつくりから普通の生き物とはがらりと変わってしまったようで、どういう食事を摂っても健康には凡そ影響しないようになっている。はっきり言って栄養自体よりも儂自身の娯楽という面の方が大きくすらあったのじゃ。
それに対して、ユウの体はどうか。こんな幼気で成長期すら本格的に始まっていない少年に、儂が当たり前に行っていた食生活を真似させたらどんな未来が待っているのか恐ろしくて想像すら出来かねるというものである。
そういうわけで儂は今まで森の中で採り貯めた食材(凍結の術のちょっとした応用で生み出した氷室に容れていた)を惜し気もなく放出してきたのじゃが、ここでひとつの問題が発生する。
つまるところ、蛋白質。
儂は妖狐という種族柄、森の動物達の意思がなんとなーく分かってしまうがために肉を獲って喰うという発想に今まで至れんでいた。儂だけが過ごしていくならば栄養バランスなんぞはどうでも構わないということで適当に木の実を喰っていたのだが、よもやここに来てそれが仇となるとは思わなんだ。
がしかし、いくらユウのためと言えど森の動物を殺めるあの瞬間に嫌でも知覚させられる、極限の恐怖と諦観が入り雑じった感情を味わうのは辛いものがある。先日ユウを運んでもらった熊公の他にも、儂が食肉をしないからこそ良好な関係を築けている動物連中もいることじゃからのぅ。
昆虫食なら或いはどうか?いやいや、本格的な養殖体制が整っているならまだしもその辺の虫を獲って喰うだけではむしろ必要な栄養が欠けたり、そもそもユウめが拒否して食べられない可能性もある。
と、ここまで考えたところで儂の頭脳に電流走る。魚である。ここは森のど真ん中、海からは幾里離れているのやらといった位置だが当たり前のように川はある。川があればそこには何がある?そう、魚が棲んでいる筈である。そう言えばユウの奴の体を拭いてやったりはしたが未だ水浴びは行っていない。妖術を使い熟した我が身はわざわざ清浄せずとも身綺麗に保てるということもあってユウの衛生状況は大して気にしていなかったが、川の水で身を清めればユウの肉体だけでなく精神衛生上もよい影響をもたらすに違いない。考えれば考えるほど得策としか言えぬ思い付きである。
釣りか、手掴みか、罠のひとつも仕掛けに行くのも悪くない。自然と口角が上がっていくのを感じながら、最早決定事項と化した魚捕りのために川行きを宣言して先の発言へと至ったのじゃった。
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思い立ったが吉日、早速ユウの手をとって小屋を飛び出した。
「ひゃ……ト、トワちゃん、一人で歩けるってばぁ」
トワちゃん、とはとりもなおさず儂のことである。室内にどう見ても複数人が住んでいる形跡はないので独り暮らしをしていることまでは理解してもらえたようじゃが、この見た目にして数百歳というのはさすがに脳が受け付けぬ情報であったらしい。儂が見た目通りの年齢ではないと理解していないとしても別段不便があるわけではなし、むしろ近い年の頃と思ってもらった方が変に距離を取られずに済むという利点もあるので別に佳いか!と開き直って現在に至っている。
「まぁまぁよいではないか、愛い奴めぇ恥ずかしがっておるのかぁ~?」
「わっ、や、やめてぇ~!」
頭を撫で遣り頬を捏ね遣り。あまりに弄り倒して嫌われてしまっては困るが、どうしてもこのイタズラだけがやめられない。思い返せば、前世ではペットを構いすぎて嫌われてしまう性分だった気もする。儂のイタズラ好きはひょっとすると種族特性以上に儂自身の性分なのかもしれぬ。
「にゅふふ!すまんすまん、ユウの反応がどうしても可愛くてのぅ、ついついちょっかいを出してしまうわい。もうすぐ目的地に着くでな、しこたま楽しませてやるゆえ勘弁しておくれ?」
一旦距離を置き改めて手を差し伸べると、ユウは全くあっさりとその手をとった。どうにもこやつ、一度何かを拒否した後に別の頼みごとをされると断りづらいという心理技法に大層弱い様である。将来的になんぞ悪い輩に騙されやしないものか心配になるバカ正直さじゃが、今は儂のオモ……善き同居人としてその性情を存分に発揮して戴くこととしよう。
「目的地……ねぇトワちゃん、川遊びって、一体何するの?」
「……ほ?」
予想外の問いに思考が止まる。何なのと訊かれても川遊び也としか答えようがないのじゃが、はて如何なる意図の問いなのじゃろうか。
「だって、僕、そんなのしたことないんだもん」
「ほぁ!?」
――目から鱗とはこのことか。娯楽などろくに無く、余暇があっても自然を相手に時を過ごすしかないのが当たり前のこの世界。且つ、前世よろしく公共事業なる概念に乏しく普通ならば水源のすぐ側にしか人が暮らせない状況下で、必然的に遊び場を川へ求めて然るべき。その認識に正面から横殴りを喰らわせられたかのような衝撃(意味不明)を受け、混乱覚めやらぬといった儂の昼下がりである。
「えっ、いやいやユウよ、さすがにそれは嘘じゃろう?お主のような年頃のおのこが川遊びのひとつもしなかったというのかの?否さ例えばお主がとびっきりの箱入り息子であったと言うならば或いは大事にされすぎてということもあるかもしれんが……」
そこまで口を滑らせて、咄嗟に鼻から顎までを手で覆う。このぼんずが訳有りなのは重々承知済みの今、生まれや故郷に繋がる話は禁句としていたというのに少し驚いたくらいで要らぬことを喋ってしまった。100年単位で他者と関わりを持っていなかった結果がこのザマか。ズケズケ何でも訊いてくる厄介なおばさんか、儂よ。
「あーあー、まぁ、それはどうでもよいか。よいよい、知らぬというならこの儂が厭というほど教えてやるわい。なぁに退屈も飽きもさせんとも、なにせこの森全てが儂の庭なのじゃからの!」
ぶわっはっはっはと大袈裟に空威張り。いや最早空笑いか。ともかくまたしても余計なことを口に出す前にさっさと行動、微かに聴こえるせせらぎを頼りに川へ川へと歩を進めていくのじゃった。
前回からしれっとアンケートを実施してます。
4話投稿するまでを期限に集計続けるつもりなので気が向いたら答えてネ
見たいのは次のうちどんな展開ですか?
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静かに暮らすユウとトワ(日常!)
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運命に立ち向かうユウとトワ(シリアス!)
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ロリババアハーレム(↑を足して割る!)
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御心のままに…(筆者が自分で考えろ!)