いつもより少しだけ早く目が覚めてしまった。あたしにとっては少し珍しいことだけど、別になんてことのない時間だった。
「ねぇ、ほわん―――まだ起きてないよね」
ほわんは隣でまだ幸せそうに寝息をたてている。いつまでも眺めていたかった。
「そうだ、曲作り」
たまには朝食を二人で作るのも良いかも、なんて思っていたけれど、次のライブに向けて新譜を考えるんだった。
するりと抜け出して軽く着替える。散歩しながら考えることにしよう。
起こしてしまわないように小声で、行ってきます、とだけ。まだ薄暗い空はよく澄んでいた。ちぎれた雲に消えかけの月が隠れる。代わりにもうじき朝日が顔を出すだろう。
それも、とっても元気な朝日が。あの笑顔を思い出し、独りでくすりと笑う。ふとした瞬間にほわんのことを思い出してしまうのは我ながら恥ずかしいことだけど、それすらも心地よく受け入れてしまっている自分がいるのも確かだ。
あの瞳が、いつまでも煌めいていてくれたならば。きっとあたしはどこまでだって。
今は左手に傘はないけれど。晴れているからきっと平気。そう信じていられた。
ほわんのおかげで。いただきますが待ち遠しくなって、おやすみがあったかくなって、ただいまが楽しくなったんだ。
そして何より。歌うのがもっともっと、好きになれた。
だから歌おう。みんなで最高の煌めきを作りたい。
「―――よし、コンセプト、決まり」
素直になるって決めたんだ。声にならないくらいだけれど、確かにそう呟いた。
「ただいまー」
「おかえりヒメコちゃん。どうしたの?」
「目が覚めちゃったし、ちょっと散歩」
「ヒメコちゃんが早起きだったから、びっくりしちゃった」
びっくりしたって言ってる割には連絡もこないしちゃんと朝ごはん作ってるじゃん、なんて考えながらその匂いでメニューをあてようとしているのだから、あたしも何か言えた立場じゃない。次からはちゃんと書き置きを残すようにしよう。
「って、あれ。先に食べてないの?」
「ちょうど出来たところだったから」
「ほんと?」
「………えへへ」
「別に食べててよかったのに」
帰る時間も、そもそも散歩に行ったことも伝えてなかったし、いつかまた待たせてしまうことになるのは申し訳がつかない。なにより、作ったはずのほわんが、一番おいしい出来たてを食べられないのは少しおかしい。
けれど、ほわんは首を横に振って、笑う。
「ヒメコちゃんと食べると、最高だからっ」
ああもう。あたしの最高が、もう一つ増えてしまった。