剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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83話 任務完了

 

「何してるんだ!!隊士同士の争いはご法度だと……!」

 

禰豆子の入った箱を執拗に狙う猪頭に向かって、俺は全力で突っ込んでいった。

 

「なんだ?また俺とやろうってのか?」

「やるも何も……!」

「うぉッ!!!?」

 

ある程度の距離まで近づくと、俺は猪頭を持ち上げて____

 

「俺の妹に手を出すなァァァァァァ!!!!」

 

___誰もいないことを確認した後、そのまま開けた場所へ投げ飛ばす。

 

「ぐっ……ハハハ……同じ奴に2度投げられるのは初めてだ………この嘴平伊之助様が褒めてやるよ……」

「そうか!!俺は竈門炭治郎だ!!おい!伊之助!!何故無抵抗の善逸を何度も蹴り飛ばす!!それにあの箱に何の用だ!!あれには俺の妹が入ってるんだ!!」

「妹……?ヘッ!俺の肌の前じゃ誤魔化せねえ!あの箱からはピリピリしたような感覚がする!中にいるのは鬼だろう?ならば狩って俺の強さを示す踏み台にする……!!邪魔するなァ!!」

「お前ッ!!俺の妹は鬼だけど誰彼も人を食っっっ……!!!」

 

どうやら話が通用する相手じゃなさそうだ。

そして、伊之助は標的を俺にようで、低姿勢のまま俺目掛けて突進してくる。そのまま先程と同じように、俺の足を引っ掛けて来たり、低位置より拳を突き上げて来たりと、獣のような攻撃の応酬が飛ぶ。

 

「おい!だから隊士同士の戦闘は御法度だと言ってるだろう!!」

「知ったことか!!クハハハハハ!!!」

 

……もう口で言っても分からないようだ。日輪刀を所持してる以上、鬼殺隊であることは確かなようだけど、こうして幾度も斬り掛かられたなら、最終手段に出る他ない模様。

 

「いい加減に……」

「ヘッ?」

「しろッッッッッ!!!」

 

突進してきた伊之助の頭へ向けて、思いっきり渾身の頭突きを食らわせる。

 

「なかなか……いい硬さ………」

 

すると、頭突きの衝撃で、伊之助の身につけていた猪の仮面が地面にポトリと落ちる。

 

「えっ?嘘っ?女!?」

 

善逸が驚くのも無理は無い。仮面の下から出てきたのは美形の少年。あの荒々しさとは裏腹に、顔はとても整っていた。

 

「なんだ?俺の顔に文句あるの…………か……………」

 

やがて伊之助はフラフラと泡を吹いてその場に倒れ伏した。

 

「ふぅ………」

「えぇっ………?」

 

どうやら上手いこと脳震盪を起こしてくれたようで、暴れ回る伊之助を抑え込むことに成功した。

 

「さて、今のうちに亡くなった人達を埋葬するぞ善逸………」

 

「ズツキコワイズツキコワイ…………」

 

……善逸から異常な程の畏怖の匂いがする。

 

 

____________________

 

 

 

 

鳴り響く琵琶の音、そして辺り一面に拡がる上下左右の概念の失せた和風空間。周囲に同胞たちの気配は無し。ここに呼ばれたのは俺1人。ということは、指令(・・)か。

 

「朱雨よ……」

「ははっ!これはこれは無惨様。私めにご指示ですか……どうぞ何なりとお申し付けを……!」

 

やがて遷移したその場所で、俺の目の先に無惨様が姿をお見せ下さった。

 

「……朱雨よ、以前お前が護衛していた私の仮の姿を覚えているな?」

「ええ…もちろんです。貿易商の男、月彦でしたね」

 

洋服に妻子、戦争中の欧州との貿易で得た莫大な資金と、物に不自由しない良い宿り先だったのをよく覚えている。

 

「___あの姿は捨てる

「………左様ですか」

 

…やはり例の耳飾りの餓鬼か。身形もかなり人に寄せたというのに、どういう訳かあの餓鬼には無惨様の正体が割れた。何故に無惨様の正体に勘づいたかは謎だが、鬼狩り側に無惨様の情報が割れたことは事実。

加えてあの場所には、以前よりその存在を疑っていた逃れ者(・・・)の存在。そして、無惨様の正体を知った耳飾りの餓鬼を口封じ出来ず、逃れ者の殺害も適わず、役目を果たせなかった使えない2人。

…無惨様があの姿をお捨てになるのも当然の運び。

 

「…そうだ。お前の考えている(・・・・・)通りだ。もうあの姿は鬼狩り共にも認知された事だろう。そうなった以上、あの貿易商の地位は要らぬ」

「…至極真っ当なご判断かと。つきまして私朱雨は、満月ノ鬼として如何程、お役に立って見せましょうか?」

「……フッ、話が早いな。次の宿り先が見つかるまで、少し時間がいる。単刀直入に言う。ひたすら暴れろ。手段はお前に任せる。鬼狩りの注目を其方に向けるのだ。良いな?」

「ははっ!仰せのままに…」

「良い、下がれ」

 

そうしてまたしても琵琶の音が鳴ると共に、俺は元いた山中の屋敷の中へ戻っていた。

 

「……無惨様のご意向となればこの地を自ら進んで戦場に変えよう……」

 

ここでの暮らしも悪いものではなかったが、無惨様がそう仰るのであれば、この山に幾つもの鬼狩り共の死体の山を築くとしよう。

 

「……あれ?お父さんどこ行ってたの?」

「あぁ零余子、ちょうど良かった。ちょっとあの御方の元で新しい指示を受けてきた。作戦を練りたい……累と釜鵺(・・)を呼んでくれ」

「……?とりあえず分かった!」

 

今度の作戦は家族総出だ。それはもう、鬼狩りの注目を此方に向けるべく、残酷で阿鼻叫喚の百鬼夜行を練るとしよう。

 

「さてと、まずは……」

 

零余子と累と釜鵺、それだけじゃ足りない。無惨様が次の居場所を作る時間は、恐らくこの山での戦いだけでは稼ぎきれない。それに、これは鬼狩り共に大量出血を強いる好機。

 

「……アイツらも呼ぶか。猗窩座、病葉、魘夢……」

 

彼らも呼ぼう。そして、彼らにも手伝って貰おう。噂を流し、鬼狩りから逃れてきた雑魚鬼をここに招き、鍛えて最前線の兵士にする。

 

「クハハハハハ!!楽しみだ………!」

 

数段階にも渡る完全な百鬼夜行を作り出そう。鬼狩り共が大量に死ねばあの女(・・・)も出てくる筈。作戦決行は1ヶ月後だ。

 

 

____________________

 

 

 

「お世話になりました。ここで大丈夫です」

 

あの後、鼓鬼に狙われていた彼と正一君たちは無事に再会出来た。どうやら彼は俺より先に館を無事に脱出できていたのだが、禰豆子に手を出そうとしていた伊之助が善逸を何度も蹴り続けていたのを見て、どうにもこうにもならず近くの茂みに隠れていたらしい。

 

「色々とありがとうございました」

 

俺が伊之助を気絶させたことで、彼らはようやく安全と判断して出てきてくれたのだ。

その後、亡くなった人達の埋葬を行い、俺と善逸は彼ら兄弟を家の近くまで見送ることになった。

 

「カァ!稀血ノ奴!最後ニコレヲ受ケ取レ!」

 

そうして彼らとの別れ際、俺の所の鴉が口から何かを吐き出して彼らに渡した。匂いからするに、どうやら鬼避けの藤の花の香袋みたいだが、もう少し良い渡し方があったような気がする。

 

…そしてもう一点、困ったことがある。

 

「かまぼこ権八郎!!俺はお前に勝ァァァつ!!!!」

 

目を覚ましてからというものの、伊之助がずっとこんな感じで隙あらば俺に挑もうとしてくる。

俺はただ「傷が痛むならゆっくり休んでていい」と言っただけなのに、何故かそう労りの発言か伊之助に火をつけてしまったようで、埋葬する際の穴をめちゃくちゃ速く深く掘り始め、亡くなった人達を運ぶとなれば平気で数人単位を背負い、さっきまで気絶していたとは思えないくらいの動きだ。

 

「シャオラァ!!」

 

挙句、道を歩けばあちらこちらの大木に頭突きを繰り返す。

…もしかして、俺が頭突きした所の痛みが凄くて、それを誤魔化すためにあんなにも頭突きをしているのか?

 

「クハハハハハ!!!俺を2度も投げ飛ばしたこと!!そして頭突きしたこと!!褒めてやるよ!!そして俺ともう一度戦え!!!」

「だから!!隊士同士の私闘はご法度だと!!!」

 

そんな感じで正一君たちを見送った後も伊之助とのやり取りは続いている。

 

「オ前ラ!!休憩!!コノ先スグノ藤ノ家紋ノ家デ休憩!!着イテコイ!!」

 

すると、俺の鴉が喧騒に槍を入れるかのように間に割って来て叫んだ。

 

「スグソコ!!!早ク来イ!!!」

「おいコラ鴉!!俺の先を行くんじゃねえ!!」

 

その途端に、先程まで隙あらば俺に挑もうと血気盛んだった伊之助の意識が鴉方面に向いた。

 

「はぁ…………やっと静かになった…………」

 

隣にいる善逸の口から大きな溜息が零れた。それもそうだ。伊之助にめちゃくちゃ蹴られ殴られ、この中で1番の重傷。しかも傷の全てが鬼ではなく伊之助につけられたもの。

 

「おーい!炭治郎ー!!」

 

すると何処からともなく、聞き覚えのある声が。

 

「炭治郎ー!」

「蓮華さんだ!!」

 

 

 

 

 

____________________

 

 

「なるほど…君たちが炭治郎の同期か……」

 

道中で合流した蓮華さんと共に、藤の家紋の家までやって来た。

藤の家紋の家、聞けばこの家の人達は昔鬼殺隊に命を救われた人達の子孫の家だそうで、鬼殺隊士であれば無償で尽くしてくれるとのこと。

 

「オイ誰だコイツ、何か肌がピリピリすんだけど(つぇ)ーのか?」

「伊之助ダメだ失礼じゃないか」

 

ここで伊之助や善逸は蓮華さんと初対面になる訳だが、さっきから2人の様子がどうにもおかしい。

 

「複雑な音がする…………でもめっちゃ美人ンンンンンンンン!!!!

「落ち着け善逸!」

 

伊之助は隙あらば蓮華さんに突撃しようとしてるし、善逸は善逸でまたしても女性相手の悪い癖が出ている。

 

「あはは、君の同期は面白い子が多いね」

「……本当、すいません」

 

蓮華さんは心から笑ってくれているみたいだけど、2人はこの人が鬼殺隊最強で最も古株の人だって知った上でこの反応なのだろうか。

…伊之助に関しては最強と気づいた途端にもっと激しく突撃しそうだけど。

 

「そういえば蓮華さんはどうしてここに?」

「あぁ、その事なんだが……実はな………」

 

そうして蓮華さんの言葉に耳を傾けたのだが、そこから出てきたのは今現在の鬼殺隊を取り巻く何とも衝撃的で不思議な現状のことだった。

 





ー大正コソコソ噂話ー

全員原作より軽傷なので早速那田蜘蛛山へ!と行きたいところですが、タイミングの問題で那田蜘蛛山編は少々先になります。


11/28 ー生存報告ー

そして、この長い投稿期間の間に、主人公朱雨が前世でどれほど悲しい道を歩んで来たことに関しても、大方の設定が完成しました。そして最終話までのおおよその流れも、決着出来ました。


2025年 8/27 ー生存報告ー

以前の情報から1年以上待たせてすいません。結論から言うと、現状書く暇がありません。

更新が今後どうなるかは私にも読めず、いっそ加筆や訂正を含めたリマスター版を書いて時間稼いでどうにかしようかなとも考えていたのですが、それすらも手をつける暇が全くない状態です。

一応設定だけはメモにまとめて完成しているので、未完結扱いで全て公開するか、それとも更新がいつになるか不明ですが待って頂くか。
今のところ悩んでる状態なので、リアクション次第でどちらにするか決めます。
感想もまともに返信できなくてごめんなさい。

ではまた。
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