この素晴らしい二度目の世界を生き抜く   作:ちゅんちゅん

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このファンのせいで、アニメを一気見して映画をアマゾンでポチって二次創作を書きました。


この素晴らしい世界から転生を!

「お疲れさまでした。カズマさん」

 

 気が付くと俺は椅子に座っており、同じように向かえにはエリスさまが椅子に座っていた。ひどく久しぶりなこの光景。魔王を倒してからは会うことはないだろうと思っていた。

 

「あぁ……最後に直接お会いできるとは……俺は、死んだのですね?」

 

「ええ、80歳という2度目の人生をカズマさんは最後まで生き切ったのです」

 

「昨日は一日、とても調子が良かったですからね。ろうそくが最後に燃え尽きるまえに燃え上がるように、この老体にも火がついていたのでしょう。この世界で60年と4年余り、よく生きたと自分でも思います」

 

「ええ、お孫さん、とてもかわいらしいですものね。あの鬼畜と言われたカズマさんはどこへやら」

 

「自慢の孫ですよ。アクアに懐いてしまったのはかなり不満ですが。俺も年ですし、人並みに落ち着いたということですかね。思い返せば、結構なことをしていたものだと懐かしさを感じます。しかし、エリスさまも人が悪い。最後にこのような配慮を受けては、欲が出てしまう」

 

「ふふっ、すっかりおじいちゃんですものね。さて、もうお忘れかもしれませんがカズマさんには魔王討伐の報酬として、何でも願い事を一つ叶える権利があります」

 

「……ああ、そういうことですか」

 

 記憶からも消えかけていた約束。魔王討伐の報酬のことを思い出す。年老いた今となっては、特に望むものもないはずではあったが、こうしてエリスさまと話して、もう一度みんなと話してみたいと思ってしまった。あの心躍る冒険を、苦労を、感じてみたいと。

 

「もう一度、みんなと冒険をしてみたいです」

 

「……ええ、あなたの願いは承認されました。これより、あなたを初めてこの世界に来た時の状態へと逆行させ、並行世界へと転送します」

 

「並行世界?」

 

「この魔王を討伐できた世界とは別に、いくつもの結末を巡った世界が無数に存在します。そして、それらの世界は互いに呼応しあい、ある程度の指向性を獲得してしまっているのです。現状、魔王が世界を支配する可能性が多分にある世界が8割を超えていまして、その影響で今までカズマさんがいた世界でも魔物や魔獣の発生が多発していまして、このままいくと、また魔王が生まれてきちゃう可能性があってですね…」

 

「つまり、また魔王を倒せばいいということですかね?」

 

「そのとおりです。願い事をかなえるといいつつ、こちら側の事情に巻き込む形になってしまうので申し訳ないのですが。あ、でも、ほかのことを願われるのでしたら、全然そっちを優先しますので!」

 

 そういって申し訳なさそうにエリスさまが頬を指でかく。俺としてはまた冒険できるのであれば、さほど気にはならないが、譲れない一線がある。

 

「あの、みんなはいるんですか?」

 

「並行世界ですので、この世界のみなさんとは厳密には違いますが、ちゃんといます」

 

「違うっていうのはどういうことですか?」

 

「この世界のみなさんとは違う道筋を歩む可能性があるということです。それはカズマさんとかかわっていく上でより顕著になるはずです。カズマさん次第で、ダクネスが攻撃系のスキルを取得したり、めぐみんさんが上級魔法を覚えたりする可能性があるということですね。前回とまったく同じように行動すれば、この世界とほぼ同じになるとは思いますが、そういうわけにもいかないでしょう?」

 

「そうですね。俺はいろいろと知ってしまっているわけですし、距離感も前回と同じようには、とはいかないと自分でも思います」

 

「ちなみに、ダクネスもめぐみんさんも、ほかの並行世界に旅立っています」

 

「あいつらが?」

 

 エリスさまの言葉に思わず昔の口調が戻ってくる。あいつらも俺と同じ気持ちだったのだと、すごくうれしく思う。やっぱり、離れ離れ、別々の道を進んでも俺たちは心でつながったパーティなのだと。

 

「二人とも、カズマさんがいるかどうかを最初に確認してきました。人気者ですね、カズマさん?」

 

「えっ……」

 

 予想外の言葉に思わず固まる。照れくさくもあり、少しばかり誇らしい。

 

「では、コホン。あなたには転生特典として、何物にも負けない力を一つだけ授けます!」

 

「あれ、それってまたもらえるんですか?」

 

 胸をはって言うエリスさまに尋ねる。そういえば、あの胸、まだパッドが入っているのだろうか?

 

「なにかものすごく不愉快なことを考えませんでした?」

 

「考えてないです」

 

「……まぁ、いいです。一応、並行世界とはいえ、転生になりますので特典がもらえるんですよ。でもカズマさんならもう決まってますよね」

 

「そうですね。アクアを転生特典としてください」

 

 俺がそういうと同時に、空に亀裂が入り、すごい音を立てて何かが落ちてきた。

 

「当然よね! 回復から宴会芸、子供の世話まで完ぺきにこなす私がいなければ、カズマの冒険は始まらないもの!」

 

「アクア先輩、ひょっとして隠れて聞いてました?」

 

「は、はぁ!? 女神は盗み聞きなんてしないんですけど!? それよりあんた60年以上たってるのにいつまでパットつけてる気!?」

 

「ちょっ、それは関係ないじゃないですか!!」

 

「相変わらずだな、アクア」

 

「昨日ぶりね、カズマ。朝、遊びに行ったらすっかり成仏しちゃってるものだからリザレクションもできなくて焦ったんですけど」

 

「この老体には、お前の相手はきついぞ」

 

「でも私を選んでくれたんでしょ? やっぱり私がいないとカズマさんは駄目ね! というか男のツンデレとかきもちわるいんですけど? プークスクス」

 

 いつまでもであった頃の姿のままのアクア。もうどついてやることも、一緒に飲んでやることもできなかったが、また一緒に騒いでやることができる。長い付き合いだし、言葉ではこう言っているが照れ隠しということはお見通しだ。

 

「……不安で隠れて覗いてたくせに」

 

「なんか言ったかしら、パッドエリス?」

 

「うひぃ!? ほほをふははないでふらはい!」

 

「やめろ、アクア。エリスさまが困ってるだろ」

 

「ちっ!」

 

 エリスさまの頬をつかみ引き延ばすアクアに声をかけるとすぐに手を放すあたり、あいつもかなり素直になったと思う。なんやかんやで、この世界に来てからずっと一緒にいる相棒みたいなものだ。とくに歳をとって歩けなくなってからは、ある程度は俺を尊重してくれるようになった。

 

「それでは、カズマさん、アクア先輩。向こうの私もよろしくお願いしますね。」

 

 エリスさまの言葉と同時に俺とアクアの足元に見慣れた魔法陣が展開され、体が宙に浮いていく。

 

「あれ、向こうの私はどうなるのかしら?」

 

「あ、それについては大丈夫です。同じ存在は許容されませんので、能力的に低い、向こうの先輩は消滅します」

 

「え、何それ怖いんですけど」

 

「最後までしまらないな。まぁ、俺ららしいけどな。また、よろしく頼むよ、アクア」

 

「ふふん。この私に任せなさい。そして今度こそはカズマに選んでもらうんだからね!」

 

「……俺らは、そういうんじゃないだろ」

 

 俺の言葉はちゃんとアクアに届いたのか、届かなかったのか、最後に見たのはとびっきりのアクアの笑顔だった。

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