この素晴らしい二度目の世界を生き抜く   作:ちゅんちゅん

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このファンの闇ピックアップ……メリッサ目当てに引くか悩みますね


そして誕生日にカエルに食われて喜ぶダクネス。


このギルドで祝杯を!

 あれから三日。俺たちはギルドへと呼び出された。俺たちがギルドに入ると、いきなり冒険者たちに取り囲まれた。

 

「おい、カズマ! 魔王軍幹部を倒したってマジかよ!?」

 

「まさか本当に倒すとはな……俺は信じてたぜ、お前の中の輝きってやつをよ」

 

「おごって! カズマさま~」

 

 冒険者たちの集いの場所、ギルド。本来であればクエストに出ている冒険者たちも、魔王軍幹部の出現によりクエストを受けることができず、いつ尽きるかもわからない手持ちを眺めつつ、昼夜問わずにシュワシュワを煽っている。いつまでこんな生活が続くのか。本当に騎士団が派遣されてくるのか、派遣されたとして、魔王軍幹部を討伐できるのか。不安と焦りは募り、しかして現状はかわらない。ギルドから活気は消えつつあった。

 

 それが今はどうだろうか。冒険者たちの顔には笑顔が戻り、心からこの事態を喜んでいる。

 

「お待ちしておりました。サトウカズマさん。皆さん! 掲示板に貼り出してありますので、すでにご存じの方も多いと思いますが、この、サトウカズマさんのパーティーの活躍により、魔王軍幹部、デュラハンのベルディアが討伐されましたことを、ギルドが確認いたしました!」

 

 周りの冒険者の視線が俺たちに突き刺さる。そして沸き上がる大歓声。

 

「うぉおおおおおおおお! お前、本当にやりやがったんだな! 上級職のパーティーで楽して小金稼いでてずりぃなと思ってた自分が恥ずかしいぜ!」

 

「おう、ほんとに恥ずかしい奴だな。チンピラ」

 

「ダストって呼んでくれよ! 親友!」

 

 チンピラのダストが俺の方に手をかけ、シュワシュワを押し付けてくる。こいつは誰にでも、なにかと難癖をつけてくることが多いが、自分で認めた相手には気のよい奴だ。

 

「さすがカズマだ! あのパーティーをまとめてるだけあるな!」

 

「「カ・ズ・マ! カ・ズ・マ! カ・ズ・マ!」」

 

 大歓声の中のカズマコールに思わずたじろぐ。

 

「みんなの笑顔を、私たちが守ったと思うと……こう、こみ上げるものがあるな、リーダー?」

 

「カズマがいなければ、この結果はなかったのです。胸をはるべきでは?」

 

「そうですよ! カズマさんあっての結果です!」

 

「ほら、カズマ。みんながあなたの言葉を待ってるわよ? ここはびしっと決めちゃいなさい! びしっと!」

 

 後ろから仲間たちが俺を前へと押す。ここは、何か言わないと収まらないだろう。

 

「えー……」

 

 一瞬にしてギルド内が無音になり、周りからの視線が突き刺さる。

 

「俺たちの実力、見たかこらぁああああああああ!

 

「「「うぉおおおおおおおおおおお!」」」」

 

「「カ・ズ・マ! カ・ズ・マ! カ・ズ・マ!」」

 

 再び始まるカズマコール。父さん、母さん。二度目の世界で、俺、勇者になったみたいだよ。

 

「俺たち、か……まったく、こんな時ぐらい自分一人の手柄にしてもいいだろうに」

 

「カズマは私たちの力を最大限に引き出してくれているのです。カズマありきの結果なのですよ?」

 

「カズマさん……!」

 

「肝心なところでヘタレるカズマさんらしいんじゃないかしら?」

 

 ダクネス、めぐみんはもっと誇れと呆れ、ゆんゆんは尊敬のまなざし(だと思いたい)で俺を見つめ、アクアは苦笑した。

 

「あのなぁ、それは逆に俺一人でも成しえなかったってことだ。お前たち……仲間がいたからこその結果だよ」

 

「いい感じの雰囲気出しているけれど、正直、アンデッドでもなければあの倒し方はけっこうえげつないと思うの」

 

「そうだな。あの容赦のない攻め……思い出しただけで……くぅ!」

 

「おい、台無しだよ変態」

 

「はぁん!?」

 

 悶えるダクネスにため息をつくと、ルナさんが大きく咳ばらいをした。

 

「それでですね……本来でしたら、魔王軍幹部の討伐報酬として3億エリスをお支払いするのですが……」

 

「お、おぉおおおおおお!? 3億エリス!? おいおい、そんなにあったら……おいまて、今なんて……? 本来なら?」

 

 高ぶった気持ちが一瞬で冷えていくのを感じる。この感じ、俺は、何度も経験している。

 

「大変、言いにくいのですが、デュラハンとの戦闘で、昔に破棄された城が倒壊しておりまして……」

 

「ねぇ、カズマ。すごく嫌な予感がするのだけれど……」

 

「奇遇だな、アクア。俺もだ」

 

 この上げてから落とされる感じ、いやというほど味わってきている。今の俺の頭には『借・金』の二文字がダンスをしている。

 

「城自体は老朽化もあったがまだ使える状態であり、モンスターに占領されたとはいえ、残しておくべきであった。また、崖ごと倒壊したため、二度と同じ立地での建城がかなわず、防御の要を永久的に失ったのは国としての痛手である。見方によっては国に対しての反逆行為である。魔王軍幹部討伐の実績に免じ、罪には問わないが、報奨金は国への補償としてあて、支払わないものとする……との通達が……」

 

「はぁああああああああああ!? ふっっっっざけんじゃないわよ! カズマがやらなかったらアクセルが攻め落とされて王国が挟み撃ちにあってじり貧だったのよ!? それどころか、感謝の言葉の一つもないってどうなってるのよ! 天罰下すわよ! 天罰!」

 

「その通りだ! 確かにやり方は褒められたものではないにしても、この仕打ちはあんまりだろう! そもそも、あの廃城を二度と使わなくて良いように努めていくのが貴族としての姿勢ではないのか! それを言うに事欠いて、国家反逆罪だと!? どこの馬鹿者だ!」

 

「撃っていいですか? そいつを肉片残らず消し去ってもいいですか?」

 

「さすがの私も……怒りで震えるわ!」

 

 簡単に怒りの臨界点を通り越す4人。ギルド内の冒険者たちも口々に文句をぶつけている。そんな周りを見て逆に俺は冷静になっていた。借金がないだけマシ、か? しかし、このやり口……前も経験したような……?

 

「……みんな落ち着け。報告から3日もかかったってことは、お姉さんもただ言われたことを伝えてるだけじゃないんですよね?」

 

「ええ……私たちもあんまりだと抗議したのです。最初は多くの方が賛同してくれていたのです。ですが、一人、また一人急に意見を変え、取り合ってくれる人が消えていき、ついには四面楚歌。誰も話を聞いてくれなくなりました。本当に……申し訳ありません!」

 

「ちなみに、これは誰が言っていることなんですか?」

 

「……領主のアルダープさまです」

 

「なっ!? アルダープだと!?」

 

「知ってるのですか? ダクネス?」

 

「奴は……いや、カズマ。この件、私に預からせてもらえないか」

 

「ばーか、なんて顔してんだ。いいよ、別に。なにも金が欲しくてデュラハンを倒したわけじゃないしな」

 

 かなり思いつめた表情をしているダクネスを軽く小突く。俺は、もう一度お前たちと面白おかしく過ごすために戻ってきたんだ、そんな俺の前で、そんな顔をするんじゃねぇよ。

 

「し、しかしっ!」

 

「くどいぞ、ダクネス。そうだな、そこまで言うなら、お前が代わりに俺に何かしてくれよ」

 

「なっ!? あ、いや、良いだろう。この私の身体を好きにするがいい! いや、して見せろ!」

 

「言葉が悪かった。興奮するなよ……」

 

「ここにきてお預けだと!?」

 

 もうこいつの相手するの疲れたんだけど。周りを見れば、だれもかれもが納得していない表情だった。

 

「おいおいなんだ、お前ら。せっかく俺が手に入れた報酬、取り上げようってのか!?」

 

「何言ってんだ、カズマ。お前の頑張りむなしく無報酬だったろ」

 

「わかってないな、ダスト。お前ら、さっきまでバカみたいな笑顔だったじゃないか。それが今回の報酬だよ」

 

「「「……………」」」

 

 俺の言葉に再び無音になるギルド内。さすがに臭いこと言いすぎたか? 寒かったか!?

 

「っぷはははははは! そうかそうか! そういうことなら俺らは笑ってないとな! お前ら! 今日は俺らでカズマにおごるぞ!」

 

「「「おぉーーーーーーーっ!」」」

 

「ふっ……まったく、よくもそんな青臭い言葉が吐けたもんだ……だが、お前みたいな真っすぐな奴が、いずれは魔王すらも倒しちまうのかもな」

 

「「カ・ズ・マ! カ・ズ・マ! カ・ズ・マ!」」

 

 冒険者たちに担ぎ上げられ、胴上げされる。報酬は1エリスたりとももらえなかったが、それ以上のものを手に入れたような気がする。それからは、みんな、手持ちも気にせず飲み続け、ギルドを出る頃には朝陽が出ていた。

 

「それで、どうするの? カズマ?」

 

 馬小屋への帰り道、アクアがそんなことを聞いてくる。

 

「アクア。俺は自分がされたことは絶対に忘れない。アルダープ……今回の仕打ちで前回の悪行も思い出した。目ェにものォ見せてやるゥ……」

 

「うわっ、すごい悪い顔ね、カズマ……子どもが見たら裸足で逃げ出すわよ……?」

 

「アクア、お前、宴会芸で変装できたよな?」

 

「えっ? もちろんできるわよ! 見た目だけじゃなくて声もしぐさも完璧にまねることができるわ! もちろんこれはスキルだけの芸当じゃないの、私の才能なのよ! ……で、なんでそんなこと聞くの?」

 

「いや、あいつに一番効くやり方で苦しめてやろうと思ってな……それに、アルダープには確か、悪魔が付いてたよな? お前の出番じゃないか。今回も、力をかしてくれよ?」

 

「ふふっ、この貴方の女神、アクアに任せなさい! 悪魔だろうが、アンデッドだろうが、まとめて浄化してやるんだから!」

 

「おう、頼りにしてるぜ。……ん? お前、今なんて言った?」

 




ダクネスでやるか……アクアでやるか……

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